昨今の日記人気にあやかり、わたくし-お@り(おまぬけ@りす)-も、日常での小さな出来事や感じた事などを日記風に、あるいはエッセイ風に綴っていきたいと思っています。

に参加しています。なぜか。
(read Me!という"まがいもの"があるらしい。気をつけねばなるまい。)






1999年・9月〜




9月ウ日
 今日は、ミィちゃんと夜のピクニック(デート?)に裏山まででかけた。見晴らしのよい所にくると、「ここがお気に入りの場所だ。」とミィちゃんに言った。眼下の民家や街灯の明りは数えるほどしかなかった。しかし、それとは対照的に夜空に広がる星々は、風もなく月もないせいか、すべてがその存在を主張しているように見えた。それは、一つ一つは光点にすぎない星々が、天空を覆う煙と化していた。
 流れ星が流れた。私は「だれかが、生ゴミでもすてたのかな。」と言った。ミィちゃんは黙っていた。そして、しばらくしてから「人間も命を捨てると流れ星になるの?」と聞いてきた。
 私は「よく聞く"命が燃え尽きる" というのは、そういうことなんじゃないかな。とすれば、一時期話題になった "燃え尽き症候群" というのは流星群のことかもしない。」と言った。
 目を丸くしてこちらを見ているミィちゃんをそっと抱き上げて、朽ちた倒木に腰掛けた。彼女は私のおへそのあたりでまるくなって目を閉じた。私も体をかがめて額を膝頭にあて、目を閉じた。彼女のぬくもりを感じた。
 風も無いのに、草木が小声で何かささやき合っていた。





9月ウ日
 今日、会社の車で信号待ちをしている時に、飼い犬が変わった姿勢でうんちをしているのを目撃した。その犬くんは、目をまるくして首を張り子の虎のように上下に何度も動かしていた。後ろ足はのばしたままだった。普通の犬くんのように腰をどかっと落とせば苦もなく出せるであろうにと思った。お上品なのだろうか?確かに、犬の排便の姿をみると、つい可笑しくなってしまうのだが。
 私は事の成り行きをみとどけたくなって近くに車をとめ、信号のそばの電柱の陰から様子をうかがった。肛門はまるみえだった。うんちくんの頭もみえていた。飼い主はいつものことだという感じで手持ち無沙汰にしていた。犬くんは、何度も何度も首を上下に動かしていた。
 私は「がんばれ!」と思った。「しかし、そんなことをしていると痔になってしまうぞ。」とも思った。15分程して、ようやく用を足し終えたようだ。犬くんは安堵した様子だったが、私も安堵した。私はふと自分の足元を見ると、ひどく濡れていることに気が付いた。どうやら、他の犬にしてやられたようだ。

 いいか、ここを見ている犬くん達に告ぐ!よく聞き給え。
 私は電柱ではない!(怒)





9月ウ日


 「私は人間です。」と体に貼紙をして歩こうか思案中だ。





9月ウ日


 る。





9月ウ日


 ひとの日記を勝手に読んではいけないと思う。





9月ウ日
 今日、再び健康ランドのサウナでクマ(グーさん)と会ったので、"あの世" 話に花を咲かせた。
 グーさんが、「三途の川の川上から、ドラえもんの浮輪をつけた目つきのするどいコアラがゆっくり回転しながら流れてくるのをみたが、彼はオラオラ!と言いながら、まわりを威嚇していた。」というので、私は、「それは、以前に商用のバンに跳ね飛ばされたコアラに違いない。浮かばれない霊なのだろうか?浮いてはいるが。」といった。
 グーさんは「あの世は全く不思議なところだった。すべての願望が即座にかなった。」といった。天然のはちみつが食べたいと思ったところ、理想のはちみつが目の前にあったそうだ。ただ、鮭を食べたとき、その鮭くんの魂はその後どこにいったのだろうと不思議がっていた。全く同感であると、私はうなずいた。
 私がみたあの世の光景も、何かの願望であったのだろうか?そのことをグーさんに話すと「それは潜在的なもの。無意識下の願望ではないか。」といった。
 別れ際グーさんは、「また誕生日が近づいてきたので、今度は踏切内で、一緒にフォークダンスを踊ろう。」と照れながら言った。グーさんは体に似合わず、おちゃめさんだ。





9月ウ日
 知り合いの電柱に、あの世での鮭の魂のことについて話すと、電柱は「心配はいらない。」と言った。「なぜなら、その鮭はもともと観念的なものだからです。だから例えば、あなたが女性と寝たとしても、実際に寝たわけではなくて、あなたの願望をあなた自身の五感が観念的に処理したにすぎないのですよ。」と言った。
 私は、ついでに貼紙の件についても聞いてみた。電柱は笑いながら、「それは、あなたが犬にしてやられたということを自ら言いふらすようなものですよ。」といった。私は自分の浅はかさに赤面した。他の電柱にゲロやおしっこをかけるのは、やめなければなるまいと思った。





10月ウ日
 昨日、インターネットなるものをしたのだが、またもやこんなものが目にとびこんできた。







 このことを同僚に話すと、彼は「これは今、ネット上を騒がせている新手の凶悪なコンピュータウィルスの一種だ。」といった。この他にも、画面上で突然、ちぎれたり、合体したり、あばれたりするものがあるそうだ。
 確かにそう言われると、見ればみるほど悪辣そうにみえてくる。
 このような悪質ないたずらは、とんでもない愉快犯の仕業ではなかろうか。





10月ウ日
 今日は、晴れの日(誕生日)なので、フォークダンス計画を実行することにした。私は、牛の着ぐるみを着てミッフィーちゃんの浮輪をつけた。三途の川で流されてみたいためだ。グーさんは、なぜか "ちびうさ"(セーラームーン)のコスプレをしてきた。不気味である。
 ラジカセから、ユーロビートをがんがんに鳴らしながら、遮断機の降りた踏切内でフォークダンスを踊った。ところが、いつまでたっても電車はこなかった。よくみると、はるか前方で停止していた。誰かが踏切の非常ボタンを押したようだ。
 計画は失敗だった。我々はそこそこに立ち去ることにした。私は、「てやんでぃ。べらぼうめ!」と内心思った。グーさんは「いはンヤ、ヲや。」とつぶやいていた。

 我々は裏山に登り、流れ星をみながらこの次こそは綿密な計画に基づいて目的を完遂することをお互いに心に誓い合った。





10月ウ日
 一面に藁を燃したにおいがただよう、夕暮れのせまる頃だった。
 グーさんが空に向かって「いづくんぞ!」と叫んでいるのを、見かけた。
 なぜかラムちゃんのコスプレをしていた。
グーさんは、ひょっとするとオタクかもしれない。





10月ウ日
 今日は、ミィちゃんが発情した。食事をあげようとしたところ、横になってお腹をみせながら体をくねらさせた。そして、今度は後ろ向きになり、尾をくいっと上げてお尻を突き出してきた。丸出しだった。細めてこちらを見つめる目は、女性のする流し目と全く同じだった。私はどきっとした。あそこからは、透明な液がにじみでていた。
 非現実的な光景に唖然としていると、彼女はなおも、後ろ足を交互に動かし流し目をしながら、うおーん、うおーんと唸った。それは、妖艶というより何かに取り憑かれたような、いつもの理知的なミィちゃんとは別人格の雌猫だった。私が雄猫なら彼女の苦悩を解放してやれるのだがと思った。細くしたティッシュでついたり、吹いてあげたが、そんなことでおさまる気配はなかった。
 私は勝手に会社を早退することにした。ミィちゃんを自宅につれて帰ることにした。他のわけの分からない雄猫にミィちゃんを取られたくないと思った。

 発情が収まると、ミィちゃんは "どうしてここにいるの?" という顔をした。私は、「他の雄に取られたくない。」と言った。彼女は無言だった。窓から見える黒く厚い雲は、急速に流れていた。
 私が黙っていると、そばに来て私の手の甲をチロチロと舐めた。そして、壁にもたれて座っている私のひざの上にのぼって箱座りをした。彼女はじっと私の目をみつめた後、ゴロゴロと喉をながしながら目を細めた。

 その後、何度か発情がきた。そのつど、私は綿棒であそこをつついて、いかせてあげた。彼女はイクときに「うごごごごっ。」と歓喜の雄叫びを上げた。





10月ウ日
 昨夜は台風だった。早朝、ミィちゃんを抱いて外に出てみた。ゴミ箱の蓋や、パイロン、水の入ったペットボトル、葉のついたままの小枝、ほねの折れた黒い傘(のようなもの)が、路上に散乱していた。コンビニの袋が柿の木の枝にひっかかって、青い空にはためいていた。「あれはなに?」とミィちゃんがいうので木に近づいてみると、それは濡れそぼったティッシュと、のびきった使用済みのコンドームだった。

 今日はミィちゃんと初詣にいくことにした。電話で、ウ課長に「昨夜の台風で屋根がふきとばされました!」というと、「よく分かった。で、明日はこれるのかな?」と聞いてきたので、「なんとか今日中に、屋根をみつけたいと思います。」と答えると、「なんとか頑張ってくれ給え。」といった。

 参拝をすませると、小腹がすいたのでたこやきを買うことにした。そこの出店のたこやき屋のオヤジは、なんと今の総理大臣だった。私が「一つ下さい。」というと、彼は「あいよっ!」といって"ぱん!"と手を叩いて、くるりと回った。ミィちゃんが「にゃ〜。」と鳴くと、再び「あいよっ!」と手を叩いて、くるりと回った。そして、「猫ちゃんに、一つおまけしとくよ。」と少しふらつきながら言った。

 境内の縁石に腰掛けて、缶ビールをちびちび飲みながらたこやきをたべた。ミィちゃんには、爪楊枝でたこやきを細かくほぐしてあげた。
 帰りに役所によって、婚姻届をもらってきた。





10月ウ日
 会社にいくと、ウ課長が「屋根はみつかったかい?」と聞いてきたので、「残念ですが、バラバラになってました。今はブルーシートでなんとか雨露をしのいでます。」といった。彼は「これから大変だから、早めになんとかしといたほうがいいよ。」といったが、視線は別のところにあった。
 C嬢がお茶を持ってきたので、ウ課長はにこやかに「ありがとう。ん?香水かえたの?」といった。彼女は彼を無視して、私に挨拶をして行ってしまった。
 私は、あやしいと思った。なぜなら、いつものC嬢なら、私にお茶をもって来たときなど、私が「今日はいつにもまして美人だねぇ。」というと、「そ〜お?」といって人指し指でブタ鼻をしてみたり、同僚には、「ピカチュウ、元気でちゅか〜?ちゅうちゅう〜。」などと屈託なくおどけてみたりするからだ。

 そのことを同僚に話すと、彼は顔を赤くして、ボールペンでピカチュウの目をつついていた。

 家に帰ると、すでに玄関にミィちゃんがいて、「おかえり〜。」といった。私が、「お風呂にする?それとも食事が先?」というと、彼女は「うーん。」といった。なんだか思い描いていた新婚生活の様子とは違っているが、まあ、しかたないだろう。先に、一緒にお風呂に入ることにした。お風呂で50まで数えた。





10月ウ日
 今日は、婚姻届を書いた。ミィちゃんの署名押印欄には、肉球に朱肉を付けて押してもらった。そして、それを机の引きだしの奥にそっとしまった。なぜなら、ミィちゃんには戸籍がなかったからだ。





11月ウ日
 帰宅途中のことだった。自宅に近づいたときに、まわりの雰囲気がいつもと違うような気がした。私は足をとめて何気に電柱の方をみた。すると、街灯の光の造り出す境界線のすぐ外の、底なしの暗黒から険悪な眼が一つきらりと光った。それは、こちらを凝視していた。私は、狂暴なたぬきに違いないと直感した。
 しばらくお互いににらみ合ったあと、私は無言で前回りを繰り返しながら、電柱に猛突進した。たぬきは、あわてふためいて逃げ去っていったようだ。
 たぬきのいた地面は濡れていた。おもらししたのだろうか?そばに白のスプレー缶がころがっていた。
壁をみると白のスプレー文字で、

  BLACK CATS 参上!
  奇巣魔異亜巣!
 天上天下唯我独尊 
  喧嘩上等!(^o^)
 注: ♪ (^o^) これは笑顔の顔文字です♪ ヨロピクね !

と書いてあった。
 なぜ、たぬきのくせに " CATS " なのかよく分からないが、ご丁寧に注釈まで書くとは、なかなかやつもあなどれないなと思った。
 私は注釈に敬意を表わす意味で、スプレーでその下に " 100円均一 " とかいてやった。





11月ウ日
 今日、会社で私の日記をみた人にこのように言われた。
 「枕草子は、" をかし "の文学といわれているが
  あなたのは、" おかし(可笑し) "の日記だ。
  " おかし "というのは、 " おかしい "、つまり、

  1. こっけいだ、笑いたくなる。
  2. 怪しい、変だ。
  3. 狂っている、異常だ。 といういうことだよ。」

全く失礼なことだ。
私は、この日記を通して「もののあはれ」を訴えているのだ。
ぷんすかぷんだ。





11月ウ日
 夕食にコンビニの弁当を食べていると、ミィちゃんがそばによってきてこう言った。
「今日、陽気がよかったので散歩にでたんだけど、うちの近くの塀に、ふるふるした、たどたどしい白のスプレー文字で " 100円均一 " とかいてあったの。あきらかに筆跡が違うから、その上の書き込みとは、別人のものだと感じたの。
 ひょっとして、BLACK CATS に対抗する新しい勢力の仕業かしら?だとしたら、近くで縄張り争いがおこるかも。なんだか怖い。」
 私は、「うーん、そうかもしれないし、そうでないかもしれない。あるいは、ミィちゃんが感じたように、それを見た人々の反応を楽しむような酔狂な者の仕業かもしれないね。それとも以前、裏山で火事を起こした牛の仕業かもしれない。しばらく夜遅くは出歩かない、お昼でも人気がなく暗く陰気な場所にはいかないようにしたほうがいいね。」といった。
 「あと、 " 脱穀の仕方をおしえてあげる " と言われて見知らぬ人についていったり、"かもめでもみながら、 冬の海で一緒に溺れてみないか " と言われて見知らぬ人の車に乗ったりしちゃだめだよ。」と、私はお茶をすすりながら言った。
 ミィちゃんは体をくの字に曲げ、左後ろ足を天井の方にのばし、なまめかしいポーズで足の毛づくろいをしながら、「うん。」と言った。
 あしたは、有休をとって遊園地にいくことにした。





11月ウ日
 遊園地は山の高台にあった。平日で、今にも冷たい雨が降りそうな天気だったので、園内は閑散としていた。入り口近くの人気のないゲームセンターから聞こえる派手で物々しいゲーム音は乾いていて、私たちの体感温度をいっそう下げた。いくつかのアトラクションや売店は閉鎖されていた。
 ミィちゃんが、ジェットコースターはいやだというので、観覧車にのることにした。ゴンドラの中は暖かかった。ゆっくりゆれるゴンドラの中で、しばし、私はミィちゃんと愛を語り合った。遊園地を取り囲む樹木が下方に遠ざかっていくにつれ、視界が広がってきた。
 私はミィちゃんに、「あれが東京タワー、あれが富士山、あれは奈良の大仏、五重の塔もみえるね。あれはエッフェル塔、その後ろにうっすらと見えるのがアルプス山脈、あっちはアンデス山脈と雷門だ。おや?奥羽山脈の後ろにある桜島は噴火しているね。」といった。
 ミィちゃんが、「自由の女神は見えないの?」といったので、
 「うーん、今日は、残念だけど見当たらないねぇ。どこかで、昼寝でもしているのかも。」といった。ジェットコースターをみると、狂暴なたぬきの団体が乗っていた。彼らは叫びながら(聞こえないが)、なぜかブラジルやチリの旗をふっていた。

 いくつかのアトラクションに乗ったあと、最後に、遊園地の外周をゆっくり巡る機関車に乗った。客車に屋根はなかった。乗客は私たちだけだった。ミィちゃんが、寒いというので、ジャンパーのなかにくるんで、顔だけをださせた。
 機関車は、延々と続く、空(くう)をわしづかみして生への執着をみせるどす黒い桜の枝の絡み合うトンネルをくぐっていった。園外の雑木林では、さっきの狂暴なたぬきの団体が陽気に宴会をしていた。カラオケの演歌が聞こえた。ミィちゃんはいつのまにかジャンパーのなかで眠っていた。彼女はカイロのように暖かかった。






 



1997年 1998年 1999年・前半 1999年・後半(9月〜


ひとつ前 / ほーむ