第1章 ディスカッションてなに?

1)Definition of Discussion

 私たち大学生を含め、およそ全ての人々が社会の中で「話し合い」ということをしながら生活しています。話し合うことなしでの生活というのは想像できません。「話し合い」といってもその範囲はきわめて広く、私たち大学生が喫茶店で交わしている会話から、各国の首脳が世界の安全保障について意見を交換しているものまで、様々あります。
 この様々な「話し合い」の中で共通していえることは、「複数の人間がある共通した話題に関して何かしらの目的を持って"Communication"している」ということがあります。広義でのDiscussionの定義はこのへんに見いだすことが出来るでしょう。

2)Definition of Policy Determining Discussion

 上記の説明だけでは、今私たちが行っているディスカッションというのが、どのような位置づけになるか分からないという人も多いと思うので、もう少しここでDiscussionというものがどのようなものであるのかみていきましょう。
 Discussionの種類をその話題の種類で分類すると、以下の3つに分類できます。

A)Fact Discussion

 これはそのことが事実(fact)であるかどうか、ある事実の真意を話し合うものです。例えば、「UFOは存在するかどうか」「日本の貿易黒字は続くかどうか」といったようなことがそれに当たります。ただ、ここでは、日本の貿易黒字を減らす為にこうしようといった政策・計画を話し合うのではなく、ただあるかないか、続くか終わるか、嘘か本当かといったことのみについて話し合うDiscussionです。

B)Value Discussion

 これは価値観を扱うものです。例を挙げれば、「愛とは何か」「ドラえもんの映画は面白いかどうか」「学食で一番おいしいメニューは何か」というようなのがあります。

C)Policy Discussion

 これは行動の方針、計画、政策を話し合うものです。例えば、「TDFはみんなにディスカッションを理解してもらうためにどうするか」「今度の合宿はどこにいこうか」「景気の回復のためにどのような方策を採るか」といったような話がこれに含まれます。これを前のValue DiscussionやFact Discussionと比べてみると、Policy Discussionは、例えば「日本の貿易黒字を減らす為にこうしよう」といった話し合いにおいて、「日本の貿易黒字は続くかどうか」というFactの要素と貿易黒字は良いものなのか否かというValue的な要素両方が含まれてきます。

 また、Discussionをその目的によって分類すると、以下の2つに分類できます。

あ)Enlightenment Discussion

 これはある話題に関して、参加者が互いに意見・情報などを交換しあい、様々な意見に触れることによって自己を啓発したり、各自の生活に生かしたりするディスカッションのことです。このEnlightenment Discussionの特徴はあくまで意見の交換にとどまり、統一的見解を求めるものではありません。現在大学のESSで行われている多くのValue Discussionがこのタイプで、またAfter Reading (Movie) Discussionの多くもこの領域に含まれます。

い)Decision Making Discussion

 これはある話題に関する参加者全員の意見から、統一的見解を導き出すことを目的としたディスカッションです。当初参加者それぞれで異なっていた意見・見解を相互に分析・比較して相手を説得して、最終的に全参加者が合意できる結論を導き出します。

 以上を表にまとめてみると次のようになります。
Enlightenment DiscussionDecision Making Discussion
Value DiscussionValue Enlightenment DiscussionValue Determining Discussion
Policy DiscussionPolicy Enlightenment DiscussionPolicy Determining Discussion
Fact DiscussionFact Enlightenment DiscussionFact Determining Discussion

 みなさんは、P.D.D.あるいはPolicy Determining Discussionという言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、Decision Making Discussionの中でPolicyについて話し合うものをP.D.D.と呼び、これが今TDFやその他多くのESS・ESAで行われているディスカッションの種類です。

3)なぜ、PDDか? 〜Significance of P.D.D.〜

 それでは、なぜTDFではPDDを行うのでしょうか? 今年度TDFでは、下記のような目標を掲げています。

 1996年度T.D.F.の目標
*英語力の向上;読み、書き、聞き、話す能力(相手の言いたいことを理解し、自分の言いたいことを理解してもらうコミュニケーションの為に必要な能力)

*議論をするために必要な能力の向上;

 ※議論をするために必要な能力
  →*議事進行能力(目標に向かって、話を円滑に進める能力)
  →*論理的思考力(自分の言いたいことを、筋道立てて考える力)
  →*説得力(自分の考えを理解してもらう力)
  →*多様な意見に対応できる柔軟な思考力
  →*Titleに関する知識・教養

 PDDにおいては、Titleに関する答え(=話し合いの結論)を出さなくてはなりません。限られた時間の中で話し合いの結論を出すためにはDiscussionのTableにおいてそれを導き出すことが出来るだけの「議論をするために必要な能力」というものが必要になってきます。またその議論を英語で行うということは、相手に自分のいいたいことを分かってもらい、また相手のいうことを理解できるための英語力が自ずから要求されてきます。

4)ディスカッションの形式(Styleについて)

 上記にあげたのはディスカッションの目的・議題の内容に関しての分類でしたが、ディスカッションの形式(=Style・どのようにしてディスカッションを行うか)ということに関してみてみると、現在のESS・ESAで行われているディスカッションのStyleは次のように分類できます。

(A)Formal Style

 "Order"を使用して、Chairpersonの許可を得てから発言するタイプのディスカッション。"Order"を用いることによる不自然さは否定できません。しかし、Chairpersonがテーブル内での話し合いの混乱も防いでくれるので、話し合いの流れもつかみやすくなります。

(B)Informal Style

 Formal Styleとは逆に、"Order"を使用しないで、Chairpersonもいないといった形式のディスカッション。"Order"を使用しないので、自然な会話に近い形でディスカッションをすることができますが、参加者が話し合いを上手にまとめていかなければいけないので、英語力が不足していたり、発言の要領を得なかったりしていると、話し合いに混乱をきたしてしまう可能性もあります。

(C)New Style

 Orderは用いないがChairpersonはいる。但しテーブルは参加者のみによって進められます(Chairpersonはテーブルが混乱したとき以外は介入しない)。Informal StyleでChairpersonがいる状態だと思ってください。

 TDFの大会では、主にInformal Style(大会によってはNew Style)で、ディスカッションを行っています。
 Formal StyleでのDiscussionの数は、ここ数年でかなり減ってきていますが、FormalでのOrderの概念は大切かつ役に立つものなので、ぜひとも学んでおくことをお勧めします。

何を話し合うの?〜タイトルについて

 現在、全国のESS・ESAのPDDの活動においては、1つの全国統一Titleというものが年に2回決定されています。TDFの大会もこの全国タイトルに基づいて話し合いを行います。
 このタイトルは「日本政府」が主体となることがほとんどですが、なぜそうなるかというと日本が皆が共通に持っている最小限の主体であり、政府は、その日本国内の問題解決において、最大の効力を持つ機関であると考えるからです。
 TDFもこの全国タイトルを決めるときの話し合いに参加しています。何かいいアイデアがあったら、チーフの人に言ってみるといいかもしれません。

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