ゲームについて考えることは喜びである
連載『ザ・ゲームパワー』
第一章=社会の中のゲーム<第17回>
今週は『GABALL SCREEN』(アンティノスレコード/PS用)である。
『GABALL SCREEN』という名前ではピンとこないかたも、「小室哲哉プロ
デュースのソフト」というと、「ああ、あの新聞に広告出てたやつ」とか、
「ああ、テレビでCMやってたやつ」とか、思い出されるかもしれない。
以前「マスコミ時評」でも取り上げたことあるし。
小室氏といえば、『EMIT』(光栄)の音楽も手がけていたし、TMネ
ットワーク時代には『TMネットワーク ライブインパワーボウル』(エピ
ックソニー)というゲームに登場していたし、意外とゲーム界には関連の深
い人物。ただ、小室氏独特の世界感を表現するには、やはりファミコンでは
なく、プレイステーションが必要だったようだ。小室氏はプレイステーショ
ンを、「新しいメディアとしての可能性」を秘めたハードと認識しているよ
うだ(この辺りのことは、マニュアルに書かれた、木根尚登氏の「さまよえ
る想像力『ガボール スクリーン』」に詳しい)。
『GABALL SCREEN』の説明に入ろう。ゲームとしてジャンル分けすれば、
「アドベンチャーゲーム」ということになるのだろう(「『ガボール スク
リーン』は、いわゆる『ゲーム』ではありません」とマニュアルにあるが)。
ストーリーは次のとおり。小室氏が「ガボール スクリーン」という新型
コンピュータを使って、7曲の新曲を完成させた。ちょうどそのとき、ファ
ンからのプレゼントとして、1足のスニーカーが届く。小室氏が部屋を去っ
た後、このスニーカーが動き出し、興味本位に(?)「ガボール スクリー
ン」に触ってしまう。途端に「ガボール スクリーン」は誤作動を起こす。
できたばかりの曲は、「ガボール スクリーン」が作った架空の空間に、散
り散りになって吸い込まれてしまった。曲を元どおりにするために、スニー
カーも「ガボール スクリーン」の作り出した空間に飛び込んでいく。
というわけで、プレイヤーはこのスニーカーとなって、曲の断片を探し求
めるのである。
断片といっても、『マザー』のように小節単位で分解されているのではな
くて、トラック毎に分かれているというのが、らしくていい。完成してメロ
ディー(Vocal)がつくまでは、どんな曲かわからないのである。
ゲーム本編は、『ナムコミュージアム』のミュージアム部分に近い。何か
起こる所でスニーカーの紐が震えるので、○ボタンを押すと、リアクション
が返ってくる。『ナムコミュージアム』で、パックランドのスーとか、トイ
レに入ってるパックマンとか、いろんなものを見つけるのが好きな人には、
向いているソフトかもしれない。
1曲探すのに正味20〜30分くらい。手軽にサクサク楽しめる。
何といっても良かったのが、「ガボール スクリーン」の作り出した、そ
れぞれの空間の雰囲気である。ペーパー広場の白と黒を基調にした色使い。
クジラの海での子クジラやイルカの鳴き声(さすがに全般を通して、効果音
の使い方がうまい)。『バーチャファイター2』のシカゴステージにも似た、
怪しげなれど自由で、暗いんだけど明るい雰囲気のあるガボラーストリート。
スニーカーの動きに慣性をつけることで、それらの空間(ワールド)を「飛
び回る」感覚がよく表現されている。
各ワールドで起こるできごと(イベント)も面白い。謎解き的なイベント
もあれば、メガCDの『スイッチ』に近い、一発ギャグ的なイベントもある。
各々のイベントが、プレイヤーにいろいろと思い起こさせ、プレイヤーの
イメージをかきたてる。私は、サーフボードがひとりで沖のほうにいっちゃ
ったとき、何だか妙に寂しくなった。
あと、真夜中のスケボーチェイスも印象に残っている。社会の規制と既成
の価値観から外れているこの街の気風は、案外、小室氏の歌の歌詞に通じる
ものがあるかもしれない。(続く)
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