小説的には森博嗣さん, それも犀川シリーズの理系ミステリに近い.
タイトル通り密室物. 連続して起きる密室下での怪死事件. 海底に存在する研究施設という設定もさることながら, 火の気のない密室下での焼死死体, 二重の密室下での撲殺死体と謎においても引き付けられる. なぜ?誰が?というミステリならではの楽しみがある. そして, トリックもまたすごい. 焼死死体に関しては遊はもう少し早く気付いてもよかったのではと思うけれど, ,
そして, この小説でもうひとつの核となっているのが孤独だろう. 海底の中という閉鎖空間で暮らし, 研究しているにも関わらず大した交流もない研究者たち. しかし, 現代の私たちにも同じような状況はあるだろう. 「人は誰もが孤独. 一緒に暮らせばその人のことがわかるなんてことは嘘だ」. 近くにいるから, 遠くにいるから. . . そんなことは意味はないのかもしれない. 近くで一緒に暮らせば本当にその人のことがわかるのか. . . この問いがさくっと心を突いてくる.
文句なく面白いし, 謎を解くというだけで終わっていないのもいい. しかし, 携帯情報端末に宿る人格という設定がおざなりすぎないか. それに関しては『M.G.H. 楽園の鏡像』を読めばわかるんだろうか.
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