宮城県議会会議録に見る捏造問題(2000-2001)

宮城県議会会議録検索システムから、神の手事件に関連する質疑を転載しました

2000  11月定例会12/01佐藤議員 11月定例会12/07今野議員
2001  9月定例会09/28今野議員 9月予算特別委員会10/01今野議員 11月定例会12/10今野議員
2002  2月定例会03/01今野議員 6月定例会07/05今野議員 6月定例会07/08川嶋議員 11月定例会12/02今野議員
2003  2月定例会02/27今野議員 6月定例会07/03今野議員 9月定例会10/02今野議員 10月文教警察委員会10/07柏議員
2004  2月定例会03/03今野議員 9月定例会10/05今野議員 11月定例会12/06川嶋議員 11月定例会12/08今野議員
2005  2月定例会03/07今野議員 


平成12年11月定例会 12月01日

◆ 佐藤勇
 次に、旧石器発掘捏造問題についてお伺いいたします。
 民間の考古学者、藤村新一氏が発掘捏造の事実を認めている上高森遺跡は、過去六次にわたる発掘調査で「人類の進化史を塗りかえる貴重な発見」との発表、報道がなされています。県は積極的に発掘調査に協力する姿勢を示してこなかった、その理由はなぜでしょうか。客観的な立場からしっかりと発掘調査を監督していれば、今回のような不祥事を回避することも可能だったのではないでしょうか。あるいは、東北旧石器文化研究所の調査手法や、東北福祉大学の研究のあり方に当初から何らかの疑念を抱いて、彼らと距離を置く措置をとったということなのでしょうか。
 来年のみやぎ国体で、上高森遺跡は炬火の採火式が行われる県内十カ所の一つに指定されております。今回の事態を経て、採火場の取り消し、変更は考えているのでしょうか。国体まで時間がない状態で、築館町への配慮を踏まえ、早急に方針を示すべきかと思いますが、いかがでしょうか。
 さきの記者会見で浅野知事は、再調査に県予算を支出する考えのない旨を表明しました。一方、文化庁は、事態の重大性に照らして、再調査にかかる費用の半額を補助する考えを表明しています。財政難の折に予想外の支出を迫られて呻吟する気持ちもわかりますが、事態は歴史的事実に対する信憑性、青少年が学ぶ教科書や副読本の記述の真偽、全国をリードする県内考古学者の名誉、そして何よりも県民、地域の誇りに重大な影響を及ぼしかねません。いま一度、知事の再調査に対する補助について見解をお伺いいたします。
 また、再調査に県が財政的支援をする場合、その見積もり額、調査の範囲、具体的な手法をお尋ねいたします。特に、上高森遺跡の地元築館町は、前期旧石器時代の遺跡を中心にした町おこしを官民一体となって進めており、今回の問題発覚によるダメージははかり知れないものがあります。一日も早く遺跡の真偽を明らかにする必要がありますが、町独自では再調査にも限界があります。全国が注視する事案でもあり、県も上高森遺跡の真偽を最優先に取り組むべきかと思いますが、いかがでしょうか。
 今回の旧石器発掘の捏造は、NPO法人格取得団体の副理事長が引き起こした問題であり、今後一層推進していくべきNPO活動にも大きな衝撃を与える結果となりました。東北旧石器文化研究所がNPO法人格の取得を目指した主たる理由は、藤村氏が発掘に専念できる環境づくりが目的であったと聞いております。であるならば、東北旧石器文化研究所が組織ぐるみで捏造に関与していたのか、藤村氏個人の行為だったのかを議論しても意味はなく、他のNPO法人の名誉のためにも、東北旧石器文化研究所に対しては法人格剥奪という厳しい態度で臨むべきではないでしょうか、お尋ねをいたします。(後略)
◎ 知事(浅野史郎)
(前略)次に、大きな三番目の御質問項目として、旧石器発掘捏造問題についてのお尋ねにお答えをいたします。
 今回の、事件といいましょうか、これを私が知ったのは、毎日新聞の、これは特だねというんでしょうか、十一月五日でありまして、その記事を目にして大変なショックを受けました。まさに宮城県にかかわりのあるというか、宮城県で起きた事件でありますので、大きなショックを受けたわけであります。
 内容的には、これは学問的な分野ということで、考古学という分野に関することでありますが、しかし、この捏造と言われている事件によって、そのことが地域や教育に及ぼす影響というのも大変大きなものがあるということでございまして、まことに残念な出来事であると考えております。この間の経緯などについて後ほど教育長から御答弁申し上げますが、私からは上高森遺跡の炬火の採火地に関しての問題などについてお答えをしたいと思います。
 炬火の採火地。先ほどの国体での、炬火リレーの採火地として県内何カ所か指定されておりますが、その中の一つが上高森遺跡であります。これは、日本最古級の遺跡として世界的にも貴重な遺跡であるという、そういった歴史的な観点から決定をしたものでございます。この炬火は大会のシンボルとして、国体の開催中に開会式会場に点灯されるものでありますので、その採火地には、宮城県の姿や二十一世紀の新しい姿を象徴する場所として選定がされております。そういう意味では、今回この遺跡について、その発掘に捏造があったという事実がある以上は、遺跡としての学問的な真偽というのはともかくとしても、この採火地は現在の宮城の姿を象徴する場所としてはふさわしいものとは言えないのではないかと、ふさわしくないものと考えております。そこで、今後、リレーコースの変更も含め、早急に関係する町とも協議をして、実行委員会で総合的に検討をし直してまいりたいと考えております。  次に、再調査に対する県の支援、及び県自体が再調査に取り組むべきではないかという御質問にお答えをいたします。
 上高森遺跡の発掘調査は、これまでの中で、東北旧石器文化研究所と東北福祉大学などが中心となって、自由な研究活動として行われてきたものであります。再調査についても、まずはその当事者が責任を持って当たるべきものであると考えております。その際の調査費用についても、基本的には東北旧石器文化研究所などが負担すべきものであろうと考えております。
 なお、文化財保護行政を担う地元として、築館町−−地元でございますが、などが独自に再調査をしようとする場合には、県といたしましても、町からの申請があれば、その申請に基づき、調査の計画や調査範囲などを審査をして、これは従来どおりのルールでありますけれども、国と県、合わせて七五%−−二分の一が国、四分の一が県ということでございますが、合わせて七五%の調査費用を補助をし、支援を行うつもりでおります。
 なお、宮城県内には上高森遺跡を初め、人類の起源を考える上で貴重な発見であるとされてきた発掘調査が幾つかございます。その成果に対して疑問を持たれていることも事実であると思います。この点については考古学会での評価が重要な意味を持つことになりますが、日本考古学協会が特別委員会を立ち上げて再検証に乗り出すなど、学会の対応も始まっておりますので、その動向も見守りながら対応を検討していきたいと考えております。
 この件についての最後に、NPO法人・東北旧石器文化研究所への対応についてのお尋ねでございます。
 このNPOという期待された形の法人の関係者が、石器発掘の捏造という不祥事を引き起こしたということでありまして、このことはまことに遺憾なことでございます。いわゆるNPO法では、NPO法人に対する所轄庁−−この場合は宮城県知事ということになりますが、その所轄庁の監督権として幾つかこの法律の中に定めております。報告及び検査(四十一条)、改善命令(四十二条)、そして設立の認証の取り消し。これは四十三条でございます。いずれの場合でも、その対象となりますのは、NPO法人が法令に違反をしている、定款に違反をしているという場合でございます。
 今回、この不祥事への法人としての関与の有無ということについて、NPO法人・東北旧石器文化研究所に文書で照会をさせていただきました。これに対しては、この件はもとの副理事長個人の行為であって、法人としては全く関与していないという回答を先月二十日付でいただいております。したがって、現時点での判断では、所轄庁、つまり宮城県知事が、NPO法で定められている法人設立の認証の取り消しなどの監督権を行使をする事案には当たらないのではないかと考えております。しかし、今回の事件、不祥事が地元築館町や社会全般に与えた影響の大きさを考えまして、この法人の内部規律とモラルの徹底を促したところでございます。(後略)
◎ 教育長(柿崎征英)
 佐藤勇議員の御質問にお答えいたします。
 今回の上高森遺跡における発掘捏造問題につきましては、内容的には考古学という学問に関することではございますが、事件が教科書を含め教育や子供たちに及ぼす影響は大変大きいものと思われ、まことに残念な出来事であるというほかはございません。
 御質問の、民間の発掘調査に対する県の姿勢についてでございますが、上高森遺跡の発掘調査につきましては、平成七年の第一次調査以来、学術研究を目的といたしまして、東北旧石器文化研究所と東北福祉大学などが調査団を組織して、民間の考古学研究組織の活動として行政とは一線を画しながら実施してこられたものでございます。県といたしましては、学術的研究という調査団の自主性を尊重してきたものでございます。
 次に、県による発掘調査の監督や東北旧石器文化研究所に対する疑念という点についてお答えいたします。
 発掘調査は、一般の方々でも、一定の技術を持った人員と装備をもってすれば実施することが可能でございます。その際、文化財保護法に基づき、県教育委員会あて届け出を提出していただくこととなります。届け出を受理した以後は、教育委員会としては発掘調査について特段の指導等は行っておらないものでございます。
 東北旧石器文化研究所や東北福祉大学のように、これまで学会等で大変高い評価を受けてきた研究組織が行う研究活動の一環としての発掘調査でございまして、疑念を持つなどということは到底ございませんでした。また、行政が調査に関係することにつきましても、学問研究の自由を尊重するという観点から適当ではないものと考えていたものでございます。
 以上でございます。

平成12年11月定例会 12月07日

◆ 今野隆吉
 議長のお許しをいただきましたので、三項について一般質問を行わせていただきます。
 非営利活動法人NPO東北旧石器文化研究所についてお尋ねいたします。
 この捏造石器事件は、超能力者の藤村新一前副理事長一人の行為ではなく、東北旧石器文化研究所の組織ぐるみの犯行と断言せざるを得ません。ここに理事長鎌田俊昭氏の書簡があります。鎌田理事長が某考古学研究者にあてた昨年五月三十日付の手紙であります。この手紙によれば、当時から発掘結果で議論になり、鎌田理事長は、梶原理事・東北福祉大学教授との間で、石器の見方、方法論で意見の対立があったと述べています。鎌田理事長と梶原理事はそのたびに平行線になり、最後はあきらめで妥協したと記されているのであります。つまり、研究所と東北福祉大学では妥協をしながら遺跡の発掘を続けてきたのであります。最後に、お互いの信頼関係から二十年来一緒にやってこられたと結んでおります。したがって、東北旧石器文化研究所は、組織ぐるみを伏せるために、藤村氏一人に責任を負わせているのであります。捏造でないのであれば、一日も早く、保管している石器を考古学研究者に公開すべきであります。今月二十三、二十四の両日、福島県立博物館で東北日本の旧石器文化を語る会では、異例の石器検証会が開催されます。石器を手にとって形状や材質を見ることによって、かなりの議論が交わされ、一歩前進するものと思われます。
 NPO東北旧石器文化研究所の藤村新一前副理事長が発見した石器には、以前からおかしいという声があったのに、なぜ見抜けなかったのでしょうか。考古学研究者の間では、二年前から、藤村氏の発見した石器を公開しないことへの疑問を抱いていたのであります。九割以上の前期旧石器の遺跡や遺物を、超能力者であり、神の手を持つ藤村新一氏が一人で発見していたというのは、信じられないことであります。前の日までは何も出なかったのに、藤村氏が来ると、世界的に未発見の埋納遺構など前例のない石器が続々と出土してくるということであります。また、掘るたびに十万年単位で石器が発見され、その間四度も氷河期を経ているにもかかわらず、いつもきれいな石器が平面上に並んで出土しているというのはまことに疑わしいことであると、素人の私にさえ思えてなりません。六十万年前の石器であろうと、十万年前の石器であろうと、藤村氏の発見する石器はいつも同じ形で、同じ材質で、縄文時代の技術だそうであります。押圧剥離が盛んに用いられているということですが、研究者の常識でも全くあり得ないことだそうであります。
 考古学は、石器を分析することによって、旧石器時代の原人の脳や手や言葉をある程度特定する学術的調査であります。日本列島の中で原人の子孫、古代型ホモサピエンス、更に登場する現代型ホモサピエンスがどのような文化を持って生存し、どのように進化発展したかを、石器の製造技術から明らかにしていく学問なのであります。
 そこで、伺います。
 そのような学術的調査にもかかわらず、補助金を受けて何ら研究せず、あまつさえ捏造発掘したという行為には十分に関心をお持ちのことと思うが、警察本部長の見解をお伺いいたします。
 以下、知事及び教育長の見解をお伺いいたします。
 九〇%以上の遺跡・遺物を、超能力者で前副理事長の藤村新一氏が発見したという点。
 出土した石器は新石器時代の押圧剥離の技術が用いられており、その多くは縄文時代の石器であり、それに加えて、にせものの石器がまじっているという点。
 A、石器を意図的に配列、B、穴を掘って何かを埋蔵した前期旧石器時代の遺跡は世界的に未発見であります。上高森遺跡はAとBが重なり、かつ一カ所の遺跡で幾つも、しかも彼だけが発見しているという点。
 四回の氷河期を経ているはずなのに、穴は崩されずに残り、石器も原人が埋めたときのままその穴の中に残っていることはあり得ないという点。
 十万年前であろうと六十万年前であろうと、どこで発見されようと、藤村前副理事長の石器はいつも同じ形の二ないし三種類で、その上、同じ材質、宮城県周辺のものであることはあり得ないという点。
 藤村氏が発掘した埋蔵遺構の中の、土がやわらかく湿っているという証言があるのは奇妙であるという点。
 上述の配列は、鎌田理事長と藤村氏によると、何か宗教的な絵画が描かれており、宗教儀礼が行われていると言うが、洞窟壁画が出現、つまり宗教が出現したのは世界的には二ないし三万年前で、六十万年前に日本、とりわけ宮城県にだけ現代人が住んでいたのだろうかという点。
 藤村前副理事長が発見した二つの遺跡、山形県尾花沢市の袖原三遺跡と宮城県色麻町の中島山遺跡は、三十キロ離れているにもかかわらず、双方で出土した石器が接合したと発表したが、これは宇宙数学的で全くあり得ないという点。これも一個だけでなく、藤村氏は幾つも接合させているそうです。
 通常、石器は十点出土すると、その十ないし百倍くらいの石くずが出土するのに、彼の発掘遺跡にはそれが全くないという点。
 考古学研究者がともに検証し合う発掘調査報告書がいまだに提出されていないために、疑問視されてもしようがないのではないかという点であります。
 以上の疑問点があったにもかかわらず、これが長期間にわたってまかり通ってきたのは、これら一連の事件が藤村前副理事長一人の行為ではなく、研究所の組織ぐるみの行為であると思わざるを得ないのであります。非営利活動法人認可NPOの取り消しを早急に行うべきと思うが、いかがなものか,お伺いいたします。
 佐藤勇議員の質問で、知事は、関係町村が行う調査には補助金を出すと答弁しています。その他は研究所が自分の費用で再調査すべきであると言っているが、それでは泥棒に現場検証をさせるようなもので,納得がいきません。考古学協会に調査委員会が発足したようですが、メンバーには本物の前期旧石器を見た人が一人もおりませんばかりか、反対の意見を持つ人も入っていないと言われています。これでは宮城県の遺跡についても十分な調査を期待できるかどうかも疑問であります。協会は保身に走るばかりであります。上高森遺跡は教科書問題にも関係しているわけですから、県にも重大な責任があるわけです。また、中峯C遺跡のように県が発掘を担当した遺跡もあります。埼玉県の土屋知事のように県独自の第三者機関をつくるべきと思うが、いかがですか、お伺いいたします。埼玉県では、考古学専門家による石器を分析するだけで早急に決着することができると言っています。いかがですか、お伺いいたします。また、埼玉県教育委員会では、内部委員会と、それとは別に第三者から成る外部委員会があるそうです。内部だけですと、どうしても判断が甘くなるからだということです。
 最後に、すみませんが、追加でお伺いいたします。
 NPO研究所に対しては、ボランティアや寄附を行った団体、教科書会社、また発掘をめちゃめちゃにされて費用を持たされた宮城県などにも損害賠償請求権があると思いますが、いかがですか、お伺いいたします。(後略)
◎ 知事(浅野史郎)
 今野隆吉議員の御質問にお答えをいたします。
 大綱二点でございますが、まず一点目の東北旧石器文化研究所についての御質問にお答えをいたします。
 その中で、NPO法人東北旧石器文化研究所の認証の取り消しをすべきではないかというお尋ねがございました。
 今回の石器発掘捏造に関しては、発掘の経緯でありますとか出土石器などについて、ただいまも議員からさまざまな観点からの疑問点、御指摘がございました。また、地元築館町はもとより各方面にも大きな影響を及ぼしていること、私も大変残念に思っております。指摘されているこういった疑問点はございますが、このことから直ちに、今回の石器発掘捏造がこの法人の行為であるというふうに断定をすることは、現段階では難しいのではないかと考えております。また、今回の不祥事については、我々からNPO法人東北旧石器文化研究所に照会をいたしましたが、その照会に対しては、法人としては全く関与していないとの回答が寄せられております。特定非営利活動促進法、いわゆるNPO法でありますが、この第四十三条では、NPO法人が法令や定款に違反し、しかも改善命令によっても是正されない場合に、こういった場合に、その法人の設立の認証の取り消しということができるものとされております。したがって、現時点では、本件はNPO法の規定に基づく認証の取り消し処分の対象となる事案には当たらないものと考えております。
 次に、今回の上高森遺跡の問題に関連して、第三者機関や外部の委員会をつくるべきではないかという御質問でございます。
 御指摘のように、埼玉県では、県が主体となって実施した小鹿坂遺跡について捏造行為の疑惑が生じたことにより、十二月四日に、九名の委員で構成する前期旧石器時代遺跡緊急調査事業検討委員会を設置をして、再調査の必要性及び調査方法や内容を検討することになったというふうに伺っております。これについては文化庁から緊急に出された通知でも、発掘調査の客観性を確保するための仕組みなどについて、調査主体において、学識経験者や地方公共団体の専門職員等の第三者により構成される委員会を組織するなど検証の仕組みを設けるという指針が示されておりますので、本県としてはこれに準拠して発掘調査の主体者を指導していきたいと考えております。
 また、学会の動きでありますが、学会の動きとしては、今月二十三日と二十四日に、東北日本の旧石器文化を語る会が福島県立博物館で開催予定であります。ここでは石器を検証するという点を主要テーマに、藤村氏が関与した石器と関与していない石器を含めて公開をし、前期・中期旧石器時代の石器の検討が行われると聞いております。初日の話題提供では、北海道から群馬県にわたる各県の状況について発表があり、二日目には、異なる意見を持った方々を含めた議論が展開されるようであります。日本考古学協会が上高森遺跡問題のために特別委員会の設置を決めたのに続き、より関係の深い地域でもこのように考古学の学会が独自に再検証に向けた努力を始めております。
 行政の立場でありますが、行政の立場としては、こういった動向を期待を込めて見守るということで、学会などから要望がありますれば、その時点で支援等の対応策を検討していきたいと考えております。
 残余の件で関連の部分については、教育長からもこの後答弁申し上げます。(後略)
◎教育長(柿崎征英)
 今野隆吉議員の東北旧石器文化研究所に関する御質問にお答えいたします。
 東北福祉大学で保管しております石器の公開に関する県の対応についてでございますが、十一月二十二日に東北旧石器文化研究所の鎌田理事長を初め三人の理事に事情を聞いた際に、この点についても伺っております。東北福祉大学の梶原教授は、公開を拒んだことはないが、仕事の関係もあり、いつ何どきでも応じられるわけではないということでございました。できる限り公開に努力されるよう要請いたしました。今後とも必要に応じて働きかけてまいりたいというふうに考えております。
 また、損害賠償についての御質問でございますが、県教委といたしましては、直接的な損害をこうむっておりませんので、現在そのような予定はございません。
 以上でございます。

平成13年9月定例会 09月28日

◆ 今野隆吉
 次に、捏造石器についてお伺いいたします。
 去る二十三、二十四日、日本考古学協会と宮城県考古学会の合同で検証作業が実施され、同席した私も現物を見る機会に恵まれました。座散乱木遺跡、馬場壇A遺跡から出土した石器は、本来ないはずの新しい傷がある。二、高度な技術の押圧剥離で製作されたものがある。加熱処理をして製作したものなど、旧石器時代には考えにくい疑わしい石器が散見される。深い地層に長期間埋まっていたとは思えないし、学問的資料としては使えないおそれがあるとのことでありました。藤村コレクションの石器が、座散乱木遺跡、馬場壇A遺跡、上高森遺跡から出土した石器と形状や材質が類似するものが多数あったのであります。一九八一年、藤村氏が発掘した座散乱木遺跡は、日本の旧石器時代の歴史を変えた貴重な遺跡なのであります。今後どのような対策をとられるのか、お伺いいたします。
 昨年、藤村氏が関係した馬場壇A遺跡は、宮城県教育委員会の再調査で捏造の疑いはないと発表されていますが、日本考古学協会と宮城県考古学会の特別委員会の検証では、石器に鉄の付着物があり、捏造が疑われることが判明したのであります。捏造の疑いはないとした宮城県教育委員会はどのような調査をしたのか、お伺いいたします。
 昨年十二月、県では東北石器文化研究所の理事長に、藤村氏本人から発掘手法や捏造などの事実関係を聴取するよう書面で要請しているようだが、どのような報告書が提出されたのか、お伺いいたします。
 石器の実測図さえ提出されていないのはなぜなのか、お伺いいたします。
 前副理事長の捏造行為は、関係した遺跡の学問的価値を著しく損ねたし、日本の考古学の信頼に大きな傷をつけ、関係する地方自治体に多額の財政的負担をもたらしました。なぜ知事は再調査に協力しないのか、宮城県の文化財をどう考えているのか、お伺いいたします。
◎ 知事(浅野史郎)
 次に、捏造石器問題についての御質問にお答えをいたします。
 今回の捏造問題、再調査に県はなぜ協力しないのかという点、そしてまた、関連して、宮城の文化財ということについてどう考えているのかという御質問でございます。
 県といたしましては、これまで、この事件は考古学界という学問研究の世界で生じたことであって、学界内部で事件の解明、解決の方策が図られることが望ましいと考えたものでございます。学問研究の自由を尊重するという立場からも、学界の動向を見守るという姿勢をとってまいりました。この考え方は現在も変わっておりません。今回、宮城県考古学会がみずから中心となって上高森遺蹟の検証発掘調査を行うとしていることは、県としても望ましいことと認識をしております。
 なお、今後、調査団が結成され、県に対して何らかの協力要請がなされた場合にあっては、その時点で県としてどのような協力が可能か検討した上で対応してまいりたいと考えております。
 文化財というものは、郷土の歴史や文化を正しく理解する上で欠くことのできないものであります。文化の向上発展の基礎となるものであります。したがって、県民の文化的な生活向上に役立てるため、文化財を保存し、継承し、その活用を図るということは、県の行政にも課せられた責務であると認識をしております。
 なお、この件に関しての関連の質問は、教育長からお答えをいたします。
◎教育長(千葉眞弘)
 今野隆吉議員の質問にお答えいたします。
 初めに、捏造石器問題についての今後の対策と、県が調査した遺跡から出土した石器の検証作業についてでございます。
 日本考古学協会と宮城県考古学会が九月二十三日と二十四日に実施いたしました座散乱木遺跡、馬場壇A遺跡出土石器の検証作業につきましては、新聞、テレビ等での報道でしか承知しておりませんが、いずれの遺跡から出土した石器につきましても、疑わしいものが認められたということでございます。これが事実であればまことに残念な事態であると言わざるを得ません。この中で、学問上の評価が定まり、国の指定遺跡となっております座散乱木遺跡にも疑いが及んでいることは、非常に重要な問題であるととらえております。日本考古学協会では、今後、総合的に検証し、その結果を来年五月までに取りまとめる予定と聞いております。県教育委員会としては、その推移を注視し、検証結果によっては何らかの対応も検討していかなければならないと考えております。
 次に、昨年の内部調査についてでありますが、内部調査は、県教育委員会が主体となって発掘調査を実施した前・中期旧石器時代遺跡である馬場壇A、中峯C、高森遺跡について、藤村氏がどの程度これらの遺跡の発掘調査にかかわり合いがあったかを把握することをねらいとして実施いたしました。具体的には、作業日誌と、調査を担当した職員からの聞き取り調査などを行ったものであります。その結果、三遺跡とも一般的に作為の可能性が考えられない状況の地層から発見された石器があることを確認いたしました。
 次に、東北旧石器文化研究所に対する指示とその報告についてでありますが、昨年、東北旧石器文化研究所・鎌田俊明理事長に書面で次の四点の指示をしております。第一点は、研究所が発掘調査に関係した遺跡について、捏造した遺構や遺跡がほかにないか藤村氏本人に確認すること。第二点として、上高森遺跡の現地について、調査中断を放置してあったので、今後の処理計画を立てること。第三点は、県内の関係遺跡の発掘調査報告書を早期に刊行すること。第四点は、石器の実物や写真などの資料については積極的に公開するというふうなことで指示をいたしました。これに対しまして、理事長からの回答は、第一点につきましては、精神科医師の診断により、現状では本人に事情聴取は不可能である。第二点につきましては、とりあえず冬を越すための保守作業を行い、春以降、関係機関と相談の上、再検証に向けて責任を果たしたい。第三点は、上高森遺跡を含めすべての報告書を平成十五年四月までに刊行する。第四点は、これまでにも公開には十分に応じているという内容でございました。なお、石器の実測図につきましては、第三点で申し上げましたが、その報告書の中に添付されるものでございます。
 以上でございます。
◆ 今野隆吉
 それから、捏造関係なんですけれども、これにつきましては、十五年四月までに報告書を作成してつくるんだという今の教育長の答弁でありますけれども、昨日、東北旧石器文化研究所は来年の五月には解散する意向が伝わってきているんですよ。そんなら十五年までに報告書出てこないでしょう。こんなばかな答弁ではいけないわけでありまして、やっぱり早急に教育委員会が対応して、そして発掘調査報告書の提出を早急に求めなければなりません。
 私はいつも申し上げますのは、この旧石器文化研究所も藤村氏と一体でやってきているんではないかと。それに教育委員会も絡んでいるんでないかと。更には国の文化庁も絡んではいるんではないかという疑問まで持っているんですよ。そうでしょう。前にも申し上げましたように、竹岡さんという方と鎌田理事長の取り交わした手紙の中にも、疑義があるって鎌田理事長は言ってるわけですから。そういうところを徹底的に調べないで、これもうやむやにして一件落着にしたんでは、宮城県の文化遺産というものは間違ったままされてしまうわけでありまして、そうしますと、子供、孫の代、末代までこういうような間違った歴史が伝わってしまうわけでありますので、この機会に−−多分、私は、藤村氏もそんな精神的なあれでないと思うんですね。理事長とは連絡をとっているわけですから。その辺、ちゃんとしていただいて、文化研究所の解散を認める。NPO団体ですよ、これは。ですから、なおさらのこと、早急に対策を講じていただけますか。お伺いいたします。
◎ 教育長(千葉眞弘)
 今野議員の再質問にお答え申し上げますが、報告書の提出期日、十五年四月をもっと早めてというふうなお話、きょう私も新聞で拝見いたしましたが、解散するに当たっては報告書を作成してから解散をしたいというふうな報道の内容だというふうに私は理解しておりますが、それに当たっては、我々としても、前から、この案件に限らず、かなり、届け出のあった発掘調査の中でまだ報告をいただいてないのが多いわけですんで、それも含めて全体として十五年四月までというようなことで受けとめておりますが、解散というふうな事態になるようなことであれば、我々の方からも更に督促をいたしまして、できるだけ早く報告書を出すように理事長の方にも申し伝えをしたいというふうに思っております。
 また、第二点の、藤村前副理事長の病状の件でございますが、これは担当課の方で九月上旬に理事長に電話で確認したところ、本人の病状は依然として回復をしていないということで、詳しい内容については聞けない状態であるというふうな報告を受けておりますが、これについても、更に理事長を通じまして、確認、督励等をしていきたいというふうに思っております。
 以上でございます。
◆ 今野隆吉
 今の石器の関係なんですけれども、今までこの石器は東北歴史博物館に保管されていた分なんですよね。そうでしょう。この日曜日、月曜日、今回、東北歴史博物館で私も行って見せてもらったわけですけれども、何で県の施設で保管していた石器を今まで出さなかったんですか。今日まで。早く提出すれば、石器を見れば、早くこれは捏造というのはわかったんですよ。そういう点、どういうわけでそうやって隠しておくのか、教育委員会もちょっと絡んでいるんじゃないのと疑いたくなりますよ、だから。
◎ 教育長(千葉眞弘)
 今野議員の再々質問にお答え申し上げますが、東北歴史博物館で持っております石器、この問題に限らず、我々とすれば、学術研究上必要な場合はいつでも公開をして研究に使っていただくというふうな基本方針でやってございますので、その辺はひとつ御理解をしていただきたいなというふうに思っております。
 また、今回調査をしておりますのは、議員御承知のとおり、調べた中の一部が疑わしいというふうなお話でございます。聞くところによりますと、考古学会では五つの部会をつくりまして、それを多面的に、多方面からいろんな検討を加えて五月に結論を出したいということでございますので、それを待っていろいろ我々としてもやらなきゃなんないやつはやらなきゃわかんないんじゃないかなというふうな考えでおります。よろしく御理解をお願いしたいと思います。

平成13年9月予算特別委員会 10月01日

◆ 内海太
 次に、旧石器の捏造問題について、若干お尋ねをします。
 昨年の十一月、藤村氏によって捏造問題が明らかになったんですけれども、県は学問上の問題だということで特別の調査もしてまいりませんでした。しかし、県教委は、馬場壇A遺跡、座散乱木遺跡などの調査をやって、これは藤村氏が直接発掘した遺跡でないということで、シロということになっておりましたけれども、二十三日、二十四日の研究者の会議で、捏造の疑い濃厚、そして上高森遺跡以外にも藤村氏がかかわった二十数カ所の遺跡については捏造というショッキングなニユースが立て続けに報道されておりますけれども、これらの問題について、知事は現在でもそう思っているのか。
 それから、これからについては、むしろ早くこれらの科学的に調査し、そして真偽のほどを明らかにするということは大切でないかと思うんですけれども、この点についてはどうか。
 また、県教委は、今後どのように対応していくのか、お尋ねします。
◎ 知事(浅野史郎)
 この件に関しては、あと教育長からも御答弁がございますが、今回の捏造の問題、当初考えられていた以上に大変広がりが大きいということで、我々としてもショックを受け、今、これからの対応ということにやや混乱を感じているというようなところが正直なところでございます。  この問題は既に動いておりますけれども、考古学界としてのまさに存亡をかけたような大変大きな問題だろうと考えておりますので、まずは学界内部での基本的な対応というものを期待するというのが第一義的な考え方だろうというふうに考えております。その上で、それが主体となって、そして県として、県が主体となって発掘した調査もございますので、県としてできることがあるだろうと思っておりますが、それは具体的な調査の中で、その対応についてはその都度考えていきたいというふうに考えております。  私からは、以上でございます。
◎ 教育長(千葉眞弘)
 県の内部調査に関しましては、一つとしては、出土した石器の特徴から検証する方法と、それから、二つ目として、石器の出土状況を再検討するという、この二つの方法があったわけでございますけれども、昨年、我々が実施いたしましたのは、石器の特徴からするというのは、なかなか県教育委員会だけでは難しいと、もう少し学問的にやる必要があるというようなことから、一方では考古学界の方でもそういう検討をするというお話もございましたので、教育委員会としては、石器の出土状況を再検討するという観点に立ちまして調査をいたしました。その中で、その当時古い、県が関知しておりましたのが、馬場壇Aというのは一九八四年から八八年まで、中峯については一九八三年、高森については一九八八年から九四年までというふうなことで、それぞれ発掘調査をいたしましたんですが、その当時の日誌なり作業員等に聞き取り調査をいたしまして、物理的に藤村さんが関与できないような状況のものがあったというようなことで、一般的に見て、その当時になって作業をするということもあって、普通ですと、表層からどんどんやっていくんですけれども、一気に深堀りをしたところから物が出ているとか、そういう客観的に見て関与できないような状況があったということから、先ほどのような報告をしたわけでございます。
 それから、第二点目の、今後の対応についてですが、藤村さんがかかわった遺跡というのは、発掘調査関係が十七カ所、それから遺跡の発見関係といいますか、分布の分が百三十四カ所、合わせて百五十一カ所ございます。これからは、いろいろ学界等でも今知事のお話のとおり、鋭意調査をしてございますので、その辺の報告を見守りながら、県としてこの検証を行っていくということについては、必要に応じて、特に分布調査というのは、発掘調査の前の段階で、どこに遺跡があるかということをやっているものですから、その辺についても、今後推移を見守りながら適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
◆ 内海太
 歴史の捏造になるという、これは大問題ですし、また宮城県から発信しているということもありますので、今後の対応は十分研究者たちとも連絡をとりながらしっかりやっていただきたいというふうに思います。

平成13年11月定例会 12月10日

◆ 今野隆吉
 次に、遺跡捏造問題について。
 石器捏造問題からついに遺跡捏造問題にまで発展し、底なし沼のように、藤村新一氏が関係したほとんどが捏造だったことが、藤村氏本人の告白で判明したのであります。知事は九月定例会で、この事件は学問研究の世界で生じたことであり、学問研究の自由を尊重するという立場からも、学会の動向を見守るという姿勢をとってまいりました。この考え方は現在も変わっておりません。今回、宮城県考古学会がみずから中心となって上高森遺跡の検証発掘調査を行うとしていることは、県としても望ましいことだと認識しておりますとお答えになっております。石器捏造も遺跡捏造も学問ではなく、人を欺く犯罪行為なのであります。県は独自に再調査した分に関しても、捏造はなかったと発表しているのであります。知事の御所見を改めてお伺いいたします。
 去る十月七日、日本考古学協会二〇〇一年度盛岡大会が盛岡市で開催され、最前列に御案内されました私は、日本考古学協会調査研究特別委員長の戸沢充則氏から藤村新一氏の捏造発掘についての説明があり、やはりそうだったのかと聞き入っていたのであります。戸沢氏によれば、五月二十三日、五月三十日、七月二十五日、九月十三日、そして九月二十六日の計五回、藤村氏が入院する病院で、主治医及び弁護士立ち会いのもとで学会関係者とともに面談したそうであります。藤村氏が県内の遺跡で捏造したのは、座散乱木遺跡、馬場壇A遺跡、高森遺跡、上高森遺跡、中島山遺跡、高山館2遺跡、青葉山E遺跡、沢口遺跡、薬莱山39遺跡、薬莱山40遺跡、安養寺2遺跡、大谷地遺跡、前河原前遺跡、蟹沢II遺跡の十四遺跡に関係したことを告白したのであります。知事はこれでも、石器捏造や遺跡捏造を学問研究の世界とか学問の自由と言い続けるおつもりなのか、お伺いいたします。
 九月二十六日、戸沢調査委員長が藤村氏との面談の際、ワープロで作成した告白文をいただいたそうであります。その告白文の中で、「私とだれだれ」とか「本人とだれだれ」と、石器を捏造したのは藤村氏一人の犯行ではなく、複数による行為であったが、責任はすべて私にありますと藤村氏は述べているのであります。
 特定非営利活動法人東北旧石器文化研究所理事長の中間報告では、日本の前期旧石器時代を変えた考古学上最も大事な座散乱木遺跡や馬場壇遺跡が抜けているのであります。理事長は、学会的にも、行政的にも、社会的にも最も中立公平で、各方面から正当な評価を得るために、日本考古学協会特別委員会などと共同で実施する必要性を認識し、関係者と協議の上、去る五月に第一回目の面談を設定、以後、四回にわたる面談が実施され、病気などの影響のため短時間の面談で、多くの事情を聴取することができないわけですと述べております。旧石器文化研究所はすべてを明らかにする責任があります。色麻町中島山遺跡と尾花沢市袖原三遺跡の石器接合まですべて捏造だったことが、藤村氏の告白で判明したのであります。県は日本考古学協会の指導を受け独自の調査を行うべきと思うが、いかがですか、お伺いいたします。発掘を許可したのは県でありますから、責任は当然県にあります。
◎ 知事(浅野史郎)
 まず、この問題のとらえ方についてでありますが、昨年の十一月に旧石器捏造が報道されて以来、その影響は非常に大きく、文化財保護や学校教育を初め、町おこしの資源としての活用が期待されていた地元市町村に及ぶなど、広い範囲にわたりました。この間、県の教育委員会では、知り得た情報を地元市町村や関係者にお知らせし、東北歴史博物館の展示品の撤去や、小中学校における副読本の使用に当たっては、この間の事実を説明して適切に取り扱うよう指導してまいりました。今回の旧石器捏造行為でありますが、これは考古学会のみならず、社会を欺く卑劣な行為であり、許しがたいことであると考えております。しかし、文化財保護法上ではいかんともしがたいという現状でございます。発掘の主体はいろいろございますけれども、調査員の中には考古学協会員である藤村前副理事長はもちろんのこと、研究者や学者の参加のもとで実施されたものであるということから、日本考古学協会が信頼回復と真相究明のために自主的に、主体的に実態解明と再発防止に向けて多方面から検証作業を行うことは望ましいものと考えております。その意味では、築館町上高森遺跡の検証発掘調査が、県教育委員会の指導のもとに、東北旧石器文化研究所の要請を受けた宮城県考古学会の呼びかけで結成された調査団によって実施されたことはよかったものと思っております。その結果は、遺跡とする根拠がないという見解になったわけで、この件が発表されました。したがって、今後、遺跡の登録は取り消したいと考えております。
 次に、県は日本考古学協会の指導を受けてみずから調査をすべきではないかという御質問がございました。お答えをいたします。
 捏造ということが告白された遺跡の中で、十四の遺跡は宮城県内でございます。そのうち県の教育委員会が主体となって調査を実施したのが二つの遺跡、前期旧石器時代遺跡としては馬場壇A遺跡と高森遺跡、この二つでございます。この二つの遺跡についても日本考古学協会では、藤村前副理事長に対する聞き取りの継続と、発掘された石器の形態的特徴や付着物、発掘調査時の状況など学術的な検証作業を行っており、その際には東北歴史博物館が保管する石器などの資料を積極的に提供するなど協力しているところであります。その結果については、来年の五月ごろまでにまとめるというふうに聞いております。その結果を受けて、必要な方策を検討していきたいと考えております。

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