「よし!面白そうじゃん。先に取れば勝ちだろう?」
「そうこなくっちゃ」
直美さんは適当な棒を拾ってくると砂浜に立てた。女が二人もいるからドベになることはないだろう。
「じゃあ、まことと康太郎から」
「まこと君、お手柔らかに」
俺と康太郎さんは棒から5メートルくらい離れた浜辺に棒に足を向けて伏せた。
「手は後ろに組んで。博子さんが手をたたくから、そしたら動いて」
「よぉぉい」
パチッ!
姉貴が軽く手をたたく。
「うおぉぉぉ!」
俺は勢いよく立ち上がり振り向いてダッシュ! 棒に飛びついたが、僅かに康太郎さんの方が早かった。ちょっと悔しい。
「康太郎の勝ち!」
「じゃあ、次は君たちだ」
「博子さん手加減してよ」
「ふふふ」
自信げに笑う姉貴。直美さんもやる気満々だ。
「よーい」
パチッ!!
「もらったぁぁぁ」
「うぁぁぁ追いつけないぃぃ」
見事な前転で棒を取った姉貴は嬉しそうだ。でも、二人とも俺達より早い…。
「ちゃんちゃちゃーん。ただいまより、使いっパシリ杯決勝戦を始めます。長谷川家の夫婦対決になりましたこの決勝戦、非常に楽しみであります」
「……」
なんだかな…。
「では、よーい」
パチ!!
「いやぁん、康太郎さんはやぁい」
「ははは」
おい! なんじゃそりゃぁぁぁぁ!
姉貴の奴、おもいっきりわざとらしく康太郎さんを勝たせた。
「なんだその目は! なんか文句あるっていうのまこと!」
「なんでもないっす、はい」
「では本日のメインイベント。使いっパシリ決定戦を行います。運動音痴少年まことと可憐なビーチの守り人、直美の対決!」
やかましいわい。
「まこと君、本気で行ってよ、手加減はナシね」
「わかってるって」
「二人ともいい? よぉぉーい」
パン!!
だぁぁぁ!!
俺はおもいっきりダッシュしたが砂に足を滑らせ大転倒。その間に直美さんが棒を掴んだ。
「はい決定。結局、まことが行くことになったわね」
「がっくし…」
俺はとぼとぼとビジターセンターの自動販売機にジュースを買いに行くことになった。
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