■真澄編■
5日目【7月25日】


 
 

「宇佐美君〜行くよ〜、それ!」

 ビーチボールが宙を舞う。俺はそれをトスして小野寺さんに返した。
 人泳ぎしてビーチへ帰ってきた俺達は、今度はビーチボールを使ってバレーを始めた。
 小野寺さんの打ち上げたボールが風に大きく反れ、俺はジャンプしてはじき返す。

「あは、上手い上手い」

 手を叩いて喜ぶ彼女。ボールの方は彼女を飛び越して少し離れた所に転がった。
 それは肩を並べて歩いていたカップルの足下で止まる。

「すいませ〜ん、ボール取って下さい〜」

 小野寺さんがそう言いながら二人の方へ駆けていった。俺も後に続く。

「おう、ほらよ!」

 男の方がボールを拾い上げて小野寺さんの方へ投げる。

「ありがとう…って、こら! 弘!! あんたねえ!」
「え?」

 見るとその男は弘じゃないか。似合いもしないのにサングラスなんかしやがって…あれ、隣にいるのは…。

「真澄ちゃん、なんでコイツと?」
「宇佐美先輩…」

 それに答える変わりに真澄ちゃんは小野寺さんの方を見る。
 あちゃぁ。俺も彼女を責められないなぁ。
 嫌な空気が流れる。

「あ、悪ぃ悪ぃ。彼女と話していたらついな」
「連れをほったらかしにした言い訳にしてはずいぶんじゃない」

 弘に文句を言う小野寺さん。

「まあ、怒るなって。無理についてきたのはお前の方だろ?それに、楽しそうじゃん。お前らだって」

 そう言って横目で俺を見る。

「なんだよ。小野寺さんを一人にする奴が悪いんだろ。それにお前なあ、また悪い癖だしやがって。かわいい娘を見るとすぐこれだもんな」
「いいじゃんかよ。別にお前の彼女って訳じゃないんだろ?」