■直美編■
1日目【7月21日】


 
 
 「よし!面白そうじゃん。先に取れば勝ちだろう?」
 「そうこなくっちゃ」

 直美さんは適当な棒を拾ってくると砂浜に立てた。女が二人もいるからドベになることはないだろう。

 「じゃあ、まことと康太郎から」
 「まこと君、お手柔らかに」

 俺と康太郎さんは棒から5メートルくらい離れた浜辺に棒に足を向けて伏せた。

 「手は後ろに組んで。博子さんが手をたたくから、そしたら動いて」
 「よぉぉい」

 パチッ!
 姉貴が軽く手をたたく。

 「うおぉぉぉ!」

 俺は勢いよく立ち上がり振り向いてダッシュ! 棒に飛びついたが、僅かに康太郎さんの方が早かった。ちょっと悔しい。

 「康太郎の勝ち!」
 「じゃあ、次は君たちだ」
 「博子さん手加減してよ」
 「ふふふ」

 自信げに笑う姉貴。直美さんもやる気満々だ。

 「よーい」

 パチッ!!

 「もらったぁぁぁ」
 「うぁぁぁ追いつけないぃぃ」

 見事な前転で棒を取った姉貴は嬉しそうだ。でも、二人とも俺達より早い…。

 「ちゃんちゃちゃーん。ただいまより、使いっパシリ杯決勝戦を始めます。長谷川家の夫婦対決になりましたこの決勝戦、非常に楽しみであります」
 「……」

 なんだかな…。

 「では、よーい」

 パチ!!

 「いやぁん、康太郎さんはやぁい」
 「ははは」

 おい! なんじゃそりゃぁぁぁぁ!
 姉貴の奴、おもいっきりわざとらしく康太郎さんを勝たせた。

 「なんだその目は! なんか文句あるっていうのまこと!」
 「なんでもないっす、はい」

 「では本日のメインイベント。使いっパシリ決定戦を行います。運動音痴少年まことと可憐なビーチの守り人、直美の対決!」

 やかましいわい。

 「まこと君、本気で行ってよ、手加減はナシね」
 「わかってるって」
 「二人ともいい? よぉぉーい」

 パン!!

 だぁぁぁ!!
 俺はおもいっきりダッシュしたが砂に足を滑らせ大転倒。その間に直美さんが棒を掴んだ。

 「はい決定。結局、まことが行くことになったわね」
 「がっくし…」

 俺はとぼとぼとビジターセンターの自動販売機にジュースを買いに行くことになった。