福祉のまちづくりで住民主体のまちづくり
第25回東海自治体学校・分科会報告(1999.5.23)

1.築地地区のおけるまちづくりの取り組み

 築地地区は「港まち」として発展したところであるが、港湾機能の沖合展開の中で、当地区の港湾機能の低下や商業・業務機能の停滞、人口の流出が顕著となった。このような中で、市民に親しまれるみなとづくりが課題としてとりあげられたことがまちづくりの始まりといえる。

 当初は行政の取り組みが中心であったが、1986(S61)年度に再開発事業の実施に伴う地元組織を母体として築地ポートタウン21まちづくりの会が発足した。この会は、築地地区全域の魅力あるまちづくりを考え、提案する組織として結成されたもので、当初は商店街を中心に構成されていたが、その後、学区連絡協議会や地域に所在する法人の参加を得、地域全体で組織する団体に発展している。

 活動としては、年に数回、行政との懇談会やまちづくりの先進地視察、まちづくりニュースの発行(隔月)をしており、世界デザイン博覧会においては、築地地区全体を宝島にみたてた「宝島フェスティバル」を開催したり、ラブホテル建設反対運動などにも取り組んできた。

2.夢塾21による公園づくりのとりくみ

 夢塾21はまちづくりの会の中に設置された「福祉・景観」を中心テーマとした専門委員会の愛称である。築地地区が福祉のまちづくりモデル地区に指定され、整備計画づくりが行われるとともに、1997(H9)年10月の世界都市景観会議にむけて、都市景観市民団体として、市から取り組みの要請があったのを受けて設立されたもので、当初は1年間の活動として発足したが、「車いすタウンウォッチング」などの取り組みを通じて、住民のまちづくりに対する関心が高まり、具体的なまちづくりの取り組みの第一弾として、稲荷公園の再整備の計画づくりにとりくむこととなった。私は、市の要請を受けて、その取り組みを手伝うこととなった。

 1997年度に4回のワークショップなどを経て、計画案をとりまとめ、行政に提出。行政では1998年度にこの案をベースに実施設計を行い、さらに最終的な遊具選びにおいては小学生によるワークショップを開催した。工事は1999〜2000年度の2ヶ年で行われる予定である。

 近年、住民のまちづくりへの関心の高まりとまちづくりにおける住民参加の重要性が認識されるようになり、ワークショップによる公園づくりに取り組む事例が増えている。ここでの取り組みもその1つといえるが、大きな特徴としては、以下の3点があげられる。

 第一は夢塾21によるワークショップの企画・運営である。4回のワークショプを開催するにあたり、その実行委員会ともいえる夢塾を10回開催するとともに、ワークショップにおいては夢塾のメンバーがグループリーダーとして住民の意見を引き出すように努めた。

 第二は広く参加を呼び掛けたワークショップの開催である。子どもからお年寄りまで広く参加を呼び掛けるとともに、外部から大学生にも参加してもらった。多様な意見の中で刺激を受けることも多かったのではないかと考えられる。

 第三は小学校の協力である。地元の西築地小学校では、まちづくりを教育のテーマとしたとりくみを実施しており、まちづくりの会が授業を受け持ったこともある。夢塾21にも小学校の先生の参加があり、絵画コンクールについては小学校として取り組んでもらったこともあり、多くの応募が得られた。また、遊具選びワークショップは学校の授業として取り組まれた。公園は子どもの利用が最も多く、その意見を取り入れていくことは重要であるとともに、環境教育として、まちづくりは重要なテーマであるといえる。まちづくりにおいて、小学校と連携し子どもを巻き込んだ取り組みを展開していくことは、今後ますます重要になるのではないかと思われる。

3.とりくみの成果とまちづくり活動の展開

 公園という身近な施設を対象として住民自らが主体的に考えたことは様々な面で成果があったといえるが、その中でも最も大きい点として住民の意識の変化という点があげられる。

 稲荷公園は地区内の貴重な公園であるが、その利用状況は多くの人々に日常的に利用されているとはいいがたい状況にあった。ワークショップを通じて、公園に対する愛着がわき、その管理についても地域で取り組んでいこうという意識が醸成された。さらに、大きい点としては、当初、トイレの設置に反対していた周辺地域の人々が、子ども達の声を聞くなどする中で、トイレの重要性を認識し、設置する方向でまとまったことである。稲荷公園が公園のある町内だけの公園ではなく、地区全体の公園として意識されてきたといえる。

 築地地区は名古屋市のまちづくりにおいても重要な意義を持つ地区であり、行政としても力を入れている地区の1つであるが、住民がその機会をうまく活用し、積極的にまちづくりに取り組んでいるという点で、名古屋市において注目すべき地区であるといえる。何故、築地でこのようなことができたのか。その要因の1つとして、7月に実施される「みなとまつり」の存在が大きいように思われる。地域をあげてまつりに取り組んでいることが、地元のコミュニティ意識を高め、まちづくり活動において大いにその経験が生かされたのではないだろうか。地域コミュニティの再生はまちづくりにおいても重要なテーマとなろう。

 築地のまちづくりはこれで終わりというわけではない。夢塾では具体的なまちづくりの第2弾として防潮堤の修景をとりあげ、検討することとしている。今後とも港という地区の個性を活かし、魅力あるまちづくりが展開されることだろう。築地地区のまちづくりに関心を持つ人が多く、応援部隊ともいえるようなものができている。私もその一員として協力していきたいと考えている。

(1999.4.30)

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