平成10年7月26日(日)丹沢山塊玄倉川流域小川谷廊下遡行レポート(ちょっと柔らかかったガバホールドの巻)
メンバー:K子オバサン(命の恩人)、N社長(師匠)、高沢(記録者&溺れかけた?溺れた人)
天気:曇り時々晴れ(前日はときどき土砂降り)


-----虚ろな記憶だが、溺れかけた私が必死で掴んだのは、助けに飛び込んでくれたK子オバサンの胸の辺りの柔らかいガバホールドだった-----

 水面からチョットだけ出たこの目で見たのをかすかに覚えている。先ずK子オバサンの手に掴まって引き寄せられたところで、右手が勝手に掴んだのが、件のガバホールドだ。うぶな私にはシラフで出来ないワザだった。

 そしてK子オバサンのホールドが、ガバじゃなくてピンチグリップなホールドだったら、このページは無かったかも知れない・・・ 。。 >_(^-^;;  ンナわきゃないか。

 そのガバホールドのお陰、もとい、K子オバサンのお陰で、眼鏡を無くしただけで済んだ今回の小川谷廊下遡行でした。素人がいきなり無茶してはいけません・・・と反省です。

ちょっと馴れが出ていたのが、ビール瓶一本分くらい滝壷の水を飲む羽目になる要因か・・・。じつはわたくしめ泳げません。

でも、ザックの中の空気で浮かぶことが出来るはずだったのです。だって下流の釜では、泳いで遊んでいたのですから、それが何故?柔らかいガバホールドに助けられる羽目になったのでしょうか。この件についてはあとでゆっくり考察してみたいと思います。

わたくしめ、このところついていないことが多いんだよなあ。


朝5時頃に出掛けた。今日は日曜日なのだが、昨日の雨と今朝の土砂降りのせいで、いつもより交通量が少ない。

快調に飛ばして伊勢原から246に入る。秦野の吉野屋牛丼で大盛りを食べ、待ち合わせ場所の玄倉バス停に向かう。

今日のメンバーは年齢が高かめなので、平均四十ウン歳になると思われる。他に、若い?三十前半の荒川氏を誘ったのだが、夏休みの穂高縦走前につき、奥さんの許可がでないので今回は不参加。

でも、今日のメンバーは私以外の方々は登攀力遡行力は高いので去年のように傷心を抱えて家路につくことはない予定なのです。私にとって今回の小川谷遡行は雪辱戦でして、去年は入り口の2mの滝の次の5mのチョックストーンで敗退したのでした。

さて、7時半を過ぎて遡行開始地点近くまで行くと、かなり車が入っている。支度をしていると、レスラーみたいな男たちが乗ったミニ4駆みたいなランクル-島根ナンバーをまじえた一隊がやってくる。

渋滞必至の小川谷廊下に臨む我々は、さっさと沢に降りて滝に取り付くはずが、何を間違ったかN社長は4年ぶりの小川谷廊下への二俣を無視して下降してしまう。堰堤を降りない、ちょっとラクチンな下降路をとったので、二俣を見過ごしてしまったのである。一応わたくしめは進言したのでありますが、ちょっと声がか細かったようでした。

 必要以上に歩いて身体を暖めたところで、入り口に到着。今年の小川谷は去年と同じくらい水量が多かったです。その上、チョックストーン右側の倒木が一本も無くなっていました。その代わり、良いのか悪いのか、チョックストーンの左右ともに残置のシュリンゲが数本ずつ残されていました。

 ここから渋滞になってしまい、入り口についたのが9時前だったはずなのですが、我々が登り終わったのは10時を回っていたと思います。何故かというと、先程の大部隊に途中で抜かれてしまった上、その前のパーティーが手間取っていたのです。

しかし、この大部隊の人達の格好(上の写真)を見て下さい。大方の人は下はジャージーに運動靴、上はTシャツ(それも綿シャツが多かった)、頭は自毛のみの人が殆ど。一人だけ草鞋を履き、数mのテープと、何本かのシュリンゲ、数個のカラビナを持っていました。

話を聞いてみると、習志野の自衛隊の人達だとのこと。やっぱりな、という感じです。普通の人は、あんな格好で来ないモンね。間違ってきたとしても、下の写真のように登ったりしないでしょう。

「訓練ですか?」と聞くと、「いいえ」とのこと。「それじゃあ遊びだ!」と言うと、「厚生活動です」と仰っていました。人数は20数人は居たのではないでしょうか。最初に登っていった人が中隊長で、この人が山が好きなのでみんなで来たそうです。写真の中の一人帽子を被っているのが軍曹で、若者にハッパをかけていました。聞くと、みなさん食料や水を持たないで、山の中で一ヶ月以上暮らす訓練をするのだとか。。。いかにも屈強そうな人達ばかりでした。それにしても、滑りやすい運動靴でヘルメット無し、というのも凄いものがあります。運動靴じゃあ、破綻したときに一気にいってしまって、リカバリーが効かないですよね。日頃訓練していない人がやったら、単に「沢をナメてる」としかいいようがありません。それに自衛隊だったら、万が一のことがあっても、訓練中の事故扱いにすれば責任問題はあまり大きくならなそうですね。我々、民間人が同じことをして事故ったら、リーダーは訴訟問題で大変な目に遭うでしょう。

左の写真を見て下さい、水流のてっぺんから頭を出している人が居ますよね。この人はなかなか登れないで、滝に打たれながら10分以上もここで格闘していて、その後やっと登り切りました。その体力はさすが自衛隊と思わせるものであります。冷たい水の中での体力消耗は凄いですよね。左下の写真ではやっと登り切って、蛇のようにクネクネと足が引っ込んで行くところ。そしてその後の人達は、もう少し上手に登っていたようです。

我々は、チョックストーン右が空いたので、そちらから登ることに。残置シュリンゲがあるので、それを掴みスメアリングで登ってから、上の棚を突っ張りで越える。N社長と続いてわたくしめは、特に問題なく上がってしまいました。でも、ハーケンは全部ユルユルで引く方向を間違えるとそのまますっぽ抜けそうなくらい。

続いてK子オバサンだ。念のために、上部の倒木に支点を二カ所とり、ロープを二本垂らしてグリップビレイしながらオバサンを引き上げる予定。

ところが、オバサン日頃の事務仕事のお陰で腕の力がなくなっていて、シュリンゲに頼り切れずスメアリングができない。また下の段の残置シュリンゲをアブミにできるくらいの上までも登ってこれないので、一回目は敢え無くダウン。

ちょっと一休みするので、後のパーティの方々に先に登って貰う。お次の方は沢慣れた中年男性で、残置にさらに自分のシュリンゲを足してラクチン登攀だ。

そう、そしてそこまでは良かった。しかし、お連れの女性がなかなか登れない。数回のチャレンジの後、やっと登ってきたが、上部での突っ張りがちょっとやりきれない。ちょっと小柄なのだ。

そこへ我々の差し出したロープを掴んだところ、そこで事件発生!そのまま、滝の下まで落ちてしまったのだ。見えるところまで移動して下を覗くと、どうやら無事な様子。良かった、途中のハーケンにも引っかからなかったのだ。危ないあぶない。

原因はロープを掴んだところでバランスを崩し、足が滑ったのである。そして、ロープをゴボウではなく、そのまま順手で掴んでいたので、一気に滑ってしまったようだ。でも、ゴボウで掴んでいても、ああいう状況ではちょっと身体を支えるのは難しいと思う。

それを見たK子オバサンはかなりビビってしまい、更に腰が引けている。でも、今回は頑張って上がってきた。上の二人でロープを引っ張っているが、本人の足が利いていないと、結構な重労働だ。

それから次に落ちた女性も、同じくWロープで補助しながら上がっていただいた。他人事ながら、ちょっと怖いものを見てしまった小川谷遡行の始まりでした。

この左の写真はN社長に聞くと、昔は泳いで渉った釜だそうだ。いまは埋まってしまって、難なく徒渉できてしまう。ここは右岸から上ったが、左岸の方が楽しそうだった。(翌年に別のメンバーで行ったときは左岸から登った。高さも難易度も右岸より上で面白かった)

軽快に登っていく。

この右上の写真の滝は、右側から縁を高巻いた。昔はこの倒木がなかったので、この左岸の壁をヘツって上がれたそうだ。右岸も登れるそうだが、ちょっと難しそうなのでパス。N社長は、みんなどの釜も埋まってしまっていると、寂しそうでした。

そして、ツルツルの大岩。岩の左の残置シュリンゲでラクチン。行ってみると写真で見るよりかなり斜度があります。

大岩の下は水流左から登れる。チョックストーンで女性が滑落したパーティはこの岩の下から登った。

さあ、いよいよ楽しいゴルジュ帯。写真を見ているだけでもワクワクするでしょ。

先のパーティーに追いついてしまいました。皆さん結構苦労していて、中でも女の人が大変そうなので、やさしい私は女の人が登るときに、チャンとお尻を押して手伝って上げました。勿論、「ありがとうございました」と丁寧な御礼をして下さる礼儀正しい女性です。

でも、このパーティの方々は結構苦労していたよなあ。この後ちっとも登ってこなかったけれどご無事だったのでしょうか。

 

上の写真は、現場で見ると結構な斜度がある滑り台。ちょっと水が少なかったので、滑るのは止めておいた。そして、右上の写真は、まだ、、、溺れているところではありません。。下流の滝で遊んでいるところ。泳力の無いわたしには、水流の抵抗に勝つことができず、左下の滝下までたどり着けないのです。この時は浮いていたんだけれどなあ・・・

ここは右岸のリッジから巻けるけど、N社長は左岸からオールフリーで登っていく。わたしはオバサンと一緒に左から巻こうかと思ったが、N社長が来い来いと手招きするので、ビレイして貰って登る。

このルート、行ってみたら、なんのことはないホールドだらけで、水流の右はガバが沢山。でも、落ちたら釜が浅いのでちょっと?かも。

オバサンも行けば良かったのにと思う。K子オバサンだったら、楽勝のところなのだが、初っぱなのチョックストーン登りで、気持ちが萎えてしまったそうだ。

K子オバサンは、新茅の沢の12m大棚だってホイホイだし、丹波川本流の手取淵の鰻の寝床のヘツリも楽勝で行ってしまう手練者なのだ。

後日、連絡をしたら腕が筋肉痛でパンパンになってしまったとのこと。一番下のチョックストーンでのゴボウ登りが効いてしまったらしい。そうなんだよねえ、女性は身体が柔らかいからバランスで登っていることが多いので、腕の筋肉がついてこないのでしょうね。女性と男性の違いをあらためて考えました。

さてさて、そんなわけで遡行も無事終了してしまうのだが、この写真と上のウォータースライダーの写真の間で、滝の水を飲む羽目になった事件があった。

この続きは明日にしよう。

ちょっとビールが飲みたくなったので、今日は終了。7/31 22:44


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