「すみませ〜ん」
さっき美鈴が通ってきた遊歩道の方から、俺達と同じくらいの歳の女の子がこちらへ走って来ていた。
「あら?飼い主が来たようね」
「ごめんなさい。ちょっと目を離した隙に、いなくなっちゃって…」
息を切らせて言う彼女。
「まぁ、やんちゃなのね、この子、はい」
そう言って美鈴は女性に仔犬を渡した。
「ありがとうございました。それでは」
その娘はペコリと頭を下げて仔犬を大事そうに抱えて帰っていった。
「可愛かったわね、あの子」
「あ? うん。美鈴と違って、お嬢様っぽくっておとなしそうで…」
「違・う・わ・よ!! 仔犬のことよ! 何、勘違いしてるの?」
ジト目で腰に手を当てて呆れる美鈴。
「あはははは…なんだ仔犬かぁ」
「馬鹿…ほんとあんたは馬鹿だわ」
美鈴は額を指で押さえて、しみじみ言う。
まあ、とにかく、美鈴とあの犬の話をするとは思わなかったなぁ。
こんな機会でもなきゃ、一生、二人の胸の中にしまわれたままだったろうな。