お月様コラム(第1集)


第1集もくじ

・月の山と海
・三日月,半月,十三夜,十五夜
・七夕は半月の下で!
・欠けた十五夜
・月の裏を見る
・「ひと月」って,何日?
・日食と月食,どっちが多い?


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・月の山と海
 月にも,山や海があります。山は確かに,名前のとおりデコボコした場所なのですが,月の海には水はありません。月の海は,クレーターの少ない部分で,溶岩流などで満たされて出来た「平原」のことです。海の部分は山の部分に比べて,反射率が低いので,やや暗く見えます。月に「うさぎ」の姿が見える,と言いますが,この,うさぎの部分が,海です。



 月の海はクレーターが少なく,落ち着いた風景です。左のほうに「シワ」のようなものが見えます。溶岩流の残骸でしょうか?左のほうにある,円弧状に光っているのがユラ山脈,その内側が「虹の入り江」です。虹の入り江はアポロ11号が1969年に着陸し,人類が初めて月に足跡を残した場所でもあります。海の部分は平坦なので,軟着陸する場所として安全だと考えて,選ばれたんでしょうね。



 月面南部のようす。こちら側はクレーターが密集し,荒い地形です。いちばん大きなクレーターは,直径が200kmを越えます。クレーター密集地は,海の部分よりも明るく見えます。
 上のほうに見えている,やや暗い部分は,雲の海の一部と,病いの沼あたり。

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・三日月,半月,十三夜,十五夜
 月は形によって,いろいろと名前がつけられています。有名なのは「三日月」「半月(上弦の月/下弦の月)」「満月」など。ちょっとだけ,「月の名前」を集めてみました。

・新月
 太陰暦や太陰太陽暦など,月を基準にした暦では,新しい一ヶ月の始まりを告げる月として,大切な月です。。一ヶ月の第1日目に,夕方の西の空に最初に見える月のことです。イスラム暦は太陰暦ですが,断食月である「ラマダン」(この期間は,太陽が出ている間の飲食を禁じている)の明ける,翌月第1日目の新月が見えた日を,盛大に祝います。
 天文学上の新月は,「朔」とも呼び,太陽と月が天空上の同じ経度に並んだ瞬間を指します。
・三日月
 細い月の代名詞です。月齢3ぐらいの月を,三日月と呼んでいます。月齢とは,天文学上の「新月」をゼロとして,その瞬間からの経過日数で示します。ですから,「月齢3.6」と言う風に,小数点以下もあります。おおよそ月齢7少々で上弦の月,月齢15の少し前ぐらいに満月になります。
・上弦,下弦(じょうげん,かげん)
 新月から満月に向かう途中の半月が「上弦」,満月から新月に向かう途中の半月が「下弦」。天文学的には,太陽−地球−月の位置関係が直角になるとき。「弦」とは,弓の糸の部分。半月の直線の部分を「弦」になぞらえた名前です。
・十三夜
 旧暦の9月13日の月。「後の月(のちのつき)」とも呼ばれます。十五夜が「芋名月」と呼ばれるのに対して,「栗名月」「豆名月」とも呼ばれます。「芋名月」の芋は,里芋のことで,里芋が真ん丸いのに対し,栗や豆など,ちょっと丸よりつぶれた形を当てているわけです。十三夜は今の暦では,10月頃になりますから,そのときに収穫されるものを名前に当てている点も興味深いですね。
・十五夜,満月
 今でも旧暦の8月15日の月を,「十五夜」と呼び,お月見などをして祝いますが,十五夜は,収穫を感謝するお祭りでもあります。十五夜は「仲秋の名月」とも呼ばれますが,8月に秋?……そうなんです。旧暦では7,8,9月が「秋」なので,秋の真ん中の8月にある満月の日は,秋のど真ん中の日でもあるわけです。
 通常の満月でも「十五夜」と呼ぶこともあります。「望月」「望」も満月のこと。天文学的には,地球から見て,太陽と真反対の方向に月が来た瞬間を「満月」または「望(もち)」と呼びます。
・十五夜以降の月
 十五夜の翌日は十六夜(いざよい)の月。十五夜に比べると,1日で1時間ほど月の出が遅くなります。
 さらに,十七夜(立ち待ち),十八夜(居待ち),十九夜(寝待ち,または臥待ち),二十夜(更け待ち)と続きます。十五夜は,日没と同時ぐらいに月が出てきますが,二十夜になると,月の出は午後10時を過ぎます。

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・七夕は半月の下で!
 あなたのお住まいの地域では,いつ,七夕祭りをしますか?新暦の7月7日?(神奈川県の平塚の七夕祭りがそうですね),それとも,仙台の七夕のように,月遅れで8月7日?
 新暦でやると,関東地方など,梅雨の真っ盛りなので,なかなか星が見えません。そう言う意味では,月遅れのほうが,星にとっては条件がいいですね。
 でも,本当の七夕は,旧暦7月7日。旧暦の日付で7日と言うことは,必ず月齢7の月……上弦の月が見えているわけです。「星のお祭り」なんですから,月の位置や形にもこだわりたいですね。
 七夕伝説は,東アジア各地にありますが,日本の七夕のお話は,中国の伝説に日本の農業信仰などが混ざり合って出来上がったものらしいですね(この辺の詳細は,柳田邦男らが研究しています)。東北の有名なお祭り……ねぶたや竿灯なども,七夕祭りをベースにしていると言うことです。この辺りも「月遅れ」タイプの七夕祭りだと言えそうですね。
 「十五夜」は満月が主役だったために,今でも旧暦を使いますが,七夕は主役は星ですから,便宜的に,いろいろな日付に飛ばされてしまったのでしょう。七夕の「名脇役」は,やはり,上弦の月だと思います。ぜひ,旧暦での七夕を楽しんでみてください。

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・欠けた十五夜
 満月と言うと,どこも欠けていないまん丸の月,と思われますが,実は本当は,少しだけ欠けています。
 満月は,ほぼ真正面から太陽の光が当たっていますが,ぴったり真正面の位置に月が来てしまうと,地球の影の中に入って,「月食」になってしまいます。ふだんの満月は,地球の影の上か下を,月が通り抜けています。……と言うことは,満月の時には,月の左右ではなく,上下のどちらかが,わずかに欠けていることになります。
 本当かどうか,見てみましょう。

 これは2001年3月9日の満月。上が北,下が南になっています。
 よく見ると,南側がザラザラした感じに見えます。


 拡大してみました。
 全体像の写真の下のほうを拡大した画像です。中央よりやや上に,「ティコ」と言う目立つクレーターが見えます。拡大すると,南の果てのクレーター群が,ほんのわずかだけ陰になっているのが見えますね。

 ところで,「十五夜」も,肉眼で気づくくらい,欠けていることがあります。
 これは暦の都合で,旧暦の「十五日」が,必ずしも天文学的な「満月」と一致せず,「満月」の前の晩に「十五夜」になってしまう場合があるためです。

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・月の裏を見る
 月の裏側って,見たことありますか?
 月は,自転周期と公転周期が同じなので,いつでも地球に同じ面を向けています。
 人類が月の裏側を本格的に観測したのは,月ロケットを飛ばしてからのことです。それまでは,月の裏側は,未知の世界だったのです。

 ところが,いつも同じ顔をしているような月も,少しだけ向きが変わります。月の公転軌道が楕円形をしていることや,地球が太陽の周りをまわっている公転軌道の面と,月の公転軌道面がズレていることなど,さまざまな要因により,月は少しだけ首振り運動をします(これを秤動……ひょうどう……と言います)。その結果,地球から月を見ると,月面の50%よりも,少しだけ広い面積……おおよそ59%ぐらい……を見ることが可能です。


 これは半年隔てて撮影して満月です。
(色の違いは無視してください(^_^;)……)
 月の上のほう(北のほう)を比べてみてください。左の月のほうが,北側の部分がよく見えています。逆に南側の部分は,右側の月のほうが広々としていますね。……こうして写真を撮影してみたり,スケッチを残しておくと,月の首振り運動が良くわかります。

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・「ひと月」って,何日?……いろんな「ひと月」と太陰暦
 突然ですが,「ひと月」って,何日ですか?
 「30または31日,但し2月は28または29日」,と言うのが,現在の暦です。
 そもそも,「ひと月」が30日ぐらいになったのは,月の影響なのです。新月が満月になり,ふたたび新月に戻るまでが約30日。これが「ひと月」の基本となっています。
 しかし,月は大変複雑な動きをします。基準点の取り方によって,いろいろな「ひと月」があります。
 月の満ち欠けを基準にしたのが「朔望月」。
 月の公転軌道の,地球にいちばん近いポイントを基点にした「近点月」。
 月の公転軌道面と黄道面の交差するポイントを基準にした交点月。
 さらに,分点月,恒星月など……。
 いちばん短い「交点月」で27.21日,いちばん長い「朔望月」で29.53日。

 「金色夜叉」に出てくる,「来年の今月今夜,再来年の今月今夜の月を……」と言うくだり。どう見ても,同じ条件で月が見えるとは思えません。

 でも,こんな計算も出来ます。

 朔望月(29.53日)×223=6585.32日
 近点月(27.55日)×239=6585.54日
 交点月(27.21日)×242=6585.36日
 恒星月(27.32日)×241=6584.52日
 分点月(27.32日)×241=6584.50日

 ……これら5つの「ひと月」の最小公倍数が,おおよそ6585日であることがわかります。
 つまり,6585日おきに,月と地球と太陽の位置関係が,だいたい同じ条件になるわけです。
 6585日を1年(=365.25日)で割ると,18年と10.5日。
 実際,おおよそ18年と10日ぐらいの周期で,同じような条件の日食や月食が起こります。これを「サロス周期」と呼び,はるか昔から経験則として知られていた周期なのです。これをもとに予測された日食や月食も数多くあります。古い文書の中には,その土地で日食が見えなかったのに観測記録が残っている例もあります。日食の場合,月食とは違い,「食」が見られる地域が限られており,1サロス周期後に日食があっても,前回と同じ場所で日食が見えない場合もしばしば起こります。したがって,サロスを使って予測して,実際には観測しないで記録が書かれたものでは,このような間違いが見つかり,文書を書いた人がサロスを利用していたことが判明します。

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・日食と月食,どっちが多い?
 あなたは日食と月食,どちらをたくさん見てますか? 日食を追いかけて海外遠征するような熱心な天文ファンでもない限り,多分,日食を見た回数よりも,月食を見た回数のほうが多いと思います。

 ところで,この図を見てください。


 簡単な日食と月食の模式図ですが,矢印の部分の幅に注目してください。日食の起こるチャンスのほうが,月食よりも多いことがわかります。実際に調べてみると,本当に,日食のほうが月食より多いんです。
 1998年から2016年までの間に,日食は42回,月食は26回あります。

 しかし,日食は見られる地域が限られています。一方,月食の場合,月食の起こる時間に月が空に出ていれば,必ず見られるのです。そのため,月食を見る機会のほうが,日食よりも多くなるのです。

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