シドニー五輪世界最終予選観戦記

第4日(6/21)
「サーブレシーブでエースをつぶせ」(イタリア対アルゼンチン)
「壮絶な果たし合い・大会最大のエース対決」(クロアチア対オランダ)
「惨事・大エース負傷退場」(韓国対カナダ)
「分岐点」(中国対日本)

第5日(6/22)
「1勝への遠い道のり」(アルゼンチン対カナダ)
「これぞ大一番」(中国対クロアチア)
「スーパーエース力尽く」(韓国対オランダ)
「崖っぷちに詰められた」(イタリア対日本)

第6日(6/24)
「控えセッターでも余裕勝ち」(イタリア対カナダ)
「アジアの頂点はどちらに」(中国対韓国)
「実りなき孤軍奮闘」(オランダ対アルゼンチン)
「運命の対戦、死闘の果て」(日本対クロアチア)

第7日(6/25)
「残る五輪切符はあと一枚」(中国対アルゼンチン)
「最後に拍手に送られて去る」(オランダ対カナダ)
「これが世界のエース、これが五輪出場にかける執念」(イタリア対クロアチア)
「あまりにもつらい最後」(韓国対日本)

特別編

最後に


第4日

「サーブレシーブでエースをつぶせ」(イタリア対アルゼンチン)

この試合、中国・韓国戦に比べれば、イタリアの集中力はやはり6,7割くらい。サーブミス、アタックミスも多かった。一方アルゼンチンのほうは、ここ2試合に比べれば大幅にミスが少なくなった。1,2セットと、中盤までにいったんイタリアがリードしながら、それを追い上げられ接戦となった。大味な打ち合いにイタリアがつきあってしまったという印象もあった。

第1セット、ブラガリアのブロードがシャットされ、アンサルディ、コスタグランデのスパイクで8-6とアルゼンチンリード。しかし、イタリアもこの後リニエーリ・ピッチニーニ・トグットのスパイク、アンサルディをシャットするなどで、13-9と逆転する。ブラガリアのクイックが決まって一時イタリアのリードは17-12まで開いた。しかし、18-14からアンサルディにサービスエース。さらに、リニエーリ・トグットのスパイクミスで、19-18まで追い上げられる。23-21からトグットがライトから決めてブレーク、ようやくセットを決めた。最後もピッチニーニのスパイクでブレーク、25-21。

第2セット、イタリアはフェイントを連発する。どうやらベンチからの指示のようだ。これが効を奏し、序盤12-5と大量リード。ところが、カッチャトーリのトスがしだいに低いほうにぶれて、アタッカーが連続ミス、コスタグランデに打ち返されるなどで、13-13と同点。ピッチニーニのスパイクなどで17-14とイタリアが先行するものの、メロのバックアタックがシャットされ、コスタグランデのバックアタックで同点。イタリアはサーブでコスタグランデを執拗に狙うが、サーブミスが続出。そして、「どこでさわったかよくわからない」ネットタッチの判定で、20-21とついにアルゼンチンリード。しかし、スパイクとレシーブですでにがたがたのコスタグランデは22-21から全く決まらなくなった。アルゼンチンにネットタッチ、サーブレシーブのミスも出て、ピッチニーニのスパイクなどで25-22とイタリアが一気に逆転、セットを奪う。

第3セットにいたり、コスタグランデはひざががくがくという状態でジャンプも極端に下がる。12-10イタリアリードで、コスタグランデを狙ったサーブに対しサーブレシーブミスを連発、イタリアが3連続ブレーク(エース1)。18-13からコスタグランデをシャットしてさらに1ブレーク。最後は、アルゼンチンのサーブレシーブミスからのチャンスボールをレッジェーリの速攻で決め、25-18。
コスタグランデをつぶしてイタリアの勝ち。

スタメンおよびサーブ順
イタリア: 7 カッチャトーリ → 2 リニエーリ → 4 レッジェーリ → 3 トグット → 12 ピッチニーニ → 18 ブラガリア
アルゼンチン: 6 ミューラー → 4 ラマス → 2 コスタグランデ → 9 レ → 14 アンサルディ → 3 コンデ

「独断と偏見で選ぶ」MIP: リニエーリ
試合を通して、イタリアチームの中では最も安定して決めていた。

       ITA - ARG
         3 - 0
1st     25 - 21       20 min. 6-8 16-12 21-19
2nd     25 - 22       24 min. 8-4 16-14 20-21
3rd     25 - 18       20 min. 8-7 16-11 21-15
Total   75 - 62   1 h. 4 min.

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「壮絶な果たし合い・大会最大のエース対決」(クロアチア対オランダ)

試合前半、クロアチアのセンター線の働きは最悪だった。これまで2試合、落ち着いたトス回しをしていたグリゴロビッチが、両エース一辺倒という最悪のパターンをやったせいもあるだろう。一方、オランダのセンターはスパイク・ブロックとも快調。
第1セット序盤、グリゴロビッチのトス回しにもいらいらするが、バーバラは6本くらい打って全く決まらない。これでは当然オランダの一方的展開になる。ウェールシンクのスパイク、バーバラのスパイクミスなどで6-1と序盤からオランダリード。11-7からもウェールシンク・レフェリンクのスパイク、フレデルスのサービスエースなどで4連続ブレーク。バーバラのスパイクが最初に決まったのは、ようやくこの後だった。19-13からはバーバラとレトが相次いでシャットされ、クロアチアとしてはお手上げ。最後はウェールシンクに決められ25-16。

第2セットは、序盤にリマッツとバーバラにノータッチエース、徐々に流れが変わり始める。6-5クロアチアリードから、フレデルスのトスの乱れもあり、フィッセルの速攻が2本続けてミス。さらに、ウェールシンクのバックアタック、レフェリンクのライトからのスパイクもミス、14-9クロアチアリードとなった。終盤にかけて、クロアチアはバーバラとレトのバックアタックなどで突き放す。最後はチェブキナのクイックに持っていき、フェイントで落として25-18クロアチア。

第3セット前半はサイドアウトが続く。オランダはレトを止めてこのセット初めてのブレーク、7-5リード。クロアチアもレトのスパイクでいったんは11-11とする。しかし、その直後、ウェールシンクのバックアタックでブレーク、バーバラのバックアタックはミス、ブリンクマンのスパイクが決まり、クロアチアのサーブレシーブの乱れもあってレトもスパイクミス。4連続ブレークで16-11オランダリード。レフェリンクのプッシュ、ウェールシンクのスパイクで20-13までオランダのリードが広がった。終盤はウェールシンクで3回続けて切り、25-20オランダ。

第4セット序盤は、クロアチアにサーブレシーブのミスが相次ぎ、レトがシャットされる場面が続く。ウェールシンクのノータッチエースで6-3。第2セットはオランダのミスに助けられただけで、このあたりまではほぼオランダペースの試合だった。しかし、オランダにスパイクミスが出て、さらに9-8からユールマンのクイックを初めて止めたあたりから、クロアチアに流れが傾く。
このあたりから、オランダの速攻は目立って少なくなった。バーバラとレトしか打ってこないクロアチアに対し、うちもすごいエースがいるんだぞ、と言わんばかりの勝負をしてきた。(日本戦でもその傾向があったのだが)しかし、しだいに両エースにブロックの的が絞れてきて、ワンタッチをとってつながれる場面が多くなった。13-13からバーバラのバックアタック、ウェールシンクのバックアタックのミス、オランダのサーブレシーブミスをダイレクトで沈めるなど、4連続ブレークでクロアチアが17-13と逆転。
ここでオランダに追い討ちをかけるようなアクシデントが起こる。レフェリンクがボールを拾いに行ったところ、ウェールシンクと交錯したらしく、負傷。ラリーは続いていたがレフェリンクが倒れたままのため、審判が試合を止めた。結局負傷交代、レフェリンクは思わず涙を流した。
この先終盤にかけて、クロアチアはバーバラでひたすらしのぐ。最後はネット上の押し合いにグリゴロビッチが勝ち25-22。第3セットとほぼ逆の展開でクロアチアがこのセットを奪った。

最終セット、バーバラのスパイクとレフェリンクのスパイクミスなどでクロアチアが序盤リード。しかし中盤、バーバラ・レトが相次いで止められ、7-7同点。やはりクロアチアが勝つのは無理かと思った。勝負所でエースに決めてもらうためには、その前にセンター線を有効に使って相手のマークをずらしておかなくてはならないのだが、この試合は全くそれをしていなかった。エースに決めさせるための過程を経ているとは、とうてい思えなかった。それでも、クロアチアにはエースに打たせる以外の手はない。
そして、サーブレシーブが乱れてユールマンがダイレクトスパイク。これがクロアチア最大のピンチだった。しかし、10cmの身長差を跳ね返しグリゴロビッチがさらにブロック。流れを止めた。
そしてここで思わぬラッキーガールが登場する。これまでほとんど活躍のなかったセンターのリマッツ。このセット後半だけでウェールシンクを3回、レフェリンクを1回止めた。焦るオランダにはフレデルスとユールマンのコンビミスまで出た。
最後はバーバラのスパイクがオランダコートに突き刺さり、15-10。

イエリッチ対ウェールシンク、両チームのエースの壮絶な果たし合いの末、散ったのはウェールシンクだった。しかしこれは、クロアチアと戦う際には一番やってはいけないことだ。
これもオランダの自滅という試合である。ただし、自滅と言っても、目に見えるミスをしたわけではない。前年ワールドカップで、クロアチアが日本との対戦の第1セット、両エースにボールを集中させたために、終盤に次々ミスしたりシャットされたりして20-13から逆転を許したということがあったが、同じことをこの試合でオランダがやってしまった。

クロアチア側の勝てた要因をあえて一つ挙げるとすれば、変なミスが少なかったこと。集計上のミスによる失点はわずか10点。クロアチアとしては考えられないような少なさである。一方のオランダは22点。

スタメンおよびサーブ順
クロアチア: 1 レト → 15 グリゴロビッチ → 13 リマッツ → 8 バーバラ → 2 シスコビッチ → 11 チェブキナ
オランダ: 4 ブリンクマン → 14 フレデルス → 3 ユールマン → 12 レフェリンク → 10 ウェールシンク → 15 フィッセル
チェブキナが大会初めてスタメンで登場

「独断と偏見で選ぶ」MIP: リマッツ
何と言っても最終セット後半の4本連続シャットに尽きる。

       CRO - NED
         3 - 2
1st     16 - 25        18 min. 3-8  8-16 13-21
2nd     25 - 18        17 min. 8-5 16-11 21-16
3rd     20 - 25        19 min. 6-8 11-16 14-21
4th     25 - 22        22 min. 5-8 16-13 21-18
5th     15 - 10        12 min. 5-3 10- 7 12- 9
Total  101 - 100  1 h. 28 min.

番狂わせに次ぐ番狂わせのこの大会だが、また大変なことが起こった。この大会、本当に何が起こるかわからない。全く先が読めなくなってきた。
クロアチアには失うものは何もない、おそらくその気持ちが、大番狂わせを引き起こした。

レフェリンクは第5セット先発で復帰したものの、アタックは1本も決まらず。プレーできないほどの負傷ではないが、明日の韓国戦の出場は疑問。少しでもプレーに影響があるなら最初からスターレンスという手ももちろんある。

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「惨事・大エース負傷退場」(韓国対カナダ)

第1セット、序盤カナダは韓国の攻撃をよく拾い、競り合いになる。ク・ミンジョンのスパイクをブロックし、カナダが7-5リードという場面があった。しかし、カナダはサーブミスが多く、ラリー中にもミス。その後、チャン・ソヨンのクイックなどで韓国が12-10と逆転した後、ラウをシャット、チャン・ソヨンのノータッチエース、パク・ミキョンのライト攻撃、カナダのスパイクミス・トスミスなどで韓国が7連続ブレーク、19-10とリード。直後に韓国のスパイクミス・ラマーレのスパイク2本でカナダも3連続ブレーク、しかしサーブミスでこの流れを切ってしまう。その後、チャン・ソヨンのサーブに崩されカナダにミスが続いた。最後はパク・ミキョンのクイックで25-15。

第2セットも韓国のサーブレシーブミスもあって3-1とカナダが先制。しかし、その後またサーブミスで流れを切ってしまう。その後、ク・ミンジョンをシャット、エクスネールのノータッチエースで、11-10とカナダがリードする場面もあった。しかしその直後、ここまで今ひとつのク・ミンジョンがスパイクとフェイントで4ブレークするなど、韓国5連続ブレークで逆転、16-11。この後は2点ずつ点が動く場面が多く、最後はク・ミンジョンのスパイクで25-18韓国。

第3セット、相変わらずカナダの立ち上がりは悪くない。ラマーレがスパイクで5得点の猛ラッシュ、カナダはサーブミスを連発しながら8-6リードでTTOを迎えた。しかしそのときに悲劇が起こった。ラマーレが着地した瞬間に左足を思い切りひねった。足首が完全に逆方向に曲がっている。思わず目を覆いたくなるような場面。ラマーレは立ち上がることさえできず、担架に乗せられ退場。この試合、もともとエースの片方のケリーがほとんどつぶれており、得点はラマーレに極度に偏っていた。そのラマーレが抜けた穴は埋めようがなく、TTO明けで韓国がセンターミッシェルの速攻を止めたところから、ラウが立て続けにスパイクミスするなど、6連続ブレークで逆転。最後はラマーレと交代で入ったルサーのスパイクがミスして25-17韓国。
担架で運び出されるとき、ラマーレは笑顔を浮かべていたように見えた。しかし本当に笑っていたはずはない。あまりにも痛みが激しいと、体中の筋肉に全く力が入らない。そのため、笑っているような表情に見えてしまう。このときのラマーレもおそらくそうだったと思う。

前日も高いブロックへの対応に強い不満を残したが、この試合も韓国の動きは今ひとつ緩慢。特に第1セットは、カナダのサーブミス、ラリー中のミスに助けられたセットだった。一方カナダは、韓国の攻撃を全体によく拾う。特にどのセットも序盤は速い攻撃にもついていっている。第1セットの韓国のアタック決定率は、何と30%を割っていた。

なお、これまでにも指摘したカナダのセッターだが、この試合は先発はプリビロバだったものの、第1セット中盤で早くもパラディスに交代、第3セット半ばまでパラディスで押し通した。点数にはつながっていないとしても、攻撃の流れはやはりパラディスの方がいい。ただし、この後の試合も含めての印象だが、パラディスはやや強引なトス回しをすることがあり、それにアタッカーがついてこられずにミスという場面が何度かあった。プリビロバのミスは、大筋でボールの下に入るのが遅いことが原因だ。

ラマーレは靱帯断裂という大けが、非常に心配される。北米大陸随一の大砲だけに、選手生命に影響を及ぼさないことを願う。
雑誌には捻挫としか書いてなかったが、少なくとも、この瞬間を見た人なら、たとえ素人でも、それほど軽い負傷とは考えられないだろう。このあたりについて、バレー専門ページの掲示板の書き込みから引用する。

専門的には捻挫はその程度によってT〜V度までに分類され,T度捻挫であれば確かに2週間程度で完治します.しかし,V度捻挫は,言いかえると靱帯断裂とイコールになります.
この大会の前の江藤についても、当初は全治2週間程度の捻挫という情報が流れ、その後で実は靱帯断裂と判明したといういきさつがある(上記の書き込みはそのときのもの)。最初の情報が伝わるどこかの段階で、V度捻挫の「V度」が抜け落ちたのだろう。ラマーレの場合もしかり。カナダ協会のプレスリリースには、"a third degree ankle sprain"、V度捻挫すなわち靱帯断裂とはっきり書いてある。これは、専門家以外に誤解を与える用語にも問題がある。

スタメンおよびサーブ順
韓国: 10 パク・スジョン → 4 ク・ミンジョン → 3 カン・ヘミ → 15 チャン・ソヨン → 9 チョン・ソンヘ → 7 パク・ミキョン
カナダ: 4 プリビロバ → 9 ケリー → 1 エクスネール → 11 ラウ → 2 ラマーレ → 8 ミッシェル

「独断と偏見で選ぶ」MIP: ク・ミンジョン
第1セットは苦しんだが、第2セット以降は次々とスパイク・フェイントを決めていた。

       KOR - CAN
         3 - 0
1st     25 - 15       21 min. 8-7 16-10 21-14
2nd     25 - 18       21 min. 8-7 16-11 21-15
3rd     25 - 17       25 min. 6-8 16-10 21-14
Total   75 - 50   1 h. 7 min.

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「転換点」(中国対日本)

孫月の不振、それとともに危機に立たされた中国。この試合、中国はついに、孫月をスタメンから外すというショック療法に出た。
その試合開始、いきなり満永のブロードがシャットされ、王麗那のスパイクで2ブレークなどで、5-2中国リード。中国のミスで日本はいったん11-11同点とするものの、呉咏梅にブロードを決められ、森山のブロードは止められるなど、16-13と再び中国がリード。しかし20-18から、王麗那をシャット、李珊のスパイクミスで日本が連続ブレーク、同点とした。23-23から、殷茵を満永がシャットし、この試合初めて日本が先行、セットポイント。そしてその次のプレーで竹下のサービスエース。ブレーク一発で日本が第1セットを奪った。このセット、中国は突き放せそうなところでミスが出たのが痛かった。一方、日本はブロード攻撃がほとんどブロックにつかまり苦しみながら、鮮やかな逆転だった。

第2セット序盤も第1セットの流れのまま、中国にミスが出る。そして、サーブレシーブのミスなどが絡み日本が2連続ブレーク、7-5とリード。この後も中国のミスで15-11まで日本がリードを広げた。しかし、20-17から、殷茵のスパイクとフェイントで3連続ブレーク、一気に同点にされる。日本は大懸のスパイクで22-20とすぐに突き放しながら、サーブレシーブのミスから追いつかれる。そしてデュースに突入、24-24から熊前が止められ中国が先行。25-25の場面で長い長いラリー、最後は熊前のスパイクがミス。26-26から熊前のサーブで崩し、呉咏梅がセンターから打ったのをシャット、日本は再び先行。しかし殷茵のスパイクですぐに28-27と先行を許す。そして30-29から大懸がシャットされ、息詰まるデュースの末、中国が逆転で31-29とこのセットをものにした。振り返ってみれば、このセットが両チームにとって大会最大の転換点になった。

第3セットは序盤から中国が一気にリードする。このセット早々と日本は熊前に代えて高橋を入れるが、これもかえって裏目。日本のネットタッチとサーブレシーブミス、呉咏梅の速攻3本、邱愛華・殷茵のスパイクで9-2中国リード。この後も日本はほとんど追い上げる場面はなく、最後は満永と交代で入った大貫のスパイクがミス、25-17中国。

第4セット、森山のブロードがシャット、王麗那のスパイクで、開始直後は3-0と中国リード。しかし中国にミスが出て、第3セット途中から入った鈴木のブロードで8-6と日本がリード。(第3セットは杉山と交代で入ったが、このセットは杉山・鈴木という先発センターだった。)10-9から、邱愛華のライト攻撃、熊前のスパイクミスで、中国が連続ブレーク、11-10と逆転。日本も14-14から大懸のスパイクで先行、16-15から満永と交代で入った大貫のネットインエースでさらに1ブレークした。しかしその直後、熊前のスパイクミス、邱愛華のスパイクで中国が連続ブレーク、18-17と逆転。殷茵のフェイントがミスで19-18と日本がまた先行。激しい展開になった。この場面で、日本は杉山に代えて江藤を入れた。しかしこれが完全に裏目だった。江藤は何度かスパイクを打ったものの、全く威力がなく簡単に拾われた。しかもこれは竹下が前衛の場面。中国のブロックは完全に江藤を捨ててエースに絞った。邱愛華のスパイクが2本決まり、高橋がシャットされ、その高橋に代えて熊前を入れるもサーブレシーブが乱れ熊前もシャット。4連続ブレークで23-19、勝負あった。最後は熊前のスパイクがまたブロックされて25-20。葛和監督の痛恨の逆噴射で、日本はとれるセットを落とし、大会初黒星。この後に大きく影を落とす敗戦となった。

お互いにラリーが続く場面が多く、その観点ではアジア勢同士の対戦らしいと言えばらしい試合となった。(この大会はラリーが続く場面は全体に少なく、その証拠に、全体平均のアタック決定率は女子の大会としては例を見ないほど高い値となっている。)しかし、中国は相変わらずサイドの決定力に課題を残し、特に王麗那は極端に悪い。ただし、孫月に代わって出場の殷茵はなかなかの活躍を見せた。一方日本は、第1セットから通してブロードの決定率が低く、ブロックで日本コートに返ってくる場面が目立った。ブロードが決まっていてこそ両レフトも生きる。したがってブロードが決まらないことにはレフトもなかなか決まらない。

中国と日本双方にとって、この試合は今大会の大きな転換点となった。まず中国にとって最も大きかったのは、殷茵がエースとして活躍できるという計算が立ったことである。この大会、殷茵の活躍がなければ、この日本戦だけでなく、クロアチアにも韓国にも勝てなかった可能性が大きく、五輪出場はとうていおぼつかなかっただろう。また、邱愛華がライトに復帰したのが成功したことも大きい。(もともと郎平監督時代から、中国のスタメンライトは邱愛華である。李珊は本来センターであり、その選手がライトに入るのは2枚替えの際の変則の布陣だった。その変則布陣がなぜ固定されたのかは定かでない。このあたり、胡進監督の選手起用にはかなり疑問が残る。)さらに、精神的に落ち込んでいたエースの孫月も休ませることができた。
一方の日本は、第2セットを勝ちきれなかったという後悔も残るが、それ以上に、エースの高さ・決定力不足、攻撃面でのイマジネーションの欠乏を露呈してしまった。一本一本のトスやスパイクが悪いわけではない。そもそも、中国や韓国のブロードはほとんどがセンターかレフトと何らかの絡みがあるが、日本はその絡みがほとんどない。高さも呉咏梅やチャン・ソヨンと比べても10cmくらい低く、この両選手のような速さもない。そのブロードが、中国レベルの相手に、そもそもそれほど有効な攻撃とは思えない。しかし、日本はこの戦い方しかできない。ほかの戦術は完成されていない。そのための駒もない。もっと言えば、完成させようという姿勢さえ見られなかった。

スタメンおよびサーブ順
中国: 10 陳静 → 6 李珊 → 15 王麗那 → 5 呉咏梅 → 7 何キ → 17 殷茵
日本: 9 森山 → 11 満永 → 7 大懸 → 18 杉山 → 15 竹下 → 8 熊前

「独断と偏見で選ぶ」MIP: 邱愛華
試合途中からの起用だが、重要なところで決めたことで一票。

       CHN - JPN
         3 - 1
1st     23 - 25        25 min. 8-6 16-13 21-20
2nd     31 - 29        34 min. 6-8 12-16 20-21
3rd     25 - 17        22 min. 8-2 16-11 21-14
4th     25 - 20        26 min. 6-8 14-16 21-19
Total  104 - 91   1 h. 47 min.

さて、この日の地上波の放送は、野球中継の後の21時からとなっていた。地上波の放送が終わるまでは、公式のページからは絶対に結果は漏れないことになっているはずだった。しかし、この日、厳しい情報統制をかいくぐり(?)某スポーツ新聞のページが試合結果をすっぱ抜くという事件が発生した。(この後のクロアチア戦でも、放送が終わる前に結果が漏れていたという証言もある。)
しかし、私がもし試合会場に行っていたとしたら、おそらく20時30分には試合が終わっていたはずだから、アパートに戻ってから結果をアップしたとしても、遅くとも21時30分には結果が出せることになってしまう。私は携帯電話を持っていないのだが、モバイル端末と携帯電話があれば、試合終了即結果をアップすることは簡単だ。要するに、公式のページの情報統制など、個人が破る気になればいくらでも破れるということである。それが破られないとすれば、テレビで見る人の興をそいではいけない、とみんなが配慮しているだけのことだ。

それにしても、私はCSで試合を見たので地上波とは違う人かもしれないが、アナウンサーのあまりの勉強不足には笑ってしまった。選手名は全くこんがらがっている。殷茵のスパイクに、「巨人の松井のようなパワーだ」(殷茵も成長したことは確かだが)とか、「10等身」を連発とか(このアナウンサー殷茵が気に入ったとか!?)個人的な最初の感想は、こいつ、バーバラ見たことないんだろうな、だったが。寝ぼけたことを言っている奴には、「この日の第2試合・イエリッチ対ウェールシンクの果たし合い、および、第3〜5回のVリーグ・デンソー対東洋紡の全試合を見ること」を課題として出したい。
アナウンサーの勉強不足もあったのだが、この試合、CSの放送では第3セット終了後にいきなり番組終了のタイトルが出て、その後関係ない画像が流れ、10分くらいしてやっと第4セットの放送開始。さらに、2度目のTTOでも画像が乱れ、タイムアウトの場面が出たので当然TTOに戻ったと思いきや、何と18-17中国リード。TTOの前はどちらかと言えば日本の流れだったので、ここは流れが変わった非常に重要な場面だったのに。試合をする側だけでなく、見ている側にとっても、リズムは非常に大切だ。これでは見る側の集中力も切れてしまう。しかも、第4セット、24-20中国最初のマッチポイントのところで、何と時間切れ、シャットダウン!!
翌日朝の再放送ではこのようなことはなかったが、これは困る。

さて、この段階での重要な試合の見込みを書く。

第5日
中国対クロアチア
普通にやれば中国が勝つ。ただし、中国のレフトがあまりにも決まらないと、もつれる可能性はゼロとは言えない。クロアチアは、どれほど悪くても両エースである程度稼いでしまう。
韓国対オランダ
これまでの試合、高いブロックへの対応、攻守の切り替えに強い不満を残す韓国。特にアルゼンチン戦は、タッチアウトをとれた場面がほとんどない。その内容からすると、韓国がオランダに勝てるとはいまだに考えにくい。ここまでオランダは、「それまでの試合内容なら勝てるはず」の相手にずるずる負けているので、そこが問題だが。
イタリア対日本
微妙。これまでの戦いぶりならイタリアの勝ちだが。

第6日
中国対韓国
この試合だけは全くわからない。どちらのチームも、内容はあまりよくない。
日本対クロアチア
日本が戦い方さえ間違えなければ、必ず勝てる。

第7日
イタリア対クロアチア
注意!この試合、クロアチアが勝つ可能性は意外と高い。というのは、イタリアはこの日を待たず五輪出場が決まる可能性が極めて高いため。そうなれば、選手のモチベーションを保つのも難しい。また、勝負は捨てて、相手の好きにやらせてデータだけ集める、ということをやる可能性もある。今回クロアチアはセッターが変わっているのでなおさらのこと。
日本対韓国
ここまでの試合内容トータルは、日本のほうがよいと思われるが、いかんせん相性があまりにもありすぎる。日本厳しい。
この見込みが全部当たるとすると、イタリアは1敗、韓国か中国のどちらか一方が2敗、中韓のもう一方と、日本・オランダ・クロアチアが3敗、とんでもないことになる。セット率で並べば、オランダの優位は明らか、しかし残り3チーム間ではセット率がどうなるかも全く見当がつかない。

しかし、この見込みが全部当たるとはとうてい思えない。この大会ほど予想が当たらない大会は、これまで初めてだ。いずれにせよ、明日第5日がどのチームにとっても山場だ。

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第5日

「1勝への遠い道のり」(アルゼンチン対カナダ)

今大会前、1日は東京体育館での観戦を予定していた。とにかく、バーバラを生で見られる機会は、今大会こそ最後と覚悟はしている。しかし大会が始まった後、一度はそれを中止しようと考えた。クロアチアのチーム状況から考えて、バーバラを見に行く意味はない。
第4日、クロアチアの流れは少しずつ変わりつつあった。それでも、行くとすれば、客が比較的少なくよい席がとりやすいと思われるこの第5日(木曜)がラストチャンスと考えていた。この日はクロアチアは中国との対戦。1セットもとれるとは期待できない。それでも、第1試合も大会初勝利をかける対戦、第3試合に韓国対オランダ、第4試合が日本対イタリアと、注目の試合が目白押し、大会最大の山場と言える一日である。バーバラを抜きにしても、見に行く価値は十分ある。結局土壇場で千駄ヶ谷出征を決行。平日ということもあり、ぎりぎりの時間に行った割にはよい席も取れた。サイドライン側ネットからわずかに角度のある場所、私が試合を見に行くときはほとんどこの角度である。


平日の午前中開始の第1試合、さらにこれまで全敗のチームの対戦だけに、観客は恐ろしく少ない。試合開始時点で、100人もいただろうか。選手の声もよく聞こえるし、椅子一つ動かした音が大きく響く。

前日にラマーレが大けが、ケリーの今大会の不調からして、カナダの不利は否めないと思われた。しかし、試合開始直後はアルゼンチンのミスで、カナダが5-2とリード。対するアルゼンチンも、ラマスのツーとカナダのサーブレシーブミスで7-7と追いつく。さらにカナダのミスとミューラーのブロードで13-11と逆転。カナダもコスタグランデとコンデを立て続けに止めて14-13と再逆転。しかし、カナダにサーブレシーブの乱れもあり、アルゼンチンもルサーを連続でシャット、さらにミューラーのノータッチエースで3連続ブレーク、18-15と突き放した。さらにラマスに代わって入ったクルソーエのサーブでもカナダを崩し2ブレーク。最後はコスタグランデのバックアタックが決まり25-20。

第2セットは、プリビロバのネットインエースなどで先制はやはりカナダ、3-0。しかしカナダにミスが出てすぐにアルゼンチン同点。この後しばらくはカナダが先行してもすぐにアルゼンチンが追いつく展開が続く。17-17からコンデのバックアタックで、このセット初めてアルゼンチン先行。19-18からコスタグランデがラウを止めて2点リードとした。しかし、21-20から打ち合いの末ルサーのスパイクが決まり、さらにミッチェルのクイック、連続ブレークでカナダが逆転。アルゼンチンもコスタグランデのスパイクですぐに23-22と先行。このままデュースに突入した。26-25から、線審が旗を上げ、一瞬セットが終わったかと思われた。しかしこれはミスジャッジ、アルゼンチンのブロックがアウトで同点。そして28-28から、ラウのライト攻撃でブレーク、さらにコスタグランデがスパイクミス、連続ブレークで一気に逆転し、カナダが大会初めてセットを奪った。

第3セットは、開始直後にコンデのサーブでカナダが崩され、4連続ブレーク(エース2)で5-0。アルゼンチンにこの後ミスが出るなど、カナダも7-6まで追い上げる。しかしこの後カナダにミスが続き、またリードを広げられる。15-12から、アルゼンチンのサーブレシーブが乱れアンサルディがスパイクミス、プリビロバのツーが決まりカナダが連続ブレーク。さらに16-15からコスタグランデのスパイクミスで同点。17-17からカナダのサーブミス、スパイクミスでアルゼンチンがリードするが、カナダはコンデを立て続けに止めて連続ブレーク、20-19とついに先行した。その次のプレーもラリーが続いたが、ケリーがスパイクミス。そこからまた流れが変わり、コスタグランデのバックアタックとアンサルディのスパイクでアルゼンチンが3連続ブレーク、セットを決めた。最後もコスタグランデのバックアタックで25-22。

第4セットは序盤3-3から、ラウのサーブでアルゼンチンが崩され立て続けにサーブレシーブミス。エース1本を含む5連続ブレークで一気にTTOを迎えた。アルゼンチンもカナダのミス、コスタグランデのバックアタック、ケリーを止めるなどで12-11までは追い上げた。しかしそこでラウにまたサービスエース、コスタグランデのスパイクミスで18-14と突き放される。コスタグランデが自らミスを取り返すなどでまた1ブレーク差までは追い上げるが、20-18からコンデのスパイクミス、22-19からケリーのネットインエースで突き放された。最後はピンチサーバーのビンセンテのサーブミスで、25-22カナダ。

最終セット、コスタグランデがスパイクで3連続得点(2ブレーク)、3-0とアルゼンチン先制。しかし、パラディスのネットインエース、ラウのスパイクで3-3同点。さらに、6-6からラウのサーブでまたアルゼンチンを崩し、連続ブレーク。チャンスボールをミッチェルがブロードで決めるなどで、8-6とカナダがリードしてコートチェンジ。この後、アルゼンチンはコスタグランデでとにかく切り、さらにルサーをシャット。次のプレーは長いラリーになったが、最後はコスタグランデがミッチェルの移動攻撃をシャット。9-8とアルゼンチン再び先行。10-9からコスタグランデのスパイクが決まり、ケリーのスパイクはミス、アルゼンチンに決定的な連続ブレーク。この後カナダもコスタグランデを一度止めて抵抗したが、アルゼンチンはコスタグランデで切りまくって15-13と逃げ切り。最後はエースの決定力の差が出た。このセット、アルゼンチンのスパイク得点は全てコスタグランデ。ひたすらコスタグランデにトスを上げるクロアチア以下の展開だったが、コスタグランデの破壊力でねじ伏せた。

最下位を争うチームの対戦にふさわしく、泥沼という印象だった。片方がリードしてもミスが出て追い上げられるという展開を繰り返した。アルゼンチンとしては、何をもたついているのだ、という印象。やはり両エースに疲労の色が非常に濃く、特にコスタグランデはタイムアウトの時間中コートに座り込んでいる。カナダは、攻撃力では劣りながら、アルゼンチンの両エースに的を絞りよく粘った。第2セット途中にパラディスを投入してから攻撃のリズムもよくなった。しかし、エースの非力さはいかんともしがたい。ラマーレがいれば確実に勝てた、と何とも悔やまれる。

スタメンおよびサーブ順
アルゼンチン: 2 コスタグランデ → 9 レ → 14 アンサルディ → 3 コンデ → 6 ミューラー → 4 ラマス
カナダ: 4 プリビロバ → 9 ケリー → 1 エクスネール → 11 ラウ → 3 ルサー → 8 ミッチェル

「独断と偏見で選ぶ」MIP: コスタグランデ
なんだかんだといってアルゼンチンは若いエースが頼りのチーム。この試合も圧倒的に多くの得点を稼ぎ、最後も結局この選手の力で押し切った。

       ARG - CAN
         3 - 2
1st     25 - 20        22 min. 7-8 16-15 21-16
2nd     28 - 30        31 min. 7-8 15-16 21-20
3rd     25 - 22        23 min. 8-6 16-14 21-20
4th     22 - 25        26 min. 3-8 13-16 18-21
5th     15 - 13        15 min. 5-4 10- 9 12- 9
Total  115 - 110  1 h. 57 min.

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「これぞ大一番」(中国対クロアチア)

前日の試合では孫月がスタメン落ち。中国がどのようなメンバーでくるか注目されたが、孫月はスタメンに復帰。いいところがあまりなかった王麗那に代わり、前日活躍した殷茵をその対角に入る。セッター対角がいまだに李珊だったのは謎だが、第1セット早々に邱愛華に交代、以降邱愛華で通した。
試合開始直後、李珊のブロード・殷茵がセンターから打ったスパイクがシャットされ、さらに、リマッツの速攻とシスコビッチのライトスパイクを決められる。クロアチア6-1リードだが、ここまでバーバラのスパイク決定は1本もない。この後、中国がサーブで崩すなどで追い上げても、クロアチアもバーバラのスパイク、さらにリマッツが呉咏梅を止めるなどで突き放す。15-11からリマッツのサービスエース、さらに殷茵が時間差攻撃をミス、クロアチアが2ブレーク。さらに、18-12からチェブキナが時間差を止め、クロアチアのリードは7点にまで広がった。しかし、中国はここから猛然と追い上げる。クロアチアのサーブレシーブが安定せず、バーバラにボールが集中したところを次々シャット。バーバラのスパイクミス、その他のミスもあり、24-23まで追い上げた。日本戦の第1セットと全く同じ場面になりかけた。23点目以降全てバーバラで切られ、25-23クロアチア。これもやはり、序盤のフェイクが効いたのだ。

第2セットは、第1セットとは逆に、中国が序盤いきなりバーバラを止め、殷茵のスパイクなどで4-1とリード。この後中国は、殷々、陳静のサービスエースで突き放す。さらに、呉咏梅が第1セットのお返しとチェブキナをシャット、邱愛華のバックアタックで、中国のリードは16-10と広がった。21-15から、クロアチアは、リマッツの速攻数本、さらにシスコビッチをブロードに走らせるなど、決まらないことは承知でフェイクを連発する。やはり得点にはつながらなかったが、この戦い方もこれまでのクロアチアには考えられないものだった。最後は呉咏梅のクイックで25-16中国。

第3セット、開始直後にいきなりグリゴロビッチのサービスエース、2-0。しかし中国は、殷茵のフェイント、バーバラのスパイクミスで、すぐに3-2と逆転する。この後、クロアチアは中国の攻撃を拾うものの、スパイクミスが出て追い上げられない。その中でも、グリゴロビッチは相手をいらいらさせるかのように、センターの速攻を使いまくった。このセットの10点目まで、センターの速攻で実に5点を取っている。そして11-10から、中国のサーブレシーブが乱れチャンスボールをレトが決めて同点、12-12からバーバラのバックアタックでクロアチア先行、そして15-14からレトのバックアタックが決まり、孫月の時間差をリマッツがシャットして17-14。しかし、この後クロアチアのスパイクミス2連続で同点、流れが中国に傾きかける。18-18の場面、シスコビッチが殷茵を止めて何とか流れを止めると、リマッツのサーブで中国が崩されダイレクトでバーバラがブロック。クロアチア再び2点リード。グリゴロビッチは、21-20からチェブキナの速攻にトスを上げた。しかしトスが大きく乱れ、まともに打てない。チェブキナは左手で押し込み得点。23-21からチェブキナにサービスエースが出てセットポイント、そしてその次のプレー、中国の攻撃を拾い、グリゴロビッチが何とツーアタック。これが決まり25-21クロアチア。中国から2セットを奪ったという以上に、大胆不敵きわまりないクロアチアの攻撃にただ驚くしかなかった。

第4セットは第2セットと同様の展開、開始いきなりバーバラ・レトが相次いで止められ、さらに孫月のサービスエースが出るなど、6-1中国リード。クロアチアはいったんは1ブレーク差まで追い上げる。しかし、11-9からレトのバックアタックがアウト、さらに孫月に再びサービスエース、流れは決定的に中国へ。この後殷茵のスパイクやバーバラのスパイクミスで18-11中国リードとなった。最後は殷茵のフェイントが決まり25-19中国。ここでクロアチアにとって悔やまれるのは、このセットは全くと言っていいほどフェイクがなかったこと。最後までバーバラとレトにボールをあげ続けた。このまま最終セットに突入したら話にならない、私はそう思った。

最終セットはこれまで4セットとは違い、序盤どちらのチームも出られない。しかし、5-5から、中国はクロアチアの攻撃をことごとく拾い、邱愛華と呉咏梅のスパイク、さらにバーバラをシャットして3連続ブレーク、8-5。9-6からレトのスパイクミスで10-6。10-8からは孫月がクロアチアのブロックをはじいて流れを相手に渡さず、さらに12-8からグリゴロビッチのツーをシャットするなど、孫月の執念が勝った。最後はクロアチアのサーブレシーブが乱れ、バーバラのスパイクがシャットされ、15-10中国。

両チームの五輪出場にかける執念が伝わり、非常にレベルの高い攻撃が展開された。おそらく今大会のベストゲームの一つである。

中国についてはまさしく、腐っても鯛、という印象である。クロアチアの攻撃に苦しめられながらも、試合中に冷静に対処して、逆転勝ちに結びつけた。試合を見ていても、全くミスをしない、という漠然とした印象はあったものの、統計上のミスは5セットで何と7点。信じがたい数字である。これではいくら何でもクロアチアが勝てる余地はない。
一方クロアチアのミスによる失点は、3倍以上の25点である。しかし、この数字自体クロアチアとしては特に多い方とは言えないし、実際ミスが多いという印象はあまりない。確かに、スパイクコースを狙いすぎてミスとか、サーブミスとかもあるにはあった。しかし、ミスの多くは、ブロックで止められたりレシーブで拾われたりすることが続いた結果ミスしたもの、言うなれば詰められてのミスだった。

確かにクロアチアは勝てなかった。しかし試合内容としては、次の決戦の日本戦に確実につながるものである。特に、第2セット終盤から第3セットにかけては、クロアチアのバレーは確実に変わりつつある、という手応えを感じた。大会前半戦では夢にも思わなかった、シドニー五輪出場という目標が、本当におぼろげながら見えてきた。
前年のワールドカップ、同じ中国戦では、ストレートで敗れている。そのワールドカップと比べても、クロアチアの戦力は明らかに落ちている。しかもワールドカップ以上の急造チーム。同じ戦い方では、ワールドカップよりよい結果が出るはずはなかった。それがなぜ2セットも奪えたかといえば、戦い方が変わったからだ。

しかし、大会を見ている、あるいは運営している側の少なくとも99%までは、日本に五輪出場してもらいたいと思っている。出場してもらわなければ困るのだ。それが観客あるいは放送局のレベルにとどまらないことは、すでにオランダ戦でもうかがわれたとおりである。しかも、今度の試合は、中国戦・イタリア戦とは違い、後はない。この試合に日本が負ければ、事実上五輪出場は絶望的になる。一方、クロアチアは、アウェー日本戦の経験のない選手が何人かいる。特にセッターがそうであることは、致命的とまで言ってもいい。これまでの試合は、クロアチアは、曲がりなりにも同じ土俵で戦うことができた。試合によっては、クロアチアの応援のほうが多かったかもしれない。しかし今度の試合は全く条件が違う。この観点では、クロアチアにとってなお極めて困難な状況である、ということには変わりがない。

スタメンおよびサーブ順
中国: 7 何キ → 11 孫月 → 10 陳静 → 6 李珊 → 17 殷茵 → 5 呉咏梅
クロアチア: 1 レト → 15 グリゴロビッチ → 13 リマッツ → 8 バーバラ → 2 シスコビッチ → 11 チェブキナ

「独断と偏見で選ぶ」MIP: 呉咏梅
高くしかも恐ろしく速いブロードは、最後まで止まらないし拾えなかった。

       CHN - CRO
         3 - 2
1st     23 - 25        21 min. 4-8 11-16 16-21
2nd     25 - 16        17 min. 8-4 16-10 21-15
3rd     21 - 25        22 min. 8-6 14-16 19-21
4th     25 - 19        20 min. 8-6 16-10 21-14
5th     15 - 10        11 min. 4-5 10- 6 12- 8
Total  109 - 95   1 h. 31 min.

私なりにクロアチア対策の注記事項を書くとすれば、バーバラが全てという考え方は非常に危険、ということである。もちろん選手はその程度のことはわかっていると思うけれども、そう考えるとクロアチアの思うつぼにはまる可能性が高い。ここまではっきり書けなかったけれども、まず、今大会を通じて、レトが絶好調である。この試合ではスパイク23本決定、決定率も60%近くに達している。以前は、ここ一番はほとんどバーバラだったが、現状ではバーバラとレトが半分ずつに近づいている。さらに、この試合のクロアチアは、センター線の速攻が相当増えている。クロアチアは強打のイメージがあるところ、守備の空いているところに落とす感じの速攻である。バーバラはきっちり止められても(この試合の決定率は43%)、周りを固める選手の対策ができないと、中国ですらフルセットの苦戦を強いられる。

余談・会場で「なすび」発見!?

もちろん、懸賞生活で有名のなすび君がいたわけではない。若い連中は、中国の呉咏梅のことを「なすび」と呼んでいるらしい、ということである。ひどい言われようだが、言われてみればなるほどと思ってしまうし、わかっていても止まらないうまさと嫌らしさも伝わってきそうだ。

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「スーパーエース力尽く」(韓国対オランダ)

高いブロックへの対応に不満を残す試合が続いた韓国、この試合も、案の定という形でスパイクミスが続きオランダに先制を許した。しかし、ブリンクマンの時間差攻撃をシャット、チョン・ソンヘのスパイクで逆転。この後オランダもク・ミンジョンを止めるなどで再逆転する。しかし、韓国はオランダの速攻によくブロックがついている。ブリンクマン・フィッセル・ウェールシンクと次々シャットし、韓国が14-12と再逆転。この後オランダはウェールシンクのバックアタックで2ブレーク、再度先行するが、中国戦の頃のような威力は感じられなかった。ブレークのチャンスでオランダはウェールシンクにトスを集めるが、決まらない。そして18-18からチョン・ソンヘのスパイクで韓国が連続ブレーク。21-19から、チャン・ソヨンがセンターから決めて、オランダは頼みのウェールシンクのフェイントがミス。さらにカン・ヘミの連続サービスエース。4連続ブレークで韓国が25-19、終盤一気に差を広げてセットを奪った。

第2セット序盤もウェールシンクにスパイクミスが続き、ク・ミンジョンのスパイクなどで6-2韓国リード。13-9から、パク・ミキョンのスパイクミス、パク・ミキョンがシャットされ、フレデルスがツー攻撃を決め、オランダが3連続ブレーク。1ブレーク差まで追い上げる。しかし、この差をオランダはどうしても追いつけない。17-15からオランダのスパイクミス、20-18からチョン・ソンヘのスパイクで韓国が突き放す。最後はパク・スジョンのサーブがブリンクマンを襲いエース、25-22韓国。

第2セット終了後、オランダの監督の怒鳴り声が会場に響きわたった。カルポリ、レゼンデ、葛和監督ならともかく、これは大会初めてではないだろうか。この喝が効いたのか、第3セット、10点過ぎまでの競り合いからオランダが抜け出す。レフェリンクのスパイクでブレーク、さらに、ク・ミンジョン、パク・スジョンのスパイクをシャット、3連続ブレーク。このセット途中で、疲労の色が濃いウェールシンクに代えてスターレンスを投入したが、そのスターレンスもブレークを重ね、選手交代が当たった。そのスターレンスのブロック・スパイクと、レフェリンクのフェイント、ユールマンのサービスエースで4連続ブレーク、21-13とオランダリード。韓国はチョン・ソンヘの時間差でようやく切るものの、場内からはフェンス際までボールを追ったオランダに大きな拍手。判官びいきか、このあたりから場内は明らかにオランダの応援が多くなっていた。最後はレフェリンクのバックアタックが決まり25-16オランダ。

第4セットも中盤まではどちらも抜け出せなかった。場内の雰囲気におされて、アウトと思われるスパイクがインの判定、オランダの得点という場面もあり。しかし、15-15からユールマンのクイックをチャン・ソヨンが止めたあたりから、流れは韓国に向かう。そして、17-16からレフェリンクの時間差がシャットされ、カン・ヘミが待たしてもブリンクマンを襲うサービスエース、韓国連続ブレーク。20-17から、ブリンクマンをパク・ミキョンがシャット、さらにチョン・ソンヘがタッチアウトをとり、決定的な2ブレークを奪った。最後はク・ミンジョンが決めて25-20。

スタメンおよびサーブ順
韓国: 4 ク・ミンジョン → 3 カン・ヘミ → 15 チャン・ソヨン → 9 チョン・ソンヘ → 7 パク・ミキョン → 10 パク・スジョン
オランダ: 8 レーンストラ → 10 ウェールシンク → 15 フィッセル → 4 ブリンクマン → 14 フレデルス → 3 ユールマン

「独断と偏見で選ぶ」MIP: カン・ヘミ
トスワークのさえに加えて、サーブでブリンクマンを狙い打ちしてサービスエースを連発。

       KOR - NED
         3 - 1
1st     25 - 19        25 min. 6-8 15-16 21-19
2nd     25 - 22        23 min. 8-4 16-14 21-18
3rd     16 - 25        20 min. 8-7 12-16 13-21
4th     25 - 20        24 min. 8-7 16-15 21-17
Total   91 - 86   1 h. 32 min.

韓国は、気がついてみればという感じで、五輪出場当確にこぎ着けた。もともと勝ちを計算できなかったイタリア戦を除けば全ての試合を順当に勝ち続けた。この試合では、オランダの速攻やコンビ攻撃にもブロックがきっちりついていた。また、ブリンクマンを狙った戦略サーブが非常に有効で、オランダにリズムを作らせなかった。

オランダは中国を破る金星を上げながら、この時点で4敗となり、五輪出場絶望となった。ウェールシンクのスパイクに前日までの威力はなかった。すでに力を使い果たしていた。振り返ってみれば、前日のクロアチア戦はまさに「討ち死に」だった。ブリンクマンはウェールシンク以上に決まらず、しかもサーブレシーブミスを連発した。
前日負傷のレフェリンクが先発しなかったことも痛手となった。しかもレフェリンクの代わりに出場したのはスターレンスでもなく、レーンストラである。スターレンスはウェールシンクの救援あるいはピンチブロッカーとして残したかったのかもしれないが、この起用も非常に疑問が感じられた。
オランダは五輪出場に向けて、ウェールシンクとブリンクマンのベテランが復帰。中国戦では恐ろしく強いチームができたかと思われた。しかし、結局はこの2人におんぶにだっこから抜け出せなかった。オランダの正セッター、フレデルスについては、今大会前はあまりいい印象を持っていなかった。しかし、この大会を見る限り、トスの質自体はオープンも速攻も全く問題ない。問題は、点数がほしい場面ほど、安全ということでベテランエースに頼りすぎたところにある。勝負所で相手のマークを外すような大胆さがセッターには必要だ。そのあたりの度胸というか勝負勘は、練習で身につくものではないのだろう。このフレデルスが正セッターだった昨シーズンのナポリのチームが勝てなかった理由も、何となくうかがえる。
逆に、トスの質は悪くても、そのあたりのセンスが強く感じられたのがクロアチアのグリゴロビッチである。今大会、グリゴロビッチは、トスワーク以外でも、セットの終盤とか流れを変えるところで自分で得点をとる場面があり、独特の勝負勘があるようだ。


今大会、第1試合から第3試合までは、何と2時間間隔で試合開始時間が予定されている。あまりにも強引な予定である。テレビ観戦でも、ストレートで試合が終わってさえ、次の試合まで時間が足りないと悲鳴を上げていた。(これは全セットラリーポイント制だから可能な設定である。かつてのサイドアウト制では、試合と試合は最低2時間半間隔、1日4試合行うためには開始時間を少なくとも1時間早めないとできない。男子世界選手権では、1日4試合で純粋に試合時間のみで9時間オーバー、第1試合開始が朝10時、最終試合終了が夜10時という日があった。)
ましてこの日は第1,2試合がフルセット、第3試合が4セットである。前の試合が終わる前に、すでに次の試合の対戦チームが通路で待っている。試合終了から次の試合の選手入場まで数分。1日4試合以上でも試合と試合の間で休みが取れればまだ楽なのだが、3試合14セット休みなしで連続はあまりにもつらい。大会が終わったら、結果がどうあろうとも、ぶっ倒れそうな予感さえした。

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「崖っぷちに詰められた」(イタリア対日本)

第1セット序盤は、イタリアにサーブミス・スパイクミスが続き、8-7と差がつかずタイムアウト。しかし、この時点で極めて悪い予感はした。7-6の場面まで、日本のスパイクはことごとく決まらなかったからだ。そして、12-12から日本のサーブレシーブが乱れ、大懸がシャットされる。さらに、15-13から、ブラガリアのサービスエース、リニエーリのスパイクなどで3連続ブレーク、18-13までイタリアにリードを広げられた。この場面で、日本は杉山から鈴木に選手交代。18-14からその鈴木にネットインエース、流れが少しずつ変わる。19-16からの竹下のサーブ順でも、イタリアのサーブレシーブミス、満永のフェイントで2ブレーク。さらに20-19から熊前に代えて投入の高橋にサービスエース、同点。葛和監督の選手交代が機能した数少ない場面だった。しかし、23-22から、高橋にサーブレシーブのミス、チャンスボールをリニエーリに決められてセットポイント、次のプレーでもリニエーリに決められ25-22イタリア。

第2セットは、3-2イタリアリードから、レッジェーリのサーブ順で大懸が止められ、大懸を襲うサービスエースなどでイタリアが4連続ブレーク、7-2となる。しかし、日本も直後に満永のサーブでイタリアを崩し、鈴木のブロードと大懸のスパイク、相手のサーブレシーブミスで、すぐ4連続ブレークで同点とする。この後日本は、これまでほとんど見られなかった鈴木のクイックで切る場面が2回続く。そしてその鈴木が後衛に下がったところ、果たして、森山のブロードが2本連続リニエーリに押さえ込まれる。この後日本も1ブレークは返すがそのたびに突き放される。そして19-16から、鈴木のクイック、ブロードが相次いでシャットされ、イタリアに決定的な連続ブレーク。最後はレッジェーリのクイックで25-19イタリア。

第3セットは、序盤から日本のスパイクが全く決まらず、日本にミスも出て4-0とイタリア先制。さらに、トグットのサーブで崩され9-3とリードが広がる。この後も、日本にサーブレシーブのミス、イタリアにブロックが次々出るなど、全くイタリアの一方的ペース。リニエーリからバックから返したのが決まったり、カッチャトーリがツーを決めたりするなど、イタリアはやりたい放題。最後はブラガリアのブロードが決まり25-13イタリア。

イタリアは日本を徹底的に研究し、全ての攻撃を封じてきた。ここまで完璧に詰められると、前年ワールドカップは、この予選か本番のためのデータ集めにすぎなかったのか、と思えるくらいだ。

この試合は、全日本の究極の問題点がはっきりと出た試合だったと思う。それは、一つの戦い方しかできない、ということ。レフトの速い攻撃にしろ、センター線のブロードにしろ、日本は第1セット最初のテクニカルタイムアウトですでに詰められていた。とすれば、その詰められた際どうするのかが問題である。しかし、今の全日本ではどうにもできない。なぜなら、ほかの戦い方はできないからだ。もっと言えば、ほかの戦い方を完成させる意志もなかった、というのが正しいだろう。このチームは非常に均質なチームだ。均質という意味は、誰が入っても戦術が同じことである。違う戦い方をするための駒は用意されていない。例えば、センターにしても、誰が入ってもほとんどブロード一本槍。この試合、鈴木がクイックを見せたが、最初は決まっても1セットもしたら1枚で止められる有様だった。なぜクイックを得意とする選手を入れないのか。(クイックが難しいのは、セッターが極端に小型であることも理由の一つだが。)あるいは、同じブロードにしても、もっと速い、あるいは高い選手を入れられなかったのか。また、エースの控えが大懸の縮小コピーの高橋ということも不満が残る。そして本来大砲タイプではない熊前に大砲の役割を求め続けた。なぜパワーと高さで局面を打開できる選手を入れないのか。

日本がやたらと弱いとは言えないが、窮地に立たされたことは事実。また、これだけ簡単に日本を詰められるということを示した点で、この試合の意味は大きい。私は、クロアチアがそれほど強いチームだとはいまだに思えない。その私でも、さすがにこの日の試合内容では、日本が簡単に勝てるとは言えない。

スタメンおよびサーブ順
イタリア: 7 カッチャトーリ → 2 リニエーリ → 4 レッジェーリ → 3 トグット → 12 ピッチニーニ → 18 ブラガリア
日本: 15 竹下 → 8 熊前 → 9 森山 → 11 満永 → 7 大懸 → 18 杉山

「独断と偏見で選ぶ」MIP: カッチャトーリ
五輪初出場おめでとう!この試合はほぼ完璧な試合で、誰を選んでもよいのだが、自由自在のトス回しと、キャプテンとしてチームを初の五輪に導いた功績に一票。

       ITA - JPN
         3 - 0
1st     25 - 22       23 min. 8-7 16-13 21-20
2nd     25 - 19       20 min. 8-7 16-14 21-16
3rd     25 - 13       19 min. 8-3 16- 9 21-11
Total   75 - 54   1 h. 2 min.

この時点で、日本の勝敗の流れが、98年の世界選手権に酷似していることが指摘された。
格下相手2試合(98年ペルー・ケニア、今大会アルゼンチン・カナダ)+オランダに3連勝
98年は、1日休みの後、ロシアに1-3負け、ブラジルにストレート負け
今大会は、1日休みの後、中国に1-3負け、イタリアにストレート負け
そして98年も今大会も、休み明けはクロアチア戦。(なお、98年は、ブラジル戦の後ドミニカとの対戦があった)
その世界選手権と同じ流れが続けば、五輪出場はないと心配された。98年のときは、休み明けのクロアチア戦でストレート負け。(参考までに、当時のクロアチアのメンバーは、セッターはリヒテンシュタイン、センターチェブキナ、セッター対角にシドレンコが入っていた。)さらに最終日の順位決定戦、予選ラウンドで一度は勝ったオランダにまで負けた。今大会、最終日は苦手中の苦手の韓国戦、勝ちははじめから期待できない。

この日の結果、かなり大会の状況は見えてきた。まず、イタリアは当確から五輪出場決定に変わった。さらに、この日オランダを下した韓国が2番目の当確チームとなっている。一方、決戦に敗れたオランダのほうは脱落。残り2枚の切符を中国・日本・クロアチアが争うという図式である。その中でもアルゼンチン戦を残し、韓国とも相性のよい中国はかなり有利である。突き詰めるところ、第6日の日本対クロアチアの直接対決に勝ったほうが、最後の五輪切符をほぼ手中にするということになる。

チームの力としては最も苦しいのはクロアチアである。クロアチアがこの段階まで五輪出場権争いに残っていること自体、直前の予想を全く覆すものである。しかし、星取りという観点では、日本が最も苦しい状況にある。日本はクロアチア戦に負ければ即アウト。クロアチアは日本戦に負けたとしても、1セットでも奪っていればイタリア戦に望みをつなぐことができる可能性が大きい。

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第6日

「控えセッターでも余裕勝ち」(イタリア対カナダ)

イタリアは前日までで五輪出場が決まっている。しかも相手も格下、最後に残る難敵のクロアチア戦に向けて、控えメンバーで戦うことも予想された。しかし、セッターのみ控えのロビアンコに代え、アタッカーはこれまでのレギュラーと同じ、というメンバーで先発した。

カナダの攻撃力不足は惨憺たるものである。開始早々レッジェーリのサーブ順でイタリアが自由自在の攻撃を見せ、6連続ブレーク、8-1。この後もピッチニーニのサーブで崩して4連続ブレーク、リニエーリのスパイクとフェイントで連続ブレークなど、イタリアの猛攻ばかりが目立ち、25-12イタリア。

第2セットも、イタリアが6-5リードからブラガリアのサーブで崩し、4連続ブレーク。しかしこの後、ロビアンコのツーがシャットされ、さらにイタリアに2本ミスが続きカナダが3連続ブレーク、1ブレーク差にする。しかしイタリアは、15-12から、2枚替えで入ったカッチャトーリのサーブで崩し、4連続ブレーク、突き放す。最後はケリーのスパイクがミス、25-19イタリア。

第3セットは序盤イタリアのミスでカナダがリードする。しかし、5-4カナダリードからピッチニーニのサーブ順でサーブレシーブミスを連発、イタリアが連続ブレークで早々と逆転。10点過ぎまでは点数が離れなかったが、12-11からケリーのスパイクミス、ピッチニーニのスパイクで連続ブレーク。この後もリニエーリのスパイクなどでイタリアがリードを広げる。最後はピンチサーバーで入ったミフコバのサービスエース、25-16イタリア。

イタリアは、セット中盤で、2枚替えの形を取りながらカッチャトーリとメロを起用。セット終盤ではベテランのミフコバとベルティーニも使った。全員使うかと思われたが、控えセンターのパッジだけ最後まで出番がなかったようだ。セッターが変わっても、イタリアは終始余裕を持って戦った。我々が危惧した(?)よりはモチベーションは維持できているようだ。

スタメンおよびサーブ順
イタリア: 14 ロビアンコ → 2 リニエーリ → 4 レッジェーリ → 3 トグット → 12 ピッチニーニ → 18 ブラガリア
カナダ: 4 プリビロバ → 9 ケリー → 1 エクスネール → 11 ラウ → 3 ルサー → 8 ミッチェル

「独断と偏見で選ぶ」MIP: ロビアンコ
今大会はこの試合が初先発ながら、カッチャトーリとも遜色ないトスワークを見せた。

       ITA - CAN
         3 - 0
1st     25 - 12   17 min. 8-1 16- 7 21-10
2nd     25 - 19   21 min. 8-5 16-12 21-16
3rd     25 - 16   19 min. 8-7 16-13 21-14
Total   75 - 47   57 min.

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「アジアの頂点はどちらに」(中国対韓国)

第1セットは、序盤孫月のサーブに韓国が崩される。いきなりサービスエース、その後もサーブレシーブミスが多く、殷茵にスパイク・フェイントを決められるなど、6連続ブレークで7-1中国リード。中国のリードは一時13-5まで開いた。しかしその後は韓国が次第に追い上げる。孫月・殷茵をシャットするなど、6ローテで4ブレーク、18-15まで追い上げた。しかし、20-16からパク・ミキョンの速攻を陳静がブロック、中国が大きな1ブレーク。結局韓国は追い上げきれず、最後は殷茵のスパイクが決まり、25-21中国。

第2セットは、最初のプレーで韓国が粘ってチョン・ソンヘがスパイクを決め、さらにパク・ミキョンが3連続スパイクブレーク、4-0と韓国が先制。11-6からのカン・ヘミのサーブ順でも中国を崩し、2ブレーク。第1セットと全く逆の展開になる。その後も中国の追い上げはほとんどなく、最後はパク・スジョンがセンターから討ってブロックアウトをとり、25-18韓国。

第3セット序盤は、第1セット同様孫月のサーブで韓国を崩し4連続ブレーク、中国がリード。殷茵にもサービスエースが出るなどで、中国のリードは11-5まで広がった。しかし、中国にサーブレシーブの乱れもあり、チャン・ソヨンのブロードとク・ミンジョンのスパイクで韓国がすぐに2ブレーク、11-8。15-12からパク・スジョンの速攻でさらに1ブレーク。この後20-17までサイドアウトが続く。そこから、チョン・ソンヘのスパイクで連続ブレーク、同点。22-22から、パク・ミキョンのライト攻撃で韓国が先行。24-23で迎えたセットポイント、第2セット最後と同じく、パク・スジョンがセンターから打ち、ブロックアウト。ブレーク一発で決めた。
17-15の場面で、中国は邱愛華に代えて巫丹を投入。当然後衛での守備固めと思われたのだが、前衛でも使い続ける。なぜ邱愛華を戻さないのか、と思われた。邱愛華のコンビがなくなったこともあり、韓国がしだいに中国のスパイクを拾うようになって、終盤一気の逆転だった。

第4セットに入ってもセッター対角は巫丹のまま。不可思議きわまりない選手起用だ。ただし韓国は、巫丹をアタッカーとしてはほとんどマークしていないようだった。序盤、点数は競っているものの、勢いは韓国にあるかと思われた。しかし、8-7中国リードの場面で、お見合いしてボールを落としたところから、韓国の動きが急激に鈍る。11-9からホールディングとク・ミンジョンのスパイクミス、連続ミスで中国が2ブレーク。14-10から、孫月のスパイクと殷茵のサービスエースで連続ブレーク、一気に差が開いた。20-15からは、韓国のサーブレシーブの乱れもあり、殷茵のスパイクで連続ブレーク。最後は呉咏梅がツーで打って決めて、25-18中国。

最終セット、韓国はもはや足の動きもジャンプも格段に落ちていた。開始いきなり何キにサービスエース、孫月のスパイクで2連続ブレーク、2-0。鬼門の孫月のサーブで、またサーブレシーブミス、1ブレーク追加、4-1。そして陳静のサーブ順で、殷茵に次々スパイクをたたき込まれ、中国の一方的展開になった。5連続ブレーク(うち殷茵のスパイク3)で10-2、最後も韓国のサーブレシーブミス、つなぎきれずに終わった。

中国はこの日も地力を見せ、3試合連続の逆転勝ち。オランダ・イタリアに連敗したときは五輪出場も危ういと思われたが、ようやく当確までこぎ着けた。

スタメンおよびサーブ順
中国: 7 何キ → 11 孫月 → 10 陳静 → 6 李珊 → 17 殷茵 → 5 呉咏梅
韓国: 3 カン・ヘミ → 15 チャン・ソヨン → 9 チョン・ソンヘ → 7 パク・ミキョン → 10 パク・スジョン → 4 ク・ミンジョン

「独断と偏見で選ぶ」MIP: 殷茵
この大会、中国の第一エースはこの選手に変わってしまったようだ。二段トスを打っても威力十分、速いトスも打てる。特に、最終セットは一人で打ちまくって勝負を決めた。なぜこの選手を大会前半先発で使わなかったのか。

       CHN - KOR
         3 - 2
1st     25 - 21        23 min. 8-2 16-10 21-16
2nd     18 - 25        21 min. 3-8 10-16 15-21
3rd     23 - 25        25 min. 8-3 16-13 21-20
4th     25 - 18        20 min. 8-6 16-10 21-15
5th     15 -  7        10 min. 5-2 10- 2 12- 5
Total  106 - 96   1 h. 39 min.

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「実りなき孤軍奮闘」(オランダ対アルゼンチン)

オランダは五輪出場絶望。しかも相手は格下とあって、ウェールシンクを休ませ、スーパーエースのポジションにはスターレンスを入れた。
試合開始早々、アルゼンチンはスパイクミス、サーブミス、サーブレシーブのミスと、ミスを連発。全てミス絡みの4失点で4-1オランダリード。ユールマンのクイック、アンサルディのスパイクミスなどで、オランダは11-6まで差を広げた。しかし、そこからラマスのサービスエース2本、さらにレがスターレンスをシャット。3連続ブレークで11-10とし、一気に接戦となった。アルゼンチンは追い上げながらまたミスを連発、16-13オランダリード。しかし、五輪の望みの無くなったオランダも、アルゼンチンにつきあうかのようにミスを続けた。フィッセルがサーブミス、スターレンスとブリンクマンにスパイクミスが続き、全てミスの4連続失点。アルゼンチンが17-16と逆転。この後も両チームミスを連発、うんざりするようなミス合戦となった。22-21アルゼンチンリードからは何と3プレー連続サーブミス。場内もテレビの前も唖然呆然。アルゼンチン先行のままデュースに入った。24-24からコスタグランデのスパイクミスでオランダ先行。しかし、25-25からオランダにサーブレシーブのミス、アルゼンチンがすぐに先行する。そして、27-26からミューラーのサービスエース。アルゼンチンがセットを奪う。

第1セットを奪われたオランダ、この試合も結局ウェールシンクを引きずり出された。第2セットは、4-3オランダ先行からフレデルスのサービスエース2本などでオランダが3連続ブレーク。レフェリンクにも待望久しいノータッチエースが出て、11-6オランダリードとした。しかし、その直後に、アンサルディのスパイク、レフェリンクのバックアタックミス、ウェールシンクのバックアタックもシャットされ、3連続ブレーク、第1セットと全く同じ点数の展開になる。16-13から、アルゼンチンのサーブレシーブミス、ウェールシンクのフェイント、レフェリンクのスパイクで、オランダが3連続ブレーク。このセットはきっちり突き放したかと思われた。ところが21-16から、全てコスタグランデのバックからのスパイク・フェイントで4得点、2ブレーク。24-20でセットポイントを迎えながら、サーブレシーブのミス連発で2ブレーク返され、その次のプレーでもコスタグランデにトスが上がる。ここで決められたら本当に雲行きが怪しくなる場面だったが、ユールマンがそのコスタグランデをシャットして決めた。それにしても、オランダの22,24点目はアルゼンチンのサーブミス、23点目はサーブレシーブのミスが絡んだブレーク、アルゼンチンには終盤にもったいないミスが多すぎた。

第3セットは、7-7から、ウェールシンク・レフェリンクのバックアタック、アルゼンチンのミスなどで、オランダ5連続ブレーク。このセット、アルゼンチンは全くラマスとタイミングのあっていないアンサルディに代えてヘルマンを先発したが、流れは変わらず、結局アンサルディを戻した。レフェリンクのフェイントで15-9までオランダのリードが広がった。しかしこの試合、とにかく楽に終わらない。16-11の場面で、アルゼンチンは、この試合極度の不振でサーブミスも連発したコンデに代わり、13番ロリエを大会初めて起用。174cmの小柄のエースながら、よくジャンプしタッチアウトをとるのがうまい。コスタグランデとコンデは比較的タイプの似たエースだが、コスタグランデとロリエだとうまい具合の「大砲と機関銃」の組み合わせである。アルゼンチン、まだこんな選手が残っていたとは。これで一気に流れが変わった。そのロリエとコスタグランデのスパイク、ラマスのエース、ブリンクマンをシャットなどで、3ローテで6ブレーク、19-18と一気に逆転した。オランダはブリンクマンのスパイクとアンサルディのスパイクミスですぐに連続ブレーク、21-19と再逆転。しかしアルゼンチンも、ピンチサーバーのクルソーエのサービスエース、ユールマンのクイックを止めて、連続ブレーク、22-21とまた逆転。しかし、23-23から、ユールマンがまたもコスタグランデをシャット。その次のプレーでもウェールシンクにバックアタックを決められた。このセットも最後にコスタグランデが力尽き、25-23オランダ。このセットは、アルゼンチン選手のミスというより、ロリエ投入が遅れたことが悔やまれた。

第4セットにいたり、コスタグランデがかなりブロックにかかるようになる。7-7から、アンサルディをシャット、コスタグランデのサーブレシーブミス、ブリンクマンのフェイントでオランダが3連続ブレーク。14-12からは、ウェールシンクのスパイクとアルゼンチンのミスで3連続ブレーク。20-15からはフィッセルにサービスエース、そして第3セット悩まされたロリエも捕まえることに成功する。最後はアルゼンチンにネットタッチがあり、25-18オランダ。

オランダのフレデルスはこれまで、ウェールシンク・ブリンクマンのベテランエースに頼りすぎる傾向があった。その一方、レフェリンクは不調の試合が多かった。しかしこの試合では、第2セット以降、意図的にレフェリンクに打たせていた。そのうちにレフェリンクの調子が上がり、今大会ほとんど影を潜めていたサービスエースも出た。それによってベテランのウェールシンク・ブリンクマンも楽に決められるようになった。いくらオランダが残骸になっているとはいえ、センターの高い速攻は簡単に止めたり拾ったりできない。しだいにオランダが攻撃のリズムをつかみ、3セット連取の逆転勝ちに結びつけた。

さて、一方のアルゼンチンは、エースの片方のコンデが極度の不調、アンサルディもラマスとなかなか合わない、センターの速攻も滅多にない。つまりコスタグランデしか打ってこないし決まらない。そのコスタグランデが、59打数31決定という恐ろしい勢いでスパイクを決め、オランダの監督に「新しいイエリッチ」と言わしめた。さらに、サーブレシーブでもチームの中心であるという点で、コスタグランデはバーバラを上回る。連日のごとくサーブでも狙われ体力を消耗し尽くしている。まともにサーブレシーブのできる選手がもっといれば、コスタグランデを攻撃に専念させたほうが、チームとしては絶対に強いと思われる。しかし、監督としては、攻撃だけでなく守備もきちんとできる選手に育てたいという意図があるのだろう。実際、これからは、190前後かそれ以上で守備もできるのが当たり前になるはずだ。それにしても、ほかの6人、何やっているんだ。

スタメンおよびサーブ順
オランダ: 3 ユールマン → 12 レフェリンク → 9 スターレンス → 15 フィッセル → 4 ブリンクマン → 14 フレデルス
アルゼンチン: 4 ラマス → 2 コスタグランデ → 9 レ → 14 アンサルディ → 3 コンデ → 6 ミューラー

「独断と偏見で選ぶ」MIP: コスタグランデ
普通MIPは勝ったチームから選ぶべきものだが、この試合だけは例外。この試合には勝てなかったものの、恐ろしいほどの将来性を感じさせた。

       NED - ARG
         3 - 1
1st     26 - 28        24 min. 8-5 16-13 20-21
2nd     25 - 22        23 min. 8-5 16-13 21-15
3rd     25 - 23        25 min. 8-7 16-10 21-19
4th     25 - 18        22 min. 8-7 16-12 21-15
Total  101 - 91   1 h. 34 min.

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「運命の対戦、死闘の果て」(日本対クロアチア)

ホーム日本には、3試合に限り、試合順を指名する権利が与えられた。そして、初戦アルゼンチン、この第6戦にクロアチア、最終戦に韓国を指名した。しかし、この対戦がこの日になったことは、決して一監督の作戦などではなく、もっと大きな、それこそ運命の導きであったように思われる。この両チームの対戦はこれまで4回。それは必ずと言っていいほど、大会の決着をつける大一番、あるいは流れを大きく左右する分岐点の試合だった。
そして、私にとっては、バーバラを初めて見た試合、それが4年前のこの最終予選の日本戦に他ならない。しかもそのときも、8チーム1回戦総当たりの第6戦だった。そして今回は、クロアチアだけでなく日本にとっても、負ければ五輪出場はほぼ絶望となる試合である。今回のクロアチアは、五輪出場など全く絶望的な状態からスタートしている。それでもここまできてしまった。こうならざるを得ないのか。感慨を禁じ得なかった。

この試合は、オランダ戦中国戦とブロックで活躍が目立ったリマッツが、水ぼうそうのため出場停止。クロアチアには痛いアクシデントである。
第1セット、クロアチアはバーバラとレトが打ちまくり、8-5とリード。日本は熊前のスパイクで連続ブレーク、同点に追いつくが、満永の速攻がシャットされ、サーブレシーブをミスするなどで、すぐ11-8と突き放される。その後も、日本が追いついてもすぐにクロアチアが突き放す展開が続く。13-13の場面で、日本は満永に代えて板橋、竹下に代えて大貫の2枚替えを行う。しかしこれは失敗だった。14-13から、日本にミスが2本、2枚替えで入っていた大貫がシャットされた。ここでタイムアウト、2枚替えを元に戻すものの、さらにバーバラに連続サービスエース。5連続ブレークで19-13となった。しかし、いくらリードしても、クロアチアがセットをとる気は全くしなかった。バーバラとレトに頼り続ける限り、クロアチアが勝つことはあり得ない。そして、21-16から、予感は現実になる。満永のブロードと熊前のスパイクで3ブレークの後、クロアチアのサーブレシーブが乱れバーバラのバックアタックが止められ、熊前のスパイクでさらに1ブレーク。5連続ブレークで同点になる。この後はサイドアウトが続きデュースに突入する。26-26から、杉山がサーブレシーブ陣形のど真ん中をつくノータッチエース。その次のプレーでもサーブレシーブが乱れ、バーバラがバックアタックを大きくふかした。28-26、前年ワールドカップのこの対戦の第1セットを全く再現した逆転劇だった。

第2セット序盤は、日本は大懸と満永のスパイク、クロアチアはバーバラのスパイクと日本のサーブレシーブの乱れからブレーク。どちらかがリードしてもすぐ追いつかれる。9-9の場面で、第1セット26-26の場面と全く同じ軌道に杉山のノータッチエースが決まる。大懸のスパイクで14-12と日本がリードを広げる。直後に大懸のレフトと満永の時間差を立て続けにシャット、15-14とクロアチアが逆転。しかし、16-16からまずバーバラのバックアタックがミス。19-18から竹下にサービスエース。21-19の場面でもサーブレシーブが乱れ、グリゴロビッチがオーバーネット、さらにバーバラがまたスパイクミス。クロアチアがミスを連発、全くの自滅のセットだった。その後ユルツァンにサービスエース、バーバラが大懸をシャットしたものの、手遅れ。最後は大懸がブロックアウトをとり、25-23で日本。

これは明らかに、グリゴロビッチのトスワークの間違いである。前年ワールドカップでのリヒテンシュタインと全く同じであり、あるいは今大会では、フレデルスも同じ失敗をやっている。しかし、私はグリゴロビッチを責める気にはなれなかった。グリゴロビッチがフル代表に召集されて何日になるのか。どんなに長く見積もっても、20日はない。この試合の20日前は、セッターリヒテンシュタインで戦ったBCVマスターズの最終戦である。この大会をどんなチームで戦うのか、このチームには最後の最後までまともなヴィジョンがなかった。あったとは思えない。挙げ句の果てにユース出たてのセッターに全てを託した。グリゴロビッチはその清算をやらされているだけだ。
アウェーで1万の観客を敵に回しての試合、それも相手は後のない状況で死に物狂い。それでも、クロアチア自身が負け続けていたなら、ただ自分のトス回しをすればよかっただろう。ここまで勝てる相手に勝って気がつけば3勝、星取りだけ見れば、なまじ五輪出場の可能性がまだ残っている。このとてつもなく難しい状況の試合に勝つための、経験も自信もあるはずのない選手が、クロアチアのトスを上げるのだ。クロアチアがセットをとれるとも思えなかったし、まして逆転できるなど考えられなかった。そのための過程を経ているとは、とても思えなかった。
今回も4年前と全く同様、バーバラの五輪出場の夢はここで断たれるかと思うと、やはり胸にこみ上げてくるものがあった。4年前の同じ最終予選、同じ第6戦の同じ日本戦、クロアチアはストレート負けでアトランタ五輪出場の夢を断たれた。前回も、本来のレギュラーでそろったのはバーバラとキリロワのみ。今回のメンバーも、五輪出場は初めから期待できない。今回の五輪予選を旧ソ連(ロシア)から帰化したベテラン選手に頼って戦うのは無理ということははっきりしていたはずだ。それにもかかわらず、新しい世代が主役のチームがこの期に及んで全くできていない。その無能・無計画に全ての責任はある。マイナスからのスタート、それでも選手たちは必死に戦い、思ったよりはるかに早くゼロの地点にたどり着きそうだ。4年後のチャンスにもう一度賭ける価値はあるかもしれないという手応えは、前日の中国戦までで得ていた。しかし、とにかくチームの責任者が代わらない限りは、同じ失敗を繰り返すだけとしか思えなかった。

第2セットと第3セットの間には10分間のインターバルがある。そして試合再開。ここでクロアチアは大きく作戦を変えてきた。このままでは前年のワールドカップの繰り返しになる、その判断があったことは間違いない。シスコビッチのライトからのスパイク2本。その後はレトのオープンとフェイント。ユルツァン、チェブキナにサービスエースが出るなどで、10-7クロアチアリード。その次のプレー、ラリー中に3回くらいチャンスボールがあって、全てレトのバックアタックに持っていった。そう、バーバラを全く使わないのだ。
バーバラをクールダウンさせるよう指示を出したのは誰なのか。監督かコーチか、それともチェブキナか。誰かから指示が出たことは間違いないと思うし、日本のミスで楽をしたところもあるが、グリゴロビッチもよく指示通りにしたものである。もし本人の判断でやったとしたら、グリゴロビッチは本当にとんでもないセッターだ。
バーバラを全く使わずにクロアチアが先行したことで、流れは微妙に変わった。このセット最初のバーバラのスパイクはシャットされる。しかし、12-10から、日本のフェイントがミス、サーブレシーブミスも絡み、バーバラのフェイント、スパイクが決まり、クロアチア3連続ブレーク、15-10。そのすぐ後、チェブキナの速攻がシャットされ、さらにクロアチアにローテーションミス、バーバラのスパイクミスと、またミスが続き、15-14。しかし日本も大懸がスパイクミス、追いつけない。17-15からシスコビッチのノータッチエース、レトのスパイクでクロアチアが連続ブレーク。クロアチアの21,22点目はいずれも日本のミス。23-19から大懸がシャットされ、このセットは勝負あった。最後はバーバラにフェイントを決められて、25-20クロアチア。このセットは、クロアチアが崩れかかっているにもかかわらず、日本もミスを出してクロアチアを助けてしまった。

第4セット、クロアチアにサーブレシーブの乱れもあり、大懸のレフトと満永の時間差で日本が3連続ブレーク、4-1と快調に滑り出した。バーバラとシスコビッチにサービスエース3本(うちネットイン2本)を食らい、一時先行されるものの、唖然とするようなグリゴロビッチのネットタッチで流れは日本に傾く。レトを森山がブロック、熊前のスパイクが決まり12-9と日本リード。その後も、クロアチアに1ブレークを許しても、満永と交代の大貫のサービスエース、バーバラのバックアタックを熊前がブロックするなどで、そのたびに突き放した。そして、20-17からレトのバックアタックがミス。しかし、日本の勝利は確実と思われたこの場面で、これまでこの対戦で繰り返された逆転劇が再現された―日本とクロアチアの立場が逆転して。バーバラのスパイクで2ブレーク、熊前がシャットされ、その後サーブレシーブが乱れて熊前がスパイクミス、なおバーバラのスパイクでブレーク、まさかの5連続ブレークで、23-21と一気にクロアチアが逆転。
この後はバーバラと大懸の打ち合いが続く。いったんは大懸が勝ったかのように思われた。22-24クロアチアセットポイントの場面から、大懸がスパイク4本を立て続けに決めた。その間バーバラのスパイク決定は1本のみ。26-25と逆転して日本がマッチポイントを迎えた。しかし、五輪出場の可能性がほぼなくなるというピンチを、エースではなく、チェブキナの速攻でまずしのいだ。そして、大懸を2本続けてシャットし、一気に再逆転、28-26で最終セットに持ち込んだ。
第2セット終了時点で、日本の安全圏への道のりは早くも残り3分の1になったはずだった。そしてこのセット21-17日本リード、あるいは日本マッチポイントの場面では、誰の目にも、全日本のシドニー行きが間近に見えた。そのわずかな残りも、イタリアが勝手に連れていってくれる(クロアチアに勝つということ)かもしれなかった。しかし、遅くとも数分後に見えたはずの希望は、ここ数年常に背後にあった悪夢へと一気に変わっていった。

最終セットにいたり、日本はクロアチアの攻撃を拾っても、エースがもはや決められない。結局クロアチアのエースが勝つか、日本がミスするかで、5-3とクロアチアリード。ここからチェブキナのクイック、サーブレシーブの乱れから大懸のスパイクミスとなり、クロアチアがさらに2ブレーク、7-3。この後はサイドアウトが続き10-7。そして、大懸のスパイクで日本がようやくブレーク。しかしその直後、熊前が痛恨のサーブミス、日本は流れをつかめない。バーバラと大懸が1本ずつ決めて12-9となった後、バーバラがついに、日本にとどめを刺すノータッチエース。日本はタイムアウトをとるも、大懸がシャットされマッチポイント。さらに、次のバーバラのサーブも、ネットに当たりながら相手コートに落ちた。その瞬間、全日本の終戦は、限りなく現実に近いものとなった。

この試合展開で、冷静に見ていられるはずもなかった。しかしそれでさえ、漠然と、日本のサーブレシーブが乱れる場面がかなり多かった、という記憶がある。そのことと、両エースの決定率がよかったこと、特に熊前は第2セットまでは「打てば決まる」状態だったこともあり、日本はセンター線を使う場面が極度に少なかった。本来の形でないエース勝負、それも第4セットあたりからは、クロアチア以上にレフトオープンばかり続けた。それでも第2セットまではほとんどタッチアウトをとって決めていた。しかし第3セット以降、しだいにタッチアウトをとれる場面が少なくなった。そして第4セット終盤、日本の勝利が目の前に見えながら、大懸が急激に決まらなくなり、一気の逆転を許した。
今大会は、日本戦に限り、第2セットと第3セットの間に10分間のインターバルがある(それ以外はセット間の休憩は全て3分)。前年のワールドカップでは、日本との対戦で2セットを先取しながらその後3セットを連取され逆転負けしたアメリカの監督が、この10分休みがなければと悔やんだ、というエピソードがある。しかし、今回はこの休みは、見事なまでに日本にマイナスに働いた。第3セット、日本は自らのミスで流れを相手にやる場面が続いた。気がつかないうちに隙が入り込んだことは間違いない。一方、クロアチアは、長いインターバルで逆に息を吹き返したようだった。
もう一つ、日本にとって悔やまれるのは、クロアチアの対戦順をわざわざこの第6戦に指定したこと。第3戦以前にしておけば、第3セットに油断があったとか、第4セットにエースが決められなくなったとか、そのような場面に至るまでもなく、簡単に勝てるはずの相手だった。前半3戦と、後半特に中国戦以降では、それほど試合内容が違う。それが今大会のクロアチアだった。対戦順を決めた理由として、クロアチアにはベテランが多いので、体力が落ちてくる終盤の試合に決めた、というようなことを葛和監督は語っていた。つまり、この対戦順の指名は、帰化選手制限が決められるより前である。だから、クロアチアがユース出たてのセッターの急造チームで出てくることは想像できたはずもない。この後帰化選手の制限が決められるが、それが日本にとってかえって仇になった。ただし、2年前の世界選手権で、第7戦、しかもその前の6試合はるかに合計試合時間の長いはずのクロアチアを相手に、日本のほうがくたばっていたことを葛和監督は失念していたようだ。

クロアチアは前日(試合のない日)、主力を休養させた。それもどうやら当たったようである。第4セットから最終セットにかけて、バーバラのスパイクの破壊力はむしろ増していた。しかも、最終セットの最後の場面で、バーバラはジャンプサーブを続けた。絶対にミスの許されない場面、よほど体力に余裕がなければジャンプサーブなどできない。

しかし最後に勝敗を分けたのは、やはり精神力だと思う。日本が技術あるいはパワーで負けていることは、第5戦のイタリア戦までにはっきりした。そしてこの第6戦で、五輪に行きたいという精神力でも敗れた。
言われているほど日本が五輪出場に遠かったわけではないし、まして言われているほどクロアチアが強いわけではない。チームスポーツという観点で見れば、クロアチアよりもオランダや日本のほうが五輪出場にふさわしいと、今でも思っている。試合中にも試合以外でも、ボタンを掛け違えたかのように、日本には少しずつ間違いが重なっていった。その掛け違いと精神力の差によって起こった、衝撃の逆転だった。

スタメンおよびサーブ順
日本: 15 竹下 → 8 熊前 → 9 森山 → 11 満永 → 7 大懸 → 18 杉山
クロアチア: 1 レト → 15 グリゴロビッチ → 13 リマッツ → 8 バーバラ → 2 シスコビッチ → 11 チェブキナ

「独断と偏見で選ぶ」MIP: バーバラ
逆転を果たした第4セット終盤からのスパイク、そして試合の最後のサービスエース2本。もはや日本の守りが云々ではなく、単純にすごすぎた。怨念にも近いものが乗り移っていた。

       JPN - CRO
         2 - 3
1st     28 - 26        27 min. 5-8 13-16 15-21
2nd     25 - 23        22 min. 7-8 15-16 21-19
3rd     20 - 25        22 min. 6-8 14-16 17-21
4th     26 - 28        28 min. 8-7 16-13 21-17
5th      9 - 15        12 min. 3-5  6-10  9-12
Total  108 - 117  1 h. 51 min.
この一日で大勢は決した。シドニー五輪不出場―この日の敗戦により、日本女子としては初めての転落となる可能性が極めて大きくなってきた。第5日で五輪出場を決めたイタリアに加え、韓国も、試合には敗れながら、この日で五輪出場が確定した(最終日の日本戦にストレート負けしても、得失セット率で日本を上回るため)。そして、4勝でアルゼンチン戦を残している中国も当確。さらに、イタリアがクロアチアに負ける可能性と、日本が韓国に勝つ可能性を考えれば、クロアチアも当確に近くなった。
この試合でも案の定というか、試合終了の直後、20時過ぎにすでに某掲示板に結果がリークされていた。そして、20時50分過ぎには、某スポーツ新聞のホームページと、さらにNHKの全国区のニュースでも「玉音放送」が流れた。この表現もその掲示板から引用したものだが、近年の全日本の低迷、そして今大会、低くしかも退化した攻撃で世界に立ち向かおうとしたことを見ると、言い得て妙である。そして、この敗戦の知らせを「玉音放送」とすれば、惨敗を善戦と言い換え勝って当然の相手に勝って舞い上がっている様は、まさしく「大本営発表」である。

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第7日

「残る五輪切符はあと一枚」(中国対アルゼンチン)

実力的にいえば、中国にとってアルゼンチンは全く苦にする相手ではない。しかし、五輪出場を意識しているのか、第1セットは中国のミスが目立った。スパイクミス、サーブレシーブの乱れもあり、アンサルディにスパイクを決められ1-4とリードされてのスタート。しかしアルゼンチンも極めて不思議な立ち上がりである。というのは、コスタグランデに全くと言っていいほどトスが上がらない。この後、中国が邱愛華のサーブで崩し3連続ブレーク、すぐに7-5と逆転。しかしこの後も、中国がリードを広げても自らのミスで差を縮められてしまうというパターンがしばらく続き、15-14の1ブレーク差という場面もあった。言うなれば、最後の産みの苦しみだった。16-14から、邱愛華のサーブでまた崩して2ブレーク。呉咏梅のブロード、孫月がアンサルディをブロック、コスタグランデのスパイクミスなどで、中国が終盤にかけて一気にリードを広げ、最後は陳静のクイックで25-17。

第1セットもミスが多くスパイク決定1本のみのコスタグランデ、第2セットに入っても全くと言っていいほど決まらない。第1セット序盤、コスタグランデを全く使わなかったのは、フェイクでも何でもなく、まともにスパイクを打てる状態でないことがわかっていたのだろう。殷茵が強打とフェイントを次々とアルゼンチンコートに見舞い、殷茵のアタックだけでこのセット6ブレーク。コスタグランデが前衛の場面で12-7から7連続ブレークもあった。最後は孫月がブロード気味に走り込む珍しい攻撃で、25-11中国。

第3セット序盤、ミューラーのブロード、コスタグランデ、ロリエとことごとく中国がブロックし、5-1中国リード。この後10-6から、アルゼンチンも孫月を2回ブロック、ヘルマンのサービスエースで3連続ブレークという場面もあった。しかし、18-15から、コスタグランデをブロック、さらにアルゼンチンにサーブレシーブミス、中国が連続ブレーク。21-16からも、孫月の時間差、呉咏梅のネットインエースでさらに2ブレーク。最後は孫月が決めて25-17中国。シドニー行きの3枚目の切符は中国の手に渡った。残りはあと1枚。

中国は、第1セット中盤以降はいつも通りの試合。7割程度の力で戦っていたと思う。
これだけの大差が付いたのは、コスタグランデがほとんど決まらなかったため。ウェールシンクがクロアチア戦で力を使い果たしたのと同様、コスタグランデも前日のオランダ戦ですでに壮絶な「討ち死に」を遂げていた。しかも前日のオランダ戦は第3試合、この日は第1試合である。それにもかかわらず、この試合、アルゼンチンのサーブ順は裏エースのロリエからスタート。これは絶対的エースがレフトにいるチームのサーブ順である(そのエースを3ローテ連続前衛でスタートさせる)。例えばバーバラのいるクロアチアがそうである。力尽きたことはわかっているはずなのに、コスタグランデに絶対的エースの役割を求め続けたことに、疑問は残る。
しかし、前日途中交代で出場し流れを変えたロリエに加え、ライトのアンサルディ・ヘルマン(途中交代)の決定率は比較的高かった。また、センターのレに速攻をさせる場面も何度かあった(前日は全くなし)。これがなぜ前日にできなかったのか、とアルゼンチンとしては悔やまれよう。

スタメンおよびサーブ順
中国: 7 何キ → 11 孫月 → 10 陳静 → 6 李珊 → 17 殷茵 → 5 呉咏梅
アルゼンチン: 13 ロリエ → 6 ミューラー → 4 ラマス → 2 コスタグランデ → 9 レ → 14 アンサルディ

「独断と偏見で選ぶ」MIP: 何キ
この試合も殷茵の強打が目立ったが、その中にクイック・ブロード・時間差攻撃を織り交ぜ、相手を翻弄した。

       CHN - ARG
         3 - 0
1st     25 - 17   19 min. 8-6 16-14 21-15
2nd     25 - 11   18 min. 8-4 16- 7 21- 9
3rd     25 - 17   18 min. 8-4 16-13 21-16
Total   75 - 45   55 min.

大会前は全勝で1位通過の可能性が高いと予想された中国。しかしふたを開けてみれば、とんでもない難産の五輪出場権獲得だった。孫月と王麗那の両エースが極度の不振、オランダ・イタリアに連敗し、このときは五輪出場が危ういとさえ思われた。孫月をベンチに下げ殷茵を先発、邱愛華をライトに復帰させ、さらにバルセロナ五輪で活躍した巫丹の力も借り、ようやく流れを変えることができた。それでも、日本戦は第1セットを失い、その後も土壇場で逆転したセットがいくつかあった。クロアチア・韓国には連続フルセット勝ち、それもいずれもセットカウント1-2とリードされてからの逆転だった。逆転に次ぐ逆転で、ようやくシドニーへの道を開いた。

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「最後に拍手に送られて去る」(オランダ対カナダ)

オランダはこの試合、ウェールシンクとフィッセルをベンチに下げてのスタート。試合開始しばらくは、互いにミスが出て、それほど点差は広がらなかった。9-7オランダリードから、ミッチェルのブロードをブロック、レフェリンクの時間差が決まり、さらにカナダにサーブレシーブミスで、3連続ブレーク。バーバラのジャンプサーブも上げるのがやっとのカナダ、もっと難しいレフェリンクのサーブをまともに返せるはずもなく、ミスしてくれるまで3連続ブレーク、18-10となった。この後はほぼ点差は動かず、レフェリンクがライトから決めて25-17オランダ。

第2セットも、スターレンス・ブリンクマンのスパイクで4-1とオランダがリード。しかし、オランダはミスがやたらと多くなる。7-4からサーブミスの後スパイクミス2本連続、全てミスの連続失点で同点。12-10の場面でオランダが2枚替え、結局この試合までもウェールシンクの助けを仰ぐことになる。それからすぐ、13-11からオーセルのサーブで崩し、3連続ブレーク。ボールにさわらなくても、コートにいるだけでチームの雰囲気が引き締まる。ウェールシンクはまさしくオランダの大魔神だった。この後なおもオランダにミスが出て19-17まで追い上げられたが、22-19からスターレンス・レフェリンクのバックアタックで連続ブレーク、突き放した。最後はケリーのスパイクミスで25-20オランダ。

オランダは第3セットにいたり、レフェリンクとブリンクマンも下げ、レギュラーで残ったのはフレデルスとユールマンのみ。モチベーションのないオランダはミスを連発、カナダの得点の半分近くがオランダのミスというしまらない試合。しかしカナダも立て続けにスパイクミスを出し、9-5とオランダリード。15-11からオランダにサーブミス、スパイクミスと続き、さらにルサーにサービスエース、カナダが3連続ブレークで15-14としながら、その直後にサーブミス。ミスの数も多いが、そのタイミングが悪すぎるのが今大会のカナダだった。それでも、21-18からラウのスパイク、スターレンスをシャットして連続ブレーク、21-20。またサーブミスで流れを切りながら、23-22からケリーのスパイクでブレーク、ついに同点に。カナダの試合では今大会最大の拍手が起こる。しかしデュースに入った直後、25-24から、レフェリンクに代わり入ったサンデルスに決められて、試合終了。

スタメンおよびサーブ順
オランダ: 4 ブリンクマン → 14 フレデルス → 3 ユールマン → 12 レフェリンク → 9 スターレンス → 6 オーセル
カナダ: 1 エクスネール → 11 ラウ → 3 ルサー → 8 ミッチェル → 4 プリビロバ → 9 ケリー

「独断と偏見で選ぶ」MIP: スターレンス
前日の19歳エース対決(対コスタグランデ)ではいいところがなかったが、この試合ではオランダの次世代エースとしての存在感を見せた。特に、前衛でのスパイク以上にバックアタックが強烈である。大魔神ウェールシンクにはもはや頼れない以上、今後のオランダチームはこの選手の成長いかんにかかる。

       NED - CAN
         3 - 0
1st     25 - 17       20 min. 8-6 16-10 21-14
2nd     25 - 20       21 min. 8-7 16-11 21-18
3rd     26 - 24       23 min. 8-5 16-14 21-17
Total   76 - 61   1 h. 4 min.

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「これが世界のエース、これが五輪出場にかける執念」(イタリア対クロアチア)

この試合、ホームチーム以外の試合としては異例の6000人以上の観客が入った。当日券はとっくに売り切れており、この時間にはダフ屋の相場で本来の価格の3〜4倍までつり上がっていたという。運命の瞬間を前にして、異常な雰囲気で試合が始まった。

クロアチアのアウェーゲームは前日で終わらなかった。この試合にクロアチアが勝てば日本の五輪出場の可能性がなくなることは、観客も知っている。クロアチアは2日連続で大観衆を敵に回しての試合となった。
イタリアは第5日にすでに五輪出場を決めていたが、この試合はベストメンバーで臨んだ。第1セットは、にわかサポーターの声援にも後押しされ、イタリアが完璧な試合を展開した。レトのバックアタックミス、レトのバックアタックをシャットするなど、3-0とイタリアが先制。9-6から、イタリアにサーブレシーブのミスが2本続き、さらにバーバラのバックアタックで同点にされる。しかしこの後も、イタリアは同点までは許しても逆転は許さない。15-14から、判定が覆りバーバラのバックアタックがアウト、ここから流れは一気にイタリアに向かう。レトとバーバラのオープン、ユルツァンのクイックまでブロック、さらにクロアチアにサーブレシーブミス。3ローテ連続4ブレークで24-18、セットポイントを迎えた。最後はトグットのスパイクで25-19イタリア。

試合開始直後、クロアチアはレトとバーバラに代わる代わる持っていっていずれも決まらないという最悪の形だった。両エースのオープン攻撃に頼るだけでは、事態の打開はあり得ないと思われた。第2セットも、クロアチアのサーブレシーブが崩れ、チェブキナのクイックもシャットされるなどで5-3イタリアリード。しかし、レトのスパイクなどで8-7とクロアチアが先行した後、イタリアにサーブレシーブミスが続き、リニエーリがシャットされるかスパイクミス、連続ブレークで10-7。12-10からは、バーバラのスパイクで1ブレーク、サイドアウトをはさみこの後のクロアチアの3点はいずれもイタリアのスパイクミス、16-11。18-13からイタリアにサーブレシーブのミス。イタリアはスパイクミスが続いたピッチニーニに代わりミフコバを入れるが、そのミフコバもいきなりシャットされる。20-13、このセットはほぼ決まりかと思われた。イタリアはカッチャトーリのツーで切る。その直後、グリゴロビッチがツーアタック、しかしこれは読まれており、拾われてリニエーリに決められる。グリゴロビッチの完全なボーンヘッドで、一気に流れが変わった。バーバラのバックアタックがシャットされ、リニエーリのフェイント、クロアチアのネットタッチで、4連続ブレーク、20-18まで追い上げられた。レトのオープンで何とか流れを止めると、レトとバーバラでひたすらサイドアウトをとり続けた。イタリアはこの後ブレークできず、最後はバーバラがセンターから決めて25-22。

第3セット、イタリアはピッチニーニのスパイクで連続ブレークしながら、自らのミスが続き3-3。そしてバーバラのスパイクで連続ブレーク。11-9から、微妙な判定は今度はリニエーリのミス。そしてイタリアにサーブレシーブミス、ラリーにバーバラが勝ち、3連続ブレーク、14-9。リニエーリのサービスエースを食らった直後、15-11から、ミスが続いたトグットに代わったメロの速攻をバーバラがシャット。このあたりからバーバラには神様が入ってきたようだ。バーバラにしかボールが上がらなくても、もはやいらいらすることはなかった。バーバラに上げておけば必ず決めてくれる、そんな雰囲気さえあった。グリゴロビッチもおそらくそれを感じてトスを上げていたのだろう。17-13からピッチニーニのスパイクでブレークされるも、20-16からバーバラのバックアタックで再度突き放す。22-18から、バーバラがスパイクミス、クロアチアのサーブレシーブミスからチャンスボールをピッチニーニに決められ、3-3とした場面以来のイタリアの連続ブレーク、22-20。しかしバーバラの一休みもこれだけで、23点目から25点目まで立て続けにスパイクをたたき込んでこのセットを締めた。25-21クロアチア。バーバラはこのセット、手元記録で16点、99年ワールドカップ・キューバ戦第3セット以来の超人的活躍だった。

第4セットに入っても、バーバラは全く止まらない。しかし、クロアチアにサーブミスが続き、突き放せない展開が続いた。そして案の定、6-5クロアチアリードから、ブラガリアのサービスエース、さらにバーバラのバックアタックをレッジェーリが止めてイタリアが連続ブレーク。しかしイタリアにもサーブレシーブのミスが出て、トグットのスパイクがシャットされるかミス、クロアチア連続ブレークで10-8。14-13クロアチアリードの場面で、イタリアはチェブキナの速攻をブロック、さらにピッチニーニの連続エース、3連続ブレークで16-14と逆転した。しかし、18-17から打ち合いにバーバラが勝ってまず同点。その次は、互いにトスが乱れたが、リニエーリが打ちきれずにブロックされる。さらにバーバラのスパイクでブレーク。3連続ブレークで20-18とクロアチア再逆転。しかしバーバラのスパイクがブロックされてブレーク、すぐに20-20同点。さらにこの後も、バーバラのスパイクが2回続けてブロックに止められそうになった。バーバラのスパイクは世界一強力、したがってブロックに当たると世界一速く真下に落ちる。クロアチアの軟弱なレシーブでは、とうていフォローできるはずはなかった。しかしイタリアがブロックしたボールはコートに落ちなかった。それも2回続けてである。3度目で、バーバラはブロックを吹き飛ばした。その直後、レッジェーリのクイックがミス、さらにレッジェーリのクイックをチェブキナがブロックし、23-20クロアチアリード。クロアチアの執念におされたとしか思えない連続ブレーク。ついに運命の瞬間まで秒読みとなった。バーバラがセンターに走り込みフェイント、24点目。メロのスパイクが決まって24-22となった後のマッチポイント、クロアチアは2回のチャンスボールをいずれもレトにあげた。2本目で、レトはイタリアのレシーバーをはじいた。25-22。シドニー五輪最後の出場チームは、クロアチアに確定した。

まさしくバーバラのワンマンショー。バーバラしか打ってこないことがわかっていて、それでも止まらない、拾えない。ここまでくると、技術とか戦術の問題とは違う。五輪出場にかける執念。それが、ここまで6戦全勝のイタリアをも突き崩した。

イタリアは、第2セット以降、バーバラの気迫の攻撃におされ、しだいに動きが鈍ってきただろうか。第2セット以降、サーブレシーブが乱れる場面が多く、両エースにボールが集中した。一方、イタリアのサーブはしだいに威力がなくなり、クロアチアのサーブレシーブが乱れる場面は非常に少なくなった。リニエーリ、ピッチニーニともよく決めていたが、この日のバーバラが相手では勝てない。第4セット終盤の逆転のあたりは、明らかにモチベーションの差が出たと思う。

日本戦は、最悪の形で2セットを連取されながら、そこから3セット連取して大逆転。続くイタリア戦も、第1セットは相手に完璧なバレーをされて奪われながら、第2セット以降3セット連取の逆転勝ち。
このチームの選手は、奇跡を起こしたと言っても決して過言でない。もちろん日本戦一つとっても十分に奇跡的だ。しかし、それ以上に奇跡的なのは、わずか1週間強の大会期間中にチームがこれほど成長した、ということである。初戦の韓国戦を見たとき、クロアチアがここまで来るとは、いったい誰が想像できただろうか。一試合一試合ごとに、成長を続けたチームである。私は一応全チーム、全試合を見ているけれども、これだけ毎試合成長しているという手応えのあるチームは、もちろんほかになかった。

スタメンおよびサーブ順
イタリア: 7 カッチャトーリ → 2 リニエーリ → 4 レッジェーリ → 3 トグット → 12 ピッチニーニ → 18 ブラガリア
クロアチア: 1 レト → 15 グリゴロビッチ → 13 リマッツ → 8 バーバラ → 2 シスコビッチ → 11 チェブキナ

「独断と偏見で選ぶ」MIP: バーバラ
この試合に関しては、言葉では表しようがない。これが世界のエースだ。

       ITA - CRO
         1 - 3
1st     25 - 19        19 min. 8-4 16-14 21-17
2nd     22 - 25        21 min. 7-8 11-16 18-21
3rd     21 - 25        23 min. 6-8 11-16 16-21
4th     22 - 25        21 min. 8-7 16-14 20-21
Total   90 - 94   1 h. 24 min.

さて、私なりのメッセージも込めて、各選手について一言ずつ書きたい。

グリゴロビッチ。とても打てないようなひどいトスをしょっちゅう上げる。唖然とするようなミスも多い。しかし、それ以上に、トス回しのセンスと勝負勘は独特のものがある。とにかく最初にチームの流れを変えたのは間違いない。そして、この先のクロアチアの運命は、この選手の成長いかんにかかる。
できる限り早い段階で、海外リーグに出てほしい。クロアチア国内にずっといれば、間違いなく、リヒテンシュタインと同じ運命をたどるだろう(イエリッチ監督に潰される)。もしナポリがバーバラとレトを手放さないつもりなら、意外とおすすめだ。ただ、この選手の成長という観点では、それもベストではない。バーバラとレトと同じチームでは、間違いなくこの2人に頼りすぎるからだ。セリエA2かもう一つ下のB1、あるいはフランスあたりのリーグでもいい。困ってもエースだけには頼れない、それで結果を出さなければならないという環境が一番いい。

アンズロビッチ。決して上手いリベロではなく、ミスばかり目立つ。しかし、このチームには守備が全くできない選手があまりにも多すぎる。この選手はその尻拭いをやらされているだけ。その意味では気の毒だ。

シスコビッチ。守備的な選手だ。攻撃で目立つことは少ないが、サーブは意外と効果がある。この選手が目立つときは、明らかにクロアチアがリズムに乗っているときに違いない。

ユルツァン。はっきり言って、スパイクもブロックもまるで素人のようだ。ただし、サーブはある意味で衝撃的。この選手の一番だめなところであり、唯一の武器でもあるのだが、どこに飛んでいくか全く見当がつかない。ミスも異常に多い代わり、入ったら必ず効くというくらいわけの分からない代物だ。

リマッツ。チェブキナ・クズマニッチを別格とすれば、速攻もブロックも最もまともである。現在のところ、若い世代では唯一使いものになりそうなセンターだ。終盤2試合、病気でダウンされたのは、かなり痛手だった。

チェブキナ。言うまでもなく別格の存在。トスがひどくてもほしいところで決めてくれる。コートに睨みを利かし、若い選手を守っている。帰ってきたチームの守護神。

レト。ここ2年の成長は実に目を見張るものがある。以前は肝心の場面はほとんどバーバラが打っていたところ、今ではバーバラとレトが半分ずつに急速に近づきつつある。守備面でもチームで最も安定している。象徴的だったのは五輪出場を決めたイタリア戦の最後。ラリー中2度のチャンスボール、両方ともレトに上がった。

そして最後にバーバラ。99年以降、厳しいことばかりを書いてきたと思う。しかしそれは、期待が大きいがために他ならない。今大会も序盤は決して満足のいくパフォーマンスではなかった。しかし、最後の2試合は、言葉で表現しようもない。これぞ世界のエースというプレーを堪能させてもらった。そして、バレーの試合でこれだけ感動できたことは、もちろん今までになかったし、おそらくこれからもないだろう。

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「あまりにもつらい最後」(韓国対日本)

この試合の前に、日本の五輪出場の可能性はすでに絶たれた。一方、韓国は五輪出場が決まっている。日本としては失意の試合である。しかしながら、前向きに考えるなら、よけいなプレッシャーのないこの状況は、韓国に勝って苦手意識を払拭するチャンスでもある。

第1セット、4-4から熊前のスパイク、大懸のサービスエースで、日本が6-4とリード。しかし、韓国もチョン・ソンヘのスパイクとカン・ヘミのサービスエースですぐに追いつく。この後、大懸のフェイントがブロックされ、12-11と韓国が先行。しかし、日本の15点目から20点目にかけて、韓国はスパイクミス4本を連発する。ク・ミンジョンのスパイクミスで日本20点目の後、大懸のスパイクでさらに1ブレーク。そして、22-19日本リードからの大貫のサービスエースで、このセットはほぼ決まった。次も韓国のサーブレシーブを崩し、杉山が速攻で決める。最後はカン・ヘミに珍しいミスが出て、25-21日本。
このセットは、日本は失意のどん底にあるにもかかわらず、オランダ戦以来の日本らしいバレーを展開した。センターとライトを使った回数は、今大会中最も多かったかもしれない。この日は特に、満永が絶好調。その満永あるいは大懸をセンターに走らせる時間差攻撃もしばしば見られた。そしてサーブで韓国を崩し、レフト中心の単調な攻撃にできた。このセットは、全日本が目指していたであろうバレーが何だったのか、うかがうことができた。

第2セットも序盤韓国をサーブで崩し、6-3と日本リード。しかしここから、大懸が2本止められるなどで韓国が連続得点、8-6と逆転してTTOを迎えた。ここで、解説のゼッターランドが「杉山で切るつもりで」と言ったところで、その杉山を江藤に交代。この日の杉山は、7試合通じて一番というくらい出来はよかった。中国戦でも第4セット後半、競り合った重要な場面で、同じ交代をして失敗している。スパイクは全く威力がない。これでは竹下はトスを上げられない。(そもそも、まともなスパイクを打てない状態の選手を、なぜ12人に入れたのか。ほかにも入れるべき選手は何人でもいたはずだ。しかも、イエリッチやウェールシンクと対決させるならまだしも、中国・韓国戦での起用とは、さらに理解に苦しむ。)しかもここは竹下が前衛の最初のローテーション、相手としては当然エースに完全に的が絞れてしまう。全く不可解な交代に頭を痛めていたところ、大懸が決められず、ラリーが続いて相手に決められるか日本がミスするかでさらに4ブレーク連続、都合8連続ブレーク、12-6。韓国は、ラリー中に速攻が出るなど完全にリズムをつかんだ。竹下が後衛に下がるまでに、20-10まで韓国のリードが広がっていた。このセットは結局25-12韓国。このセット、日本は何と18ブレークを喫した。世界レベルの大会では、チュニジア戦以外ではもちろん最悪(ラマーレのいないカナダでさえ最大16ブレーク)、記録的とさえ言えるセットである。
同じセットを失うにしても、これではとられ方があまりにも悪すぎる。最初のTTOの時点では、リードはされていても、まだいける、という雰囲気はあったはずである。とんでもない逆噴射で、試合全体の流れを壊してしまったと言うしかない。

第3セット、杉山を戻すものの、やはりエースが決められず、サーブレシーブが乱れ、フェイントに対し動けないなど、日本の動き自体が極度に悪い。9-2韓国リード。この後は、日本が追い上げても韓国がそのたびにすぐに突き放すという展開が続く。日本に大きな流れがくることはなく、25-18韓国。

第4セット、前のセット途中から杉山に代わり入っている鈴木がブロック・ブロードでブレーク得点、6-3日本リード。しかしそこから、サーブレシーブがやや乱れたこともあり、高橋が2本連続シャットされ、逆にオ・ヨンスンにブロックアウトをとられるなど、5連続ブレークで9-6と逆転。この後、日本がブロックで追い上げても、単発に終わり、韓国がラリーに勝って突き放すという展開が続く。21-18韓国リードの場面から、チョン・ソンヘのスパイクミス、さらに高橋がエンドラインぎりぎりのエース。これで流れが変わり、さらに大懸のスパイクで2ブレーク、4連続ブレークで22-21と日本が逆転。22-22からの長いラリーも大懸が勝つ。ようやく日本の流れ、盛り上がる場面は作ることができたものの、あまりにも遅すぎた。その後韓国は時間差で切り、さらに日本のサーブレシーブが乱れてチャンスボールになったところをパク・スジョンのブロードで決め、得意技で連続得点。さらに大懸がブロックされて25-23、試合終了。

韓国は、第1セットはらしからぬミスが目立ったものの、第2セット以降は普段通りの試合だったと思う。一方、日本については、第2セット江藤を無理に出して試合全体の流れを壊してしまったことが、いかにも葛和全日本の最後を象徴しているように思われた。

スタメンおよびサーブ順
韓国: 3 カン・ヘミ → 15 チャン・ソヨン → 9 チョン・ソンヘ → 7 パク・ミキョン → 10 パク・スジョン → 4 ク・ミンジョン
日本: 15 竹下 → 8 熊前 → 9 森山 → 11 満永 → 7 大懸 → 18 杉山

「独断と偏見で選ぶ」MIP: パク・スジョン
ブロックにつかれたときに、徹底的にタッチアウトをとる攻撃で日本をかわし、流れを変えた。

       KOR - JPN
         3 - 1
1st     21 - 25        22 min. 8-7 16-15 18-21
2nd     25 - 12        19 min. 8-6 16- 7 21-10
3rd     25 - 18        22 min. 8-2 16-11 21-14
4th     25 - 23        25 min. 8-6 16-12 21-17
Total   96 - 78   1 h. 28 min.
注: この試合のみ、試合公式記録が出ていないため、試合時間は手元の計測によるものです。(トレーラ版レポートの所要時間も手元計測)CSで放送された試合は基本的にノーカットなのでさほど誤差は出ないのですが、地上波の放送では、ビデオの録画時間を基準に所要時間を計るため、短いほうにかなり誤差が出る可能性があります。


最後に

本編では、いろいろなチームにいろいろな感想を書いた。しかし、これだけ多くの真剣勝負を見られる大会は、まずないと思う。その意味で今大会は、「本戦を超えた予選」だ。すばらしい試合を見せてくれた全ての選手たちに、心からありがとうと言いたい。
正直なところ、バレー観戦の情熱は、前年のワールドカップ以降かなり落ちていた。全セットラリーポイント制に変更されて、試合展開が格段につまらなくなった。Vリーグ(女子)は外国人選手を締め出しちょこまかやっているだけ。全くの不完全燃焼である。

しかし、この大会を見たことで、バレーを見る意欲を取り戻すことができた。
これで、バレーファンをもう一度続けられる。
それが今大会の最も大切なまとめである。

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