卯建のまちとオデオン座<徳島県脇町>
(1999.6.19)
町並み保全で知られる脇町を訪れようと思ったのは内田康夫の推理小説「藍色回廊殺人事件」で魅力的な町として取り上げられていたからだが、改めて調べてみるとあまり紹介している資料はなく、あまり期待はしていなかった。
しかし、たまたま訪れた日がオデオン座のリニューアル・オープンの日であったこともあり、大いに印象に残った。オデオン座=脇町劇場は大衆演劇の場として活用されていたが、平成7年に閉鎖。しかし、平成8年に映画「虹をつかむ男」(山田洋次監督、西田敏之主演)の舞台となったことから、保存の声があがり、それがようやく再生されたという。6月19日から7月11日までをオープニングイベントとして、劇場では様々な催しが計画されていた。すべてのイベントに1000円の通行札を購入すれば入れる。私もこれを購入して内部を見学。地元の人が大衆演劇を観劇していた。
町並みでは寅さんシリーズのポスター展や虹をつかむ男のスチール展も。地元TVらしき取材も行われていた。司馬遼太郎氏が褒めたという町並みにとけ込んだ景観の図書館でも、松竹大船撮影所のミニュチュア模型の展示も行われていた。
町並み自身はまだまだ改修すべきところは多いが、特徴のある卯建が独特の雰囲気を作っている。一部にお菓子屋などの観光客向きの店もあるが、全体としては住宅地で観光客もそれほど多くなく、落ち着いた印象を受ける。きれいに改修されすぎずに、汚いままのところが、変に観光づれしてなくてよい。
周辺のショッピングセンターが古い町並みを意識した外観で作られていたり、学校や銀行などのデザインにも景観への配慮が伺える。司馬遼太郎氏は、徳島のすばらしさは脇町にあるとまで書いていたようであるが、歴史をまちづくりに生かそうという取り組みは着実に進んでいるといえそうだ。
P.S.今回は訪れなかったが、近くに貞光町というところがあり、ここも卯建で有名なようだ。町の発行するパンフをみると、ここにも貞光劇場というものがあったとか。町にこんな劇場が作られているところが四国の文化というところだろうか。
(1999.6.22)