オーシャンと11人の仲間 ★☆☆
(Ocena's Eleven)

1960 US
監督:ルイス・マイルストン
出演:フランク・シナトラ、ディーン・マーチン、サミー・デイビスJr.、ピーター・ローフォード

左から:サミー・デイビスJr.、フランク・シナトラ、ピーター・ローフォード、
ヘンリー・シルバ

子供の頃テレビ放映で見たこの作品の印象を長らく覚えていて、随分面白い映画であったと思っていました。その後、20年以上に渡って再見の機会がなく、久々にビデオを取り寄せて見てみると、子供の頃思った程には面白く感じられませんでした。が、それでもエンターテイニングな作品であることには間違いがないでしょう。名匠ルイス・マイルストンの監督作品であるとはいえ、どちらかと云えばシナトラによるシナトラのためのシナトラの映画であるような色彩が濃く、彼のエゴがフルーパワー全開して製作されたが故か、良い意味でエンターテイニングな作品に仕上がっているように見えます。実際、ディーン・マーチン、サミー・デービスJr.、ピーター・ローフォードを筆頭にリチャード・コンテ、シーザー・ロメロ、ジョーイ・ビショップ、ヘンリー・シルバといったシナトラの取巻き連中「ラットパック」がこぞって出演した作品は、この作品の他には「荒野の3軍曹」(1962)が挙げられるのみであり(因みに「七人の愚連隊」(1964)にはピーター・ローフォード以下は出演していません)、彼らのファンには堪えられないでしょう。心臓発作で突然路上に倒れあの世に行ってしまった仲間(リチャード・コンテ)の遺体とともに、盗んだ金が丸焼けになるシーンの後、シナトラ一家の総メンバー(マイナスリチャード・コンテ)が葬儀場からこぞって出てくるラストシーンは、シナトラ一家ここにありという宣伝メッセージが意図されているように見えざるを得ず、シナトラ嫌いの人には鼻持ちならぬ印象すら与えかねないながら、泥棒映画としての面白さがそれによって損なわれることはないでしょう。面白いことに、シナトラのようなビッグなエゴを持ってしても、当時の映画の中で泥棒は成功せず、奥床しいと云えば奥床しいところがあります。どうやら最近この作品のリメイクが製作されているようですが、シナトラ一家のショーケース映画のようなこの作品を、シナトラのエゴ抜きでどのように料理するか興味深いところです。また、シャーリー・マクレーンがカメオで出演しているので注目しましょう。ディーン・マーチンに「(レディたるあなたに)ハッピーニューイヤーを言うこの自分は誰であればいいのかい?」などと聞かれて、酔っ払った彼女は「リッキー・ネルソン」と答えますが、それに対し彼は「かつてはリッキー・ネルソンだったが今はペリー・コモだ」などとさっぱりわけのわからない返事をします。リッキー・ネルソンは、前年の「リオ・ブラボー」(1959)で、ディーン・マーチンと共演していた為、彼女の口から発せられたのでしょうが、どうしてペリー・コモなのかについては、全くもって謎です。シャーリー・マクレーンの返答にしろディーン・マーチンの返事にしろ、セリフというよりも咄嗟に思いついたアドリブなのかもしれませんね。但しこのシーン、小生の記憶が正しければ、子供の頃テレビ放映で見た時、吹替えシャーリーは確か「リッキー・ネルソン」ではなくて「ディーン・マーチン」と答えていたように覚えています。なぜそんなつまらないことまで覚えているかというと、隣で見ていた小生のお袋がアハハと笑っていたので、当時ディーン・マーチンすら知らなかった小生は何がそんなに可笑しいのか聞いた覚えがあるからです。恐らく、日本語翻訳担当者がリッキー・ネルソンよりはディーン・マーチンの方が面白いと思ってそのように訳したのだと考えられ、確かに日本ではその方が笑えるかもしれません。


2001/07/14 by 雷小僧
(2008/10/14 revised by Hiroshi Iruma)
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