「ダメだ。真澄ちゃんは俺の彼女だから」
「え?」
俺は驚く真澄ちゃんの手を取って、俺の方へ引き寄せた。
奴に対抗するなら、このくらはやらなきゃ。
「選手交代だ。じゃあな」
俺は半ば強引に真澄ちゃんを連れて弘達の前から去る。彼女は戸惑いながらも俺に手をひかれるままについて来てくれた。
俺はビジターセンターで水着を着替えて彼女と一緒に帰る事にした。
真澄ちゃんはロビーの長椅子に腰掛けて俺を待っていた。カップのコーラを2つ買ってその一つを彼女に渡す。
「あ、ありがとうございます」
頭を下げで受け取る真澄ちゃん。俺は彼女の隣に腰掛ける。
「ごめんな。ちょっと強引だったけど、あいつ、ああでも言わないと上手く丸め込まれるからさ」
「いえ、いいんです。実は少し困ってた所でしたから…。彼女だって言ったのだって嘘じゃないでしょ?だってこっちにいるときはあたし達恋人同士ですよね」
少し恥ずかしそうに顔を赤らめながら言う真澄ちゃん。
「あたし岸田先輩の事、なんとも思っていませんから…誤解しないでくださいね」
そう言って笑顔をみせる。
でも、あいつは強引だからな。
その気のない女でもその気にさせるのがあいつの怖い所だ。
彼女だけはあいつの毒牙にかけたくない。
いまいち不安を残したまま、俺は立ち上がりカップをゴミ箱の中に放り投げた。