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マリリン・モンローがメジャーになる直前に出演した映画であり、それ故勿論モンロちゃん用にあつらえられた映画ではありません。昨今、モンロちゃんが出演している初期の映画のいくつかは、彼女が主演しているわけでもないにも関わらず何やらモンロー映画でもあるか或いは少なくともそう思えてしまうように宣伝されているケースがあるようですが（さすがに「イヴの総て」（１９５０）のような他のビッグタレントが関与した作品をモンロちゃんの映画であるとは誰も言わないであろうことは確かですが）、これはその映画にとってはあまり良いこととは思えないところです。別にこれはモンロちゃんがどうのこうのということではなくて（因みに会社にある私目のパソコンのログインユーザとパスワードは・・・と言いかけて、ゲゲゲ！ひょっとすると会社の誰かがこれを読んで「お前はセキュリティに関してどのように考えているのか」という類のお説教を食らう可能性があるなと思い直しました）、その映画の持つ本質が歪めて認識される可能性があるのでよろしくないわけです。このことはモンロちゃんに限った話ではなく、他のビッグスターが出演した初期の作品のいくつかにも当て嵌まることであり、ある特定の俳優さんが数年後にはビッグスターになったことから逆算して、その俳優さんがビッグスターになる以前の出演映画を、その映画にたまたま出演していた一人の俳優さんが持つビッグスターになった後のイメージによって染め上げることが良いことであるとはあまり思えないところです。この「We're Not Married」もそのような映画の１つであるように思われ、私目の買ったＤＶＤのパッケージ上にはでかでかとモンロちゃんのイメージが印刷されています（劇場未公開とはいえ国内でもひょっとするとモンロちゃんの知名度で既にＤＶＤで発売されているかな？）。しかしながら勿論この映画はモンロちゃんが主演ではないばかりではなく、ジンジャー・ロジャースのようなビッグスターやその他そこそこ知名度のある俳優さんが出演しているにも関わらず誰が主演でもない映画なのですね。すなわち、この映画は６つの一種のショートストーリーから構成される映画で、しかしながらその６つのショートストーリーは全てある一定の関連の中で語られるという点においてはオムニバス的な映画とはやや異なる形式を有する作品です。この形式の映画はホラー映画で多く見受けられこれまで私目がレビューした中では、「テラー博士の恐怖」（１９６５）、 「アサイラム」（１９７２）、「異界への扉」（１９７３）を挙げることが出来ます。個々バラバラに見える粋なショートストーリーが何らかのより広い共通のバックグラウンドの中で統合されるというような形式の映画が私目は結構好きで、ホラー映画ではありませんがこの作品も非常に見ていて楽しいものがあります。この作品の場合には、まだその権利を持っていない司祭が６組のカップルの結婚に立ち会ったということが後になって分かり、それぞれのカップルに対して彼らの結婚は合法的ではなかったという通達を出すことによりそれぞれのカップルがそれぞれの状況に応じてどのような反応をするかという点が共通のバックグラウンドになっています。すなわち音楽に譬えれば共通のバックグラウンドが主題ということになり、それぞれ６つのシチュエーションが主題の変奏であるということになるでしょう。すなわち音楽で言えば変奏曲形式の作品が映画ではこのタイプの作品に該当すると言えるかもしれません（因みに音楽の場合、私目は変奏曲形式の作品は実は好きではありませんが、映画の場合はこの点に関しては話が別であるのかそもそもこの比喩にもともと無理があるかのいずれかかでしょうね）。一般的に言えばこのようなタイプの作品では、それぞれのショートストーリー間で出来の差がどうしても出来てしまうものですが（前述した「テラー博士の恐怖」のような現在ではカルトクラシックと呼べる作品にもそのようなムラがあります）、この作品ではそのムラが小さくどれも小粋なストーリーになっているように思われます。しかし特に私目のお気に入りは、ザ・ザ・ガボール演ずる結婚詐欺とルイス・カルハーン演ずる人の良さそうな億万長者のショートストーリーで（画像参照）、これにはなかなか笑えます。モンロちゃんの登場するストーリーはまあそこそこというところで、どう贔屓目に見ても見栄えのしないデビッド・ウエイン（と言っても個人的には好きな俳優さんですが）がモンロちゃんの旦那であるとは俄かには信じがたく、まあそれによってもこの作品出演時にはモンロちゃんはその他大勢の中の一人であったのであろうなという推察が可能であると言えるでしょう。