「宇佐美君〜行くよ〜、それ!」
ビーチボールが宙を舞う。俺はそれをトスして小野寺さんに返した。
人泳ぎしてビーチへ帰ってきた俺達は、今度はビーチボールを使ってバレーを始めた。
小野寺さんの打ち上げたボールが風に大きく反れ、俺はジャンプしてはじき返す。
「あは、上手い上手い」
手を叩いて喜ぶ彼女。ボールの方は彼女を飛び越して少し離れた所に転がった。
それは肩を並べて歩いていたカップルの足下で止まる。
「すいませ〜ん、ボール取って下さい〜」
小野寺さんがそう言いながら二人の方へ駆けていった。俺も後に続く。
「おう、ほらよ!」
男の方がボールを拾い上げて小野寺さんの方へ投げる。
「ありがとう…って、こら! 弘!! あんたねえ!」
「え?」
見るとその男は弘じゃないか。似合いもしないのにサングラスなんかしやがって…あれ、隣にいるのは…。
「真澄ちゃん、なんでコイツと?」
「宇佐美先輩…」
それに答える変わりに真澄ちゃんは小野寺さんの方を見る。
あちゃぁ。俺も彼女を責められないなぁ。
嫌な空気が流れる。
「あ、悪ぃ悪ぃ。彼女と話していたらついな」
「連れをほったらかしにした言い訳にしてはずいぶんじゃない」
弘に文句を言う小野寺さん。
「まあ、怒るなって。無理についてきたのはお前の方だろ?それに、楽しそうじゃん。お前らだって」
そう言って横目で俺を見る。
「なんだよ。小野寺さんを一人にする奴が悪いんだろ。それにお前なあ、また悪い癖だしやがって。かわいい娘を見るとすぐこれだもんな」
「いいじゃんかよ。別にお前の彼女って訳じゃないんだろ?」
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