異界への扉 ★☆☆
(Tales That Witness Madness)

1973 UK
監督:フレディ・フランシス
出演:ジャック・ホーキンス、ドナルド・プレザンス、キム・ノバクジョーン・コリンズ

左:コリンズが嫉妬する樹木、右:ジョーン・コリンズ

4つのエピソードを持つフレディ・フランシスお得意のオムニバスホラーファンタジーであり、精神病院が舞台である点においては、「アサイラム」(1972)と同工異曲の作品です。もしかすると、「異界への扉」同様イギリス映画で前年に公開された「アサイラム」が強く意識されているのかもしれません。というのは、「アサイラム」の最大の欠点であったラストシーン(これについては、「アサイラム」のレビューを参照して下さい)を解決せんとする意図が、それが本当に成功したか否かは別として、「異界への扉」には見られるからです。但し、それにもかかわらず「アサイラム」よりも「異界への扉」を低く評価せざるを得ないのは、こちらの方が後から製作された作品であり、オリジナリティが割引かれざるを得ないことを別としても2つの理由があります。1つは、「異界への扉」では4つのエピソードがあまりにもフラットに並べられている為、それら4エピソードを統合するマクロストーリーと4つのエピソード間の有機的な関連性があまり認められず、「アサイラム」のラストシーンの問題点を解消するはずの、分析医自身も妄想患者であったとする折角のラストも結局は有効に機能していないように思われるからです。これに対して、「アサイラム」が巧みであったのは、最終話のマッドサイエンティストに関するエピソードが、4つのエピソードを統合するマクロストーリーと密接に関連していた点にあり、単にフィニッシュの着地に失敗しただけなのです。もう1つの理由は、「異界への扉」の各エピソード間の出来には大きなバラツキがあり、第2話のピーター・マッケナリーが主演する祖父の遺した自転車に取憑かれる男に関するエピソードと、第3話のジョーン・コリンズが主演する旦那が持ち帰ってきた人間の形のようにも見える樹木に嫉妬する嫁さんに関するエピソードはなかなか面白いのに対し、第1話と第4話については個人的には全くイマイチな印象を受けます。「アサイラム」が4話ともなかなか興味深いのに比べると、こちらは残念ながら各エピソード間に質の面でムラが大きいと言わざるを得ません。とはいえ、個人的にはこのような形式のホラー映画は嫌いではなく、殊に監督がこの手のホラー映画を無闇矢鱈と得意にしているフレディ・フランシスであるだけに、もう少し工夫すればもっともっと面白い作品に仕上がっていたのではないかと少し残念に思う次第です。尚、第4話にはキム・ノバクが主演しており、70年代以後彼女の出演作はめっきりと減るので彼女のファンには貴重な作品かもしれません。


2001/12/09 by 雷小僧
(2008/11/20 revised by Hiroshi Iruma)
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