◆7月24日<夜>◆
『長谷川家の花火大会』
さてと、今日はさすがに疲れたから今夜も家でおとなしくしてよう。
俺は部屋で布団の上に横になって、テレビを観て過ごしていた。
「ま・こ・と君!」
不意に声をかけられて驚いて振り向く。
「な、直美さん、なんで家に?」
「博子さんがね、花火しようって誘ってくれたんだ」
「花火かあ。いいねえ。よしゃ、じゃあ庭へ行こう」
なんだか毎晩、このパターンだよなあ、なんて思いながら、直美さんと一緒に庭に出た。
「来たか、まこと」
すでに庭に出ていた姉貴が俺の顔を見て言う。
あれ?
見慣れない顔があるな。
中学生くらいの女の子と小学生くらいの男の子がいるぞ。
「あんたが直美姉ちゃんの男か?」
俺の顔を見るなり、男の子がそう言ってきた。
「ちょっと、生意気な口をきくんじゃないの!ごめん、まこと君、コイツ弟の直人。そして…」
「妹の千香子です」
「これはどうも…」
直美さんの妹かあ。
少し雰囲気が違うけど、よく見ると顔立ちとか直美さんに似てるな。
直人君の方は坊主頭で、いかにも生意気ざかりといった感じでだ。
彼は襟首を直美さんに捕まれてじたばたしている。
「いてぇ、いてぇ! なにすんだよ姉ちゃん」
「な・ん・か・文・句・あ・る・わ・け〜」
直美さん直人君の頭に両拳をあててグリグリしていた
うわ。けっこう痛そう…。
「わぁ、ごめんなさい、ごめんなさい…僕がわるかったですぅぅ」
半泣きで姉に謝る弟君。
「直人君。なんだか、君には共通するものを感じる」
彼の肩に手を置いてしみじみ言う俺。
「それって、どういうことかなぁ? まことぉ」
俺は博子姉さんに直美さんと同じようにグリグリやられた。
「うう、こういうことだよ…」
「兄ちゃんも苦労してんだね。凶暴な姉ちゃんを持つと…」
「まぁまぁ…さ、始めよう」
康太郎さんの言葉でこの小さな花火大会は始まった。
花火が入っているビニールの中身を見ると、いろいろ買ってきてるみたいだ。
打ち上げから線香花火まである。
それを各々好き勝手に火を付けて花火を楽しんだ。
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