公共賃貸住宅の建て替え促進にむけて−愛知県における取り組み
1994年度日本建築学会大会研究協議会資料(94.9)

1.はじめに

 公共賃貸住宅の建て替えが注目されるようになったのは、様々な背景がある。住宅全体の居住水準をあげるために老朽化の著しい公共賃貸住宅の居住水準の向上が不可欠になったこと、新規の公共賃貸住宅建設が困難になる中で利便性の高い市街地に位置する公共賃貸住宅の高度利用に期待がかかったこと、高齢社会の到来にむけて今の段階から良好なストック形成が求められるようになったこと等である。これらの要因がかみ合ったことによって、これまであまり進んでこなかった公共賃貸住宅の建て替えを一挙に進めうる可能性がでてきたといえる。

 ここでは、愛知県における公共賃貸住宅建替促進計画策定調査における検討事項を中心に、愛知県における建て替えの取り組み状況を整理するとともに、建て替えを効果的にすすめるための方策・課題について触れたい。

2.愛知県における現状と課題

(1)公共賃貸住宅の現況

 愛知県における公共賃貸住宅は全体で19.6万戸あり、県民の9%が居住している。しかし、その居住水準はきわめて低いものが多く、民営の借家(17.6%)よりも最低居住水準未満世帯率が多い(図1)。

 公共賃貸住宅の居住水準を地域別にみると、名古屋地区が最も高く、西三河東部地区の水準がきわめて低いなど地域格差が著しい(図2)。これらは、これまでの建て替えの取り組みを反映しており、名古屋市のように建て替えをかなり精力的にやってきた地域では、居住水準の向上が図られているが、建て替えを実施していない地域では、きわめて低い水準にとどまっている。

 愛知県全体では、2.6万戸が建て替えの対象(耐用年数の1/2を経過)であり、2001(H13)年までに建て替えの対象となるものを含める(以下「建替対象住宅」という)と4.5万戸、全体の23%となる。  愛知県において建替対象住宅を有する事業主体(公団・公社を含む)は59あるが、このうち建替実績のない事業主体が22あり、耐用年数をすでに超えた住宅ものが公共賃貸住宅全体の80%以上に達するものもみられる(表1)。

(2)公共賃貸住宅の分布

 愛知県における公共賃貸住宅の分布をみると、全体の55%が名古屋市域にあり、次いで尾張地域26%、西三河地域13%、東三河地域6%である。

 公共賃貸住宅戸数を住宅に住む一般世帯に対する割合でみると、江南市が17%で最も高く、次いで岩倉市、名古屋市、東浦町、瀬戸市、豊明市で高い(図3)。これらは、高度成長期に流入してきた若年労働者に対して、愛知県や公団によって大規模団地が建設されたところである。山間部においては、戸数は少ないが、人口定住を目的として木造戸建の住宅が供給されている。

 公共賃貸住宅の事業主体をみると、地域によって差異がみられる。名古屋市域では、5割が市営住宅であり、公団住宅も多い。尾張地域では、市町村営住宅よりも県営住宅、公団住宅の方が多い。西三河地域では、市町村営住宅よりも県営住宅がやや多く、公団住宅は少ない。東三河地域では県営住宅よりも市町村営住宅がやや多く、公団住宅は少ない(図4)。

 公共賃貸住宅に対する応募は、名古屋市域においてかなり高いほか、都市部の応募倍率が高い。一方、立地条件のよくない団地や公営住宅戸数の多い地域においては、応募倍率が低く、空家が発生しているところもみられる。

人口規模と公共賃貸住宅率をみる(表2)と、人口規模が大きいほど公共賃貸住宅率が高い傾向にある。これは、公共賃貸住宅需要が人口規模の大きい都市ほど大きいとみることができる。

 人口規模との比較においてに公共賃貸住宅率が高い市町としては、江南市、豊明市、知立市、岩倉市、東浦町、高浜市があげられる。これら市町は県営住宅や公団住宅の大規模団地を有するところであり、需要を反映しているというよりもむしろ、供給のしやすさが現れているといえる。逆に、人口規模に対して、公共賃貸住宅が少ない市町としては、犬山市、常滑市、東海市、大府市、尾張旭市、日進町、蒲郡市、師勝町、甚目寺町があげられる。これら市町は古くからの市街地で人口増加が少ない市及び名古屋市周辺で戸建住宅の供給により人口が増加した市町である。前者は人口増に伴う需要が少ないことを反映しており、後者は公共賃貸住宅の需要以上に人口が急増したことを反映しているといえる。

 公共賃貸住宅を100戸以上有する市町村について、最も多い公共賃貸住宅と公共賃貸住宅戸数のマトリックスでみる(表3)と、各市町村の特徴がより明確となる。

 5000戸以上を有する5市についてもそれぞれ特徴がある。県営中心タイプの瀬戸市、豊田市、市営中心タイプの名古屋市、豊橋市、公団中心タイプの春日井市に分けられ、各都市の市街地形成の歴史を反映している。

(3)建替対象住宅の現況

 建替対象住宅は、愛知県営住宅、名古屋市営住宅、その他市町村営住宅、公団・公社住宅が 1/4程度づつある。愛知県営住宅、名古屋市営住宅においては建て替えが進んでいることから、木造はほとんどないが、その他市町村営住宅においては、木造がかなり多い(図6)。名古屋市営住宅や公団・公社住宅では耐火構造のものがかなり多くなっている。

 建て替えの進んでいないその他市町村営住宅における建替対象住宅の入居者の実態をみると、47%が最低居住未満世帯であり、居住水準の低さがわかる。また、20%が高齢者のみ世帯となっており、老朽公共賃貸住宅に高齢者が多くなっている状況がよみとれる(図7)。  

(4)建て替えにあたっての問題点

 建て替え実績のない市町村において、建て替えが進んでいない要因としては、まず第一に、建て替えに対する推進体制が確立していないことがあげられる。第二に、担当部局が事業化を計画しても、他の課題が優先され、財政不足を理由に見送られてしまうことがあげられる。これらの背景には、公共賃貸住宅の位置づけが低く、全庁的な課題としてとりあげられていないことがあげられよう。

 建て替えの事業化の段階においても様々な問題がある。公共賃貸住宅ストックが少なく、仮移転先が確保できない。敷地規模が小さく、建て替えができない。建て替えに対する従前居住者の理解が得られない等である。これまで適正な管理が行われ、家賃の改訂などにも取り組んでいたところでは比較的問題は少ないが、管理が不十分であったがために、当面の修理に奔走され、建て替えにまで手がまわらなかったり、老朽化した住宅故に家賃が上げづらく、安い家賃のままできたがために、建て替え後の家賃急騰が著しくなり、居住者の理解が得られないというケースもみられる。

 また、これまで、建て替えがかなり進んできた名古屋市においては、中層住宅が建替対象となっており、すでに高度利用しているため、居住水準の向上を図ろうとすると従前戸数を下回ってしまうことや、他施設との併存住宅では、併存施設の建て替えスケジュールとの調整、併存施設の仮移転先の確保等、新たな問題点も生じている。

(5)建替事業推進にあたっての課題

 以上の点を踏まえ、今後の建替事業推進にあたっての課題を整理すると、以下の6点があげられる。

  1. 建て替えを契機に総合的な住宅対策を推進する体制を確立するとともに、建替事業を単なる老朽住宅の更新ととらえるのではなく、地域の魅力づくりや建て替えを効果的に活用することでまちづくりの課題に対応するなど、建て替えを核としたまちづくりの展開に結びつける必要がある。
  2. 建て替えに関する先進的な経験を活かすため、様々な経験交流を図るとともに、仮住宅の確保や収入基準にあった住宅への住み替え等を図るため、事業主体間の連携を強化する必要がある。
  3. 従前居住者に対しては、その生活実態を踏まえ、計画に反映させるとともに、家賃の激変緩和措置や低所得者に対する福祉的な配慮が必要である。
  4. 公共賃貸住宅需要の低い地域にある住宅の土地利用転換や、小規模団地の統廃合など公共賃貸住宅の適正配置を図り、需要に的確に対応していくとともに、土地の有効活用を図る必要がある。
  5. 高齢化社会の進展の中で公共賃貸住宅は、高齢化社会における住宅のモデルとしての意義を有するとともに、高齢者が多く居住しているという実態からも、高齢者の身体機能の低下に対応した仕様、設備にするとともに、ケアシステムについても導入する必要がある。
  6. 建て替えをまちづくりの中に位置づけ、他事業との連携を図るとともに、良好な景観デザインや地域の人々も利用できるような施設を整備することによって、地域のまちづくりを先導し、地域の魅力づくりに貢献する必要がある。

3.建て替えの意義と効果

 以上のように、建て替えにあたっては様々な問題・課題を抱えているが、建て替えを推進する上で重要なことは、建て替えを公共賃貸住宅部門の課題としてとらえるのではなく、今後のまちづくりを展開する上での戦略的課題としてとらえ、地域における様々な課題に対応するために、建て替えを効果的に活用することである。そのことによって、これまで困難であったことが可能となったり、様々な話題を提供することによって、活性化を図ることも可能となる。ここでは、いくつかの事例を紹介したい。

  【事例1】周辺地域における下水道整備の促進

 豊田市では、市営住宅、県営住宅の総合再生事業において、住宅宅地関連公共施設整備促進事業による下水道整備をあわせて実施することとしている。そのことによって、通常では整備の時期が遅くなる周辺地域の下水道整備の時期を早めることができるようになった。

 【事例2】周辺整備の誘導

 公団池下住宅(名古屋市)においては、建て替えにあわせて周辺を含めた再開発事業を実施することとしている。個別では建て替えが困難な零細地権者を含めたまちづくりが可能となり、さらに沿道景観のモデルとして周辺整備を誘導することができる。

 【事例3】高齢化対策の推進

 豊川市では、建て替えにあわせてデイサービスセンターを併設し、シルバーハウジング・プロジェクトを実施している。新規に土地を取得することなしに福祉施設を整備するともに、高齢化社会にむけた住宅対策への対応ができる。

【事例4】周辺環境への配慮(HOPE計画)

 県営伊文住宅(西尾市)においては、市のHOPE計画を踏まえ、「抹茶とみどりと文化の薫るまち西尾市めざして」という計画趣旨に沿い、勾配屋根(瓦葺き)の採用、地場産品のレンガの使用、集会室への茶室の設置等、周辺環境との調和や地場産品の使用に配慮している。さらに、事業に伴い周辺用地を買い足して公道の拡幅・新設など周辺の住環境整備にも寄与している。

 【事例5】文化施設の導入

 これは検討段階の事例であるが、O市北部における大規模団地において、土地の高度利用により生み出した土地に文化施設を建設することを検討している。新規に土地を所得することなしに、文化拠点の形成を図ることができるとともに、住宅地としての魅力が高まる。  

4.建替事業推進の先進的とりくみ

 建て替えにあたっての問題・課題に対応するためには、建て替えに関するノウハウの蓄積が重要である。愛知県においては、県営住宅や名古屋市営住宅を中心に豊富な経験や実績があり、さらに様々な課題に対応した建て替え上の工夫が行われている。

 ここでは、愛知県下で取り組まれている事例をモデルスタディとして取り上げることによって、これから建て替えを行おうとしている事業主体が建て替えを考える際の一助としたい。これらの事例は、輻輳する様々な課題に対して、独自の工夫がされており、この事例がそのまま当てはまるというものではないが、その考え方は様々なケースに応用できるであろう。このような様々な工夫により、建替事業の推進を図ることが重要である。(注:なお、これらの事例は検討過程のものであり、実現に向けて、今後具体化されていくものである。)

【モデル1】小規模団地の統廃合

 A市には、14団地約150戸の市営住宅があるが、敷地面積2,000u未満、住戸数10戸以下の小規模なものが多い。これらの住宅は老朽化し、建替時期をむかえているが、仮住宅の確保が困難なこと等の理由から建て替えが進んでいない。一方、既成市街地においては、区画整理事業がほとんど実施されていないこともあって、公園が不足しており、その用地確保が課題となっている。

 そこで、小規模な団地については、用途廃止し、跡地を公園とするとともに、比較的規模の大きい団地については、建替事業を実施し、高度利用を図ることによって現況住宅戸数以上を確保することを検討している。

 小規模な団地を統合することで、建て替えを促進することができるとともに、管理もやりやすくなる。さらに、不足する公園が確保でき、既成市街地における住環境の向上を図ることもできる。

【モデル2】小規模団地の統廃合(新規土地取得)

 B町には、老朽化した小規模な町営住宅が分散立地しており、敷地規模が小さく、現地での建て替えが困難であることや仮住宅の確保が困難なことから建て替えが行われていない。一方、町内には大規模な県営住宅(1000戸以上)があり、公営住宅需要に対応している。

 そこで、新規に土地を取得し、町営住宅を建設し、そこに従前居住者を移転させることを検討している。

 仮移転先を確保する必要がなく、移転がスムーズに進むとともに、小規模団地の統合により、管理もやりやすくなる。

【モデル3】立地条件の改善

 C市では、建替対象住宅として2住宅が残っているが、市街化調整区域にあり、従来運行されてきた市バスが廃止され、交通の不便な地域にある。そのため、入居希望者が少なく、空家が多い。現在地で建て替えても入居希望者が少ないことが予想される。

 そこで、新たに交通の利便性のよいところ3ヶ所(@同一学区で交通条件のよいところ、A母子寮跡地の活用、B市営住宅の不足している地域における区画整理の保留地)に市営住宅を建設することとし、現住宅の跡地は公園広場とすることを検討している。

 市営住宅の適正配置により、市民の要望に応えるとともに、市営住宅と併せて福祉施設を確保することにより、地域の福祉の拠点とすることができる。

【モデル4】分譲住宅供給との連動

 D市には多くの公共賃貸住宅があるが、建て替えはあまりすすんでいない。一方、近年、持家取得のために市外に転出する者が増えており、定住を促進するための分譲住宅の供給が課題となっている。

 そこで、周辺に公営住宅の多い地域にある市営住宅の建て替えにおいて、分譲住宅をあわせて供給することを検討している。

 分譲住宅の供給により、バランスのとれた地域コミュニティを形成することができるとともに、分譲住宅の処分金を活用し、別の場所に市営住宅用地を確保でき、市民の要望にあった公営住宅の供給が可能となる。また、分譲住宅の供給において他事業主体の参入を得ることによって、建て替えのスピードアップを図ることもできる。

【モデル5】敷地形状の変更

 E住宅は、交通の利便性が比較的よく、基盤も整備されており、老朽住宅の建て替えによる有効利用が望まれるが、敷地が分散している上に敷地形状が悪く、高度利用が十分に行えない状況にある。

 そこで、隣接する保留地(公共施設用地として確保されていたもの)と市営住宅用地を交換し、大敷地として活用することを検討している。

 敷地形状を整えることにより土地の有効利用を図ることができる。また公共施設も独立した街区での整備が可能であり、公共施設ゾーンを形成することができる。

【モデル6】隣接敷地との一体的整備

 住宅の南側には老人いこいの家があり、老朽化している。

 そこで、F住宅の敷地と老人いこいの家の敷地を一体化し、高度利用を図るとともに、デイサービスセンター等を併設し、シルバーハウジング・プロジェクトを導入することを検討している。

 敷地の一体化により、土地の有効利用を図ることができるとともに、福祉施策との連携により、高齢化社会への対応が可能となる。

【モデル7】都市計画道路整備との連動

 G住宅は、その一部が都市計画道路用地となっており、整備によって道路に面することとなる。一方、道路整備に伴う代替地を沿道に希望するものが多い。

 そこで、G住宅の沿道部分については、道路整備に伴う代替地とするとともに、背後の農地を買収し、建て替えを行うことを検討している。さらに、周辺にある小規模で住宅への乗入道路が狭いため建て替えが困難な市営住宅を統合し、それらの跡地は道路整備のための代替地や広場、公的分譲住宅用地として活用することも検討している。

 市民の希望する代替地を確保することで都市計画道路の整備促進を図ることができるとともに、市営住宅にとっても広幅員道路の背後地に敷地が確保できることにより、良好な住環境の形成が可能となる。さらに、建て替えが困難な小規模住宅の建て替えを行うこともできる。

5.建て替えの推進にあたって  

 これまでは、建て替えがあまり進んでいない事業主体の建て替え推進を図るという視点から、先進事例等の紹介を行ってきたが、ここでは、建て替えを積極的に行ってきた名古屋市を例にあげながら、今後、建て替えを進めていくにあたっての課題について整理したい。

 名古屋市で建て替えが進んだ背景には、地価高騰等により新規土地取得が困難になる中で、高い公共賃貸住宅需要に応えるため、利用率の低い公共賃貸住宅敷地が注目され、建て替えによる供給増が行われてきたことがあげられる。また、その住宅を仮移転先として活用することで、周辺の建て替えを進めることもできた。

 しかし、今後の建て替えでは、すでに高度利用のされている中層住宅が対象となることから、供給増を期待することが困難となっている。これまでのような形での建て替えは期待できず、建て替えの転換期を向かえているといえる。戸数増というメリットがないからといって建て替えを行わずにいると、高度成長期に大量建設した公共賃貸住宅が2000年以降には建て替え時期を向かえることとなり、大量の不良ストックを抱えることになりかねない。建て替えに対する基本的考え方を確立し、将来の建て替えをスムーズに進めることが重要である。

@ 建て替えの意義を明らかにする

 住宅の戸数増だけを意義としてとらえるのではなく、むしろ建て替えによりまちづくりに貢献することに意義を見いだす必要がある。

 そのためには、戸数増を前提としている宅建替事業を見直し、まちづくりの観点からの建て替えが行いやすいように制度改善することも望まれる。

A 計画的な建て替えを行う

 名古屋市では、住宅供給が緊急課題であったこともあり、建て替えを行いやすいところから事業を実施した結果、建て替えが困難な住宅が残されるということも生じている。移転先を確保しながら、順次建て替えを進めるような計画的な建て替えが必要となる。

B 建て替えによって様々な居住者階層の混住を図る

 高齢者と一般世帯、若年世帯の混住により、高齢者と中堅層、子供たちとの交流を図ることができる。高齢者は子供たちと遊ぶことにより、孤独から解消され、また、万一の場合にも安心できるであろう。共働き世帯は、高齢者に子供を預けることにより、安心して子供が育てられるようになり、少子化傾向に歯止めをかけることができるかもしれない。

さらに、公共賃貸住宅を単独でとらえるのではなく、地域として様々な階層が混住するような社会を形成することも重要である。

C 従前居住者との合意形成を図る

 今後の建て替えでは従前戸数を下回ることから任意建替となるが、任意建替は法定建替と異なり、明渡請求のような強制力がなく、住民の合意がないと建て替えができないという場合も生じる。これまで以上に従前居住者との合意形成が重要となることから、計画的な建て替えの推進により、住民に対して早期に建て替えを周知させるとともに、早い段階から住民の意向を組み上げ、住民参加による計画づくりを進める必要がある。

D 建て替えを契機に入居者の適正化を図る

 公共賃貸住宅に対する需要は高いが、この要因の1つに収入超過者問題がある。今後、建て替えによる戸数増が期待できず、逆に建て替えのための仮移転先確保のために空家募集を停止せざるをえなくなる。収入超過者の住み替えは、なかなか進んでいないが、公営住宅と特定優良賃貸住宅、公団・公社住宅の複合建て替えを行い、住み替えを斡旋するための支援を行うなど、建て替えを契機とした収入超過者の住み替えシステムを確立し、真の住宅困窮者が公共賃貸住宅に入居できるようにする必要がある。

6.おわりに

 公共賃貸住宅建替10箇年戦略が対象としている10年間(1992〜2001年度)は、公共投資が期待でき、公共賃貸住宅の入居階層である若年層が増加する時期であり、まさに公共賃貸住宅の建て替えにとって、追い風の時期であるといえる。

 これまで建て替えの実績のない事業主体においても、建て替えの意義と効果を踏まえ、積極的な取り組みを展開するとともに、この時期に様々な建て替えのノウハウを蓄積することが重要である。

 公共賃貸住宅の建て替えは、住宅に耐用年数があり、ライフスタイルが時代とともに変化していく中にあっては、一定の周期で必ず発生する課題である。したがって、場当たり的な建て替えに終わらせるのではなく、次回の建て替えへの配慮も必要となってこよう。長期的な展望にたった建て替えシステムの確立が求められる。

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