まちづくりにおけるインターネットの活用
−まちづくりリンク集−

 3年ほど前に「市民参加の新しい方向−パソコン通信の活用−」と題してパソコン通信がまちづくりにおける市民参加の手段として重要だと書いたことがある。その時はインターネットがこれほど急速に普及し、数々の情報を提供してくれる場になるとは思ってもいなかったが、そこで書いたことが現実に広がってきている。貴重な情報が詰まっており、これを有効に活用することがまちづくりにとって重要だ。インターネットの世界は広くてその一部しかまだ知らないと思われるが、その一端を紹介してみたい。

情報入手の手段として

インターネットの利用によって情報入手が容易になった。有効に活用することがまちづくりを考える上でも重要だ。ここでは、検索エンジンリンク集データベース統計資料の活用方法と便利なホームページを紹介している。

情報発信の手段として

情報発信手段としても有効である。機関誌等による情報発信では費用がかかり、その相手も限られていたが、インターネットによって安価で多くに人々に簡単に情報発信できるようになった。ここでは、自治体大学研究室NPO個人のホームページでまちづくりに関する情報発信をしているものを紹介している。

意見交換の手段として

インターネットを意見交換の手段として活用することも広まっている。ここでは、アイデア募集都市マスにおける市民参加の試みメーリングリストフォーラム(会議室)について紹介している。

 愛知県の県政モニターのアンケート調査によると、現在インターネットを利用している人は12.8%にとどまっているが、将来使いたいという人は58.5%に達しており、インターネットが将来、重要な通信手段となることは間違いない。インターネットを有効に使いこなすことが、これからのまちづくりにとって重要だろう。

1.情報入手の手段として

●検索エンジン

 インターネットにおける情報入手の方法として、もっともポピュラーな方法が検索エンジンの活用である。検索エンジンも様々な種類があるが、大きくはキーワードを手作業で整理するもの(ディレクトリー型)とパソコンにより自動的にキーワードを整理するもの(ロボット型)の2つのタイプがある。前者の代表が「YAHOO」「あちゃらNAVI」であり、後者の代表としては「goo」や「infoseek」がある。

 ちなみに「まちづくり」という2つのキーワードで検索してみると、「YAHHO」239件、「あちゃらNAVI」119件、「goo」32,874件、「infoseek」40,012件がヒット(98.10.2)した。「goo」「infoseek」は関連の深いものから順に表示されるが、中には全然関係のないものも含まれるので留意が必要だ。ただ、情報量が多いので、ここから絞りこみをしていけばよいだろう。「都市研究所スペーシア」で検索してみると、「goo」や「infoseek」ではSPACIAのホームページにたどりつくことができた。

 情報の内容は、個人ホームページのものが多く、信頼性が低いという問題点もあるが、当事者のホームページに到達することができれば、かなり正確な情報が入手できるのではないだろうか。ホームページを開設する企業も増加しており、活用の幅は広がるものと考えられる。 

●リンク集

建築・土木・環境・まちづくりインターネットアドレスブック

 学芸出版社が作成しているリンク集。ブック版も作成されている。まちづくり関連では最も充実しており、まちづくりを取り扱っているホームページのリンク集に掲載されていることも多い。「建築デザイン」、「都市デザイン」等について「学会」「大学」「NPO・個人」等に分けられ、五十音順に整理されている。それぞれに簡単な解説があり、内容がわかるのがよい。ちなみに、SPACIAのホームページは「都市デザイン」の「コンサルタント」の中にある。また、まちづくりキーワード別URL集もあり、三船康道+まちづくりコラボレーション著「まちづくりキーワード辞典」を参考にURLの再分類が行われている。まちづくりの情報入手に大いに活用したいリンク集である。

ふるさとのホームページ

 国土地理院が作成しているリンク集。ホームページを開設している都道府県と市町村などにリンクしている。自治体検索のできるリンク集は他でも作成されているが、ここのホームページが最も多くの自治体を網羅しているものと思われる。ちなみに愛知県については31市中30市、町村については57市中35市(98.10.1現在)にリンクできる。ただし、自治体の公式ホームページのないところでは、豊橋のように豊橋動物園のホームページにリンクしたり、個人が作成したものもリンクしている。愛知県で公式ホームページを有している自治体は22市15町(98.10.1現在)であるものと思われる。

 なお、自治体の公式ページのみをリンクしているものとして、(財)地方自治情報センターや自治省などが協力して提供している「全国自治体マップ検索」がある。ここは簡単な内容紹介があるが、一部、公式ホームページでも抜けているものがあるようだ。(98.10.1時点で、常滑市、高浜市、東郷町、西春町、新川町、木曽川町、三好町、藤岡町、設楽町、田原町が抜けていた) ふるさとづくりネットワーク/まちづくりリンク集

 (財)あしたの日本を創る協会が江戸川大学天野研究室の協力を得て運営しているホームページに掲載されている。「まち・むら」という自治会・町内会情報誌を発行しており、この付録としてホームページの内容がCD-ROMで提供され、新聞でも紹介されたことから知っている人もいるだろう。リンクの数としては多くはないが、全国でふるさと運動に取り組んでいるNPO等のホームページにリンクしている。 

あいち☆すまい・まちづくり情報広場

 愛知県内を中心としたすまい・まちづくりの情報リンク集。愛知県で住宅を建てたい、購入したい、リフォームしたい等、愛知県内のすまい・まちづくりに関する情報を整理して提供している。 

再開発関連のリンク集

タカハ都市科学研究所が作成しているリンク集。再開発の事例や再開発に取り組む企業を整理している。新聞や法律の検索にもリンクしており、仕事の面でも有益である。

●データベース

 データベースの利用はパソコン通信での利用が一般的であったが、パソコン通信の大手ニフティがインターネットでのデータベースの提供(有料)「マルチメディアDBサービス」をはじめており、インターネットでも利用できるようになった。新聞検索、企業情報、人物情報などが活用できるが、サービス内容が限定されている。現段階ではパソコン通信の方が活用の幅は大きい。

 インターネットでは無料で活用できるデータベースもある。以下にまちづくりに関連して利用できそうなものを列挙してみたい。

政府刊行物関連書籍検索:全国官報販売協同組合のホームページが提供している。

ゼンリン住宅地図検索:政令指定都市などの住宅地図が検索できる。

紀伊國屋書店インターネット仮想書店 BookWeb紀伊国屋書店のホームページの中にあり、国内外の書籍の検索ができる。Yahoo Web of the Year 1998 EC部門 第1位 受賞。

建築関連法規集:検索機能はないが、170の法律がテキスト化されており、ブラウザの検索機能を使えば、どこにその言葉が使われているかがわかる。

行政情報の総合案内サービス:各省庁が提供している行政情報の所在を検索できる。

●統計資料

 まちづくりに関する基礎調査として統計資料の分析は重要である。かつては統計書の数値を電卓で計算しながら加工したものだが、表計算ソフトのおかげでその手間が便利になった。さらに最近ではインターネットでデータが簡単に入手できるようになり、利用の幅が広がった。統計書からデータを入力する手間がはぶけたことは大きいし、最新のデータがすぐに利用できるようになった。自治体のホームページでも統計データを提供してくれるところが増えてきた。まだまだ、一部のデータにとどまっていたり、提供の仕方が不統一だったりして、利用しづらい面もあるが、最近、急速に提供されるデータの質が向上しており、今後に期待ができる。こんな便利なものがあるのを知らずに、統計書のデータの入力しているのは本当に無駄だ。このページはもっとPRされるべきだろう。

総務庁統計局・統計センター

 日本の統計の総元締めであり、国勢調査、住民基本台帳人口移動報告、事業所・企業統計調査など各種の統計のデータが掲載されている。国勢調査の人口、世帯数は市町村レベルの数値も提供されている。

あいちの統計(愛知県のホームページ)

 愛知県のホームページでは、統計課のみならず、土地利用調整課が「土地に関する統計年報」、住宅企画課が「愛知県の住宅・宅地事情−住宅・宅地関連資料一覧−」を提供しており、このデータも活用できる。岐阜県統計調査課(岐阜県のホームページ):データはロータス形式だ。みえデータボックス(三重県のホームぺージ)

統計なごやWeb版(名古屋市のホームページ)

2.情報発信の手段として

●自治体

 すでに紹介したように愛知県内では22市15町村が公式ホームページを開設し(98.11現在)、情報を発信しているが、その内容は観光情報やお知らせ(行政サービス、イベント、防災情報)といったものが多く、まちづくり情報を提供しているところはまだ少ない。小さな自治体の方が観光情報の提供による地域の活性化を目的として熱心にとりくんでいるようだ。総合計画を掲載しているところもまだ少ない(愛知県内では、春日井市常滑市尾西市豊川市刈谷市三好町東郷町)。

 愛知県内でまちづくりに関する情報を提供しているところをあげると

名古屋市:主要プロジェクト名古屋新世紀計画2010のとりくみを紹介している。また、名古屋市内NPO市民活動実態調査を実施するにあたり、その対象となる団体情報をインターネットを通じて募集することも行っている。

一宮市:インターネットによるまちづくりアンケート調査の結果を紹介している。回答者が124名で、かつ男性が多いという偏りはあるが、新しい試みといえる。

高浜市:新しい総合計画の策定にむけてそのとりくみを紹介するとともに、「新世紀NETフォーラム」を開設し、広く意見を募集し、紹介している。

●大学研究室

 大学の研究室のホームページの中にはまちづくりに関する様々な情報を提供しているものも増えてきている。ただし、残念ながらこの地域のものは少ない。

東京理科大学渡辺研究室:大学院の講座の内容をFCITYを通じて公表し、意見を求めたり、FCITYを通じて講師を頼んだり、最もコンピュータネットワークを活用していると思われる研究室。東京大学都市工学科大方研究室:都市計画マスタープランの策定状況が掲載されている。また誰でも参加できる「すまい・まちづくりトーク」が開設されている。まだ、発言数は少ないが、パソコン通信のフォーラムと同じような広がりが期待できる。

千葉大学建築学科延藤研究室:コレクティブハウジングや、参加のまちづくりの実践で有名な延藤先生の研究室

早稲田大学建築学科石山研究室:建築家として建築学会賞も受賞した石山修武氏の研究室。日本生活学会町づくり部会が設立した町づくり支援センターの代表でもあり、そのとりくみも紹介されている。

福島大学教育学部阿部研究室
:都市計画用語を裏側から開設するまちづくり裏表辞典や定期借家権の問題点を考えるページもある。

山梨大学教育人間科学部田中研究室
:山梨の住宅に関して豊富な情報提供が行われている。なお、田中先生は元豊田高専におられ、この地域との関わりも深い。

関西学院大学片寄研究室
:ほんまちラボとして兵庫県三田市の本町商店街での研究室の取り組みを紹介している。この商店街での取り組みの様子はNHKの新日本探訪(98.11.1)でも紹介された。

●NPO

 NPO活動が活発になっており、その情報発信も積極的に行われるようになってきている。

山湊(さんそう):愛知県新城市にあるまちづくり会社。市民100人が出資し、市と共同して創り上げた。生い立ちや設立趣旨などの資料も提供されている。

中部自然住宅推進ネットワーク
:健康的な住居空間を創造するための情報収集と研究ならびに研究発表の場として設立。勉強会の資料が掲載されているほか、光の里プロジェクトの紹介もある。

朝倉川育水フォーラム
:豊橋市の朝倉川にホタルが自生することをめざす。愛知県のNPO法適用の第1号。

安住の会
:コーポラティブハウスの実現をめざす。木のセミナーなどの活動紹介の他、名東区梅森坂西のプロジェクトを紹介しており、参加者を募っている。

オアシスの森クラブ
:名古屋市のオアシスの森づくり第1号の相生山オアシスの森で活動を行うグループ。

雑木林研究会
:名古屋を中心に雑木林とそれをとりまく環境について研究している研究会。

市民フォーラム21・NPOセンター
:この地域のNPO活動を支援するために設立された組織。会員向けニュースレターが掲載されているほか、各種のイベント情報がある。

つなぐねっと:NPOコンピューターの面から支援する活動を行っているNPO。

すまいづくり・まちづくりNPOネットワーク:市民グループ相互のネットワークを形成し、相互に情報交流を図るために設立。

世田谷まちづくりセンター:住民・企業・行政が互いに触発し学びあい、共同して進めるパートナーシップ型まちづくりを目指す。

玉川まちづくりハウス:東京都世田谷区玉川地域で活動を行っているNPO。

個人

 個人でもいろいろな情報を発信している例が増えている。個人のホームページは趣味的なものが多く、玉石混淆であるが、まちづくりに直接関わる人が情報発信していたり、1つのテーマを重点的にレポートしているものも見られる。個人からの情報発信が大きな市民運動につながっていくこともインターネットでは可能だ。新しいまちづくりへの展開を期待したい。

Toshi-shiの住まい・まちBOX:愛知県を初めとした様々な情報を発信している。

瀬戸市の住民のページ:万博反対。「海上の里を世界遺産に」と呼び掛けている。情報公開で入手した万博関連の委託調査の実態も掲載されている。尾張の山車祭り:山車の宝庫である愛知県の様々な山車を紹介している。

3.意見交換の手段として

●アイデア募集

 ホームページを通じて市政に関する意見をメールで送れるように設定しているところは多いが、さらにアイデア募集などをメールでも受けつけるような例も増えている。名古屋市でも「わたしがつくる名古屋は、こんなまち」の作文募集をやっていた。これは、募集という一方向だけのものであるが、高浜市の「新世紀NETフォーラム」の試みは、新しい総合計画策定にあたって意見を募集し、それを掲載することで、意見交換も行われるようになっている。

 愛知県国際博推進局では環境共生と国際博覧会の役割をテーマに「環境共生フォーラム」を期間限定で開催している。専門家による具体的な提言や議論をインターネット上で実施しており、一般からも質問や意見を書き込むことができる。

●都市マスにおける市民参加の試み

 インターネットを通じた市民参加による計画策定の試みも見られる。都市計画マスタープランでは市民参加が重要な課題としてあげられ、ワークショップをはじめ様々な市民参加の試みがある。大和市での取り組みは、都市計画学会の機関誌に一般研究論文として紹介もされているが、これまでなかなか参加できてなかった若・中年男性の取り込むに成果があったことが報告されている。

●メーリングリスト

 メーリングリストとは、リストに掲載された人々に1度にメールが送信できるシステムであり、グループ内での情報伝達の手段として利用されるようになってきた。私個人の話としても大学時代の仲間ともメーリングリストによって懐かしいやりとりをしている。まちづくりに関しては都市政策を考える会のメーリングリストに参加しているが、ここでは現在問題となっている定期借家権についての議論が行われている。

●フォーラム(会議室)

 パソコン通信では数々のフォーラム(会議室)が設置され、様々な意見交換が行われている。NIFTYの都市計画フォーラムでは、まちづくりに関する各種の議論が行われており、ここでの議論が実際のまちづくりにつながるという例もみられる。情報交換のみならず、ネットワークを広げるという意味でも重要な意味を持っている。

 パソコン通信では特定のメンバーだけが利用できるパティオというものもある。私も参加している安住の会ではパティオを通じて例会やセミナーなどの打ち合わせをしたり、様々な情報交換の場としても活用している。このような活用はメーリングリストでも可能であるが、様々な市民活動を行う上で時間的制約をなくし、効率的な意見交換のできる場としてインターネットが有効であるものと考えられる。

(都市研究所スペーシア社外報「ラバダブ」の記事を加筆)

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