岩倉市の都市計画マスタープラン
土地利用研究会活動報告(2000.8)
策定した時が都市計画マスタープランの新たなスタートの時
岩倉市における都市計画マスタープラン策定は、愛知県内の他都市と同様、県の指導により短期間で策定しなければならなかったという背景があり、都市計画マスタープランに期待された住民参加という点については、不十分なものに終わっている。しかし、限られた中とはいえ、団体ヒアリングやアンケートによって住民の意向を汲み上げ、都市づくりの理念から総合的なまちづくりに関する方針を整理したという点では、今後、住民参加で計画づくりをすすめていくための土台づくりはできたといえる。
すなわち、都市計画マスタープランの策定は公表された1996年3月で終わったわけではなく、その時点からスタートし、本来の都市計画マスタープランとして作りあげて行かなければならないと考えられる。岩倉市における課題としてあげるならば、策定後の取り組みが不十分であったという点をあげなければならないだろう。
都市計画マスタープランと総合計画の関係
しかし、これも行政の取り組みとしてはやむを得ない部分がある。というのは都市計画マスタープランと総合計画の関係が十分整理されていないため、都市計画マスタープランの意義が見いだせされていないのである。岩倉市では新たな総合計画の策定において、ワークショップを開催するなど、積極的な住民参加が展開されているが、ここでの議論は都市計画マスタープランの中に反映させていくべきものも多数でてきているものと考えられる。計画策定においては、総合計画と都市計画マスタープランを別のものとして考えるのではなく、議論の結果を別の形で表現するという考えで計画策定を進めた方がよい。
都市計画マスタープランをどのように活用するか
結局は、都市計画マスタープランをどのように活用するかによって策定方法や計画内容そのものも変わってくる。岩倉市で当初策定した段階では、都市計画マスタープランが将来の市街化区域の拡大の根拠として考えられ、その結果が過大な市街地規模設定につながっている。都市計画マスタープランに位置づけておかないと市街化編入はしないということは正論ではあるが、臨機応変な変更が難しく、新たな市街地を設定すると、従来編入として位置づけていたものを除外しなければならなくなり、合意形成が難しくなる。その結果、可能性のあるところはできるだけ新たな市街地に設定していこうという意図が働く。このような利用方法は、本来の都市計画マスタープランとはいえないだろう。
都市計画を市民に近づける手段としての都市計画マスタープラン
近年、他都市において住民参加による計画づくりが進んでいるが、これはこれまで市民からかけ離れていた都市計画を市民に近づけるという意味で重要である。岩倉市は行政規模が小さく、大都市とくらべて市民1人1人の顔がみえる関係が作りやすく、公園づくりワークショプなどの経験も有している。都市計画マスタープランをまちづくりの経験交流の場として活用することも考えられる。市内各所で身近なまちづくりを住民参加で進めることができれば、その総体が都市計画マスタープランとなるのではないだろうか。