■ARTIST FILE : The Beatles

The Beatlesの最後のオリジナルアルバム『Let It Be』が発表されたのは1970年。彼らの主な活動期間が60年代ですが、70年代以降の音楽は、Beatlesサウンド無くしては語ることはできません。ミュージシャン個人のカリスマ的人気だけでなく、彼らのとんでもない才能と4人のコラボレーションは、20世紀の音楽を変えたと言っても過言ではありません。改めて彼らの音楽に触れると、そこかしこに今の音楽の原型を見てとれます。私ですらリアルタイムでは彼らの音楽には接していないけれど、後追いだろうが何だろうが、彼らの功績を確認する作業は、ロックだろうがフュージョンだろうが、ブラックだろうがJ-POPだろうが、音楽を聞く者の基本として絶対に通らなければならない道だと断言します。
 このページが、未だ意識して聞いたことの無い方にBeatles体験を始めるきっかけになってもらえたら何と幸せなことか...。そんな願いをこめて作っています。


気付いた時には既に解散していたBeatles...。
 The Beatlesがシングル盤<Love Me Do>でデビューしたのが1962年10月5日。59年生まれの私はまだ3歳 !!。当時彼らがどんな衝撃を持って音楽シーンに現れたかなど知る由もありません。そして日本のロック史に残る66年6月の日本武道館での来日公演の時は私は小学校にすら上がっていませんでした。
 そんな私が初めてBeatlesを意識したのは小学校5年の時。当時クラスでは深夜放送を聞くのが流行で、番組の中で彼らの曲(<Yesterday>とか<Help>などの超メジャー曲でしたけど...)も流れていました。しかし当時の私には他の一連のロック・ミュージシャン達と同じで、決して特別な存在ではありませんでした。小学6年生の冬に近所の友人から初めて借りてきたBeatlesのLPは『Let It Be』... !!。それでもA面のラス前に収められている<Let It Be>がかかるまで我慢できずに眠ってしまったのを覚えています(^^;;)。しかしよく考えると、<Let it be>を聞いているということは、既にグループは解散していたってことですよね。あららら、初めてちゃんと(?)聞いた時には既に解散していなんて...。

 そんなに意識していなかった私でも、中学生になり周囲にロック好きな人が増えてくると、気付くとBeatlesはスーパーヒーローになっていたのですから不思議です。何故そうなったのか...よく覚えていませんが、ともかくいつもBeatlesの話でした。しかし当時のお小遣いではLPはおろかシングル盤1枚も買えずにいたので、FMなどでの特集番組を逃さずエア・チェック(懐かしい表現...)したものでした。特に「今日は特集で『Abby Road』のB面をノーカットで..」なんて日には、ラジカセのアンテナを窓から外に伸ばして雑音の一つも入らぬように大切に録音していました。曲の最後にコメントがかぶると怒っちゃったりして(^^;;)
 そして「Music Lofe」や「音楽専科」などの雑誌で特集があったりすると、すかさず買いに走りました。そんな雑誌からリアルタイムな他のミュージシャンへも興味は広がっていったのですが、でも何だかんだと言いつつも周囲の話題はつねにBeatlesでした。音楽といえば当時はまだ白黒のテレビで見ていた歌謡曲しか知らなかった子供の心を捉えて、音楽への興味を沸かせるきっかけとなったBeatles。友人から借りたり、お年玉などで買うなどして、その全貌がだんだんと明らかになるにつれ(大袈裟...笑)、ますますその魅力にはまっていきました。しかしリアルタイムではJohn Lennonが活発にソロ活動をしていたり、Paul McCartneyがWingsで大ブレークしたりと、After the Beatlesの方も追いかけなくてはなりません。もちろん他のアーテイスト達への興味も膨らんでいきます。高校生くらいになると急に「いまさらBeatlesでもないでしょう...」などと言い出す始末。でも少しお金が貯まると、彼らのアルバムを買ったりしていましたネ。そしてJohnが凶弾に撃たれてこの世を去り、さらにはGeorgeも他界した今では、Beatlesは再び蘇ることの無い永遠の存在となりました。

 時は流れて世の中がレコードからCDへと移りはじめた頃、CDブレーヤーを買って最初に何を聞こうかと思い頭に浮かんだのは何とBeatlesのホワイト・アルバムでした。やはり私の中での音楽の原点はここにあったのでしょう。社会人になって彼らのアルバムを全て揃えるというあの頃の夢をかなえられた時は、CDを並べて眺めてけっこう感動してしまいました。これで彼らの曲を好きな時にいつでも聞ける...すごく嬉しかったのを覚えています。

 Beatlesの魅力はとても一言では語りきれません。かといって私はそれほどミーハーなファンでもありません(^^;;)。にもかかわらず未だに彼らの音楽を聞き続けているのは、たぶん語りきれないほど多くの音楽的なバリエーションとかアプローチの深さとか、そんな「興味」や「関心」をそそられる新たな発見が彼らの音楽に未だにあるからだと思います。リアルタイムでBeatles体験していない私にとっては、彼らとともに過ごした時間はまったくありません。しかし彼らの音楽と過ごした時間は山のようにあります。彼らの音楽とともに残る記憶もたくさんあります。彼らの音楽にはそういう意味での魅力に溢れていると言えるかもしれません。永代語り継がれるべき20世紀の文化遺産の一つになったと言っても過言ではない彼らの功績ではありますが、たかが音楽、しょせんロックです。難しい顔をして一端の識者になったような態度で、彼らの音楽を語るべきではないと思います。彼らの音楽を文化にしてはいけません。あの時に彼らの音楽に素直に感動したのに理屈はなかったと思います。当時とは比較にならないほど大量の音楽と接してきた今、改めてBeatlesの音楽を聞くと、実に新鮮で新しい発見が数多くあります。基本的に遡りで彼らの音楽と触れてきた私ですが、彼らの音楽と過ごしてきたあの頃のことともに、そんな私が「今感じるBeatles」を語ってみたいと思います。

※このコンテンツは以前から公開しているものに加筆・修正したものです。
オリジナルアルバム解説
 全曲解説なんて無謀なことはしません(^^;;)。特に印象に残っている主な曲について語ってみます。実際にアルバムを聞きながら読んでいただければ幸いです。
※時代区分は私なりに感じているもので、世間一般のものとは異なります。

【デビュー〜初期
 Please Please Me (1963)
 With The Beatles (1963)
 A Hard Days Night (1964)

【中期】
 Beatles For Sale (1964)
 Help ! (1965)
 Rubber Soul (1965)
 Revolver (1966)

【中後期】
 Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band (1967)
 Magical Mystery Tour (1967)
 The Beatles (1968)
 Yellow Submarine (1969)

【後期〜解散】
 Abby Road (1969)
 Let it be (1970)


今までに一度もビートルズを聴いたことのない方、または改めてビートルズの音を聴き直したい...そんな方にはご一読をお薦めする本があります。中山康樹著『超ビートルズ入門』(音楽之友社刊)です。独自の視点で「ビートルズのアルバムを初めて聴くのならこの順番で...」は、明快かつユニークで、アルバムをめぐるアーティストとレコード会社の関係についての指摘は、実に納得できるものがあります。初心者の方にもマニアな方にも、またビートルズに関心の無い方にも、この著作の指摘する論点は感じるものがあると思います。

そして同じ著者による新刊『これがビートルズだ』が講談社現代新書からでました。ここでは私にはとてもできない(^^;;)全曲解説が堪能できます。アルバムを聞きながら読んでいると、そこに彼らがいるように、1曲1曲がリアルに心に響きます。以前から聞いている方、まだビートルズに馴染みの無い方、いずれの方にもお薦めです。


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