「生け花って面白いか?」
「あんたみたいな馬鹿にはわからないわよ」
別に皮肉で言ったつもりはないのだが、美鈴はムスッとして花を活けるのを続ける。
「いや、俺は興味があるから聞いてるんだ」
美鈴は手を止めると俺の方に向き直った。
「う〜ん。そうね。自分でいろいろ考えて、自分のセンスでやれるから面白いの。活け方にもいろいろあってね、私の教えてもらってる小原流は、こういった平たい花瓶に剣山を使って、自然の形を生け花で表すのが特徴なの」
「生け花って言っても一つじゃないんだ」
「そうね。最近では花瓶とかに活ける和風なものばかりじゃなくて、洋風なものまであるのよ。喫茶店などに籠みたいなのに飾ってあるでしょ? あれも生け花なの」
「ふ〜ん。一種のアートみたいな感じなんだ。でも造花と違って長持ちしないのが残念だね」
「馬鹿ね。そこがいいんじゃない。そのはかなさがまた美しさをきわだたせるのよ。花火だって音楽だって演劇とかだってその瞬間自体がアートであるものって、たくさんあるでしょ?」
「なるほどね」
なんだか美鈴とこうやって話すなんて意外だな。
それに、こんなに熱心に話をしている美鈴なんて珍しいじゃないか。