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パート2:ヤセノ沢下降〜大深沢本流〜関東沢C2
 二日目は、これ以上ない快晴に恵まれ、大深沢源流の沢旅を満喫・・・というよりも歩き過ぎて、関東沢を遡行する頃には、体力の限界に達し、足元がフラフラだった。

 人間は大人になると、子供の頃抱いた未知への好奇心、冒険心が隠れてしまいがちだが、その本能を再び呼び起こしてくれるもの、それが日本独自の登山形態・沢登りではないだろうか。写真は、ヤセノ沢合流点から数えて大深沢本流に懸かるF3の滝。
 ヤセノ沢源流部のナメ滝。清冽な水が岩盤を滑り落ちるさまは、いつみても心が洗われるような気持ちになる。美しく、気分も爽快になるが、意外と滑りやすいので注意が必要だ。
 いよいよヤセノ沢を下る。いきなり、右下の淵で尺岩魚が見えたと大騒ぎしているところ。岩魚が群れる渓を歩くのは実に楽しいものだ。もしこの渓に岩魚が生息していなかったら、魅力は半減どころか、歩く気も起こらないだろう。
 相変わらずナメ滝が続く。一枚の岩盤は、意外と滑りやすい。特に重い荷を背負っている時は、バランスを崩しやすく三点確保を忘れず慎重に下ることが肝要だ。
 冷気が漂うSB。雫がポタポタ落ちる真っ暗なSB内に、ポッカリ開いたような楕円形の穴がオモシロイ。6月ともなれば、こうした光景は高山帯の源流部でしかお目にかかれない。それだけにこうした場所に出会えば、入ってみたくなるのも当然か・・・。
 二段のナメ滝に巨大な風倒木が突き刺さっている。滝の轟音を聞きながら倒木を跨ぎ、上を見上げれば、緑の樹幹から澄み切った青空が見える。日本独自の渓谷美、原始性、生き物のごとく躍動する飛瀑、水と緑滴る四囲の景観・・・こんな日本独自の渓谷美を鑑賞しながら歩く沢登りや狩猟、山菜・キノコ採り、源流の岩魚釣りが盛んになるのも当たり前のことといえるだろう。
 澄んだ水辺に遊ぶサンショウウオ。こんな獲物も岩魚は一飲みにしてしまう。かつて、魚止めの滝壺で釣り上げた尺岩魚の腹部を見て驚いたことがある。岩魚の腹が異様に膨らみ、まるで蛇が動き回るようにビクビク動いていた。お腹を裂いたら、何と7匹ものサンショウウオが出てきた。過酷な源流に生きる岩魚の獰猛さに驚嘆させられた思い出が蘇った。
 ナメ滝を三点確保で慎重に下る中村会長。  倒木に生えたサワモダシ(ナラタケモドキ)。タケノコ汁に入れると絶品。
 標高825m左岸から流入する滝ノ沢。急なゴーロの階段を少し進むと、総落差100mもあろうと思われる見事な滝が眼前に迫る。旅人を拒絶するかのように屹立する岸壁、天上から降り注ぐ巨大な瀑布・・・まさに「滝ノ沢」を象徴する滝だ。
 青空と緑、流れる白雲、左岸に落ち葉を被った残雪、清冽な流れ、暑い陽射しを全身に浴びて下る。渓は開け、まもなく大深沢本流だ。
 大深沢本流のゴルジュ帯・・・ヤセノ沢合流点からF1の滝までゴルジュが続く。増水すれば遡行は困難を極める。右の写真は、まるで石切り場のように縦横に柱状摂理が発達した岩場。川の流れは、見た目より意外に太い。油断禁物。このゴルジュ帯には、一箇所だけ危険箇所がある。その圧縮された滑り岩には、ボルトを打ち込んだ残骸が残っていた。幸い、残置ザイルがあったので難なく通過。
 F1の滝と連続しているF2のナメ滝。水量、規模ともに大きく、巨大なシャワーにいつも心が洗われる滝だ。勝手に「洗礼の滝」と命名している。明る過ぎてスローシャッターが切れなかったのが残念!
 トトロのようなオモシロイ形をした大岩。F1、F2の滝を撮るべく、わざわざトトロ岩の天辺に登って撮影する中村会長。沢をただ歩くだけでなく、デジタルビデオやデジカメで水の造形美をじっくり撮影しながら歩くのも楽しいものだ。
 ゴルジュの終わりを告げるF3の滝。滝の上に立って沢を俯瞰すれば、山の頂に立ったような爽快感に浸れる。飛び散る飛瀑が物凄く、正面に立てばカメラが使い物にならなくなるほど凄まじい。ここを抜けると渓は一気に開け、嫌なガレ場が連続する。
 これが地獄のガレ場。石がグラつかず安定していれば、その上に上がっても安全スピーディに歩けるが、ガレの浮石に上がると簡単にバランスを崩してしまう。重い荷を背負っていれば、足首を痛める危険も大きい。特に暑い夏場は、延々と続くガレの浮石に何度もバランスを崩したり、照り付ける太陽にジリジリと体力を奪われるので侮ってはいけない。
 ガレ場を遡行中、渓酔会のメンバーとバッタリ出会う。テン場は、ヤセノ沢合流点下流の右岸に構え、関東沢まで釣り上ったという。どの岩魚も虫を腹一杯食べて丸々太っていたとのこと。昨夜、合流する予定だったが、残念ながら本流まで歩く時間と体力がなかった。スミマセン!

 左から中村勇市渓酔会会長、中村二朗会長、工藤、菅原(手前下)、七尾、柴田(手前下)、阿部、高橋(手前下)、長谷川 計9名で記念撮影。今度こそ焚き火を囲み一緒に酒を飲もうぜ!
 障子倉沢出合。ここでやっと長いガレ場が終わりを告げる。  障子倉沢出合上流に懸かるF4ナメ滝。
 昔の面影がなくなった関東沢出合、標高898m。かつては、左手高台がテン場であったが、右手から流入する関東沢に押し流されて、すっかり渓相が変わってしまった。  関東沢F1二条の滝。ほとんど限界にきていたが、どうしても上二又にテン場を構えないと、最終日に車止めまで辿り着くのは無理だった。予定時刻はとうに過ぎていたが懸命に歩く。
 F1の滝は右岸を高巻く。この滝を高巻くと、かつては大きな流木橋があったが、過ぎた歳月は長く跡形もなくなっていた。
 やっと辿り着いた関東沢二又、標高1010m地点。時計はすでに午後6時を過ぎていた。2名は今晩の岩魚調達、残る3名は、テントとブルーシートを張り、焚き火用の流木を集める。
 久々に岩魚の刺身をツマミに酒を飲む。ここから上流は、秋田最標高の岩魚が生息する関東沢源流部だ。ここで竿を出さなければ、沢屋と何ら変わらない。我々は、釣り屋の看板を掲げる限り、明日は、一日ゆっくり釣りを楽しみながら源流部を探索する予定だ。満天の星空の下、燃え盛る焚き火を囲む。こうなればまず、熱燗をコップに注ぎ乾杯。15年ほど前、後生掛温泉から大深沢に降り立ち、本流を遡行、群れる岩魚に感激した岩魚釣り、仮戸沢を詰めて八幡平稜線に躍り出た懐かしの源流行や白神、和賀、日高の谷々の想い出話・・・が延々と続いた。すっかり酩酊してシュラフに潜ったが、間髪いれずに大イビキをかいて眠ったらしい。当の本人は全く心当たりがないのだが・・・。

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