シドニー五輪世界最終予選観戦記

第1日(6/17)
「10連続ブレーク大逆転!」(イタリア対オランダ)
「再建を目指す果てしない道のり」(韓国対クロアチア)
「不安あるも順当発進」(中国対カナダ)
「いばらの道の第一歩」(日本対アルゼンチン)

第2日(6/18)
「中国にとっての悪夢、日本にとっての悪夢」(中国対オランダ)
「アジアの悪夢醒めやらず」(韓国対イタリア)
「欧州勢快進撃、驚愕の一日なおも続く」(クロアチア対アルゼンチン)
「果たしてこれでよいのか」(日本対カナダ)

第3日(6/19)
「順当勝ちも課題は多く」(韓国対アルゼンチン)
「悲劇のエースへの転落か」(中国対イタリア)
「見るべきものは何もない」(クロアチア対カナダ)
「快勝もあまりに後味悪く」(日本対オランダ)


第1日

「10連続ブレーク大逆転!」(イタリア対オランダ)

試合開始直後は、オランダの動きが悪く、ミスが出てイタリアに先行を許す。しかし、オランダはセンター線の速攻でしのぎ、イタリアのミスで11-11の同点になる。そして14-13イタリアリードから、レフェリンクのサーブで崩してチャンスボールをウェールシンクが決め、さらにフィッセルがリニエーリをブロック。このあたりから流れが変わり、オランダにつないで粘るプレーも出る。16-15から、リニエーリ、メロを相次いでシャット、ウェールシンクのバックアタックで3連続ブレーク、リードを4点に広げた。フレデルスは、セット前半はセンターの速攻を多用、後半はウェールシンクにボールを集め、それがほとんど決まった。意図が強く感じられるトス回しだった。フレデルスのサービスエースで24-19とセットポイント。そこからイタリアも抵抗し、ピッチニーニのスパイク、ウェールシンクをシャットし、2連続ブレーク。しかし最後はピッチニーニをブロックし、オランダが25-22と逆転でとる。

第2セットにかけて、イタリアはサーブレシーブが全体的に極度に悪く、コンビがあわない場面も続出する。序盤、イタリアがサーブレシーブの乱れからチャンスボールを与えたりスパイクミスしたりして、7-3オランダリード。13-10からもイタリアのミスでオランダが2連続ブレーク、21-17からもイタリアのミスが絡んでオランダが3連続ブレーク、一気にセットポイント。最後はユールマンのクイックで切り、25-19オランダ。

第3セット、イタリアが流れをつかんでいるとは思われないが、これまで完璧に近かったオランダの両ベテランとセンターのユールマンにスパイクミス、イタリアがリード。オランダは終盤は次々と選手を交代。さらに、20-16の場面で、ブリンクマンがひざを痛めたということで急遽下がる。その後イタリアがピッチニーニ・リニエーリのスパイクなどで突き放し、最後もピッチニーニのスパイクで25-19。

第4セット、どちらも流れをつかみきれず、中盤までは接戦。9-9からフィッセルの速攻をシャット、ウェールシンクのスパイクミスでイタリア2ブレーク、しかしオランダもレフェリンクのスパイクですぐに追いつく。終盤先に抜け出したのはオランダだった。レフェリンク・ウェールシンクのスパイクで20-17とリード。しかし、この後オランダにミスが出てイタリアが21-21同点に。この後、オランダは2枚替えを敢行。しかしこれがかえって悪く、22-22からピッチニーニのスパイク、スターレンスのスパイクミスで2ブレーク、イタリアがセットポイント。24-23からピッチニーニが決めてフルセットに。

第5セット、イタリアは第3セット以降投入されたトグットを最初のサーバーに起用、これが大当たり。トグットは日本の水に当たったということで体調が悪いらしく、1,2セットはほとんどベンチだったが、そのトグットが結局イタリアを救った。ブラガリアがユールマンの速攻を止め(第4セットまでほとんど決められていた)、トグットのサービスエースが出たところから流れは一気にイタリアへ。この後も、リベロのサーブレシーブが悪いと見たトグットが狙い打ち、図星のサーブレシーブミス連発。イタリアはブラガリアのブロードが次々決まり、センターの速攻もウェールシンクのバックアタックも両方シャットするなど、何と10連続ブレーク、10-0。最後もトグットが決めて15-4。

イタリアはかろうじて勝ったものの、第1,2セットを見る限り、付け入る隙はあるような気がした。今大会リベロで起用されたde Tassisのサーブレシーブが今ひとつ。イタリアとの対戦では、一方的にやられる可能性がある一方、あっけなく勝てる可能性もありそうだと思われた。
一方、オランダは、第4セットリードした場面でサーブミス、そして選手交代の失敗と、突き放すべきところで突き放せなかったのが致命傷だった。ただし、見る限りかなり(イタリア以上に)やっかいな相手であることは確かで、一筋縄では行きそうにない。

スタメンおよびサーブ順(特記なき限り第1セット)
イタリア: 7 カッチャトーリ → 2 リニエーリ → 4 レッジェーリ → 16 メロ → 12 ピッチニーニ → 18 ブラガリア
オランダ: 15 フィッセル → 4 ブリンクマン → 14 フレデルス → 3 ユールマン → 12 レフェリンク → 10 ウェールシンク

「独断と偏見で選ぶ」MIP(私の独断で毎試合選出します): トグット
第3セットからの起用だったが流れを変えた。特に最終セットのサーブ狙い打ちが試合を決めた。

       ITA - NED
         3 - 2
1st     22 - 25        19 min. 8-5 15-16 17-21
2nd     19 - 25        20 min. 4-8 11-16 17-21
3rd     25 - 19        20 min. 8-5 16-12 21-16
4th     25 - 23        22 min. 8-7 16-14 18-21
5th     15 -  4         9 min. 5-0 10- 0 12- 2
Total  106 - 96   1 h. 30 min.

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「再建を目指す果てしない道のり」(韓国対クロアチア)

今大会から帰化選手がチーム1人に制限され、しかもその1人はリヒテンシュタインでもキリロワでもなく、チェブキナである。フル代表の経験が一度もない選手がトスを上げる事態に、クロアチアがもはや恐れるに足りないチームであることは予想された。しかし、今回のチームもまた、想像をはるかに上回るものだった。

第1セット5-5から、チョン・ソンヘのスパイク、ク・ミンジョンのバックアタック、レトのスパイクミスで韓国3連続ブレーク。この時点で、すでに私の頭は真っ白だった。ワールドカップのチュニジアチームを見たときのような衝撃である。ほかの8チームと比べると、クロアチアはまるでスローモーションを見ているようだ。相手の攻撃をただ見ているだけで全く動けない。サーブレシーブはアジア並みの基準で言えば全てミス。その後も、クロアチアのミス、あるいは韓国の速い攻撃で次第にリードが開いていく。最後はバーバラのサーブミスで25-16。

第2セットは、序盤バーバラが意地を見せ、実質上2連続サーブポイント。クロアチアのミスなどですぐに7-6と韓国が先行するも、11-11までは競り合いが続く。しかし、チョン・ソンヘのサービスエース、パク・ミキョンのネットインエースなどで、韓国が突き放す。リベロのアンズロビッチのサーブレシーブは見るに耐えない。(もっとも、欧州のチームのリベロは全体的にサーブレシーブが上手ではなく、アンズロビッチだけが非難されるのは不当である。)ネットインエースは、ボールから目を離したグリゴロビッチのミスである。この後もクロアチアのスパイクミスで点差が開く。最後はク・ミンジョンがツーで打ち、25-18。

第3セット、前のセットと同様、バーバラにサービスエースが出る。レトのフェイントで7-4クロアチアリード。韓国も追いつきそうになりながら、スパイクミス、サーブレシーブのミスが絡み、14-11クロアチアリード。あまりにもレベルが低い相手に、韓国もおつきあいしてしまった。15-14クロアチアリードからバーバラのバックアタックを止めて、お遊びはここまで。チャン・ソヨンのブロードのフェイント、交代で入ったキム・ミジンのサービスエースで、3連続ブレーク、17-15と逆転。その後もクロアチアのスパイクミス、パク・スジョンのプッシュなどで差が開く。最後はチョン・ソンヘがまたもリベロのアンズロビッチを狙いサービスエース。

韓国は、チャン・ユンヒに代わるエースとしてチョン・ソンヘが入っている。ほかには従来と代わったところはない。そのことによる戦力ダウンがどの程度なのかは、この試合ではわからなかった。とにかく相手が弱すぎるからだ。守備の安定感とうまさは相変わらず抜群である。

今大会のクロアチアはとにかく半端でなく弱いチームだ。大砲と機関銃がついたチュニジアチーム、と思えば当たらずとも遠からずかもしれない。試合展開を議論する以前の問題で、全くチームになっていない。ワールドカップでも同じことを書いたが、当時のリヒテンシュタインのほうが百倍はましである。
ただ、一言だけクロアチアの弁護をすれば、意図は感じられる。両エースを使わなくていいときはなるべくセンターかライトに持っていこうとしている。だから、ユースチームから登用された新セッター・グリゴロビッチ(ベスナでもない)の必死のプレーには、ボール扱いの稚拙さを別にして応援したくなる。クロアチアが進まなければならないのは、チーム再建への果てしなく遠い道のりである。大会直前の帰化選手制限の決定、さらに、クズマニッチまで妊娠・出産のためにチームを離脱。チームは完全に壊れた。否応なしに「マイナスからの出発」を迫られているのだ。

去年のワールドカップのチュニジアよろしく、1セットを目指す果てしなく遠い道のり、と感じられた。それも、ワールドカップなら、負け続けても応援してくれる人がいる。今大会は本当の戦場、敗者に同情はない。グリゴロビッチのためには、1試合とはいわない、せめて1セットくらいとって帰ってほしい。この試合を見て、真剣にそう思った。こんな大会でいきなりトスを上げろと言われて、それで全部ストレート負けでは、バレー選手として云々以前に、人間として壊れるかもしれない。

スタメンおよびサーブ順
韓国: 3 カン・ヘミ → 15 チャン・ソヨン → 9 チョン・ソンヘ → 7 パク・ミキョン → 10 パク・スジョン → 4 ク・ミンジョン
クロアチア: 1 レト → 15 グリゴロビッチ → 17 ユルツァン → 8 バーバラ → 2 シスコビッチ → 13 リマッツ

「独断と偏見で選ぶ」MIP: チョン・ソンヘ
スパイクとサーブいずれもよく効いていた。文句なし。

       KOR - CRO
         3 - 0
1st     25 - 16       18 min. 8-5 16-10 21-12
2nd     25 - 18       20 min. 8-7 16-13 21-16
3rd     25 - 20       22 min. 5-8 16-15 21-18
Total   75 - 54   1 h. 0 min.

この試合を見て、怒る気力さえ瞬時に奪われた。ワールドカップでさえ、怒る気力がなくなるまで3試合あったところである。技術的なことをいえばきりはないのだが、最も短く言えば、ボールを扱う技術そのものが全く話にならないほど低い。小学校中学校の段階で身につけるべきことが身についていない。
今大会がバーバラが世界レベルの国際大会でプレーする最後になる、そしてその最後の大会がこのような形で終わるかと思うと、言葉もなかった。ただただ悲しかった。このプレーを見て、このチームのこれまでの経過を振り返って、いったいこの先クロアチアがどの程度のレベルに到達できるかと考えるに、三大大会の本戦出場など、とうていおぼつかない。

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「不安あるも順当発進」(中国対カナダ)

第1セット、1-1からケリーのサービスエース、4-4からもカナダに実質上サーブポイント。この後も、ケリーのスパイク、呉咏梅のクイックのミスなどでカナダがブレーク、8-7カナダリードというよもやのスコアでタイムアウトに入った。しかしその直後8-8から、呉咏梅のサーブ順でカナダにミスが出て、チャンスボールを陳静が決める形で2連続ブレーク。14-11から、李珊がブロードを決め、李珊と呉咏梅でラマーレのスパイクを2本連続ブロック、3連続ブレーク。点差が開き始める。

第2セットは、1-1から孫月のサーブでカナダが崩され、サーブレシーブミスを連発、4連続ブレークで5-1と中国リード。15-8からの孫月のサーブで、またしてもカナダを崩し、エースは1本のみだが5連続ブレーク。このセット、孫月一人のサーブ順で実に9ブレーク。最後は2枚替えで入った桂超然のクイックが決まり25-13。

第3セット序盤、中国がサーブレシーブミスを2回、いずれも失点につながり4-2とカナダリード。しかしその後、カナダにつなぎのミスが出たり、あるいは殷茵のサーブで崩されたりして、8-5とすぐに中国逆転。孫月のサーブは恐ろしくよく効き、このセットも中盤の孫月のサーブで4連続ブレーク。最後も相手にサーブレシーブのミスがあり、孫月がチャンスボールを決めて25-13。

点数としては大差が付いたが、点差ほど力の差は感じられなかった試合である。というより、前の試合があまりにもひどすぎただけに、よりいっそうカナダがまともなチームに見えたのだろう。カナダは思ったよりよく拾うし、サーブが効いている。第1セットと第3セットの序盤には、中国がサーブレシーブミスを続ける場面があった。
第2,3セットになると、孫月の落差の大きいフローターにカナダが崩され、大量のブレークを許して大差がついた。また、お互い拾うのだが、ラリーが続いて結局中国というパターンも多かった。中国は第3セットは王麗那を温存し殷茵を入れる余裕を見せた。

孫月は、速い攻撃はシャープなのだが、二段トスを打つとなると往時の力ではない。フェイントでかなり逃れていた。このことにわずかな不安は感じられた。

スタメンおよびサーブ順
中国: 7 何キ → 11 孫月 → 10 陳静 → 6 李珊 → 15 王麗那 → 5 呉咏梅
カナダ: 4 プリビロバ → 9 ケリー → 1 エクスネール → 11 ラウ → 2 ラマーレ → 8 ミッチェル

「独断と偏見で選ぶ」MIP: 孫月
オープンスパイクには往時の威力はなかったものの、サーブの効果は抜群である。

       CHN - CAN
         3 - 0
1st     25 - 18       22 min. 7-8 16-11 21-16
2nd     25 - 13       20 min. 8-4 16- 8 21- 9
3rd     25 - 13       18 min. 8-5 16- 9 21-12
Total   75 - 44   1 h. 0 min.

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「いばらの道の第一歩」(日本対アルゼンチン)

第1セット、満永のサーブで崩し6連続ブレーク(エース2)、日本が11-3とリード。緊張する初戦で、最高のスタートを切ったと思われた。ところが、早くも問題を露呈する。満永がサーブということは竹下が前衛。両エースに竹下のところを狙われた。それは当然として、これにサーブレシーブの乱れが絡むからことがやっかいだ。満永のサーブの後の2ローテでアルゼンチンが5ブレーク(エース2)、展開も風雲急を告げた。日本は相手ミスなどでたびたび突き放しながら、コスタグランデの強打と自らのミスですぐに追いつかれる。20-19日本リードからコスタグランデのバックアタックがミス、21-19。しかし、ピンチサーバークルソーエのサービスエースですぐに21-21同点。コンデのスパイクミスで日本は23-21とし、そのままセットポイントを迎える。しかし、まずコンデのフェイントできられた後、そのコンデのサーブを津雲がサーブレシーブミス。熊前がシャットされ、デュースへ。さらに満永のブロードがミス。このセット初めてアルゼンチンがリードし、しかもセットポイント。26-26から大懸のスパイクでブレーク、再び日本先行。28-27から大懸にボールが上がるが、レにシャットされる。29-29からアルゼンチンコンデのスパイクでブレーク、再びセットポイント。そして、31-30から、コスタグランデのバックアタックがレシーバーをはじいた。11-3日本リードから、まさかの逆転。内容も悪かったがとられ方も最悪だった。

第2セットは序盤、相手のサーブレシーブミス、スパイクミスで4-1と日本リード。コンデのフェイント、森山のスパイクミスで8-8の同点とされるものの、やはり相手のミスで11-9と再び日本リード。この後森山のフェイント、満永の時間差などでリードを広げ、最後は満永の連続エースで25-17日本。このセットは試合展開としては問題はなかった。

第3セットも、序盤は熊前・満永のサーブで崩すなどで7-3日本リード。しかしこの後、日本のミス、コスタグランデのスパイクなどで同点に追いつかれる。日本は16-14でTTOを迎えるものの、センターに走り込む攻撃が読まれワンタッチをとられるようになる。TTO明けで杉山のブロードがシャットされ、さらに熊前のスパイクミス、17-16とアルゼンチン逆転。この後、アルゼンチンにサーブレシーブの乱れもあり、熊前のスパイクで2ブレーク、20-18と逆転する。しかし、20-19から、日本のサーブレシーブがダイレクトで返ってしまう。ところが、これをアルゼンチンもミス、21-19。しかし、日本はさらにサーブミス、スパイクミス2本。日本が3連続失点、22-21と逆転される。日本のシドニー行きがなくなる最初のピンチ。放送時間制限との関係上、多くの人が「負ける」と心底肝を冷やした。22-22とした後、ミューラーの速攻をシャット、これが大きかった。この後大懸のスパイクで連続ブレーク、何とか25-22でこのセットを奪った。

第4セットは序盤に連続ブロック、鈴木のサービスエースなどで7-1日本リード。このセットは森山に代わり鈴木が先発する。この後も、熊前のスパイク、竹下のノータッチエースなどで差を広げ、15-6。17-10からは満永のスパイク、フェイントと相手ミスで3連続ブレーク、このセットはようやく楽な展開になる。最後は大貫がライトから決めて25-14日本。

日本としては、極めて不安が残る試合だった。特に、第1,3セットは、サーブレシーブの乱れがあまりにも多すぎ、竹下を中心とした速くて緻密なバレーなど、あれでは絵に描いた餅である。試合展開としても、少し離したかと思えばすぐ追いつかれる、この繰り返しで、詰めが甘いことおびただしい。

大会全体を見れば、当然ストレートでとらなければならない相手、しかし内容としては、勝ててよかったと感じるほどである。第3セットを持っていかれたら、どうなるか本当に見当がつかなかった。
最初の関門であるオランダ戦を考えるに、老練なオランダに、あの程度のフェイク(センターがブロードに、満永か大懸がセンターに走り込む)がいつまでも通用するとは期待できない。ウェールシンク・ブリンクマンなら、竹下のところを徹底的につくだろう。サーブの威力も確実にオランダのほうが上回る。

一方、試合に敗れはしたものの、アルゼンチンが変わったのも確かだった。前年のワールドカップ(あるいはBCVマスターズ、ワールドグランプリなど)と比べて、最も成長したのは間違いなくこのチームである。個人の成長もそうだが、チームとしての成長が強く感じられた。サーブレシーブの乱れから失点する場面が格段に減り、スパイクレシーブもよくなっている。一つ一つのボールの精度が違った。特に、第1セットのデュースでは、レシーブが乱れる場面は全くなかった。セッターのラマスも、この試合では安心して見ていられた。昨シーズンのナポリのチーム(イエリッチ・ベルティーニ・レト)では大船に乗った気分でトスを上げられたはず。レギュラーで使われたのはシーズン後半だけだったが、それでも大きく成長したと思う。セリエAで成長したところを見せてほしい、と実は密かに期待していたのだが、その期待には十分応える試合だった。昨年と同じチームだと思って戦えば、間違いなく泣きを見る。
このチームの目標は2002年の世界選手権および2004年のアテネ五輪、つまり、このチームの状況は、4年前のイタリアと似たようなところと思われる。しかし、当時のイタリアを見たわけではないが、当時のイタリアと比べて、このチームは間違いなく強いと思う。2年あるいは4年先には、今のイタリアよりも手強くなる可能性も十分ある。

スタメンおよびサーブ順
日本: 15 竹下 → 8 熊前 → 9 森山 → 11 満永 → 7 大懸 → 18 杉山
アルゼンチン: 14 アンサルディ → 3 コンデ → 6 ミューラー → 4 ラマス → 2 コスタグランデ → 9 レ

「独断と偏見で選ぶ」MIP: 満永
サーブレシーブのミスは何度かあったが、サービスエースを連発。ブロードや時間差攻撃もよく決まっていた。

       JPN - ARG
         3 - 1
1st     30 - 32        30 min. 8-3 16-14 21-19
2nd     25 - 17        22 min. 8-5 16-13 21-15
3rd     25 - 22        25 min. 8-5 16-14 21-19
4th     25 - 14        21 min. 8-2 16- 7 21-11
Total  105 - 85   1 h. 36 min.

この日の結果、大会の焦点はほぼ1試合に絞られたと思われた。すなわち日本対オランダ戦。この試合で勝ったほうが、最後の五輪切符をほぼ手にする。というのは、中韓はやはり安全圏と思われ、イタリアも本日の勝利で五輪出場にかなり近づいている。とすれば、オランダと日本がまさにボーダーラインということになる。
しかし、1試合が全てというのでは大会が面白くないから、この日成長を見せたアルゼンチンあたりにもかき回してほしいと思っていた。

後から振り返ってみれば、この日は、何の番狂わせもなく実に平穏に終わった一日であった。予想以上にひどいチームがいくつか、また思ったよりも強いチームもいくつかあったが、試合結果自体は何も変わったことはなかった。

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第2日

「中国にとっての悪夢、日本にとっての悪夢」(中国対オランダ)

試合開始こそ、中国が何キ・孫月のサーブで崩し4ブレーク。しかし、8-5中国リードのTTO明け、オランダサイドアウトの後、ユールマン・ブリンクマンのスパイク、フィッセルのサービスエースで、3連続ブレーク、あっけなく逆転。雲行きは一気に怪しくなる。中国は12-11先行で迎えた孫月のサーブ順で再び崩し、2ブレーク(エース1)。しかし16-13からのTTO明け、フィッセルの速攻で切られた後、ウェールシンクが全く同じ軌道で李珊を襲う連続エース、同点。17-17から中国ホールディング、レフェリンクの見事なコンビのバックアタックでオランダ逆転。さらに、守備固めのために李珊に代えて入れた巫丹までブリンクマンのサーブをそらす。22-19の場面で微妙な判定、しかし孫月をシャットしたボールはコートの中。そして直後にフレデルスのネットインエース。オランダセットポイント。孫月がここで意地を見せ、スパイクで切った後サービスエース。さらにレフェリンクを王麗那がシャットし24-22。しかし、ここでオランダタイムアウトの後、その孫月がサーブをミスして25-22。

第2セットも、開始直後は第1セット同様孫月のサービスエースなどで中国が先制するが、中国のコンビが合わずシャットされ、ブリンクマンに立て続けに決められるなど、7-6とすぐに逆転される。10-9からはオランダの多彩な攻撃が次々決まり、レフェリンクにサービスエースも出て3ローテ連続ブレーク、16-11まで差を広げられる。17-13から、中国は相手のサーブレシーブを乱しダイレクトスパイク、長いラリーから孫月のスパイクが決まるなど、中国に流れが来るかと思われた。しかし、ここをユールマンの速攻で切られた後、2枚替えで入っていた桂超然がシャットされ、さらにユールマンの速攻、2ブレーク。21-18から、李珊のブロードがシャットされ、フレデルスにサービスエース、このセットも決定的になる。最後はレフェリンクが決めて25-20。

第3セットは、第2セット終盤から王麗那に代わって入った殷茵のスパイクミス、オランダ3枚エースのスパイクなどで、序盤からオランダ8-4とリード。9-6から、長いラリー、緊迫した拾い合いの末、孫月がウェールシンクのバックアタックをシャット。しかしこの場面にしても、オランダがここまで拾うか、というプレッシャーのほうが強かった。さらに、呉咏梅に鋭く落ちるノータッチエース、ユールマンの速攻もシャットされ、中国同点とした。しかしブリンクマンに切られた後、孫月、陳静が続けてシャットされ、レフェリンクにフェイントを決められ、3連続ブレーク。せっかく追い上げても直後にすぐに連続失点、中国は流れが悪すぎる。この後、19-16からピンチブロッカーで入れたオーセル(#6)が孫月をシャット、22-18からは同じくピンチブロッカーのスターレンスがスパイクを決めるなど、オランダは選手交代もことごとく吉と出る。中国は万策尽きた。最後はやはりウェールシンクが決めて、25-20。

大会前、この試合結果をいったい誰が予想できただろうか。驚愕の一日の幕開けだった。

中国は、サーブレシーブが乱れる場面が多い。全体的にコンビに切れ味がなく、タイミングが合わない場面もしばしばあった。このあたりは立て直しできるとしても、もう一つ深刻なのは、レフトの決定力不足。孫月の二段トスを打つスパイクに往時の威力は全くない。ことごとくワンタッチをとられて拾われていた。

スタメンおよびサーブ順
中国: 7 何キ → 11 孫月 → 10 陳静 → 6 李珊 → 15 王麗那 → 5 呉咏梅
オランダ: 15 フィッセル → 4 ブリンクマン → 14 フレデルス → 3 ユールマン → 12 レフェリンク → 10 ウェールシンク

「独断と偏見で選ぶ」MIP: ウェールシンク
ここ一番という場面では必ずと言っていいほどこの選手が頼り。重いフローターも効果あり。スーパーエース健在を見せつけた。

       CHN - NED
         0 - 3
1st     22 - 25        22 min. 8-5 16-13 18-21
2nd     20 - 25        25 min. 7-8 11-16 18-21
3rd     20 - 25        24 min. 4-8 12-16 17-21
Total   62 - 75   1 h. 11 min.

ここからは傾向と対策・オランダ編に入る。まずオランダの強力な武器は、ユールマンとフィッセルの両センターの速攻である。高さ・スピード・コース全てを備え、切れ味は今大会8チーム中最高で抜群の決定率を誇る。センターの速攻でリズムを作るという点ではイタリアと共通するが、高さはイタリアをしのぐ。フレデルスは、ブロックをセンターに引きつけておき、バックライトに速いトスを上げるというパターンを好んで用いる。センターが決まっているからブロックはことごとく振られるのだ。これまで、フレデルスはあまり上手いセッターという印象はなかった。実際、昨シーズンのイタリアリーグのナポリでも、フレデルスがセッターのときはセンターの決定率は極度に悪かった(同じナポリのチームでは、アルゼンチンの正セッターラマスとセンターの相性は抜群だった。)。しかし、ここまでの2試合で、フレデルスに対する見方も完全に改めなくてはならなくなった。
サーブについては、レフェリンクのジャンプサーブが注目されがちだが、実はウェールシンクをはじめとする重いフローターが非常に厄介な代物だ。

対策としては、まず相手のサーブレシーブを乱してセンター線を封じること。攻撃面では、速いトスで左右への動きを多くしてブロッカーを振ること。そのためには、サーブレシーブが完璧に返らないと話にならない。
とはいえ、書くのは簡単でも、実際にできるかと言えばとてつもなく難しい。中国のサーブも決して甘くはない。孫月、呉咏梅をはじめとして、大きく落ちるサーブを多用する。ところが、これがオランダにはほとんど効かない。もちろん、中途半端なジャンプサーブではもっと意味がない。連中はジャンプサーブを受けることにはアジア勢よりはるかに慣れている。また、オランダは欧州勢の中ではコンビバレー指向が非常に強いチーム、ブロックも左右に振られにくい。中国戦でも、コンビが完璧にあっていれば仕方ないとして、少しでもタイミングがずれて甘いボールになればことごとくワンタッチをとっている。

直前のBCVマスターズの結果からすれば、オランダにアトランタ五輪時の強さはないように思われた。しかし、この試合で、その見方は撤回せざるを得なくなった。ベテランと若手が見事に融合したこのチームは、アトランタ五輪時を上回る「超オランダ」なのかもしれない。

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「アジアの悪夢醒めやらず」(韓国対イタリア)

皮肉にも、この日、中国はアジアの盟主なのだということがはっきりした。中国が負けることは、他のチームが負けるのとは意味が全く違う。その中国があれほど簡単に敗れた。しかも、ランクでは今大会で下半分のオランダ相手である。韓国がこの試合を見ていなかったはずはない。その韓国も、真っ青になったと思う。オランダがとてつもない強敵という意味でももちろんそうだし、ほかのチームの星勘定も含めて計算が全く狂ってしまう。

第1セットは、技術的云々以前に、その衝撃がありありとうかがえた。全てが狂っていた。前日の流れるようなボール回しは全く姿を消していた。いったい何を間違うと、ここまでこのチームが崩れるのか。ただ唖然呆然とするしかなかった。

第2セットも、韓国らしい速い攻撃、よいレシーブが徐々に出てくるものの、それがなかなか続かず、ミスも多い。序盤3-1とリードするものの、ク・ミンジョンがシャットされ、韓国サーブレシーブの乱れも絡みイタリアが7-6とすぐに先行。さらに、やはりサーブレシーブが乱れたところからチョン・ソンヘがシャットされ、次もスパイクミス、11-9。パク・スジョンのブロードのミス、ピッチニーニのスパイクで、イタリアのリードは17-12まで広がった。しかし、19-14から、韓国はチョン・ソンヘの孤軍奮闘でかろうじて追い上げる。20-18からはリニエーリのブロードがミス、23-22からピッチニーニを止めてついに同点。24-24から、イタリアのサーブレシーブが乱れるも、リニエーリが決める。次のプレー、逆に韓国のサーブレシーブがダイレクトで返ってしまい沈められた。

第3セット、ようやく韓国らしいバレーが続くようになる。レッジェーリのクイックをシャット、パク・ミキョンとチョン・ソンヘのスパイクで3連続ブレーク、11-8と韓国リード逆転。しかし、この試合を通して、イタリアは韓国の速い攻撃に対しレシーブもブロックもよくついている。一時17-13韓国リードの場面があったものの、次第に追い上げる。19-18韓国リードからのイタリアのナイスレシーブの連続は圧巻で、最後ピッチニーニが決めたときは、思わず「すごいポイントだ!」と声が出た。そして、22-22からク・ミンジョンを2本続けてシャット、ついにイタリアマッチポイント。23-22の場面では、サーブを前に落とし速攻を封じた。24-23から、韓国はレッジェーリの速攻を拾い、チャン・ソヨンがブロードを決めてデュースへ。しかし25-25から、パク・ミキョンのライト攻撃がアウトしたのが痛かった。韓国はチャン・ソヨンでしのぐ展開が続く。27-26の場面、そのチャン・ソヨンが後衛に下がったところで、果たして、パク・スジョンのブロードがピッチニーニにシャットされた。

イタリアは、勝った瞬間喜びを爆発させた。それもそのはず、オランダ・韓国と難敵を続けて下し、五輪出場当確一番乗りと言ってよいからだ。2年前の世界選手権ではたびたび見られたが、これを見るのは久しぶりだ。この2日間の試合内容からすれば、中国戦に勝つ可能性も十分あるし、日本戦は勝つ可能性が高い。ほかは勝ちを計算できる相手ばかりだ。しかも、2敗してもまだ五輪出場は安全圏である。
一方の韓国は、これで完全にお尻に火がついた。オランダ戦も黒星の可能性が急激に高くなってきた。中国とのアジア頂上決戦に負ければ3敗。本当に後はない。

前日、イタリアはサーブレシーブが崩れる場面が目立ったが、やはりそれはオランダのサーブが走っていたゆえであったと言えそうだ。アジア勢のサーブの威力で乱すことは、なかなか難しい。
この日はピッチニーニがスパイク・サーブ・ブロック全てで活躍。リニエーリも強打と移動攻撃の両方に威力を発揮した。前日は途中で下げられたメロが、今日は第3セット途中から入り、何度か鮮やかにコンビを決めたのも、流れを変えた。

スタメンおよびサーブ順
韓国: 3 カン・ヘミ → 15 チャン・ソヨン → 9 チョン・ソンヘ → 7 パク・ミキョン → 10 パク・スジョン → 4 ク・ミンジョン
イタリア: 7 カッチャトーリ → 2 リニエーリ → 4 レッジェーリ → 3 トグット → 12 ピッチニーニ → 18 ブラガリア
前日はベンチでのスタート、第3セットから登場し流れを変えたトグットがスタメン。韓国は前日と同じ。

「独断と偏見で選ぶ」MIP: ピッチニーニ
ほしいところで決めてくれるエースに成長した。サーブもよく走っている。

       KOR - ITA
         0 - 3
1st     10 - 25        18 min. 3-8  7-16  9-21
2nd     24 - 26        25 min. 7-8 12-16 19-21
3rd     26 - 28        27 min. 7-8 16-13 21-20
Total   60 - 79   1 h. 10 min.

そして、この2試合が連鎖して、日本にさらに重くのしかかる。

全日本の五輪出場は何とかなるのではないか、というのが大会前の大方の見方だったと思うし、私も漠然とそう思っていた。
しかし、初日のアルゼンチン戦を見て、これは本当にまずい、という不安が急に出てきた。日本の計算としては、相手にデータのない竹下を使い、高さはなくても速くて正確なバレーで、欧州勢の守備を寸断する、という構想を抱いていたはずだ。ところが、前日、ターゲットのオランダ・イタリアと同系のアルゼンチン相手で、そのもくろみはほとんど外れていた。
その上、この日は中韓が相次いで敗戦、それもストレート負けである。オランダ・イタリアを倒したとしても、中韓に負ければ星勘定として意味がない、という状況に追い込まれてしまった。中韓のどちらかに勝つことが五輪出場の必須の要件となると思われた。監督は全試合勝つと口にしていたが、我々の間では誰一人としてそのようなことは信用していなかった。中韓に勝つのは非常につらい、イタリア・オランダに両方勝てたとして5勝2敗、オランダに勝てば4勝3敗で何とか五輪にいけるのでは、大筋でそのような計算だった。しかしこれで、どの試合に勝てばいい、というのが全く成り立たなくなってしまった。
五輪予選をこう戦う、漠然としているにせよ我々が抱いていたイメージは、この時点で完全に崩れ去ってしまった。

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「欧州勢快進撃、驚愕の一日なおも続く」(クロアチア対アルゼンチン)

試合開始直後、ユルツァンがコスタグランデ・アンサルディを続けてシャット。バーバラにもブロックが出る。アルゼンチンはトスがネットに近すぎ、高いブロックから逃げられない。4-1とクロアチア先制。一方クロアチアは、リマッツで3本続けて切るなど、前日とうって変わって落ち着いたスタート。ところが、9-7からユルツァンのブロードが止められたところから流れが変わり、レトも止められ、さらに事実上サービスエース2本など、5連続ブレークで12-9とアルゼンチンが逆転。13-11からはコスタグランデの連続エース。前日と同様、クロアチアはこのままずるずる負けるかと思われた。ここからレトがうまさを見せて、スパイクを次々決める(レトは前日の韓国戦でも、上手くスパイクを決めて、バーバラを上回る得点をマークした)。バーバラもバックアタックを決めるなど、19-18とクロアチアが逆転。
しかし、セットを決めたのはアルゼンチンのミスだった。20-19からまずコスタグランデを止めた後、アンサルディに2本、コスタグランデにも1本スパイクミス。みすみす点をクロアチアにやってしまう。最後はバーバラが決めて、5連続ブレークでクロアチアが逆転でとる。

第2セットも、序盤センターのリマッツのブロックがさえ、グリゴロビッチも要所要所でセンター線を使う落ち着いたトス回し。クロアチアが8-4とリード。11-6からは、アルゼンチンにスパイクミス連続、さらにレトがリベロを襲う連続エースで、4連続ブレーク、ワンサイドゲームとなる。17-9からもアルゼンチンにミスの連続で3連続ブレーク。この後、シスコビッチを襲うコンデの連続エースがあったものの、最後はレトが決めて25-15クロアチア。

第3セットも開始直後からアルゼンチンはミスが続き、逆にクロアチアにはライトのシスコビッチを使うなど、5-0クロアチアリード。終盤はバーバラのジャンプサーブでアルゼンチンを崩し、バーバラ自らバックアタックも決めて3連続ブレーク。このセットも最後はレト、何と25-12のダブルスコア。

前日の試合内容からすれば、この結果も、中国がオランダにストレートで負けたのと同じくらい驚くべきものである。前日の試合を見たときは、クロアチアがこの大会1試合でも勝つとはとうてい思えなかった。1セットとるのでさえ難しいと感じられた。
一言、アルゼンチン自滅、という試合。スパイクミス・サーブレシーブのミスなどがあまりにも多い。前日いい試合をしただけに、実にもったいない。センター線を上手く使えばクロアチアのブロックなど難なく振れるし、クロアチアのサーブレシーブはでたらめ。前日のような落ち着いた試合をすれば、このクロアチアに負けるはずはなかったと思う。
間違っても、クロアチアが急に強くなったわけではない。第1セットにそのような場面があったが、いったん崩れると歯止めがない。イエリッチ監督のコメントが、チームがチームになっていない状況を物語っている。「勝てるとは思っていなかったが、勝ててうれしい。」

ただ、イタリア・オランダなどのチーム(したがって同系のアルゼンチンにも)言えることは、裏ではデータを駆使しているバレーである。その観点では、前年までのクロアチアのデータは役に立たないかもしれない。
前日も一言だけ書いたけれども、今大会のクロアチアは、セッターのグリゴロビッチを育てようという意図が強く感じられる。センター線の多用をはじめとして、攻撃の幅が非常に広がっており、前年ワールドカップでの両レフト一辺倒の攻撃とはまるで違う。フル代表初登場のグリゴロビッチの頑張りは、驚きに値する。バーバラにしても、単に今までのようにオープントスを打つのでなく、センターに走り込んだり打つコースを変えたりしている。
欧米勢の守備は、システム+データの守備である。したがって、そのデータの部分が有効に使えなくなれば、あっけなく崩れる可能性はある。アルゼンチンは発展途上のチーム、なおのこと崩れるのは早い。実際クロアチアでさえ簡単に勝ってしまった。
ではそのアルゼンチンを、日本はなぜ崩せなかったのか。

スタメンおよびサーブ順
クロアチア: 1 レト → 15 グリゴロビッチ → 17 ユルツァン → 8 バーバラ → 2 シスコビッチ → 13 リマッツ
アルゼンチン: 4 ラマス → 2 コスタグランデ → 9 レ → 14 アンサルディ → 3 コンデ → 6 ミューラー
両チームとも前日と変わりなし。今日はチェブキナは第1セット途中から出場した。

「独断と偏見で選ぶ」MIP: グリゴロビッチ
フル代表初登場ながら、センター・ライトを有効に使った冷静な判断は光る。

       CRO - ARG
         3 - 0
1st     25 - 19   20 min. 8-5 12-16 21-19
2nd     25 - 15   17 min. 8-4 16- 8 21-10
3rd     25 - 12   17 min. 8-2 16- 8 21-10
Total   75 - 46   54 min.

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「果たしてこれでよいのか」(日本対カナダ)

試合開始からの日本は、やはり前日と同様、ミスが目立つ。カナダの10点目までで、実質的にサービスエースが2本。それ以外でも、サーブレシーブが乱れ、カナダのチャンスボールでのミスに助けられたポイントが2,3あった。13-8と日本リードも、相手ミスで何となく先行しただけという印象だった。15-11から大貫のサービスエース。19-14から、熊前のスパイク、大貫のフェイントで2ブレーク。最後は大懸のスパイクで、このまま25-18で日本がとる。

第2セットは、1-1から熊前のサーブで崩し、5連続ブレーク(エース1)。15-8から再び熊前のサーブで崩し、ノータッチエース、ネットインノータッチエースを含む4連続ブレーク。一時は22-9日本リードとなった。ところが、ここから、ブロードがこの試合初めてシャットされ、サーブレシーブの乱れ、高橋もシャットされるなどで、カナダが3連続ブレーク。最後はカナダのサーブミスで25-16日本。

第3セットは、9-5から熊前がスパイクにブロックに活躍、竹下のサービスエースもあり6連続ブレーク。試合終盤はカナダにブロード攻撃や速攻を見せられるも、21-14からは高橋のスパイクなどで3連続ブレーク。最後は大懸が締めて25-15。

前日ほどのもたつきはなかったけれども、果たしてこれで日本はよいのか。この相手では判断はできない。
楽観視できないほどの不安は、この試合でも十分に見受けられる。まず一つは、試合後半、ブロードの決定率が極度に落ちたこと。第2セット後半以降で、杉山・鈴木のブロードは3本シャットされている。タイミングがあっていないとかいう問題ではない。日本のブロードは、中韓のような絡みがなく、しかもクロスにしか打てないから、相手にとっても試合中にでも十分に対処可能だ。また、途中交代で出場した高橋も、ブロックアウトになったスパイクでもタイミングは合わせられており、エースが崩れたときの代役としては不満を残した。
明るい材料と言えば、熊前の復調である。この調子をオランダ戦に持っていければ、というところである。

カナダはサーブレシーブのミスも多く、この試合はほとんどが両サイドのオープン攻撃、センター線の速攻さえ非常に本数が少なかった。攻撃のバリエーションという観点では、クロアチアよりももっと悪い。カナダチームの大きな疑問は、先発セッターがプリビロバであること。翌日の試合で解説のゼッターランドも指摘していたことである。私の見る限りは、12番のパラディスのほうがトスが安定している。手元のパンフでもカナダのセッターはパラディスが予想されている。事実、この試合でも、第2セット終盤パラディスがセッターの間は、7-5とカナダのほうが多く点を取っている。さらに謎なことに、パラディスで流れが変わりかけたにもかかわらず、第3セットの先発はプリビロバに戻している。パラディスに故障でもあるのだろうか。

スタメンおよびサーブ順
日本: 15 竹下 → 8 熊前 → 9 森山 → 11 満永 → 7 大懸 → 18 杉山
カナダ: 4 プリビロバ → 9 ケリー → 1 エクスネール → 11 ラウ → 2 ラマーレ → 8 ミッチェル

「独断と偏見で選ぶ」MIP: 熊前
前日は不振が目立ったがこの日は復調。サーブでも活躍した。

       JPN - CAN
         3 - 0
1st     25 - 18       22 min. 8-6 16-11 21-14
2nd     25 - 16       21 min. 8-4 16- 8 21- 9
3rd     25 - 15       20 min. 8-4 16- 9 21-14
Total   75 - 49   1 h. 3 min.

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第3日

「順当勝ちも課題は多く」(韓国対アルゼンチン)

第1セット、韓国は相手ミスにも助けられ8-5リードとするが、中途半端なフェイントが相手に2度押さえ込まれ、ミルデンベルヘルのサーブで崩される(ノータッチエース1)など、9-9。この後、やはりアルゼンチンの2連続スパイクミスブレーク、チョン・ソンヘのスパイクなどで、16-11韓国リード。さらに、17-12からはアルゼンチンのネットタッチ・サーブレシーブの乱れなども絡み、韓国が上手い攻撃で4連続ブレーク、21-12となる。しかし、そこからコスタグランデのバックアタックで1ブレーク返されたあと、サーブレシーブが乱れさらにアルゼンチンが2ブレーク。次のサーブ順でもコスタグランデが相手コートの穴に落としブレーク、22-18まで差を縮められる。最後はク・ミンジョンの時間差攻撃で25-20韓国、しかし韓国としては強く不満の残る展開である。

第2セット序盤も、アルゼンチンにミスが多く、韓国はコスタグランデをシャットするなどで、7-1と韓国が大きくリード。しかし、コンデにノータッチエース、パク・スジョンのブロードのミス、チョン・ソンヘもシャットされるなど、すぐに8-6まで追い上げられる。この後も、韓国が突き放してもすぐに追い上げられる展開が続き、チョン・ソンヘのスパイクミスで18-16。この後、アルゼンチンのサーブレシーブミスからチャンスボールを韓国が決めたり、アルゼンチンにスパイクミスが出たりして韓国が一気にリードを広げる。最後はク・ミンジョンがツーで打ったのが決まり25-18韓国。

第3セットも、韓国が先行はしてもアルゼンチンがすぐに追い上げる展開が続く。13-12韓国リードまでにアルゼンチンのサービスエースは2本、シャットは3本出ている。14-12から韓国はキム・ミジンのサーブで崩し4連続ブレーク、ようやく突き放す。24-18の場面、チョン・ソンヘの時間差が決まり試合終了かと思いきや、その前に韓国ネットタッチ。直後にラマスのノータッチエース。韓国の集中力が切れかかったと思われるところ、韓国はタイムアウトをとる。次のプレー、チョン・ソンヘのスパイクがタッチアウトをとったという判定で終了。しかし、誰がさわったのかわからず、何となくすっきりしない試合終盤となった。

結果としては順当だが、この試合も、アルゼンチンの自滅という印象が強い。韓国は満足のいく勝ち方とは言えそうにない。相手のサーブミス、スパイクミスに助けられた部分があまりにも多い。韓国は、サーブレシーブが乱れ、エースを食らう本数がかなり多かった。それ以上に不満を残したのは、二段トスになったときのアタッカーの対応である。高いブロックから逃げようとしているのだが、それが中途半端で上から押さえ込まれる場面が目立った。本来、韓国は高いブロックを利用するようなネット際の技術は世界一のはずなのだが、この日の試合では、その点日本のほうが上回っている。

スタメンおよびサーブ順
韓国: 3 カン・ヘミ → 15 チャン・ソヨン → 4 ク・ミンジョン → 10 パク・スジョン → 11 キム・ミジン → 9 チョン・ソンヘ
アルゼンチン: 10 ヘルマン → 3 コンデ → 6 ミューラー→ 4 ラマス→ 2 コスタグランデ→ 17 ミルデンベルヘル
韓国は、前日までのパク・ミキョンを休ませ、キム・ミジン(#11)を先発。プレスリリースによると体調不良とのことだ。キム・ミジンはセンターで、パク・スジョンをライトに回した。アルゼンチンも、センターのレに代わりミルデンベルヘル(#17)、セッター対角のアンサルディに代わりへルマン(#10)が先発。

「独断と偏見で選ぶ」MIP: チャン・ソヨン
この試合から選ぶのは難しいが、やはりこの選手の速攻が最も決定率が高い。

       KOR - ARG
         3 - 0
1st     25 - 20       21 min. 8-5 16-11 21-13
2nd     25 - 18       22 min. 8-3 16-12 21-17
3rd     25 - 20       23 min. 8-7 16-12 21-14
Total   75 - 58   1 h. 6 min.

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「悲劇のエースへの転落か」(中国対イタリア)

第1セット前半は、中国のサーブレシーブが乱れる場面がいずれもイタリアのブレークにつながり、12-8イタリアリード。しかしここから、イタリアのネットタッチで中国が初めてブレークすると、ピッチニーニをシャット、さらにイタリアのサーブレシーブが乱れたチャンスボールを何キ自ら決めて、3連続ブレーク、12-12の同点。この後は、イタリアが先行しながら中国もすぐに追いつくという展開が続くが、16-16からリニエーリを李珊がブロック、中国初めて先行。しかしイタリアもすぐに18-17と先行する。この後も接戦が続くが、イタリアの19点目、22点目はいずれも中国のサーブミス。中国はどうも流れがよくない。そして22-21からピッチニーニのスパイクでブレーク、ついにイタリア2点リード。しかしこの後、カッチャトーリがセンターラインを踏み越し23-22。まさしく「勇み足」で流れが微妙に変わり、孫月のスパイクで23-23同点。このままサイドアウトが続きデュースに突入する。イタリアは、28点目のレッジェーリのクイックを除き、ピッチニーニ・リニエーリ・トグットの3枚エースが決めまくる。それに対し、中国はエースにトスが上がらない。呉咏梅・陳静・李珊のセンター3枚の速攻でしのぎ続ける。28-28からイタリアのサーブレシーブが乱れ、呉咏梅がツーで決めて中国先行。しかし、29-29からピッチニーニがスパイクでブレーク、流れを逆にイタリアに引き寄せる。31-30から逆に中国のサーブレシーブが乱れ、チャンスボールをリニエーリが決めた。息詰まるデュースの末、32-30イタリア。

第2セットは、王麗那がセンターから打って11-9中国リードとしたあたりから試合が動き始める。イタリアは王麗那をシャットしてすぐに同点。さらに、ピッチニーニにサービスエース。次のローテーションでも、陳静がセンターから打ったのがシャットされ、リニエーリのスパイクが決まり、16-13イタリアリード。守備固めに入れた巫丹にサーブレシーブミスが出るなど、このセットも中国の流れは悪く、イタリアが逃げ切るかと思われた。しかし、19-17から呉咏梅がブラガリアのブロードをシャットし、1ブレーク差。さらに、21-20から呉咏梅のサービスエースで同点。さらに、陳静がリニエーリのスパイクとフェイントを立て続けに止める。3連続ブレークで、中国が23-21と一気に逆転。イタリアもサーブを前に落として速攻を封じ、孫月のスパイクミス、同点。しかし、24-23で迎えた中国最初のセットポイント、トグットのバックアタックをシャット。ブレーク一発でセットカウント1-1のタイに戻した。イタリアのアタッカーはこの試合いずれも好調だったが、このセットは、終盤にそのエースに頼りすぎて、中国のブロックにつかまったことによる逆転だった。

第3セットは序盤、中国のトスミス、リニエーリのサービスエースなどでイタリアが4-1とリード。中盤、14-11からカッチャトーリが王麗那をブロック、突き放すが、中国も17-14から何キのネットインエースで追い上げる。しかし、20-17から、イタリアがピッチニーニのスパイクでブレーク、さらに中国のサーブレシーブが乱れ王麗那がスパイクミス。決定的な2ブレーク。最後もピッチニーニが決めて25-19イタリア。

第4セット、中国は王麗那に代えて殷茵を先発する。しかし、5-4イタリアリードから孫月が連続スパイクミス、さらに陳静のクイックもシャットされ、イタリアが3連続ブレーク。中国も孫月のスパイクで1ブレーク返し、さらに10-8からイタリアにサーブレシーブの乱れがあり、ピッチニーニがスパイクミス。追い上げムードになってきたところで、殷茵がフェイントをミス、流れが切れる。第3セットもそうだったが、中国は速い攻撃でサイドアウトはとれてもブレークはできない。ブロード攻撃がミスしたりシャットされたりで、中盤にかけてイタリアが突き放す。そして、23-19から陳静の速攻がシャットされ、勝負あり。その次のプレーで、中国のサーブレシーブが乱れ、結局孫月がシャットされた。
中国は第3セット3ブレーク、第4セットはわずか2ブレーク。第3セット以降、イタリアが中国を完封。初の五輪出場に向けて、さらに大きく前進した。

前日の試合内容からすれば、中国がイタリアに敗れることは十分あり得ると思われた。むしろ、これで勝てれば、中国も立派なものだ、と思っていたくらいだ。あまりにも巡り合わせが中国に悪すぎる。前日中国はオランダにストレート負け、イタリアは中国と類型のバレーである韓国にストレート勝ち。しかもイタリア自身はオランダに近縁のチーム、勝ち方を示したという意味でも、前日のオランダの戦いに非常に勇気づけられたはずだ。

両チームともサーブレシーブは完璧に近かった。試合は非常に引き締まった展開、前半戦ベストゲームと言える内容となった。その中で両チームを分けたのは、エースの差である。この試合、イタリアはスーパーエースのトグットが目立った。トグットは大会トップタイの最高到達点320cm、細身ながら威力のあるスパイクを放つ大陸間弾道弾である。ピッチニーニも勝負所で難しいトスを次々決めた。
一方、中国は孫月にしても王麗那にしても、速いトスなら打てるけれども、二段トスになると全く決まらない。レフトが頼りにならないから、ひたすらセンター3枚(呉咏梅と陳静に加え、ライトの李珊も実態はセンター)にトスを上げるしかない。

中国は非常に危機的な状態にある。キャプテンでエースの孫月の状態が危機的だ。完全に自信を失っており、勝負所でも強打はほとんどない。セッターもトスを上げない。第1セットのデュースにしても、ひたすらブロードでしのいだ。また、よいプレーの後にサーブミスという場面が何度かあり、守備固めに入れたはずの巫丹がサーブレシーブミスを続けるなど、流れに乗れない場面がしばしばあった。

スタメンおよびサーブ順
中国: 7 何キ → 11 孫月 → 10 陳静 → 6 李珊 → 15 王麗那 → 5 呉咏梅
イタリア: 7 カッチャトーリ → 2 リニエーリ → 4 レッジェーリ → 3 トグット → 12 ピッチニーニ → 18 ブラガリア

「独断と偏見で選ぶ」MIP: トグット
この試合の選出は迷うところだ。ピッチニーニもリニエーリもよかったのだが、スパイクの強烈さでトグットに一票。

       CHN - ITA
         1 - 3
1st     30 - 32        29 min. 7-8 15-16 20-21
2nd     25 - 23        22 min. 8-7 13-16 19-21
3rd     19 - 25        21 min. 5-8 12-16 17-21
4th     19 - 25        20 min. 4-8 12-16 17-21
Total   93 - 105  1 h. 32 min.

日本としては、完全に中韓狙いに変えていかざるを得ない。アジア勢の直接対決はまだ全て残っているが、これはまさに生き残りをかけた試合になる。

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「見るべきものは何もない」(クロアチア対カナダ)

試合開始直後は、グリゴロビッチのトスがレフトに集中し流れが悪くなり、レトの代わりに入ったダニチッチ(#3)がシャットされ、バーバラのスパイクミスなどで、カナダリード。しかし、ユルツァンのサービスエースで9-9の同点としたあたりから流れが変わる。バーバラ、ダニチッチ、グリゴロビッチなどのサーブ順でカナダを崩し、20-14とクロアチアがリードした。しかし、22-17からダニチッチのスパイクミス、バーバラのバックアタックがシャットされ、一気に流れはカナダへ。グリゴロビッチのとスミス、ラウのサービスエースで、カナダが4連続ブレーク、22-21とした。次のプレーでもカナダのブロックが被さっていたが、シスコビッチのスパイクはブロックアウト。直後にシスコビッチのネットインエースでセットポイント、次のプレーでもカナダにつなぎのミスがあり、ラマーレのスパイクがミス。終盤は荒っぽい展開となったがクロアチアが25-21でとる。

第2セットも開始直後ダニチッチのサーブで崩し、ツーアタック・ブロード攻撃ともバーバラが止めて、いきなりクロアチア4連続ブレーク。中盤にかけては両チームともサーブレシーブのミスが続出し、非常に荒れた試合になる。一時はカナダが13-12まで追い上げる場面もあった。しかし、その後はグリゴロビッチのノータッチエースなどでしだいにクロアチアが突き放す。19-15からはバーバラのサーブでカナダを崩し、3連続ブレーク。バーバラの剛速球サーブに対し、カナダは上に上げるのがやっとである。セット終盤は3本連続ダニチッチで切り、25-18クロアチア。

第3セットも序盤両チームにミスが出て5-5。6-5からカナダにサーブレシーブのミス、さらにローテーションミスがあり、クロアチアが3連続ブレーク。14-11からは、バーバラのスパイクで2連続ブレーク、16-11でTTOを迎えた。しかしその後、エクスネールのサーブ順でクロアチアがサーブレシーブミス、さらにラマーレもバーバラに負けじとスパイクで2ブレーク、3連続ブレークで16-15となる。21-19までサイドアウトが続くが、ここでラウを2本シャット、さらにカナダのサーブレシーブが乱れチャンスボールをバーバラが決めて、クロアチアが3連続ブレーク、試合を決めた。最後もバーバラが決めて25-20。

全体として両チームとも非常に雑な試合で、見るべきものはほとんどなかった。この試合で唯一目新しかったのは、クロアチアが主力のうちレト・チェブキナを休ませ、旧クロアチア(キリロワ・チェブキナ・シドレンコが入っていたチーム)からついに5枚落ち、バーバラだけを残して戦ったことである。いくら何でもカナダを馬鹿にしすぎと思われた。
しかし、この日はクロアチアのサーブが全体によく走っている。カナダもサーブで崩し連続ミスを誘う場面があったが、それ以上にクロアチアが連続得点を奪ってしまう。第1セット中盤に逆転した後は、一度も追いつくことを許さずに勝った。
クロアチアとしては、主力を休ませてしかもストレートで勝ったということで、その意味ではもくろみ通りになった。

クロアチアは、初戦を見た時点では全く期待できなかった連勝である。クロアチアのグリゴロビッチは、この2試合でかなり自信がついたはずだと思う。こうなると見る側としても欲が出てくるもので、その自信をなくさないためにも、この後の4試合で1セットでもとってほしいと思う。正直言って無理だと思うが。

スタメンおよびサーブ順
クロアチア: 1 レト → 15 グリゴロビッチ → 17 ユルツァン → 8 バーバラ → 2 シスコビッチ → 13 リマッツ
カナダ: 4 プリビロバ → 9 ケリー → 1 エクスネール → 11 ラウ → 2 ラマーレ → 8 ミッチェル
注: 試合開始直後にレトはダニチッチと交代

「独断と偏見で選ぶ」MIP: バーバラ
レトが休みということもあり打ちまくった。カナダを一人で粉砕。

       CRO - CAN
         3 - 0
1st     25 - 21       22 min. 7-8 16-13 21-16
2nd     25 - 18       20 min. 8-3 16-13 21-15
3rd     25 - 20       19 min. 8-5 16-11 21-19
Total   75 - 59   1 h. 1 min.

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「快勝もあまりに後味悪く」(日本対オランダ)

第1セットは、9-8オランダリードから、満永のブロードが止められ、さらに大懸がサーブレシーブミスを連続、チャンスボールをいずれもウェールシンクに決められ、オランダが3連続ブレーク。16-12からウェールシンクのバックアタックでさらに1ブレーク。セット終盤は、フィッセルのクイックでセットポイント、さらに津雲のサーブレシーブミスをダイレクトスパイクで決められた。25-18オランダ。両チームの前日までの試合内容からすれば、日本が勝つのはかなり難しいと考えられた対戦。第1セットは、案の定という展開となった。

第2セットは、序盤6-6から、竹下のサービスエース、さらにこの試合ウェールシンクを初めてシャット。しかしTTO明け、オランダもウェールシンクのスパイク、日本にサーブレシーブの乱れもあり、3連続ブレーク、すぐに10-8と逆転する。対して、日本も大懸のスパイクで2ブレーク、さらに「疑惑の」ノータッチエース、3連続ブレークで12-10と再逆転。この判定以降流れが変わる。オランダはサーブミスが多く追い上げられない。18-16日本リードから、オランダにネットタッチ。さらに、オランダのサーブレシーブミスが続き、チャンスボールを大懸が2本続けて決める。熊前に代えて起用したピンチサーバー高橋のサーブ順で3連続ブレーク、選手交代が成功した。最後は熊前が決めて、25-21日本。

第3セットは、ウェールシンク・ブリンクマンのベテランエースのスパイクが次々シャットされたりミスしたり、13-6まで日本のリードが広がった。しかし、中盤以降、熊前・杉山のスパイクミスなどで、追い上げられる展開になる。日本も熊前のスパイクなどで21-15と突き放した。しかしその後、ユールマンのクイック、日本のミスで、3ローテ連続ブレークを許し、23-21まで追い上げられた。最後は2回続けて大懸のスパイクで切り、25-22で逃げ切る。

第4セットもオランダの集中が切れたかのように、中盤まではスパイクミス・サーブミスが相次ぐ。このセットはレフェリンクに代わりスターレンスを入れたが、その効果もなかった。大懸のスパイク・森山のブロードなどで日本が突き放し、一時14-6日本リードとなった。18-12からは、フレデルスのツー、スターレンス・ウェールシンクのバックアタックで、オランダが3連続ブレーク。しかしオランダの反撃もここまで。21-18から、満永のライト攻撃、熊前のスパイク2本で、日本が3連続ブレーク。最後も熊前が決めて、25-20。日本が1セットダウンから3セット連取で、最初のハードルをとにかく越えた。

経過を見れば、まさしく日本の快勝である。技術的によかったことは、まず、サーブレシーブの乱れからの失点が非常に少なかったこと。サービスエースは最後まで実にゼロで守りきった。中国が同じオランダとの対戦、わずか2セットまでに7本のサービスエースを被弾したのに比べると、あまりにも大きな差である。攻撃面では、巧妙にタッチアウトをとり続けたのが目立った。オランダは日本のスパイクに対してブロックジャンプしすぎ、ひじに当てられてタッチアウトをとられた。現在の日本はアジアの中でも格段に低いチーム、ネットから軽く手を出すだけで、十分にワンタッチをとれる。
オランダについては、第2セット以降、スパイクミス、サーブミスなど、ミスからの失点が極端に多かった。また、第1セットは問題なく決まっていたセンターからの速攻をなぜ第2セット以降ほとんど使わなかったのか、疑問が残る。

しかし残念なことに、多くのファンに、この試合は不快な印象を残した。というのは、明らかに日本有利になるようなミスジャッジがあったからだ。特に、第2セット11-10からの熊前のサーブは、テレビ画面、それもスローでない画像で見てもアウトとわかるボールだった。ところが判定はイン。テレビ画面で明らかにわかるほどのミスジャッジを、なぜ主審がオーバーコールできないのか。この場面は、日本が2連続ブレークで先行したところ、もしサーブミスであれば、流れを自ら切ったことになる。意図的に日本有利な判定をしたとまでは私は思わないが、その疑いを抱かせるには十分である。さらに言えば、この場面を含めて、疑わしい判定の時にスロー画像を出さず、正しい判定の時だけスローを出しているのに至っては、極めて意図的である。それ以外にも、音も聞こえるようなワンタッチをしているのにアウトの旗を上げたり、明らかにボールが落ちているのにインプレーで続いたり、ラインジャッジのミスはかなりあったようだ(もちろん、その幾分かは主審が修正しているはずだが)。テレビで見ている一般のファンはごまかせても、見る人が見ればわからないはずはない。特に、現在のルールではセットが短いから、これが1セット2度、1試合3回もあれば、試合は全くひっくり返ってしまう。疑問の残る判定が続きオランダが集中力を失ったために、日本が勝ててしまった、という印象がぬぐえない。日本の出来はよかっただけに、かえって後味の悪い試合になってしまった。
意識的にせよ無意識にせよ、それほどまで日本に五輪出場してほしいのか、出場してもらわなければそれほど困るのか。この試合で、それを強く感じざるを得なかった。意識的にと言ったのは、もちろん、五輪直前での帰化選手制限の件である。それも決定即有効、プレスリリースになかった「2年間に限る」という条項が後で出てくるなど、極めて乱暴かついい加減な決定である。その件で国際連盟への不信は頂点に達している。だから、単なるミスジャッジからそこのところにつながってしまう。そもそも、中立国でない会場での1回戦総当たり戦、国際連盟にはホームチームが五輪出場してほしいという意図が明らかにうかがえる、この状況自体がデキ・レースと言っても過言ではない。

この試合を見たときは、日本はシドニーに行けるだろう、とは思われた。しかしそれも、残念ながら、実力で行けるという意味ではなかった。そして、これだけ上げ底でこの予選に勝ち、五輪に出場したとして、本番でどれほど通用するかと考えれば、悲観的にならざるを得なかった。

スタメンおよびサーブ順
日本: 15 竹下 → 8 熊前 → 9 森山 → 11 満永 → 7 大懸 → 18 杉山
オランダ: 4 ブリンクマン → 14 フレデルス → 3 ユールマン → 12 レフェリンク → 10 ウェールシンク → 15 フィッセル

「独断と偏見で選ぶ」MIP: 大懸
この試合も大懸か熊前か迷うところだが、前日に熊前を選んだことと、サーブレシーブへの貢献から大懸とする。

       JPN - NED
         3 - 1
1st     18 - 25        21 min. 7-8 12-16 15-21
2nd     25 - 21        24 min. 8-5 16-13 21-16
3rd     25 - 22        27 min. 8-5 16-10 21-15
4th     25 - 20        26 min. 8-4 16-10 21-18
Total   93 - 88   1 h. 38 min.

大会前の予想と比べて、この試合の位置づけが変わったところは、敗れたオランダにも五輪出場の可能性は十分に残っているところである。オランダは残り試合のうち韓国戦以外全て勝ちを計算でき、日本は勝ちを計算できるのはせいぜいクロアチアしか残っていない。それを考慮すれば、これでやっと日本とオランダが並んだ、と言っていいくらいである。これは前日の記事でも書いたが、日本は、次の中国戦で敗れればオランダに勝ったのも帳消しになってしまう。この日を終えて、非常に流動的な状況が続いている。当確はなおイタリアのみである。

オランダとしては、この敗戦のショックは実はそれほどないかもしれない。当初3連戦1勝2敗は計算の範囲内だろう。しかも、この日本相手の敗戦がミスジャッジの影響が大きいとすれば、中国に勝っているという自信を失うことなく韓国戦に臨むことができる。(これが、同じ1勝でも、中国に勝つのとほかのチームに勝つのでは意味がまるで違うところだ。)韓国以外は勝ちを計算できる相手しか残っていない。残り4連勝で安全圏到達も十分可能、ボーダーラインの4勝に届く可能性は極めて高い。
我々の予想としては、その1勝を上げるとすれば対日本と考えていたわけだが、オランダの監督は、この大会で最も勝ちにいった試合は中国戦というようなことを語っていたと記憶している。過去の実績からすれば最も勝つのは難しいと思われる対戦に集中するのは、一見無謀とも思える。しかし、前年ワールドカップおよびこの予選直前のBCVマスターズの中国の出来、そして様々なホームチームの有利(先ほど書いた審判の判定まで含めて!)を考えれば、日本よりも中国に絞ったのは、実に正解だったのである。

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