■美鈴編■
4日目【7月24日】


 
 

◆7月24日<昼>◆
『愛情報酬2』




 まぁ、怒らせてしまったものはしょうがない。
 俺は一人、荷物を片づけて、ビジターセンターで着替える。
 ちゃんと謝っておかなきゃと考えながらエントランスから外に出ると、そこに美鈴が立っていた。

「ごめん。宇佐美。私も悪かったわ…」

 言おうとしたことを先に言われて面食らう。
 それにしても美鈴の奴、本当にシュンとしてるぞ。

「私、驚いちゃって、ついカッとなってあんな事を言っただけ。あんた馬鹿男だけど、ワザとあんな事するような奴じゃないし、原因を作ったのは私だもんね」
「まったく、しょうがねぇな…って、ごめん。俺の方こそ悪かったよ。事故とはいえ女の子の胸を触ったんだもんな。本当悪いと思ってる。あ〜あ。俺らってどうしてこうなのだろうな。つい意地悪く答えてしまう」
「あは、なんでだろうね。長年の習慣はなかなか直せないんだね」

 なんだ美鈴、それって直そうとしているって事か?

「ねぇ、まだ時間あるでしょ? 街のほうに行きたいな」

 とりあえず荷物を姉貴の家に置いてきて、そのまま俺達は駅前通りに向かった。ファミレスで軽く昼食を食べると俺達はなにげなく駅前をぶらついた。
 そして今、俺と美鈴は駅前のゲーセンに来ている。

「意外だな。美鈴がゲーセンに行きたいって言うなんて」
「だって、こういう所は女一人じゃ入りづらいでしょ?」
「まぁね。女の子のグループはよく来るけど、ひとりで来ている女の子ってあまりみかけないからな」

 美鈴と肩を並べてゲーム機を見て回る。

「おっ、クレーンゲームだ。何かいい景品入ってるかな?」
「え〜と、なんだか安っぽいのばっかり」

 そ、そりゃぁ〜ね。俺達の目から見ても安物の時計やライターとかピアスとかなんだからお嬢様の美鈴から見れば一目瞭然だろうな。

「あ、でもこの人形はかわいい」

 ふわふわ毛の犬のぬいぐるみだ。よし、コイツを取るか!

「よし、じゃぁ取ってやろう」
「あんた、こういうの得意なの?」
「まぁ、まかせとけって。こう見えても子供の頃はクレーンゲームの鬼と言われた男だから」
「誰に言われたのよ。自分で言ってただけなんじゃない?」
「疑うのは実力を見てから言って欲しい」

 俺は自信満々、100円玉を入れてボタンを押しクレーンを操作する。

 …スカッ!

 箸にも棒にもかからず、クレーンは元の位置に戻る

「あれ〜?」
「下手くそねー」
「なにを〜もう一度!」

 …スカッ

「あれ〜?」
「もう! 私にさせて。こっちで縦移動で、このボタンで横移動ね」

 美鈴が俺を押しのけて、クレーンを操作する。
 …パカ、ウイイイン、ゴトッ

「はいゲット。なによ、意外と簡単じゃない」
「なんで…クレーンゲームの鬼と呼ばれた俺の立場は…」
「だから誰も呼んでないって…」

 もうクレーンゲームは止めよう。
 俺は他の景品を物色している美鈴を引っ張って他へ向かう。

「よし! このポリゴンカーアクションゲーム「ロッジカルレーサー」で勝負だ」
「ふん! 受けて立とうじゃないの」
「ふふふ、これならコースは完璧だぜ!」
「関係ないわ! 要はテクが問題なんですからね」

 Go!!……
 ……GALL!!

「負けたぁぁそんなぁぁ」
「へっへんだ!」

「それじゃあ、これはどうだ! ゴキブリ叩きゲーム!」
「懲りないわねあんたも…」
「じゃあ、俺からだ!!」

 ……

「よぉし120匹!」
「次は私ね」

 ……

「うおおお! 待ちなさい、そこ! 逃がすかぁ! それだ! この!」

 ……

「げ…嘘だ…パーフェクトクリア」
「これで証明されたわね。運動神経は私の方が上!」

 あああ! もう美鈴と勝負するのはやめよう。

「ねぇ、宇佐美。あれ、しようよ」

 美鈴がカーテンのついた大きな機械を指さす。

「なんだ? ああ。コンピューター占いか。やっぱり美鈴も女の子なんだな」
「何よ、悪い!! さあ、やるわよ」

 最近はプリクラ系に場所を開け渡していて、隅に追いやられているんだよなぁ。こういう占いマシン。
 でもなくならないって事はけっこうコインが落ちてるって事か。
 確かに世代は変わっても占いに対する関心は変わらないみたいだからなぁ。

 ちゃりん、ちゃりん

 美鈴が百円玉を3枚入れるとディスプレイにメニュー画面が現れる。

<マジカルフォーチュンへようこそ。占いたい項目を選んで下さい>

「何を占うんだよ美鈴」
「何をって…何を占えばいいと思う?」