雨の午後の降霊祭 ★★☆
(Seance on a Wet Afternoon)

1964 UK
監督:ブライアン・フォーブス
出演:キム・スタンレー、リチャード・アッテンボロ、ナネット・ニューマン、パトリック・マギー

手前:リチャード・アッテンボロ、向:キム・スタンレー

「雨の午後の降霊祭」というタイトルを見るとオカルト映画かと思われるかもしれませんが、そうではありません。女性霊媒師が名声を得る為に、旦那をそそのかして偽装誘拐(人質や身代金の隠し場所を正確に予言すれば霊媒師としての名声が上がるはずというわけです)を実行するというストーリーが繰り広げられ、どちらかというとサスペンス色が濃い作品です。但し、「雨の午後の降霊祭」はイギリス映画であり、アメリカ的にエンターテイニングな、観客に媚びを売るような仕方でストーリーが語られるわけではなく、展開や描写が極めて地味で、イギリス的に暗くうらぶれたトーンが、降霊祭の雰囲気に見事にマッチしています。しかし、最大のウリは、キム・スタンレーとリチャード・アッテンボロのパーフォマンスにあり、特に前者はイギリス映画であるにも関わらずこの作品で本場アメリカのアカデミー主演女優賞にノミネートされています。彼女は、舞台を主な活動の場としていた女優さんで、映画出演はこの作品を含めても全部で4-5本しかありません。個人的には、「雨の午後の降霊祭」以外は「ライトスタッフ」(1983)でしか見かけたことがありませんが、これらの作品で見る限りではいかにも玄人受けしそうな女優さんで、一見地味で普通のおばさんのように見えながら内的に張り詰めた緊張感を持っているような印象を受けます。同様に玄人受けする女優さんであるジェラルディン・ペイジに、声やしゃべり方が似ているようにも思われ、また最近の女優さんでいえばダイアン・ウィーストと似た雰囲気を持っています。忘れてはならないのが、キム・スタンレーに顎で使われる実に弱々しい旦那を演じているリチャード・アッテンボロであり、このようなキャラクターを演じさせると天下一品の俳優さんです。勿論、彼は監督としては、「遠すぎた橋」(1977)や「ガンジー」(1982)などの話題作超大作を手掛けたことで知られていますが、俳優としては、特に「雨の午後の降霊祭」や「10番街の殺人」(1971)或いは「Conduct Unbecoming」(1975)のようなイギリス映画においては、弱々しく且つ隠微なキャラクターを演じるのを得意としていました。「ジュラシック・パーク」(1993)を始めとして「大脱走」(1963)、「砲艦サンパブロ」(1966)などのアメリカ映画での彼しか見たことのない人は、是非純粋なイギリス映画での彼のパフォーマンスを楽しみましょう。「雨の午後の降霊祭」は、殊にイギリス映画のファンにお薦めです。


2001/07/14 by 雷小僧
(2008/10/24 revised by Hiroshi Iruma)
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