旅その5 藻岩山の夜景は巨大な宝石箱だ!(札幌市 1996年9月)

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札幌市の位置  札幌の南西の方角に藻岩山という山がある。山頂までは車道が通じているし、ロープウェイとリフトで山頂まで登ることも出来る。
 この山は「札幌市民の山」ということで親しまれている山なのだが、その割には地元の人と話をしていても、『藻岩山に行ってごらんよ!』などと言われることが、意外なほど少ない。ガイドブックなどを見ても、紹介はもちろんされているのだが、他の名所に比べて扱いが小さいような気もする。
 「よそ者には秘密にして教えたくない」ような素敵なところだから内緒にしている・・・なぁんてことはないだろうが、今現在、『札幌っこ』ではない私(プロフィール参照ください)は、気前よくこの藻岩山を紹介してしまうのだ(笑)。



藻岩山ロープウェイ乗り場前の案内 ロープウェイ乗り場からの札幌市街  藻岩山のロープウェイ乗り場までは、バスでもタクシーでも簡単に行くことが出来る。でもここは、 札幌市営の路面電車(市電)・・・いわゆるチンチン電車を利用するのが気分だろう。
 今日はこの藻岩山の日暮れから夕景までの風景に浸ろうと思い立ち、すすき野でこの市電に乗り込んだ。下車するのは『ロープウェイ前』だ。

 下車したら山の方角に向かって歩く。案内看板が出ているのですぐにロープウェイ乗り場はわかるはず。
 元気のある人は、もちろんここから歩いて登ることも出来るのだが、これは後悔しない自信のある人だけにお薦めする。元気がなく、後悔しない自信もない私は、躊躇無くロープウェイ乗り場で山頂までの往復チケットを買った(普段はいつも山に登っていると言うのにねぇ・・・気分が乗らないと、こんなもんです)。
 山頂まではロープウェイと、リフトを乗り継ぐ。
 山頂にはレストハウスがあるが、まずはレストハウスの屋上展望台に向かうことにした。



ロープウェイを降りてすぐの案内板  屋上展望台には思った以上に観光客がいた。ちょうど観光バスが到着したところに出くわしたようだ。みんな大騒ぎしながら、札幌の観光名所のあちこちで見かける『好きです、さっぽろ』の看板の前で、盛んに写真撮影をしている。
 観光バスのコースに、この藻岩山展望を最後に組み入れるのは、なかなかのアィディアだと思う。コースに変化も付くし、札幌観光の締めくくりとしてガイドさんの説明を受けながら、山の上からもう一度一日を振り返ることも出来る。つまり、今日一日の「旅のストーリー」がここで完成するわけで、これはなかなかだと思ったのだ。もっとも、展望台のあるような観光地ではどこでも当たり前の話かもしれないけど。

 さて、観光客が集中している看板の側(札幌の町並みが見える展望台側)は人混みが落ち着くまでしばらく遠慮して、反対側の山並みを見ながら過ごすことにする。
 こちら側にはガッシリした三脚に据え付けたカメラに向かっているグループがいた。藻岩山のさらに西側の山々に沈む夕陽を狙っているようだ。やがて辺りが夕陽に染まってくると、一斉にシャッターを切りだした。
 実はこの藻岩山に来る前に、ふと思い立って札幌駅高架下のヨドバシカメラで、超小型三脚(折り畳むと、10cmぐらいになる。しかもかなり軽い)を購入したのだ。この三脚にコンパクトカメラを付けて、私も同じように夕陽を撮影してみることにした。私のカメラはお手軽コンパクトカメラなのだが、なぜかスローシャッターやバルブ撮影も出来る優秀なカメラなのだ。
 だが、素人の私には適正な露出時間など分かるはずがない(キッパリ!)。そこでシャッターを開いている時間を適当に変えながら、2〜3枚の写真を撮影してみたのだが・・・。
(結果については・・・お願いだから触れないでぇ〜。このページにその写真が1枚も無いということで察して下さい・・・)



展望台から円山方面の市街を望む 展望台から北東方面の市街を望む  さて、反対側の展望台がようやく空いたようだ。今度は札幌の町並みを展望しようと、反対側に向かうことにする。

 夕暮れ時の札幌の町を眺める。『広い風景だなぁ』と、北海道に来ていつも思うことを、あらためて呟いてしまう。
 左手の方角には、遠くに日本海。正面には遙か彼方に山並みが見える。その山並の手前は、平野が大きく広がっている。もちろん石狩平野だ。
 日本で一番広い平野は関東平野だが、関東平野が一番だと言われても、その広さを実感することは難しいだろう。そもそも視界を遮るものがない状態で平野全体を見渡すには、飛行機の窓から垣間見るぐらいしか方法がない。それにしたって全体を見られるわけではないのだ。
 ところがこの展望台から見ることが出来る風景は、石狩平野のかなりの範囲を一望に出来るわけで、『広い』と感じるのも当然のような気がする。
 そもそも北海道の景色の素晴らしさは、重要な要素としてこの広さにあると私は思っているので、『広い景色』というだけで私は嬉しくなってしまうのだ。



札幌市街中心部  ますます夕暮れが深まって来た。
 陽がどんどん落ちて行く。それに連れて、ポツポツと町の灯りが灯り始める。一番明るい辺りは、すすき野のネオン街。これだけは、すぐに見つけることが出来た。目印が出来てしまえば、後は簡単。その位置関係から他の建物を特定して行く。何やらパズルをしているような楽しみもあって、飽きることはない。

 辺りがすっかり暗くなった。色とりどりの灯りが一面に広がり出す。この様子を例えるなら、『宝石箱をひっくり返したような美しさ』とでも言うのだろうか(う〜ん、ちょっとこの表現は照れくさいフレーズだなぁ・・・。少なくとも独り言で言うセリフじゃないよね。誰かに聞かれたら、ちょっぴり恥ずかしい)。
 そう、藻岩山からのこの夜景は一言で言うならば、『巨大な宝石箱』なのだ。

 何年か前、もっと寒い時期に一度この夜景を見に来たことがある。
 その時、隣にいた女の子のグループがこんな会話を交わしていたことを突然思い出した。

 『ねえねえ、函館山の夜景もステキだったけど、こっちも負けないぐらい、いいんじゃない?』
 『そうね!私は、こっちの方が感動しちゃったぁ!』
 『うん。そうかもね。もう最高!』

 まあ数年前の話なので、本当にこんな会話だったか定かではないし、多少の修飾も入っているが、会話の内容は大体こんな感じだった。
 函館山の夜景に勝っているか否かはともかくとして、確かに札幌は函館に比べて、「灯り」の絶対量が多いし、他の夜景の名所と言われる所と比較しても光の広がり方が違う。だから他の夜景の名所とはまた違った素晴らしさなのだ。何故この夜景がもっともっと有名にならないのか、多少不満でもあり、不思議でもある。
 しかもこの時は、今日よりも風が強かったせいもあってか光がきらめいて見えて、とても幻想的な雰囲気だったのだ。こんな夜景を見せられたら、女の子はもう夢心地でクラクラしちゃうよなぁ、きっと(笑)。



展望台からの夜景(1) 展望台からの夜景(2)  そんなことを思い出したりしながら、結局2時間近くも屋上で過ごしてしまった。山の上ということもあり、9月だというのにかなり冷え込んでもきた。
 『宝石箱も十分堪能したことだし・・・』と思って、レストハウスの中に引き返すことにした。

 レストハウスの中にはおみやげコーナーやラーメン屋がある。ここのラーメンはなかなかの評判らしい。残念ながら食べたことはないのだが、札幌市内の書店にある『札幌のラーメン屋100店』のようなガイドブックにも掲載されていることが多いし、全国ネットのテレビ番組で、紹介されているのを見た記憶もある。
 さてしばらくの間、買う気のないおみやげを見ながら時間をつぶし、再び下りのロープウェイに乗り込んだ。

 帰りはタクシーを奮発しようと思っていたが、残念ながら1台も停まっていない。
 しようがないので、また市電の停留場までの道を歩くことにする。

 ふと空を見上げたら、驚くほど大きな丸い月が見える。
 明日はこの藻岩山の『十五夜祭り』の日だということを、その月を見て思い出した。


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1999.6.16 Ver.5.0 Presented by Yamasan (Masayuki Yamada)