賭場荒らし ★☆☆
(Seven Thieves)

1960 US
監督:ヘンリー・ハサウエイ
出演:エドワード・G・ロビンソン、ロッド・スタイガー、ジョーン・コリンズ、イーライ・ウォラック

左から:エドワード・G・ロビンソン、ロッド・スタイガー、ジョーン・コリンズ
イーライ・ウォラック

今回は、60年代にエドワード・G・ロビンソンが出演した3本の泥棒映画を取り上げました。他の2本は、「盗みのプロ部隊」(1967)と「大泥棒」(1968)です。面白いことに、これら3本全ての中で、エドワード・G・ロビンソンは「プロフェッサー」と呼ばれています。いわば、泥棒のマスターマインド的存在を演じており、3本ともにプロフェッサーとして登場するのは単なる偶然ではないのでしょう。さて、「賭場荒らし」では、カジノ泥棒が描かれています。カジノを狙った泥棒もの映画と云えば、同年公開の「オーシャンと11人の仲間」(1960)が思い出されます。「オーシャンと11人の仲間」がシナトラファミリー総出演の派手な「ラットパック」宣伝映画であったのに対し、「賭場荒らし」はジョーン・コリンズが紅一点で出演しているとはいえ、かなり地味な面子が揃っています。全体的には、この手の泥棒映画としては、スピード感にいまいち欠ける印象があります。たとえば、この種の映画では最も有名な作品の1つである「トプカピ」(1964)などでは、前半はややもたもたした印象があるとはいえ、一度軌道に乗ると後は快調に飛ばし、メリハリがありました。確かに、「賭場荒らし」を監督したヘンリー・ハサウエイの多くの作品では、シャープさやスピード感に重きが置かれているわけではないとしても、泥棒映画ジャンルにおいては、一貫してスローな印象があるとどうしても不満が残らざるを得ません。現実の泥棒がいかであるかは別として、映画の中の泥棒はスタイリッシュ且つスピーディでなければならないのです。そのようなわけで、評価は★☆☆としました。それでも、専らの泥棒映画であるとは考えないで見ていると、この作品には興味深い点がいくつか見出せます。殊に、エドワード・G・ロビンソンとロッド・スタイガーという異色の組合わせは興味がそそられます。作品中では、彼らは実は親子であるという設定であるにも関わらず、ラスト近くになるまでその事実が明かされません。従って、最後の最後になって、彼らが実は親子であると分かるのがこの作品のサプライズエレメントでもあるのです。とはいえ、ラスト近くになるまで彼らが親子であることが明かされないと述べたにも関わらず、実は、エドワード・G・ロビンソンはロッド・スタイガーのことを「My Boy」と最初から呼んでいることを付け加えておかねばなりません。英語理解の問題かもしれませんが、「My Boy」という呼びかけは必ずしも親子関係を意味しないと個人的には思っていたので、ラスト近くになるまで彼らが親子であるとは思っていなかったというところが真相です。この点には全く自信がなく、「My Boy」という呼びかけが専ら親子関係を意味するのであれば、サプライズが意図されているわけでは全くないことになります。いずれにしても、誤解によって面白さが倍加するならば、映画は娯楽であることに鑑みれば、それはそれで大きなプラスであると考えるべきでしょう。また、しわがれ声が素晴らしいイーライ・ウォラックが、小心翼翼とした小泥棒役で出演しており、作品中で最も興味深いキャラクターを演じています。悪党は悪党でも小悪党であり、同年公開の「荒野の七人」(1960)でのダイナミックな悪党のイメージとは異なるのが面白いところです。60年代のアメリカ産の泥棒映画の多くには申し合わせたようにただ一人の女性が参加しており、この作品でもジョーン・コリンズがその役割を果たしています。彼女の踊りも見られるということで、ジョーン・コリンズファンには必見の作品でしょう。というわけで、泥棒映画としてはメリハリに欠ける代わりに、アクティングとプロット展開は堅実な作品です。


2002/11/02 by 雷小僧
(2008/10/15 revised by Hiroshi Iruma)
ホーム:http://www.asahi-net.or.jp/~hj7h-tkhs/jap_actress.htm
メール::hj7h-tkhs@asahi-net.or.jp