EXAMINATION

Questionをしていて、そのAnswerとしてのArgumentが出てきても、そのArgumentに疑問点が残る場合があります。その疑問点を明らかにし、理解するのがExaminationです。ここでは、基本的なExaminationとExaminationによって不整合となったArgumentを整合させるPoint Opinion, Different Opinionについてみてみます。

CRITIC

 相手のArgumentのlogicの三角形が成り立っているか、誤った推論などがないか(Fallacy-虚構)の検討です。具体的には、Dataは正しいか、Warrantは成立しているかを調べて、それによってClaimが正しいかどうかをみていくのです。以下にData, WarrantのCriticの仕方のヒントについて書いておきます。

(1)Data

 DataのCheckは2段階あります。まずそのDataが本当に存在するのか、という点です。次に、DataがArgumentのなかでWarrantやClaimに対応しているかという点を調べなければなりません。

a)Reasoning
 Dataに結論のみで理由が示されてないということはないでしょうか。
例)

 この例では、たとえData-Warrant-Claimのつながりに矛盾がなくても、Dataに理由が示されていないため、本当に今年度末から自動車産業が不景気に向かうのか、という点で疑問がのこります。これは特にAuthorityのDataを用いた場合に、例えばM大学のM教授がこのようにいっているからというときには、「何故その教授はそういっているのか」が問題になります。DataのData, Warrantも重要になってきます。

b)Specification
 Dataが一般的なことをいっているだけで、そのClaimをSupportしていない、ということはないでしょうか。
例)

 この場合はClaimが外国のB校との比較ならまだしも(その場合A校が日本の典型的な小学校であるというのは前提である)日本国内においての比較ならばこのData, WarrantではArgumentは成り立たないというのが分かります。

c)Qualification
 Dataは事実のみを示しClaimを支える判断基準には言及していないということはないでしょうか。
例)

 この例では、Dataは客観的にClaimの価値観(=主婦が職業を持つことの是非)には全く触れていません。WarrantとClaimの間に「家族が家事を分担するのは良くない、家事は主婦が一人でやるものである」という主観が入っているのです。これでは全ての人が納得してくれるかは疑問でしょう。

d)Methodology (Biased Sampling)
 Dataの入手方法が不適切だということです。
例)

 Opinion pollなり統計なりのサンプルがat randomに抽出されたものであれば問題は少ないのですが、調査の対象が偏っている場合(共産党員を対象として日本人全員の代表とする、など)には問題があるでしょう。前にEvidence (資料) を整理するときに、アンケート調査などの場合は調査対象(どういう人を何人調査したかという母集団)と調査方法(どのように行ったか)を書いた方がいいといったのは、このようなことも後でチェック出来るようにするためです。

(2)Warrant
  "Warrant" の所であげた"Motivational Warrant", "Authoritative Warrant" etc...... といった各要素が成り立っているかどうかについてチェックしてみましょう。


SUPPORT

 Debateのようにただ相手のArgumentをCriticして潰すだけではDiscussionは先に進むことが出来なくなり、建設的な議論を進めることは難しくなってしまいます。ただCriticすることだけがExaminationにおいてParticipantsに求められていることではありません。ここでは、Criticによって崩れたArgumentを立て直すためのPoint Opinionと、Different Opinionについて紹介します。

(1)Point Opinion

 Claim至るまでのData, Warrantに欠陥があって、Claimが成り立たない場合に新しいData, Warrantを提示してそれを補い、Criticによって崩れた3角形を立て直す行為です。以下に4つのpoint opinionをLogicの三角形を使って説明します。

A)異なったDataとWarrantを用いる場合。
例)

 米の種類は中粒米であっても、味と値段が消費者のニーズに応えてなければダメだといわれたときに、それを提示してClaimを成り立たせる場合です。

B)異なったDataを用いる場合
 例)

 30%の人がやめろといっているだけでは支持する人もかなりいて、退陣の必要はないとCriticされた場合に、ここにあるもっと新しい調査では80%もの人が退陣要求しているといったDataを示してClaimを成り立たせようとするときです。

C)異なったWarrantを用いる場合
 例)

 タバコのためだったら例え癌になってもしかたないという人がいた場合、自分が良くても家族は納得しないと新しいWarrantを提示して、タバコを吸うべきでないというClaimを成り立たせる場合です。

D)相手のDataまたはWarrantを支える場合
例)

 これは自動車産業はこれから不景気に向かうということの根拠が示されていなく、Dataの信用性に疑問がでたときに、そのDataを支える新たなData, Warrantを示した例です。

(2)Different Opinion

 これは既に出されているClaim, Logicの三角形は成立しているけど、自分の持っているArgumentの方がより説得力があるとして、それを提示することです。これは既に出ているArgumentを否定するものでなく、既出のArgumentと並立可能なものです。
例)

 上の図では、A国の暮らしは大変だというClaimを成り立たせるのに、A国民の多くがその政権を支持していないからだというArgumentに加えて、A国民は常に無差別テロの恐怖にさらされているからという新しいArgumentを提示した例です。

 ここまで読んできて、「Logicって難しいなあ。何でこんなのあるの?」と思っている人はいませんか? 大したことはありません。Logicとは「わかりやすく」がキーワード。例えば、自分の考えていることを伝えようと思ったとき、独り善がりな意見では、他の人に理解し難く、耳を貸してもらえないかもしれません。そんなとき、自分の意見を、普通に、自然に受け入れてもらえるようにしなくてはいけませんね。その工夫のヒントがLogicの中に隠されています。あまり難しく悩まなくても、普段から他の人に自分に意見を理解してもらい易いようにと努力してれば、自然と身に付いてくるでしょう。

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