街の中で天体観測!…月…


プロフィール

 月は私達にとって,もっとも身近な天体だと思います。月までの平均距離は約38万km。これは,太陽までの距離の1/389です。月はまた,人類が足跡をしるした唯一の,地球外天体でもあります。
 月は満ち欠けをしながら約1ヶ月で天球上を一回りします。この運行を元に「ひと月」が決められ,暦の元となりました。また,数々の月を愛でる風習,月にまつわる神話,民話の数々など,天文民俗学的にも,月はもっとも話題に上る天体です。

 現在,私たちが月の存在を意識するのは,お月見のときと月食のときぐらいでしょうか?
 でも,月にはまだまだ面白いことがいっぱいあるのです。
 月の秘密を探りながら,月の世界へとご案内しましょう。


 月の見どころ……

 月を肉眼で見るときの,おもな「見どころ」は……

・月の満ち欠け
・月の模様
・「地球照」

など。もちろん,双眼鏡や望遠鏡がある人は,それを併せて使うといいでしょう。

 また,月食や星食(星が月の後ろに隠れる現象)なども,月が主役の天文イベントです。
 「星食」にならなくても,明るい星や惑星に月が近づいたときも,素晴らしいシーンとなります。

金星と並んだ三日月。
月は天球上での移動速度が速いため,
いろいろな星に出会うチャンスがある。
夕焼け空に浮かぶ,細い月。
新月直後の夕方,新月直前の明け方が,
このような風景に出会うチャンスだ。

・月の満ち欠け

 月は約30日で満ち欠けを繰り返します。月齢は,月と太陽が同じ方向に揃ったときをゼロ(=新月)とし,新月からの日数で表します。三日月は新月の三日後,半月(上弦)は新月の約7日後となり,満月(=十五夜)は,新月から約15日経った月となります。この間,月は天球上をひたすら東へ進み,27日少々で天球上を1周します。…と言うことは,360/27=13(度)と言うことで,1日に13度ほど,見える位置が変わり,毎日,約1時間ずつ,月の出が遅くなってゆきます。

三日月,半月,満月……それぞれに特徴ある表情を見せる。

・月の模様

肉眼で……

 月を眺めていると,明るい部分と暗い部分があることがわかるでしょう。
 明るい部分はクレーターの多い「山岳地帯」,暗い部分は「海」と呼ばれる,クレーターの少ない平原です。「海」と言っても,水はありません。
 昔から,この,月の模様を,洋の東西を問わず,いろいろなものに見立てていました。
 日本人は月の模様を「うさぎの餅つき」と言いますが,国によっては,蟹になったり,本を読む女性だったり,女性の横顔だったりします。
 月の模様は肉眼でもじゅうぶんに見えますから,お月見のときにでも,ゆっくり眺めてみては,いかが?

 月の模様について,本館「自然大好き」のページを見る


双眼鏡,望遠鏡で……

 小さな双眼鏡でも,おもなクレーターの存在が確認できます。月のクレーターを観察する場合,月の欠けぎわ……つまり,太陽が斜めから当たっている場所にあるクレーターのほうが,立体構造が良くわかり,観測しやすいので,新月と満月の前後の時期には,双眼鏡でのクレーター観測は難しくなります。
 しかし,満月前後になると目立つクレーターもあります。クレーターに正面から光が当たるようになると,クレーターのまわりに放射状の光の筋(光条といいます)が目立ってくるものがあります。光条は,光が斜めに当たるときには,はっきり見えません。満月の前後は,光条の観測に適しています。

 望遠鏡を使えば,クレーターの細かい構造や,「海」の部分に出来た,しわ状の地形,ドーム状の突起物など,さまざまな地形が楽しめます。月面図などと見比べながら,おもしろい地形を探してみましょう。

月の欠けぎわは,地形観察に向いている。
複雑な構造のクレーターが,
はっきりと姿をみせる。
「光条」は,光が正面から当たる時期に,
見やすくなる。
右がコペルニクス,
左がケプラーと言う名のクレーター。
クレーターから放射状に白い筋が広がる。




・地球照
 三日月が丸く見える?!
 月が細いとき,太陽の光を浴びていない部分も,ぼんやりと光って見えることがあります。
 これは「地球照(ちきゅうしょう)」と言って,月が地球によって照らし出されているのです。満月のよる,地球が月の光に照らされるのと良く似ています。地球照は,月が,地球の昼間の部分(=太陽に照らされている部分と向かい合っている時期,つまり,新月の前後に,見られます。双眼鏡や望遠鏡で観察すると,半月の頃まで,なんとか地球照を確認することが出来ますけどね。

三日月に,たっぷり露出をかけて撮影。
地球に照らされている月の暗い部分は,
模様までわかる。


 地球照についての詳しい解説は,本館「自然大好き!」へ


月について,もっと詳しく……


月の撮影記録 ……月の有名な地形やクレーターなどをピックアップ。
お月様コラム ……月にまつわるあれこれ。サイエンス・エッセイもどき。


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