タグラン・ラ峠を越えたすぐのギャー村で結婚式に出会った。母親は嗚咽をもらし、娘はあらん限りの声をあげて泣き叫ぶ。そんなに悲しいのなら・・・。とも思ってしまうが、こちらでは結婚式のたびにこの光景がくりかえされるそうだ。本当の心と儀礼の部分とが重なる。分かっていても、あついものがこみ上げてきてしまう。
タグラン・ラ峠(標高5366m)近くに立つタルチョ チベット文字で書かれた経文は風にはためき、来世に込められた人々の願いを天へと運ぶ。
高地山岳乾燥気候に入り、木一本まったくない山肌は激しい天候にさらされ、日々その姿を変えていく。4000mを越え、高山病に悩まされる私に「あそぼ!あそぼ!」と子供たちが駆けてくる。くやしいことに笑顔がでない。赤血球が増えるのをひたすら待とう。
乾ききった山をいくつも越える。突然目前に広がる緑の絨毯。駆け回る白馬。ここだけに授けられたシャングリラ。ここからザンスカールに入る。
ドゥルンドゥルン氷河6000m級の山々に源を発し、何千年もの時をかけて谷を下る。ペンシラ峠(標高4400m)の麓にその雄大な姿を見せる。