ゲームについて考えることは喜びである

連載『ザ・ゲームパワー』
第一章=社会の中のゲーム<第9回>


 「不定期刊マスコミ時評」でも取り上げたが、「Forbes」10月号の
任天堂山内社長へのインタビュー記事の中で、以下のようなくだりがあった。
「(ソフトメーカーには)『少数精鋭主義』を掲げる会社がほとんどないの
です。『新作の点数を絞り込んでも必ず売れる保証はない。売れなかったら
会社が参ってしまう』という」
 ソフト1本作るのに、最低でも10人前後で1年間かかる時代である。1人
あたりの月給が平均で25万円として、25万×10×12で、人件費だけでも3000
万円。1本売れるごとにメーカーに入るお金が3000円と推定すると、1万本
売れなければ人件費すら出ない。
 もちろん人件費以外にも、広告費とか会社そのものの維持費とかがいろい
ろかかるので、1万本では赤字である。
 ファミコンの頃は、ソフト製作のコストも今ほどかからなかったし、「ど
んなソフトも10万本」の時代だったので、メーカーはたいへん儲かった。だ
からその時代のメーカーは、みな会社の規模を肥大化させていった。
 そして今、大きくなった会社の維持費を出すのに苦しんでいる。
 プレイステーション版『ときめきメモリアル』は、50万本を超える大ヒッ
トとなった。だがコナミは、組織の一部を別会社に移して、ようやく黒字に
乗っけた状態。
 これがズームのような規模のメーカーになると、『ZERO DIVID
E』の30万本だけで、大きな儲けになったはずである。
 ゲーム会社は大きくなり過ぎた。今後は、一部巨大メーカーを除けば、小
回りの効く組織が活躍する時代である。
 というより、ゲーム業界はもともと、それでやってきたはずなのだ。
 ゲーム自体も、これからは「軽いゲーム」が、もっと尊重されるようにな
ってくるのではないかと思う。すでに、解くまでに膨大な時間がかかるRP
Gなどは、ゲーム業界の主役ではない。
 世の中ヒマ人ばかりではないのだ。
 昨今のキーホルダー型テトリスのブームは、ゲーム界に地殻変動が起こる
前兆ではないだろうか? 他機種版の『テトリス』に比べて画面が狭く(横
8×縦12しかない)、どう考えてもフラストレーションがたまるあのゲー
ムが、ブームを起こしているということは、ちょっとした時間に、どこでも
手軽に遊べて、かつ安く手に入る、そういったゲームがこれから主流になっ
ていくということなのかもしれない。
 パソコンでもゲーム機でも、手軽なゲームが人気を集めている。パソコン
では『マイクロソフト・リターンオブアーケード』。プレイステーションで
は『ナムコミュージアム』。アーケードでは『ナムコクラシックコレクショ
ン』。まあ全部ナムコの昔のゲームだから、懐かしさで売れている面もある
にせよ、手軽なゲームへのニーズが、いかに大きいかを表しているといえる。
 私が「軽いゲームの時代が来る」と予測する理由はもう一つある。インタ
ーネットとJavaの存在である。
 Javaは見た目C言語に似ていて覚えやすい。しかもブラウザを通して
動くから、機種ごとに別パッケージを販売する必要がない。
 その気になればRPGでもシミュレーションでも作れる言語だが、むしろ
インターネットと相性の良いことを生かして、軽いゲームを作り、ネットで
送信するという販売方法が、これから増えてくるのではないだろうか?
 いわばインターネット版「TAKERU」である。
 現在あちこちのホームページで、Javaで作られたゲームが遊べるよう
になっている(「ひゃっこいリンク集」参照)。既存のゲームの真似ばかり
だからといってあなどることなかれ。将来こういった中から、独創的なゲー
ムが出現する可能性も十分考えられる。
 そしてそれこそが、パソコンゲームがこれから生き残っていくための道な
のではないか。小さくて機動力のあるメーカーなら、この方式でも十分採算
がとれると思うのだが・・・。(続く)

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