宮城県議会会議録に見る捏造問題(5)

宮城県議会会議録検索システムから、神の手事件に関連する質疑を転載しました

2000  11月定例会12/01佐藤議員 11月定例会12/07今野議員
2001  9月定例会09/28今野議員 9月予算特別委員会10/01今野議員 11月定例会12/10今野議員
2002  2月定例会03/01今野議員 6月定例会07/05今野議員 6月定例会07/08川嶋議員 11月定例会12/02今野議員
2003  2月定例会02/27今野議員 6月定例会07/03今野議員 9月定例会10/02今野議員 10月文教警察委員会10/07柏議員
2004  2月定例会03/03今野議員 9月定例会10/05今野議員 11月定例会12/06川嶋議員 11月定例会12/08今野議員
2005  2月定例会03/07今野議員 


平成17年2月定例会 03月07日

◆ 今野隆吉
 捏造遺跡の学問上の問題についてお伺いします。
 教育長は、県が主体となって発掘調査を行った遺跡で、前理事長による捏造が行われていたことはまことに残念でありますけれども、発掘調査を担当した職員が見抜けなかったことは、当時の事情としてやむを得ないといつも答弁されております。なぜやむを得ないと判断したのか、その理由をお聞かせ願います。
 結果的に誤った情報に基づき各方面に迷惑を招いたことから、それらの遺跡の発掘、整理、分析や調査報告書の執筆編集に携わった関係職員九名に対して、口頭及び文書による厳重注意を行い、強く注意を促したとしておりますが、どのような効果があったのか。また、当時の事情からやむを得ないとするのならば、処分の必要はなかったのではないでしょうか。結果として誤った情報に基づき各方面に混乱を招いたとはどういう意味なのか。結果として誤っていなければそれでよいのか。学問とはそういうものですか。遺跡の発掘はその程度のことだったのでしょうか。どんな考えで遺跡の発掘をさせたのか、お伺いいたします。
 学問的に見て論理性を欠いていたことが問題であると思いますが,いかがか、お伺いいたします。
 口頭及び文書による厳重注意とは、具体的にはいかなる不利益を伴うものか、お伺いします。
 捏造に加担し処分を受けた者が、県行政の表看板のポストに就任するといううわさを聞きますけれども、事実か、お伺いいたしまして、壇上からの一般質問を終わります。
◎ 教育長(白石晃)
 今野隆吉議員の御質問にお答えを申し上げます。
 捏造を見抜けなかったことはやむを得なかったと判断した理由はどうかというようなお話ですが、そもそも考古学研究というものは、学問に対する研究者の誠実な姿勢と研究者相互の信頼関係を前提として成り立っている部分が大きくて、発掘現場で、よもや捏造を企てるような悪意を持った研究者が存在するとは夢想だにしなかったこと、捏造行為が極めて巧妙かつ大胆に行われたこと、また、捏造が日本列島における最古の石器の追求といった問題にかかわるものでございますので、国内に比較資料がなかったことから、当時としては、捏造を見抜けなかったことはやむを得ないということで判断したわけでございます。
 それから、処分の内容でございますけれども、平成十五年五月十六日に、県教育委員会は、調査主体となりました遺跡の発掘、整理、分析、調査報告書の執筆・編集に直接携わった職員八名に対しまして、口頭による厳重注意を行いました。また、これらの職員を管理監督する立場にあった一名に対し、文書による厳重注意を行ったものであります。
 その厳重注意の効果はどうかというようなお話ですけれども、厳重注意等の措置は、再びこのようなことを生じさせないよう注意を促すものであります。その後の再発防止策として、例えば、特に重要な出土品につきましては、必要に応じて、出土状況の写真記録作成やインプリント、いわゆる地面に残された圧痕でありますけれども、インプリントの確認励行に努めるなど、県教育委員会として独自の改善策を講じておりまして、それまで以上に遺物の厳正な取り扱いがなされるようになったものと認識してございます。
 また、その必要性でございますけども、担当職員が捏造を見抜けなかったことは、当時の事情からしてやむを得なかったものと考えておりますが、この事件を教訓として、再びこのようなことを生じさせないよう関係職員に注意を促すため、厳重注意等を行ったものでございます。
 それから、結果として誤った情報に基づき各方面に混乱を招いたとはどんな意味なのかというお話ですが、県教育委員会が実施した馬場壇A遺跡などの発掘調査におきまして、捏造と見抜くことができず、発掘調査報告書などで正しいものとして発信した情報が、博物館の展示や学校教育、生涯学習活動、更には、地元の地域おこし事業などに利用されていたところでございます。しかしながら、発掘捏造の発覚や検証調査によりまして、それが誤った情報であることが判明したことによりまして、教科書などの書きかえや事業の取りやめなど、各方面に混乱をもたらしてしまったというものであります。
 結果として誤っていなければそれでよいのか。学問とはそういうもので、遺跡の発掘はその程度のことなのか。あるいは学問的に見て論理性を欠いていたことが問題であると思うが、どうかというようなお話ですが、県教育委員会が発掘調査を実施した馬場壇A遺跡や高森遺跡の発掘調査は、事前に周辺の地層を観察し、石器の勉強会を開くなどの周到な準備を経た上で行われたものであります。また、発掘現場におきましても、遺物取り上げの際は、十分地層を確認しながら、必要な記録を作成するなど、当時の考古学界の旧石器研究における学問的な水準を踏まえながら、論理性のある調査方法を駆使して実施したものと認識してございます。しかしながら、当時のこれらの調査方法におきましては、捏造かどうかの検証まで想定したものではなかったことから、こうした発掘現場において捏造が行われ、それを見抜くことができなかったものであります。
 どんな考えで遺跡の発掘をさせたのかということでございますけれども、この馬場壇A遺跡や高森遺跡の発掘調査は、東北歴史資料館の調査研究事業として、宮城県における旧石器文化時代を解明し、その成果を県民に対する普及啓発の資料とすることを目的として実施したものであります。前期旧石器につきましては、既に石器文化懇話会が座散乱木遺跡の発掘調査を実施し、学界の高い評価を得ていたところでございまして、これらの発掘調査に当たって、その成果を踏まえる必要があったことから、石器文化懇話会の協力を得て調査を実施したものでございます。
 それから、厳重注意は具体的にどんな不利益を伴うのかというようなお話ですが、厳重注意等の措置につきましては、教訓として、今後再びこのようなことを生じさせないよう注意を促すためのものでございまして、厳重注意をなされたこと自体を除けば、制度的な不利益を伴うものではございません。
 それから、捏造に加担し、処分を受けた者が、県行政の表看板のポストを得、就任するとうわさに聞くがどうかというようなお話ですが、今までの県教育委員会の調査によれば、捏造そのものに加担した職員はいないものと認識しております。
 なお、教育庁の課長職以上へ登用する者につきましては、特に、人格、組織管理能力、運営能力等を総合的に勘案して決定されるというものでございます。

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