まえがき
 タイトルを、最初は『このサイトができるまで』ではなく、『ファンサイトのつくり方』にしようと思っていた。作家なりスポーツ選手なり、自分が深く敬愛している人物のファンサイトをこれからつくろうとしている人を指南できるようなものを書くつもりだったのだ。著作権の侵害には細心の注意を払おうとか、ファンとしての領分をわきまえようといったことの具体例を列記し、そういうことを守ることで、敬愛している対象者からも信頼されるようなファンサイトを運営しようと促すつもりだった。
 だが考えてみたら、著作権の侵害とひとことでいっても、ぼく自身が法に明るくないし、ファンとしての領分をちゃんとわきまえているのかどうかも分らない。
 それで最初の目論見はあきらめ、自分の体験談を自由に書くことにしてこのタイトルに決めた。地味ながらも大過なく十年続いたサイトなので、その経緯を記しておくのも無駄ではないだろう。
 そういうわけで、この体験談がこれからファンサイトをつくろうとしている人の参考になるかどうかは分らない。これは謙遜でも何でもない。色々なファンサイトを拝見したが、みなさん楽しくつくられていて、なるほどなあと感心してしまうサイトはめずらしくない。反対に、このサイトほど地味なものはあまり見かけない。
 だがぼくの場合、地味だからこそ続けられたと断言できる。テクニックを駆使し、複雑につくり込んだサイトにしてしまっていたら、ぼく一人が運営しているこのサイトでは更新頻度がずいぶん低くなったはずだ。いくら好きでやっていることとはいえ、仕事が忙しいときにはそれどころではなくなり、二カ月も三カ月もほったらかしということもあっただろう。そうならずに済んだのは、シンプルなために更新が楽だったからにほかならない。情報一つを追加するのにあっちこっちいじらなきゃならなかったらこうはいかなかった。
 これは、そういうサイトの記録である。
 本当は、昨年八月にサイト開設十周年を自分で勝手に記念して書くつもりだったが、仕事が忙しかったり引っ越しがあったりで大幅に遅れてしまった。
2009年5月 ヒサ