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 アリストS300VEに乗るNO.5656のアイエスイーさんが、16系アリストのメインアンプがどのような回路構成になっているかを検証されたので、写真とともに紹介してくださいました。


メンテVOL.282 メインアンプの構成について  <作成:'02年2月17日>
2001年の年末に数年の超多忙に一区切りがつき、購入後1年半、我慢ならなかったアリストのEMVオーディオの「シャー」ノイズ解析を開始しました。その過程で、このクラブアリストで知り合った701KAZさんからメインアンプの基板を送っていただきました(701KAZさん、本当にありがとうございました)。メインアンプの構成が判ったとともに、メインアンプにもある「残留雑音」の理由も判りました。基板はメイン基板とイコライザ基板に分かれていました。

なお、TENさんの情報によりますと、JZS16#後期のものは一枚基板になっているようです。

<メイン基板の部品面>

 パターン(アートワーク)設計には「アナログらしさ」が残念ながら感じられません。一般的には、回路設計技術者とCADオペレータは異なり、CADオペレータは回路図は読めるがアナログの動きは判らない、設計者の細かな指示がなければ機械的に引くのみ、がだいたいの相場です。そんな感じです。「WAVE SOLDER TRAVEL→」とありますから、アメリカ人の設計に間違いないでしょう。日本人の技術者ならこんな英語は絶対に使えません。やっても「FLOW SOLDER DIRECTION→」でしょう。

 左下の白いのがSP出力コネクタです。その上に3極のACC入力、15極のLINE他入力のコネクタが配置されているはずですが、部品取りとして基板を流用されたので、この基板にはついていません(不動品だそうです)。
 その右手の茶色がチョークコイル(トロイダルコア)です。電源のフィルタリング用です。これから判るように、DC-DC変換器による電源電圧の昇圧がされず、直接12Vでのドライブになっています。
 さらにその右に4個並んでいるのが、ファイナルアンプ用の電源平滑コンデンサです(3300uF)。その下はファイナルアンプ(TDA8563)です。上のコネクタは13極で、イコライザ基板との接続用です。

<メイン基板の半田面>

 半田面には入力バッファアンプ、パワーアンプTDA8563のドライブと思われるOPAMP(演算増幅器、型番4560)が多数配置されています。電源系統は電源、グランド、コモンを横に平行に1.5mm位のパターンで這わせて、信号ラインはパワーアンプ出力以外はすべて0.3mm位のパターンで統一されています。この面もアナログらしからぬ、デジタル回路的なパターンです。

【使用している部品】
(1)各所での信号処理 4560(たぶんNJM4560):なんと全部で31個(イコライザ込み)つまり62回路も使っています。JRC他で作られている汎用演算増幅器(OPAMP)です。定番4558の出力スルーレート改善品です。オーディオ用ですがラジカセレベルで使う汎用のものです。
(2)ファイナル TDA8563:4個使い。8CH分(ウーハはブリッジなので7CH使用と思われる)。フィリップスのステレオパワーアンプIC(2x40W @2ohm/2CH)
(3)NE5517:3個使い。フィリップスの相互コンダクタンス型OPAMP
(4)TL431:1個使い。テキサスインスツルメンツのシャント型電圧レギュレータ
(5)BA40741:1個 ROHM
※TENさんの情報によりますと、TENさんのJZS16#後期型のアリストでは、4560の代わりにTL072(FET入力のローノイズOPAMP。テキサスインスツルメンツ製)が使用されているとのことです。私も後期型なので、TL072かもしれません。

【回路構成】
 パッと見ですので、間違っている可能性もありますが、確度は高いと思います。入力された信号は電解コンデンサで直流カットされ、たとえばFR+とFR-がそれぞれ抵抗とコンデンサによる1次ローパスフィルタに入力され、それぞれOPAMPのボルテージフォロアにより個別に増幅されます。それが(FR+とFR-が)次の段で差動増幅されます。このような回路構成とすることで、ボディアースポイント間により発生するコモンモード雑音(イグニッションノイズ)をOPAMPのCMRR(同相電圧除去比)能力により、低減させます。自動車オーディオはこういう対策もされているのね!と勉強になりました。
 この信号がイコライザ基板に送られるようです。イコライザ基板により、イコライジングとともに、どうやらここで4CH→6CHの分配をするようです。その出力がメイン基板に戻り、また幾つかのOPAMPの増幅後、信号はパワーアンプに電解コンデンサで直流カットされ入力されます。
 このように信号は入力段から多数のOPAMPをパスしています。OPAMPが汎用に近いものであること、経由するOPAMPの数が多いことから、残留雑音レベルが上昇してしまっています。

<メイン基板の拡大図>

あまり拡大にはなっていませんが、ファイナルアンプ付近の拡大図です。ここでパターン配線がどのようになっているか、見えると思います。

<イコライザ基板の部品面>

 驚いたことは、このイコライザ基板です。メイン基板とは、13ピンコネクタにより接続されています。カタログにある「音響解析に基づいた」というくだりは、このことかもしれません。部品面からは挿入部品としてフイルムコンデンサが多数刺さっています。コンデンサの定数の種類が多岐にわたること、それ以上にコンデンサを挿すことのできる空きパターンが多数あることから、アリストの音響解析をしたときに、現物合わせの補正・等化をしているのでしょう。普通のパワーアンプにはこのイコライザはついていません。

<イコライザ基板の半田面>

 はんだ面(フロー半田)には2回路入りOPAMPが16個、つまり32回路載っています。電源系統はメイン基板と同様、電源、グランド、コモンを横に平行に1.5mm位のパターンで這わせ、信号ラインはすべて0.3mm位のパターンで統一されています。イコライザのOPAMPが残留雑音のレベル上昇に一役買ってしまっています。

<EMVシステム系統図>

 システム全体の構成は図のようになっています。非常に複雑ですね。図中のDAIはデジタルオーディオインターフェイスの事で、最近はSPDIFと呼ばれているようです。

<最後に>

この場をお借りして、お持ちの基板をお送りいただいた701KAZさん、情報を頂いたTENさんに心から御礼申し上げます。

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