◆7月21日<昼>◆
『天乃白浜海岸へ』
俺は姉貴夫婦と共に海水浴場にに来た。
ここは近郊では一番綺麗な海岸として有名な天乃白浜海水浴場。
三本松町がいま一番力をいれているリゾート化計画にのっとて第三セクターのシーサイドパーク株式会社が管理している。設備がプール並に整っていてシーサイドパーク・天乃白浜ビジターセンターにはロッカー室はもちろん温水シャワー、仮眠室、レストラン、ミニシアター、カクテルバー等豪華版海の家を誇っている。
それにしても、夏休みだけあってけっこう人が来てるなぁ。
姉貴達は泳ぎに行ったし、どこかにかわいい女の子でもいないかなぁ。
あ、いた!
かなりかわいいぞ。それに一人だ。
よし、弘に教わったテクニックとやらをためしてみるか。
俺は長い髪の少しおとなしそうな女の子に思い切って声をかけた。
「やぁ、また会ったね」
う、我ながらちょっとわざとらしいけど…
「な、なんですか? どこかでお会いしましたっけ?」
「おや、さっきバスでいっしょだった子でしょ?」
「あの〜私…車で来てるんですけど」
「あれ〜よく見ると違うねぇごめん。君の方が少しかわいいかな…ははは」
なんか今の俺、力いっぱいダサイと思うんだが気のせいか?
「あのですね…ナンパなら他でやって下さい。では」
「あう…弘の奴、適当言いやがって…」
「すみません、他の方々の迷惑になるようなことはやめていただけないでしょか?」
白いロゴ入りのシャツに赤い帽子の人が俺に向かって注意した。あちゃ〜ビーチの監視員だよ。
「あはは、ごめんなさ…ああ! 直美さん!」
「ま〜たく、なにをやってるんだか…ふ〜ん。軟派野郎なのね、まこと君って」
「ええ!? 直美さんのバイト先ってここ?」
「まぁね。言ってなかったっけ?」
「うん。初めて知った。ははは…格好悪いところ見られたな」
「ま〜ね。でも、まこと君がナンパしてるなんて、博子さんに言いつけちゃおっかなぁ〜」
腕組みしてジド目で、俺を見る直美さん。
「ううう」
「それが嫌なら、ナンパなんてやめて海で泳ぎなさい。せっかく海に来て女の子のお尻ばっかり追いかけてるなんて不健全よ」
「はい、ごもっともです」
俺はその後、直美さんの目を気にしながら、海水浴を楽しんだ。
うう、今日はダメみたいだ…。
「ああ〜、面白かった」
「少し疲れたな、さすがに」
おや? 姉貴達が海から上がってきたぞ。
姉貴はちょっとハイレグの入った青のワンピースの水着である。昔はもっと派手なのを好んで着ていたみたいだが、結婚して少しは落ち着いたみたいだなぁ。
そして、姉貴の夫、康太郎さん。背は俺より一回り高く、のほほんとした印象があるものの、なかなかの美青年である。結婚前はさぞモテただろうな。
「あら、まことは泳がなかったのか?」
「俺はビーチにいるほうがいい」
「女の子の水着姿の鑑賞したほうが楽しいだもんね」
俺は突然の声に驚いて振り向いた。
「げ、直美さん」
「どう? 直美、忙しい」
「うん。まぁまぁかな? でも、今は休憩時間なんだ」
「それなら、なにか飲んでいけよ…って、あれ? もうジュースないんだっけ?」
姉貴がクーラーボックスをのぞき込む。
うむ、さっき結構俺が飲んだからなぁ。姉貴達もちょくちょく飲んでたし…。
「仕方ない誰かに買いに行かせよう」
誰かといいつつ、俺をじっと見つめる姉貴。
「…なんだよ。俺に行けってか?」
「そうだ! ちょっとしたゲームしようよ。それで負けた奴が使いっ走りってことに」
直美さんの提案する。
姉貴が何かニヤッとしたような気が…。
「じゃぁ、トップの奴はおごられるってことで。で、どんなゲーム?」
「ビーチフラッグ。最初、二人でうつ伏せに寝転がってて、よーいどんで砂浜に刺さってる棒をいち早く取った方が勝ちというゲーム」
「ああ、ライフセーバーの大会とかでやっているヤツね」
「いいんじゃないやってみよう」
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