発行日:’91年 8月26日(月)
発行:守山リス研事務局

リス研通信 No.52

'91.8.25 報告会での報告より。

キャンプ調査旅行結果報告(2) ==特集==

日時
’91年8月11日(日)
訪問先
井の頭自然文化園
東京都武蔵野市御殿山1−17−6 電話0422-43-2566
時間
10:00〜14:00
相談先
井の頭自然文化園飼育係Mさん
調査責任者
Y1さん
調査者
現地メンバーY2さんご家族、ほか4名

Y1さんの報告

開園まえに、がらがらの動物園駐車場に到着すると、「リス研の方々ですか? 」とまるで待ち構えていたように接触して来た人がいた。Kさんの報告で、横浜のY2さんの家族と判明。一同驚きかつとてもうれしかった。井の頭公園の回りにはかなり木々が残っている。すぐに入園(大人300 円)。時間が予約の13:00 にまだ大分あったため、ゆっくりと園内を見ながら、「リスの小径」へと向かった。途中気付いた事は、フラミンゴや鶴が囲いのない庭に放し飼いにされていたり、手で触れるように動物を外に出してあったり、(モルモット)、ニホンテン、ニホンイタチ、ニホンタヌキ、ニホンワシなど日本にこだわっている意図が見ただけでも感じられた。

「リスの小径」とは200平米ほどの下記の図のような建物で、入口と出口がガラスの二重ドアになって、周りと天井は金網だけで囲ってあり、放し飼いにされたリスに近づくために人間が中に入るという建物である。この中に17匹の子リスが放し飼いにされている。 我々は、日本リスに初めてお目にかかるという興奮からカメラのシャッタを押しっぱなしであった。時間が10時過ぎという事で、かなり暑い。そのためリスもあちこちの枝に、ぐったりと寝そべったりじーっとしてしている物のほうが多かった。しかしなかには、元気の良いのが一匹いて、建物のなかの藪の下や柵など一定のコースをちょこちょこと飛び跳ねては又元場所に戻るという行動を何回も繰り返していた。。我々は、そのリスを絶好の被写体として止めるため、酒のつまみの木の実を、通り道において置くと、案の定こちらの作戦どおりその実をつまみ上げるため、一時停止。皆一斉にシャッターを切る。それでも2 〜3 秒で移動するため、「透明リス」を写す人が続出。それでも、おなかの白さと耳のとがり具合、足の筋肉の上の方が馬のサラブレッドのような赤茶色がとっても気品を漂わせていた。周りを取り囲まれているためか、人間との接触がストレスとなるのかある種のノイローゼのようにも思われた。リスの小径の奥にはリスを繁殖させるための繁殖棟が2棟立てられていた。繁殖棟は、小さく区画されて、ペアリングされて(夫婦一対)いる。このペアリングは、近親相関による弱体を避けるため個体をコンピュータ管理して、決定しているという。そして餌もきちんと毎日投与されているため極めて順調に、出産しているとの事である。繁殖棟の区画の中には、2匹のもあれば、3匹、4匹の区画もあったが、出産した子供のようであった。我々が、ピーナツやアーモンドを金網に近づけると、金網にしがみついて、まったく逆さかまでも平気で近づき、口でくわえる。くわえるとすぐに自分のお気に入りの場所で、その実を両手で抱えるように挟んでくるくる回して食べる。何度も何度もやるとそれでもくわえに来る。時には食べずにどこかへ持っていく。地面に接した区画では、ひょうろひょろとした植物が4 〜5 本高さ50cm程で生えていた。(後から飼育係のMさんの説明で、リスに貯食された鬼グルミが発芽・成長と判明)飼育されていても、本能だけは忘れていないという嬉しさを感じた。

13:00 からMさんに事前予約の通り面談をし、井の頭園の考え方方針などを詳細に説明を受けた。

東京都(上野、多摩、井の頭、大島)の動物園で稀少動物繁殖のためズーストック計画をもち、分担をしている。リスの森構想もその一環である。このズーストック計画とはIUCN(国際自然保護連合)のアピールに基礎を置き、日本動物園水族館協会「種の保存委員会」との連携のうえ実施している活動で、2 本柱として、

  1. 「種の保存」ズーストック計画 (具体的事業)
  2. 「環境学習」ズー・エデユケーション施設の整備 (シンボル事業)

からなる。具体的には、リスの森構想として、

「愛らしく親しみやすい小動物であるニホンリスを飼育繁殖させ 放飼場で、慣らしてやがては園内に放し飼いしようというもの」

第1期('85〜87年)「リスをふやす」
採取、個体数を人工飼育で増す、奥多摩の小河内ダムで。
第2期('88〜89年)「リスと友達になろうよ」
リスの小径建設
第3期('90〜91年)「リスといっしょに遊ぼうよ」
リスの小径を3 倍に増築。(600平米に、'92.3 月完成
第4期('92〜95年)「リスとみんなで暮らそうよ」
園内に放し飼い

(大宮の芝浦工大でもキャンパスにリスを放し飼いにしようという計画を検討中。栃木県 井頭公園ではニホンリス放飼中)


井の頭でのデータ等

リスの数
生息環境
リスの小径に17匹。繁殖2棟。A棟は3階。B棟は2階建て。(床は網で出来ており糞、餌かすは1階に落ちる。2〜3匹程度を一区画に入れて、巣箱をいくつも入れ木材を入れている。100 匹を切ったら個体の維持は困難。ケージ内の土は消毒はしていない。(飼育係は2 人でかなり忙しい)
死亡
死亡原因は老衰と暑さでの衰弱。リスの小径でのリスの様子でも、枝先にグッタリと寝そべって、ほとんど動こうともしない状況を確認。リス用の木製の巣と餌台。
餌の状況
一回の食事を缶にいれて準備
リスの様子
熊が檻のの中で円状にグルグル何度も回ってうろつくように動いたり、餌を食べたり餌を埋めにいったりと若干「ノイローゼ」と思われた。リスは餌を充分与えられているためか、人間に慣れているためか、東谷山のような野生味を感じなかったのはなぜだったのか? 心配な点であった。

感想

Y2さんご家族が既に到着し出迎えて頂き一同びっくりするやら大変な感激でした。Y2さんは、準会員として半分の入会金、半分の会費をも払って頂き、今後の連絡を定期的に実施して行く事になりました。また井の頭や町田の地域新聞にのったリスの情報を収拾して送って頂ける事になり、井の頭の飼育係の人とも定期的にコンタクトをして頂ける事となりました。

目の前でホンドリスを観察でき皆興奮してしまった。何回もシャッターチャンスを狙って待ち受けた。鎌倉の台湾リスより確かに、若干小振りで、弱々しささえ感じさせた。みなの写真から、いいのを選出し、はがきかテレホンカードを3種類(鎌倉、井の頭、清水公園)造る検討を皆に図り進めて行きたい。

非常にお忙しいにも係わらず、予定時間を大幅に超過して、ご親切に説明をして下さり誠に有り難うございました。この3月に上野動物園から、移られたばかりとの事でしたが、壮大な計画を心に描いておられ、今後ともリス研にもアドバイスを下さる事を快諾して頂けました事は誠にあり難く思いました。


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