「そんな事言ってるんじゃない。お前の手の早さの話をしてるんだ」
「手が早いって言い方は違うだろ? 行動力があるって言ってくれ」
肩をすくめて言う弘。俺は真澄ちゃんの方へ向き直る。
「真澄ちゃん。こんな奴に騙されちゃいけない。こいつは昔から…」
「知ってます。だけど先輩だって似たようなものじゃないのですか?」
真澄ちゃんは小野寺さんの方を見てそう言った。
「え? わたし?」
彼女は意外そうな顔をして真澄ちゃんを見返す。
「誤解のないように言うけど、わたしと宇佐美君とはなんともないわよ。それに…」
小野寺さんは弘の腕に自分の腕を絡める。あう〜、う、羨ましい。
「わたしの彼、返してもらうからね」
「お、おい、美和、お前、なに言って…」
「いいから、行くの」
小野寺さんはそう言って弘を制すると連れだって俺達の前から去った。
「先輩」
いつになく強い口調で俺を睨む真澄ちゃん。
「あの人とあたしとではどっちが大切なんですか?」
突然の問いに俺は思わず口ごもる。
「そ、それを言うなら真澄ちゃんだって俺と弘とどっちが大切なんだ?」
「あたしは…」
反対に質問されて少し驚いた顔をする真澄ちゃん。でもすぐに真顔に戻って俺に答えを返す。
「あたしには宇佐美先輩のほうが大切です」
と、はっきり言う真澄ちゃん。
「真澄ちゃん」
「先輩はどうなんですか?あたしはちゃんと答えましたよ」
「俺は…」
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