「くぉ〜ら、深川! 宇佐美とらにを話してるんらぁ!」
「お嬢様?」
優紀さんと俺は同時に振り向く。
そこには真っ赤な顔をした美鈴がふらつきながらやって来ていた。
おいおい目がすわってるよ。
「私が少し目を離した隙に二人で私の悪口でも言っていたのらろ」
「お嬢様、もしかしてお酒を?」
「わらしはこのバカ男と話があるのら。邪魔だからとっとと室内へもろりなさい」
「でも…」
気遣おうとしている優紀さんを有無も言わさないと睨み付ける美鈴。
俺は見かねて割って入る。
「優紀さん。彼女は俺が見ています。ここは俺にまかせて下さい」
「そう? じゃあ、悪いけどお願いね」
優紀さんは少し安堵した顔をして室内へ入って行った。
今までの彼女の感じから察して、あまり美鈴の相手をする気分ではなかったのだろう。
さて、問題は…。
あ〜あ、美鈴の奴、ふらふらしてるぜ…まったく。
「なんでそんなにお酒をのんだんだ?」
「だ、誰のせいだと思ってるのっ」
「俺のせいだと、言いたいのか?」
「あんたが深川と話してるかられしょ」
「???」
しかし今日は酔っぱらいの相手ばっかりか?
「とりあえず座れよ。危なっかしくて仕方ない」
「む〜〜!」
俺はふらつく美鈴を備え付けのベンチに腕を取って座らせた。
「らによ。あんた達あんなに仲よかったっけ? 深川に手を出すなんて私、許さないらから」
「おいおい」
「宇佐美はわらしと一緒にいるのら」
「え?」
「わらしの側に…ひっく」
美鈴は俺の顔をじっと見上げていた。
おいおい、美鈴相手になにドキドキしているんだよ、俺は。
「……」
「……」
不意に沈黙が訪れる。
美鈴は酒に酔って、とろんとした目で俺を見つめてる。
うう…なんか気まずい…。
何か言わねば。
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