◆7月25日<昼>◆
『生け花』
昼になって、いつもながら時間を持て余し、ぶらぶらしている俺。
う〜ん、なんとなく美鈴の別荘の前まで来てしまったが、美鈴はいるだろうか?
まあ、美鈴とはだいぶ仲良くなってきたし、ちょっと訪ねてみようかな。
たぶん、別荘にいるのは美鈴と優紀さんだけだろうしね。
ぷるるるる…
呼び鈴を押してみる。
「はい」
優紀さんの声だ。
「宇佐美ですけど、美鈴いますか?」
「え? まこと君? ちょっと待ってね」
しばらくすると優紀さんがドアを開けて俺を中へと招き入れた。
「どうぞ。お嬢様なら和室にいるわよ」
「いや、ちょっと顔を見に来ただけなんだけど、約束もしてないし」
急に上がれと言われて、ちょっと俺は弱気になった。
「いいじゃない。美鈴お嬢様も退屈なさってるし」
そのまま俺は優紀さんに案内されるまま別荘内に入っていった。
洋風の広い建物の一角に和風の別棟がある。そこへと案内された。
「お嬢様、お友達が訪ねていらっしゃいました」
障子越しに優紀さんが話かける。
「なによ突然。静香達なら帰ってもらって」
「宇佐美様です」
「宇佐美〜…ええ!! 宇佐美が来てるの!?」
「はい。私の後ろにおられます」
「あう! …えっと…わかったわ。入ってもらって」
やっぱ驚くよな。約束もしてないし、怒られるかもなぁ。
思いつきで行動したのはまずかったか?
まぁ、ここまで来て考えても仕方がない。
「よう! 美鈴。別荘のくせに広いな…て、あれ?」
「な、何よ…」
美鈴の奴が着物を着てる…。
「美鈴…お前」
「わ、笑いたければ笑えば。どーせあたしには着物は似合わないわよ」
「いや…意外にイケてるな…って、いや、いや、暑くないのかな…て思って」
和服の事はよくわからないけど、風格というか気品というか…。
とにかく日本人ばなれした容姿の割には意外と似合ってるのには驚いた。
「なに? 今、なんていったのかな〜?」
「オホン! で、なにしてんだ?」
「なにしてんだって見ればわかるでしょ? お花を活けてるのよ」
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