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パート4:関東沢右沢〜湿原・八瀬森山荘〜曲崎山〜スズノマタ沢下降
 最終日は、関東沢を詰め八幡平稜線へ。モクモクとうねるようなトドマツとブナの樹海、幾筋もの深い切れ込をみせる沢々・・・稜線を歩くだけでは見えない八幡平の立体的な全貌・・・それは最も深い谷底から山の頂に達すればこそ、得られることを実感した。人間の手によって管理された登山道から離れ、深い切れ込みの中に入った時、登山は無限の広がりを見せると言えるだろう。右手が岩手県葛根田川源流部、左手が秋田県大深沢源流部だ。
 寒さと小鳥たちの囀りで、朝4時前に目が覚めてしまった。テントを出て温度計を覗くと、何と5度。標高1000mの朝はやっぱり寒い。快晴を予感させる冷え込みだった。暇をもてあまし、デジカメを持って右の沢へ。積み重なった岩の間を二条の飛瀑が流れ、右下はナメの岩盤を清冽な水が走る。静寂を破る水の音、頭上の樹幹からは、煩いほど鳥の鳴き声が降り注ぐ。
 右の沢も美しいナメ滝が連続、赤茶けた岩を白く染め抜いて落走する飛瀑、その淵尻から岩魚が元気に走った。思わずニヤリ・・・。右の岩場には、朝露に濡れたダイモンジソウ、イワブキ、フキ・・・朝靄に包まれた滝上は、黒く尖がったアオモリトドマツの森が神秘的な雰囲気を醸し出している。
オオバミゾホオズキ・・・湧水が滴り落ちる岩の斜面に、イワブキとともに咲いていた。一般に、やや日陰の湧水地、滝のまわり、沢のヘリなどに生える。  ヤチスゲ・・・関東沢源流の水辺を彩るヤチスゲの美しさに思わずシャッターを切った。湧水が滴る岩場の斜面にもたくさん群生していた。
 今日は長旅だ。早めに朝食を済ませ、テン場を急いで片付ける。朝7時40分、二又を出発。ナメの渓を快適に歩き、稜線を目指す。
 水量はあっと言う間に細くなり、わずか1時間ほどで湿原に達する。猛烈な笹薮を予想していたが、拍子抜けするほど簡単に稜線に出た。
 八瀬森湿原を彩るお花畑、ここで俄か撮影会開始。ところが・・・沢を詰める所で浮いた石に足をとられ、首にぶら下げていたデジカメに水しぶきを浴びせてしまった。それがために、レンズが曇り高山植物の美しい写真が撮れなかったのは残念、無念だった。その後縦走途中で乾いたが・・・。
 ミツガシワ・・・白色の花冠はジョウゴ状に深く切れ込み、内側に白毛が生えている。沼や池の水辺に生える。  ワタスゲ・・・高山の湿原に生える。池の周りのミズゴケ類の群落の中に集まって生えることが多い。
ミヤマカラマツ・・・繊細に美しく咲く小さな白花は、多数のおしべが集まったもの。湿った草地に生え、葉は卵形で鋸葉がある。  ハクサンチドリ・・・雪崩草原や雪田周辺、ダケカンバ林の下に生えるラン。
 ツバメオモト・・・光沢のある大きな葉、上部に可憐な白花を咲かせる。白色の花をツバメが飛ぶ姿に例え、オモトに似た葉をもつことからツバメオモトと名づけられた。大きな葉を維持するには、完全に密閉された針葉樹林では苦しく、やや明るい湿りぎみのところによく生える。白神のブナ帯上部でもよく見かける。
 ゴゼンタチバナ・・・登山道脇に咲いていた。葉の中心から4枚の白花を咲かせる。  八瀬森山荘。二階建てで、その立派な山荘に驚いた。フトンや毛布、鍋、釜まであるではないか。一度泊まってみたい山荘だ。
 登山道沿いに群生していたイワイチョウ・・・白い花は7月初め頃、葉がイチョウの葉に似ている。イワがつくが岩場には生えず、多雪地帯の湿原や雪田周辺に生える。
 コルの湿地帯は、ミズバショウの群落の中を縫うように登山道が続いている。
 次第にアオモリトドマツ林からブナの森へ。やっぱりブナの森は明るく、分厚い落ち葉の感触が何とも言えず心地よい。
 曲崎山1334mの頂上をめざす。重いザックが肩に食い込む。噴出す汗、なかなか先の一歩が出ない。苦しい・・・耐え切れず後ろを振り返ると、その苦しさが吹っ飛ぶような八幡平源流部の山並みが眼前に広がった。
 曲崎山の頂上に達すれば360度のパノラマを見ながら昼食ができると、ひたすら頂上をめざしたが、何とトドマツや笹竹で埋め尽くされ何も見えなかった。これには全員ガックリ!
 密生した笹薮を刈り払った登山道を下る。また眼前にブナの広葉樹に埋め尽くされた山並みが見えてきた。ダケカンバの若葉の色鮮やかな緑が印象的だった。目指すは、右手の小和瀬川源流スズノマタ沢だ。
 曲崎山と大沢森との鞍部、ブナの森に覆われた標高1085mからスズノマタ沢源流へ。ここから一気に落差550m下って車止めをめざす。転げ落ちそうな沢を下る。途中困難な滝はなく、ザイルを使って下降した滝は1箇所だけだった。ちょっと拍子抜け、というより時間もなかったのでラッキーだった。
 スズノマタ沢下降の終わりを告げるナメ滝。大深沢の名瀑・ナイヤガラの滝より規模は小さいが、4日間に及ぶ源流の山旅にフィナーレを告げるにふさわしい滝だった。ミニナイヤガラとでも命名しておこう。
 透き通るような流れのナメを快適に下り、車止めに着いたのが午後5時半。10時間に及ぶ山旅は、全員ヨレヨレだったが、山を歩き抜いた満足感が全身に漲っていた。本当によく歩いた。本当に・・・。
おまけ:北海道・健ちゃんが釣り上げた大岩魚
 4日間の山旅から帰ると、北海道の健ちゃんから「自慢します」とのメールが入っていた。いつも通っている渓で釣り上げたという47センチの大岩魚の写真が2枚。山旅の興奮が覚めやらぬうちに、こんな大岩魚を見せ付けられるとは・・・それにしても、釣り上げてから逃げられまいと格闘したのか、砂だらけの大岩魚、ズシリと重そうな魚体を手にもつ顔がややひきつりぎみだが、いい顔してるよ。まずは心からおめでとうの賛辞を送りたい。早く行きたや、北海道!・・・八幡平・源流の山旅のページを作成していても、心は既に北海道に飛んでいる私でありました。健ちゃん、今年も行くぞ!ヒグマが闊歩する源流へ。そろそろルアーの準備もしなきゃ・・・ああ忙しい、忙しい。
健ちゃんの臨場感溢れるコメントもお読みください。

 いつも7月初旬によい釣果をあげているこの沢へ6月17日(月)に友人と2人で向かいました。
 沢の水は今年の雪不足からでしょうか、流れが無いのではないかと思うほど渇水でした。
 入渓してすぐ私の竿にあたりがきました。結構いいサイズです。しかし、いつものとおり40センチにはとどかないと思いましたが、それはジャスト40センチでした。それから、「沢山釣れるときは大物が来ないよね」などとお互いを元気づけながら期待を胸に遡行しましたが、いつもよりも魚影が薄く渇水だから駄目なのかな?っと思ったそのときです。

 なんでもない浅い流れの中にキャストしたスピナーに大イワナが追いかけてきました。「食らいつけ」と思ったそのとき無我夢中であわせました。なんと重い魚でしょう。竿のしなりに関係なく、姿は見えますがまったくこちらに寄って来ません。思わず「なんだこりゃ!でっけー」と叫んでしまいました。

 そんな異常に興奮した私を見て、タモを持って友人が「焦ってあげるな」を連発して駆け寄ってきました。次第に大イワナは力尽き私に寄って来ました。しかし、友人の持参したオシャレな渓流用タモは、大イワナに対しあまりに小さく、何度も失敗を繰り返しやっとのことで入りました。

 2人とも海ならともかく渓流でこんなに大きなイワナは見たことが無く喜びよりも驚きが大きかったです。思わず中村会長の「夢を釣った男」という写真と言葉を思い出しました。最近あまり大物に執着していなかった私でしたが、さすがに感動しましたよ。

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