都会のジャングル ★★★
(The Young Philadelphians)

1959 US
監督:ビンセント・シャーマン
出演:ポール・ニューマン、バーバラ・ラッシュ、ロバート・ボーン、アレクシス・スミス

向:ポール・ニューマン、背:リチャード・ディーコン

「都会のジャングル」は、当時大スターの道を順調に歩みつつあったポール・ニューマンの雄姿を彷彿とさせる作品です。ニューマンは、21世紀に入っても「ロード・トウ・パーディション」(2002)のような素晴らしい作品に元気な顔を見せており、つらつらと考えてみると、50年代より活躍するスターの中で、現時点(2002年)でもカメオ以上の役割で映画出演し続けているのは最早彼とショーン・コネリーくらいであることに気付きます。「都会のジャングル」では、彼は法律家を演じており、フィラデルフィアという大都会の中で、最初は税法のスペシャリストとして、次に友人(ロバート・ボーン)の殺人容疑を晴らす刑事訴訟弁護士として大成していく様が、ライジングスターとしての彼のキャリアにピタリとオーバーラップするかのごとく描かれています。ポール・ニューマンが映画界にデビューしたのは、この作品の5年程前に製作された「銀の盃」(1955)という歴史映画によってでした。どうやら、この作品に出演したことを彼は後になって後悔しているそうですが、確かにバージニア・メイヨの妖婦しか見所のない凡庸な作品で、個人的にもビデオで一度見ただけでお蔵入りにしてしまいました。「傷だらけの栄光」(1956)を除くと現在でも話題に上るような作品には出演していない1956年及び1957年が過ぎ1958年に入ると、「長く熱い夜」、「左ききの拳銃」、「熱いトタン屋根の猫」と立て続けに話題作に出演し、そして1959年に「都会のジャングル」に出演します。要するに当時のポール・ニューマンは大スターという頂点に登りつめる栄光の道を踏み出したところでした。ダイアン・ブルースター、ブライアン・キース、ロバート・ボーン、バーバラ・ラッシュ、ジョン・ウイリアムズ、アレクシス・スミス、オットー・クルーガー、リチャード・ディーコン、アダム・「バットマン」・ウエストというような錚々たる新旧の面々が、あたかもポール・ニューマンをスターに持ち上げんとするかのようにサポートしている様子が、この頃の彼の日の出の勢いを示しているかに見えます。ストーリー上で1つ興味深い点は、ポール・ニューマン演ずる主人公とその恋人(バーバラ・ラッシュ)のつかず離れずの微妙な関係です。面白いもので、ポール・ニューマンという俳優さんは、好青年のイメージがあったのと同時に、ダーティとは言わないまでもどこかアウトロー的な印象があったのも確かであり、それが、もはや単純にクリアカットな好青年というイメージだけでは大スターになるには不十分な時代になりつつあった60年代70年代に彼が成功していく要因の1つであったように思われます。仲の良いカップルという単純なイメージが、これからの大スターとしてのポール・ニューマンには似つかわしくはないとあたかも判断されたかのような印象を受けます。前述の「傷だらけの栄光」や「熱いトタン屋根の猫」、或いは60年代初頭の「栄光への脱出」(1960)や「ハスラー」(1961)に比べてポピュラーではないとはいえ、ライジングスターとしてのポール・ニューマンを象徴する作品としては「都会のジャングル」がピカ一であり、ニューマンファン必見であると個人的には考えています。

※残念ながらポール・ニューマンは、2008年9月に亡くなりました。追悼記念として日本でも「都会のジャングル」のDVD発売が待たれるところです。(2008/10/13追記)


2002/10/26 by 雷小僧
(2008/10/13 revised by Hiroshi Iruma)
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