■真澄編■
5日目【7月25日】


 
 
「ダメだ。真澄ちゃんは俺の彼女だから」
「え?」

 俺は驚く真澄ちゃんの手を取って、俺の方へ引き寄せた。
 奴に対抗するなら、このくらはやらなきゃ。

「選手交代だ。じゃあな」

 俺は半ば強引に真澄ちゃんを連れて弘達の前から去る。彼女は戸惑いながらも俺に手をひかれるままについて来てくれた。

 俺はビジターセンターで水着を着替えて彼女と一緒に帰る事にした。
 真澄ちゃんはロビーの長椅子に腰掛けて俺を待っていた。カップのコーラを2つ買ってその一つを彼女に渡す。

「あ、ありがとうございます」

 頭を下げで受け取る真澄ちゃん。俺は彼女の隣に腰掛ける。

「ごめんな。ちょっと強引だったけど、あいつ、ああでも言わないと上手く丸め込まれるからさ」
「いえ、いいんです。実は少し困ってた所でしたから…。彼女だって言ったのだって嘘じゃないでしょ?だってこっちにいるときはあたし達恋人同士ですよね」

 少し恥ずかしそうに顔を赤らめながら言う真澄ちゃん。

「あたし岸田先輩の事、なんとも思っていませんから…誤解しないでくださいね」

 そう言って笑顔をみせる。
 でも、あいつは強引だからな。
 その気のない女でもその気にさせるのがあいつの怖い所だ。
 彼女だけはあいつの毒牙にかけたくない。
 いまいち不安を残したまま、俺は立ち上がりカップをゴミ箱の中に放り投げた。