第3章 LOGICAL STRUCTURE

Definition of logic
 話し合いにおいて、自分の意見・考えを他の人に受け入れてもらったり、納得してもらうためには自分の意見を相手に理解してもらえやすいように説明する必要があります。このとき自分の意見を客観的に筋道の通った説明で伝えることが出来れば、相手も納得しやすいでしょう。Logicとはこの「客観的に筋道を通して組み立てられた論理(Argument) です。この章ではArgumentをテーブルに引き出すきっかけとなるQuestion, そのArgumentの構造であるArgumentation, Tableに出されたArgumentが客観的に筋道の通ったものであるかを調べるExaminationと、logicの構造を理解するのに有効な「Logicの三角形」(Toulmin's Model)についてみていきましょう。

Question

Definition of Question
Questionとは疑問な点や不明な点があり、それを問いただして何らかの形で回答・結論や見解を要求するものです。効率的な、Tableの流れを混乱させないDiscussionを行うためには以下の点に注意してQuestionを提示することが望まれます。

1)Simplicity;
 Questionは単純明快でなければなりません。曖昧なQuestionや複雑なQuestionは、論点を不明確にして、曖昧なAnswerや複雑なAnswerを呼ぶだけで、問題点を引き出すAnswerを引き出すことは出来ません。例えば「日本政府は今何をすべきか」と聞かれただけでは、何について答えればいいのかはっきりしませんね。こんな時はまずQuestionを絞り込んで具体的かつ単純なものにする必要があります。また1つのQuestionに2つのQuestionが含まれているもの(Double-Question) もConfusionのもとになるので、注意しましょう。

B)Objectivity
 QuestionはTableにおいて、客観性を持つことが望まれます。これは自分の主張・主観を混ぜたQuestionをするとConfusionの原因になることがあるということです。例えば、「政府はどのようにして不法就労者を助けようか」というQuestionは、不法就労者を助けるかどうかという話し合いがなされる前であればあくまでも主観的なQuestionであってQuestionそのものが正当であるか疑わしいものです。

Types of Question
 Questionの種類は大きく、A, Question of Fact B, Question of Value C, Question of Policyの3つに分けることが出来ます。

A, Question of Fact; ある物事の真偽(Fact)、推定、定義など、客観的事実を問うものです。例えば「火星に生物はいるか」「貿易黒字はどれくらいか」等

B, Question of Value;
 ある物事、態度、状況などの良否等、人の価値観(Value)すなわち主観的事項を問うものです。「サークルと授業どちらが大切か」「浪費は悪か」など

C, Question of Policy;
 どのような行動、方策(Policy)をとるべきか問うものです。前の2つの要素を必然的に内包します。なぜなら、行動は客観的事実を価値観に基づいて考慮した上で決定されるからです。例えば、「外国人労働者を認めるべきかどうか」「どのように予算を使うか」など。


Argumentation

Definition of Argumentation
 ArgumentationとはArgumentの論理的な組立です。Argumentは、(1)CLAIM=述べようとする結論 (Conclusion)、(2)DATA=Claimの根拠となる資料・情報、(3)WARRANT=ClaimとDataを結ぶ立証過程 (Reasoning)、の3つの要素から基本的に成り立っています。
 このようなArgumentの構造を「Logicの三角形」(Toulmin's Model)といいます。
Logicの三角形

 それでは、このLogicの三角形が実際のArgumentにどのように当てはまるのかみてみましょう。
EXAMPLE 1

『Logicの三角形』とは、上の図で分かるように、ある主張が何らかの理由付けで立証されていることであり、どんなLogicもCLAIM, WARRANT, DATAという必要不可欠な要素を含んでいるものです。もしWARRANT, DATAのどちらかでも欠けるとそのCLAIMは証明しきれません。そこで、DATAは誰にでも受け入れられるもの、あるいは、しっかりとした証拠が要求され、WARRANTもみんなが納得できるように説明しなければならないのです。

もう一例をみてみましょう
EXAMPLE 2

 上記の例では、TDFの大会が為になるというCLAIMのWARRANTが、阿部さんは元TDFの委員長でTDFの委員長だった人は皆正直だ、という理由付けによって成り立っているということが分かります。ここでもし「TDFの委員長だった人でも正直でない人がいる=TDFの委員長だった人は皆正直とはいえない」ということになれば、TDFの大会はためになるという一番上にあるCLAIMは成り立たなくなり、みんなが納得できる別のWARRANTを提示する必要があります。

 次に、CLAIM, DATA, WARRANT, の各要素について個別にもう少し詳しくみていきましょう。

CLAIM

 Claimとは、提示されたQuestionに対するAnswerの結論部分です。よって、Questionの種類に対応してこれもまた3つに分けることが出来ます。

A. Claim of Fact (=Definitive Claim)
 真偽、推定、定義等に関するClaimです。例えば、「フロンはオゾン層を破壊している。」「老人とは65歳以上の人々のことである。」など。

B. Claim of Value (=Evaluative Claim)
 事物、態度、状況の良否等についてのClaimです。例えば「雪の降るのが好きである」「私の彼はやさしい」など。

C. Claim of Policy (=Adovocative Claim)
 行動、方策に関するClaimです。例えば「消費税は廃止すべきだ」「お年寄りには席を譲ろう」など。

DATA

 Dataとは、結論の根拠となるべき資料のことです。資料の内容、状態によって以下のように分類します。

A、資料の内容による分類

(1)Factual Example (事実)
  過去・現在の、又は将来確実に起こるであろう事実
  例)去年、地下鉄の駅でサリンがばらまかれた。

(2)Statistics (統計)
  政府などによる調査結果の統計
  例)日本人の年間平均総労働時間は、1998時間である。

(3)Opinion Poll(世論調査)
  世論調査やアンケートの結果
  日本人の7割が仕事による疲労を感じている。

(4)Experimental Data (実験結果)
  例)合成着色料には発ガン性があることが分かった。

(5)Expert Opinion (専門家の意見)
  例)国立衛生予防研究所によると、今年流行するインフルエンザはソ連型である。

B、資料の状態による分類

(1)Fact
 文献から機械的に収集できる資料で、いわゆるEvidenceと呼ばれているものです。収集に当たっては前出の「Evidence Cardの作成〜」を参考にDataに忠実に出所を明記するように心がけましょう。

(2)Common Sense
 なんら客観的資料が提示されていなくても、TableのParticipantsが皆共通に、疑いなく納得できると判断した事柄です。主観的であるので、その真偽に疑問が生じた時には(1)のFactよりも客観性においては劣るといえます。

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