(1) 余命宣告の日…忘れられない大ショック
1995年10月、すごく天気のよい日でした。病院で2週間前に受けた精密検査の結果が出る日でした。 すでに先生から、がんかもしれないと聞かされていましたけれど、検査してステージがAかBなら治るし、手術してとればいいから、とも言われていて、私もその気になっていました。そしたら先生が「伊藤さん、入院しなくていいから」と言うのです。 それを聞いてすごくうれしくて、よかった! がんじゃなくて、と大喜びしました。ところが、「入院しなくてもいいと言ったのは、検査の結果、腰にも、骨髄にも、肝臓にも転移しているから、手術も抗がん剤治療も放射線治療も意味がないということなんです」と説明されたのです。「治る薬はないけれど、一時押さえる薬があります。女性ホルモンを打てば半年か一年は持つでしょうし、効かなければあと三ヶ月くらいになるかもしれません」と話をしてくれました。
もうすごい大ショック、頭の中が真っ白になり、困った、どうしようかと思いました。でも次の患者さんが待っていることもあり、これからのことも相談できずに病院をあとにしました。その時の精神的ショックは、10年半経った今でも忘れることができません。