発行日:’91年 8月25日(日)
発行:守山リス研事務局

リス研通信 No.51

キャンプ調査旅行結果報告(1) ==特集==

報告会日時
'91年 8月25日13:30〜17:30
場所
Fさんの算盤塾
報告会参加者
13名
調査日時
’91年8月10日(土)鎌倉一帯
調査案内
都鎌倉の自然研究会Kさん、Nさん
調査責任者
Uさん
調査者
Yさん、Kさん、Iさん
ビデオ
Iさん、
カメラ
Uさん、Yさん、Kさん

Uさんの報告(文章をほぼそのまま掲載)

JR鎌倉駅西口で11:00に古都鎌倉の自然研究会のK会長とNさんに事前の打合せ通り合う。各自自己紹介後、いざ鎌倉とリスを求めて出発。今NHKの大河ドラマ「太平記」で人気絶頂のあの鎌倉か? 切り通しと言われるものか? 急勾配な不思議な地形だ? と思いつつ七人の最後尾を短い足でとことこ付いていった。次第に路地に入り民家の庭を左右に見ながら進む。どの家の庭も広く、庭木も大きいのが目につく。さほど手入れが行き届いた庭でもなく、自然にまかせてあるという感じである。庭木の桜を見上げていると、その中に一つの巣を発見。これぞまさしく鎌倉で初めて見るリスの巣だ。思いっきり大きな声で「巣を発見! 」と誇らしげに宣言。それからは木々のあちこちにリスの巣を見つける事が出来た。住んでいる人も気がつかないとの事。・・・・次第に民家がきれて、最後の民家はKさんのお友達の家。奥さんの話で「庭のビワやブドウ がリスにやられるので、名古屋に捕まえて持っていって」との事。電柱から電話線を伝って来るという。いよいよこれから木がうっそうと繁るハイキングコース へ。Kさん、Nさんとも山歩きはすごく慣れている事があちこちに感じられる。少し進と早速リスの皮剥ぎ跡を見つける。かなり太い木の上の方をかじっている。東谷山の皮剥ぎとは明らかに違っている。檜でもまるでパッチ・ワークのような皮剥ぎだ。途中眼下に鎌倉の街が一望できる景色のいい所で、森の街の様子を含め撮影。 銭洗い弁天へのコース でも木々が覆い繁り頭の上は緑がいっぱい。空は少ししか見えない。これは鎌倉で歩いたコース 全てこの状態である。小幡緑地などの比ではない。鎌倉の街そのものが山の中に埋まっている感じ。銭洗い弁天の、門をくぐった後、左右からこんもり盛り上がった木の枝を伝ってゆくリスを発見。憧れの野生のリスの発見である。たとえそれが台湾リスであっても、自然の状態のリスだ。感動の一瞬である。桜の枝から尻尾をふわふわさせて、我々を歓迎。すぐ皆に知らせる。初の御対面となった。誰もが脳裏に焼きついた最初の1シーンであった。リスは動きが早くすぐに姿を消した。だが私の心にはまだリスが残っている。リスが現れた事を感謝して弁天様に手を合わせ、お洞の清水でお金を洗い沢山たまるようにお願いする。・・・・次に佐助稲荷へ向かう。アップダウンが激しい。散策コースというより、登山道に近い。木の根っこにつまづきながら、木の上を見上げてリスを見つけようとし歩いていく。途中いくつかのリスの巣を発見。佐助稲荷では餌台が設置されており、ひまわりの種の殻がいっぱい落ちていた。以前はここで、宮司さん等が餌を与えていて沢山リスが集まって来ていたとの事。今日(8/10)はどうかなと木の上をみるとかなり上の方の枝でリスが動いている。昼を回った時刻なので木の枝に寝そべってしまい動かなくなった。昼寝の時間なのだろう。朝11時から歩きっぱなしで、レストラン「いつき」に向かった。木々がうっそうと繁るハイキングコースの一部で、かなり高い位置にある。店の横にも樹木が沢山あり、その一本に餌台が設置されていた。パンの耳が沢山置いてあり、リスがするすると木の上から頭を下に逆さまに降りて来てパンをくわえては又木の上に登って行く。何匹か交互に降りて来ては、パンをくわえていく。・・・ 食事をしながら、トヨタ財団の申請についての細かい注意点、資料を数点頂く。審査内容は、かなりきびしいという印象を持ちました。食後、鎌倉の大仏様を見にゆき境内のリスを観察する事になった。境内の木々にも営巣が見られ、こんなに観光客がごった返す人ごみの中でも活動する台湾リスのたくましさ、生命力の強さを感じた。おそらくホンドリスではこうはゆくまい。台湾リスならではの生命力であろうと思った。大仏参拝後、木の上にいるリスを発見。私達のグループがかたまってリスを見ていると、すぐに40〜50人の人垣が出来「なんだなんだ」というので「リスが遊んでいますよ」と教えてあげると、たちまち参拝客の話題を独占。リスを見つけた子供たちは回りの子供に「俺リスを見た、リスを見た」と得意げに話していた。外国人も寄ってきて一緒に見上げ「スクウオーレル」と話しているのが聞こえた。次にバス・電車をに乗り継ぎJR北鎌倉駅へ移動。駅ちかくの民家の庭先に餌台が設置されている場所を見学、5時頃に餌を取りに来るというが、この時は姿は見られなかった。徒歩で、円覚寺へ移動。途中も道の両側に大きなけやきや種々の大木が繁っており、リスの遊歩道がいくらでも出来ていた。電話線を渡って1m以上離れていた小枝に飛び移ろうとしていた。なかなか思い切れずにしばらく態勢を作っていたが見事に飛び移った。円覚寺は広々とした境内に檜や松他、沢山の巨木が繁り、その昔寺の勢力が強かった事を物語っていた。ここでも檜の大木にパッチワーク模様の皮剥ぎ跡が見られた。帰り際に大木にリスを発見。アーモンド付のセンベイを手に持って木に近づくとリスが恐る恐る警戒しながら寄って来た。人の手から煎餅をくわえるとすぐ木に登り、人から離れて食べている。違うリスもやってきて同じ行動をとる。この餌やりは面白く皆で子供のように歓声を上げて時間のたつのも忘れてしまった。今回の鎌倉調査旅行は、何もかも驚いた。自然のままのリスが自分の手から餌を採って行くとは思ってもみなかった事だし、自然の森とリスとの関係も名古屋の公園とでは比べ物にならないと思われた。民家の庭に植えられた木に巣があるなんてまるで夢のようだ。おとぎ話の中にでもいるような、そんな錯覚さえする。とにかく手を伸ばせば、そこにリスがいる。これが鎌倉である。Kさん、Nさん有り難うございました。お蔭様で効率よくポイントを見て回る事ができました。

文責: Uさん

トヨタ財団についてお二人より下記の資料を受領

特に、リスについて件数が重なったため、同じリスでは難しいかもしれない。とのコメントを頂き、更に申請にあたっての注意点。

  1. 視点や問題意識の新鮮さ
  2. 取組み方の独創性
  3. 実現性
  4. 盛り上がりと発展性
  5. 他地域、分野への波及・普及の可能性

(テーマの大きさ決め方が大事)

以上資料を検討し、今後の申請に備える。(時期は未定)

調査結果まとめ

【リスの様子】

佐助稲荷でも、円覚寺でも人家のすぐ傍や人通りの多い所でも出現。円覚寺では、木から降りてきたリスが手からピーナッツやセンベイを食べた。昼過ぎの頃は、枝にじっと横たわり昼寝をしているのを確認。ある時は、電話線を伝って移動しているのを発見。巣からの出入りは観察できなかったが、案内された場所場所で80〜90% の確率で発見されたのはすごいと思われた。

【生息環境】

鎌倉は山である。各家庭の庭の樹木ともつながり大樹林を造っている。直径70〜 120cm程の樹齢50〜二百年以上の樹木が多数。とにかく山と森の中に住宅があるという感じで、この樹冠がリスを守っているという印象を得た。

【餌の状況】

つばきの木が多数自生。つぶらじいなど秋から冬に食べられる餌が充分ある。給餌台では、ひまわりの種が中心。各家庭では、パンやクルミ、ピーナッツ、芋、リンゴ等なんでも食べているとの事。

【住民関係】

自分の庭に巣があったり、給餌台をつくって毎日餌を与えたりタイワンリスとしての違和感は無い。やはり「野生リスの物珍しや、かわいさ」が人々に関心を引き起こすようだ。

【感想】

KさんやNさんの親切な案内で、すみずみまで約5時間。途中で疲れて大仏から鎌倉までバスに乗り、鎌倉から北鎌倉まで電車で行くという旅も味わった。山の上のレストランの若主人との話しで「おじいさんは、耳の尖った、胸の白い日本リスがいた」との事が確認できたのは、面白かった。やはり台湾リスが繁殖して、次第に駆逐された様子が伺われた。

台湾リスといえど、ここに生息が可能となり繁殖したのは、やはりこの山と樹木の多さが基本と痛感した。Kさんといい、Nさんといい非常に若い!すたすたと山道を苦もなく登っていく。朝5時に出た我々は、後半かなりグロッキーとなり、KさんとNさんのご配慮で、バスと電車による移動に切替えて頂いた事は大変良かった。ほんとうにご案内と指導を頂き有り難うございました。今後とも、情報交換や連絡をとって行きたく宜しくお願い申しあげます。

8/10は鎌倉の、年に一度の花火大会であったが、5時間の散策でかなり疲労してしまった。40分程で野島キャンプ場へ到着し、テントをたてランタンの下で乾杯し、夜の夕食を楽しんだ。そして近くの下町の銭湯へ全員で出かけ、一日の汗を流し、とても豊かな一日を感謝した。


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