Marine Blue Serenade
■4日目■
【 朝 / 昼 / 夕 / 夜 】
◆7月24日<朝>◆
『ある暑い夏の日の午後』
今日は直美さんと一日、デートだ。
空は相変わらず見事な快晴。まさに海水浴日和だ。
家の前で待ち合わせて俺と直美さんと一緒に三本松海水浴場にやって来た。
行き先が天乃白浜ではないのは、バイト先の人間にひやかされるのを嫌っての事だろう。
海の家で着替えを済ませて、俺は直美さんが着替えてくるのを待っている。
「まこと君、お待たせ」
わぁ…水着、白だぜ。思い切ったなぁ、直美さん。
パーカーで隠してるその水着姿に、ドギマギしてしまった。
「さぁ、とりあえず荷物を置く場所をとって、先に食事をしましょうか?」
俺達は荷物を適当に置くと、貴重品だけをもって海の家『松の家』で早めの昼食を取ることにした。
それにしても、海の家らしい食堂だな。古い木造の建物に木の長椅子にテーブル。地面はコンクリートむき出しだし、メニューはお世辞にも上手いとはいえない手書き。
”氷”の旗に相当昔の錆びたペプ○の看板。これまた数年前から変えていないと思われる水着の姉ちゃんが意味もなく写ってるビールのポスター。まあこれはこれで夏の情緒だよなあ。
「いらっしゃいませ」
おや、建物はボロだが結構可愛い娘が働いてるぞ。
「焼きそば大盛りにコーラフロート」
「えーと、ざるうどんにウーロン茶」
「かしこまりましたぁ」
それにしても凄いメニューだな。カレーに丼物、ラーメンにホットケーキ、うどんにピザ、サザエの壺焼きにマーボー豆腐???
「なぁにニヤニヤしてるのよ。ふーん。さっきの娘みたいのが好みなんだ」
「誤解だよ。確かに可愛かったけどな」
「でも、あれね、可愛い娘くらい入れないと、ここもやっていけないんでしょ」
「この海の家の事」
「そ。海水浴客をみんな天乃白浜に取られて、一時は寂れてたのよ。それを去年から地元客を対象にした割安作戦にでたの。気軽に楽しめる海水浴場ってね」
「へぇ」
「私のバイトしているシーサイドパークとは犬猿の仲なの。リゾート計画が出たときこの辺の民宿や海の家は猛反発したのよ」
それはそうだろう。目と鼻の先にあんな設備の整った一大リゾート施設ができてしまうと、昔からの宿泊施設や海水浴場は客をかなり吸い取られるだろうからな。
「でも、私はどっちかって言うとこっちの方が好きだな。色々思い出もあるし、落ち着くのよね。私もここでバイトしたかったなぁ」
「じゃあなんでシーサイドパークへ」
「やっぱ、あっちの方が給料高いし…」
「おい!」
「冗談よ。まこと君のお義兄さんみてもわかるように私のご近所、リゾート関係者が多いの。だからこっちでは働きにくいでしょ?」
「なるほど、いろいろあるんだね」
「ところでまこと君、私に何か言うことがあるんじゃないの?」
「え、なんだったけ?」
「あのねぇ、どういう経緯で今日、一緒に海水浴来たと思ってるの?」
ああ、水着だ水着。俺は直美さんの水着姿を見に来たんだったよな。
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