「あははははは! なんだそんなことだったのか」
直美さんが俺をストーカーだと勘違いした事を姉貴に話すと、予想通り馬鹿笑いしやがった。
「ごめんね、まこと君。でもさぁ、まさか電車でたまたま乗り合わせた人が、自分の隣の家に向かっていたなんて、普通は思わないじゃない?」
「そうだな。すごい偶然。あんたたち運命で結ばれているのかもな」
「あのなぁ、姉貴…」
姉貴の奴、また俺をからかいだしたぜ。
「で、今日は朝から何処へいってたんだ直美」
「あ〜ひっどい。博子さん私が大学生だってことを忘れてるなぁ」
「あ、そうか。ごめん、ごめん。大学に行ってたんだな。直美はいつもバイトへ行ってるってイメージあるから、ついな」
「え? 大学…直美さんって俺より歳上?」
ちょっと意外で驚く俺。
「はぁ。どうせ私は子供ですよ」
「でも羨ましいぞ。年齢よりも若く見られるなんて」
「まこと君は、私を何歳くらいだと思ってたの」
「高校生くらいかと」
「やっぱり。まあ、中学生って言われるよりましだけどね。あっ、そろそろ準備しなきゃ。私、昼からバイトがあるんだった」
「そうか。それじゃあまり引き留める訳にもいかないな」
「すみません。そういう訳で、私そろそろ失礼します」
そういうと直美さんは出された麦茶の残りを飲み干すと、立ち上がった。姉貴と俺もそれに続き彼女を玄関まで見送る。
スニーカーの紐を結び直す彼女に、姉貴がニヤリとして話しかける
…いやな予感。
こういう顔をする時、絶対ろくな事言わないからな…。
「あ、そうそう。よかったら今度まことを貸してやるよ。こんな野郎だけど、デートの相手ぐらいはつとまるから」
「姉貴!」
「ははは、そうね。じゃぁ今度貸してもらおうかな?」
スニーカーを履き終わって立ち上がると、向き直り舌を出してそう答えた。
「直美さんまで…」
「なに? まことは直美が相手じゃいやなのか?」
「べ、別に嫌じゃないけど…そんなことじゃなくて!!」
「じゃあね博子さん。まこと君、楽しみにしてるからね」
「じゃあね」
くそぅ、二人して俺をからかいやがって。
直美さんかぁ…。
まあ、年上と言われればそうかもな。なんか芯がしっかりしてるというか、少し姉貴に似てるところがあるよな。う〜ん、だから姉貴と気が合うのかもしれない。
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