宮城県議会会議録に見る捏造問題(2003)

宮城県議会会議録検索システムから、神の手事件に関連する質疑を転載しました

2000  11月定例会12/01佐藤議員 11月定例会12/07今野議員
2001  9月定例会09/28今野議員 9月予算特別委員会10/01今野議員 11月定例会12/10今野議員
2002  2月定例会03/01今野議員 6月定例会07/05今野議員 6月定例会07/08川嶋議員 11月定例会12/02今野議員
2003  2月定例会02/27今野議員 6月定例会07/03今野議員 9月定例会10/02今野議員 10月文教警察委員会10/07柏議員
2004  2月定例会03/03今野議員 9月定例会10/05今野議員 11月定例会12/06川嶋議員 11月定例会12/08今野議員
2005  2月定例会03/07今野議員 


平成15年2月定例会 02月27日

◆ 今野隆吉
 上高森遺跡の説明看板に、子供の字で「うそつき」という落書きがありました。二十年もの長い間、捏造遺跡を教科書に書いて子供や学生までだまして夢を奪った考古学者たち、歴史の真実を探究するはずの考古学者が、二十年にもわたってうそをつき続けたのであります。特に、藤村新一氏の周りにいた芹沢長介氏・東北大学名誉教授を筆頭に、岡村道雄氏、鎌田俊昭氏、梶原洋氏ら関係者は口をそろえて「藤村にだまされた」と言って、藤村氏一人で行ったとして責任を負わせてしまったのであります。しかし、藤村メモには、自分一人でそんなにたくさんの石器を埋められないと述べているのであります。藤村氏以外の人々が発見したという石器については、千点を超える資料がありながら、考古学協会の再調査ではほとんど検討されなかったのであります。
 この捏造事件は、研究者のほとんどが大学教授や市町村教育委員会の公務員が多く、文化庁を批判したならこの世界では生きていけない危機感をだれもが抱いていたのであります。捏造発覚後は関係した考古学者のすべてが何の責任も問われないという免責と引きかえに、かたく口をつぐんでしまったのであります。考古学会では、文化庁・歴史資料館関係者の批判をする人は、今や一人もいないのであります。私はこの捏造事件を繰り返し議会で取り上げてきたのは、文化庁官僚、文化庁主任文化財調査官で元宮城県職員の岡村道雄氏が事実上の免責で居直っているだけに、改めて岡村氏の責任の重大さを明らかにして、捏造事件に巻き込まれた各地の教育委員会調査担当者の自覚を促すものであります。
 元県職員の岡村道雄氏は、前期旧石器存在の仮説を書き、座散乱木遺跡、馬場壇A遺跡の実質的な現場責任者であり、藤村新一氏を石器発見の神様などと褒めたたえながら、捏造石器を二十年にもわたって認知してきた張本人であります。また、文化庁に移ってからも座散乱木遺跡を国の史跡に指定した中心人物であります。ほかにも県が関与した遺跡があるのだから、知らぬ存ぜぬでは済まないのであります。県民に対して事件の経過と責任について説明すべきであります。
 藤村新一氏がかかわったすべての遺跡は、日本考古学協会の再調査の結果から、学術的資料として扱うことは不可能との結論が出て、あっけない幕切れで終わりました。しかし、このまま終わらせてはならず、真相を解明すべきであります。すなわち、藤村氏を超能力者とかゴッドハンドと褒めたたえ、実行犯に仕立てたのはだれなのか、関係者は知っていたはずであります。マスコミまでもだまして同調させたのであります。関係者は藤村氏一人に責任を負わせ、真相は解明されないまま、自分たちは藤村氏にだまされたと言っております。反省もなく逃げ惑い、幕がおりてホッとしているような印象を与えています。しかし、県までが二十年も続いた捏造事件の真相を今もって解明しようとしないのはなぜなのかお伺いいたします。
 県はなぜ文化庁の顔色をうかがっているのでしょうか。捏造された遺跡を国の史跡に指定して、長期にわたり捏造を可能にしました。これは文化庁官僚や考古学者が関与していたからなのであります。教科書に書かれ、国に指定され、その後取り消された座散乱木遺跡は県立東北歴史資料館の岡村道雄氏の発見です。岡村道雄氏は、昭和五十三年四月から六十二年三月まで県職員だったのであります。捏造事件は学問上の問題であって罰する法律がないと教育長は議会で答弁していました。座散乱木遺跡や馬場壇A遺跡の発掘に関係したのは元県職員であります。また、公務として発掘し、その記録が書かれた報告書はまさに公文書と思いますが、いかがですか。また、公文書を偽造した場合の公務員としての責任はどうか、あわせてお伺いいたします。
 この元県職員は、その後、文化庁主任文化財調査官になり、国の史跡指定にかかわりました。彼の著書、講談社発行の「縄文の生活誌」の中で次のように書いているのであります。「一九八〇年四月、座散乱木の切り通しの前に、藤村新一氏や私たちは横一線に並び、地層断面を一生懸命に削った。私の移植ゴテにも石器が当たった。『カチッ』という手ごたえがあった。間違いなく卒業論文以来、長年夢にまで見た『旧人』の石器だ。日本にも四万年前にさかのぼる中期旧石器時代に、確実に人類が生活していたのだ。その瞬間、あまりの感激に、体の中を電気が走り、あたりが暗くなるような眩暈を覚えた。この地域では民間の石器研究グループ『石器文化懇話会』が一九七五年から八五年ごろまで丹念に遺跡探しをした結果、次々と旧石器時代の遺跡が発見された。最大の成果がこの座散乱木遺跡で、後期旧石器時代より、さかのぼる遺跡を発見・発掘し、日本列島の歴史が中期旧石器時代以前にあったことを確実にした。これは『第二の岩宿の発見』と呼ばれるような、考古学史上、画期的で偉大な成果であった。」と言っております。この文章は捏造発覚以前のものであり、元県職員が自分の手で旧人の石器を掘ったとはっきり書いているのであります。旧人の石器は藤村氏の埋めた捏造石器なのか、それとも本物の石器を掘ったのか。元県職員は捏造に関与しなかったことを証明するためにも、ぜひ説明をしてもらうべきであります。いかがですかお伺いいたします。
 当時、岡村道雄氏は東北歴史資料館の技師であり、この発掘責任者でもありました。どんな状況で出土したかは、掘った元県職員自身が一番知っているのであります。だから説明責任があるのです。元県職員からは事情聴取はしたのか。また、していないのであれば、何ゆえなのかお伺いいたします。
 「藤村新一氏や私たちは横一線に並び、地層断面を一生懸命に削った。」と書いているとおり、がけの断面を削って石器の有無を調べていくという方法をとっておりました。この点が問題であります。発掘調査は、一般的には上の新しい地層から下の古い地層に順次掘り下げていくものであります。藤村氏の方法では、石器の見えている地層の断面だけ観察できますが、面としての遺物は観察できないという欠点があります。元県職員は、捏造問題の核心である最も大事なことを書いていません。つまり、藤村氏が最初の大発見から、元県職員の石器分類と石器編年の仮説に大筋で符合する石器群を、古い地層から次々に発見し続けたという事実であります。藤村氏が衆目するところで演じたこの抜き取りの手品は、事前に石器を土の中に埋めておくという手なれた手品の種が隠されていました。前期旧石器の発見を目指してきた石器文化懇話会の間では、がけを削って石器の有無を調べるやり方は、既に分布調査の常套手段となっていたのです。この点が捏造事件の真相をとらえる上で大変重要な事柄であります。彼らの遺跡探しの方法はこの抜き取りにあり、写真撮影や実測図もほとんどなく、簡単なメモ程度の記録だけで遺物を遺跡から抜き取ってしまうことは、証拠能力のない邪道な方法なのであります。
 仮説論者の元県職員が言う石器、「斜軸尖頭器」を捏造実行者の藤村氏が抜き取ってみせる。藤村氏が演じた抜き取りの手品は、石器を事前に土の中に埋めておく手法は常套手段になっていたのです。この抜き取りの手品は、前期旧石器報告書には専門語のように頻繁に書かれ一般化していたのであります。
 東北歴史資料館の県職員や市町村教育委員会の文化財担当職員たちは、岡村道雄氏や東北旧石器文化研究所理事長の鎌田俊昭氏に引きずられてこのわなにはまったのであります。彼らは、藤村氏が来ない日でも石器が発見されたと力説し、座散乱木遺跡と馬場壇A遺跡で捏造はあり得ないと主張してきました。県はこれをどう受けとめているのかお伺いいたします。
 一九七八年、県に就職した岡村道雄氏は、江合川流域のがけや地層の露頭部から抜き取りの方法によって既に十数カ所の前期旧石器遺跡を発見し、この準備期間に既成事実をつくり、座散乱木遺跡の発掘が決まったのであります。こうした抜き取りを積み重ねることにより、捏造現場の火山灰層には必ず前期旧石器があるのだと、藤村氏の発見を全く疑わない雰囲気ができ上がったのであります。座散乱木遺跡から抜き取られた石器は、現場責任者の県職員岡村道雄氏から、これが旧人の石器と太鼓判を押されたのであります。つまりお墨つきをもらったのであります。そのため、だれからも疑問など出るわけがなかったのであります。元県職員は、前期旧石器の存在を想定して石器の分類や編年の仮説を発表し、藤村氏は常に石器の発見役であったのであります。元県職員の責任は重大であります。捏造事件が発覚した今、県はどう考えているのかお伺いいたします。
 超能力者の藤村氏によって遺物が発見されるように仕立てられること自体、異常な世界になっていたのであります。乗せられた藤村氏自身も、「私には五十万年前の地形が見える」とますます神がかっていったのであります。平成十二年十二月、日本考古学協会から県教育長あてに遺跡捏造に関する調査依頼がありました。これに対し県教育長は、捏造の疑いないと回答いたしました。その責任は重大であります。県はどう考えているのかお伺いいたします。
 十四年二月議会における遺跡発掘調査に係る質問に対して、日本考古学協会からの調査依頼については、再調査すべき事項が判明しないとも答弁しておられるが、それはどういう意味か、あわせてお伺いいたします。
 また文化庁から、日本考古学会とは直接連絡をとらないようにとの指導があったことは、文化庁官僚が絡んだ捏造事件のため、やみに葬るためではないかと思うが、いかがですかお伺いいたします。
 馬場壇A遺跡の調査費四千万円、国、県、二分の一の県負担分についてだけでも、再調査の責任があるのではないかと思いますが、お伺いいたします。
 平成十二年十一月から十二月にかけて内部調査したところ、藤村氏による捏造の疑いなしと答弁しております。これは事実に反しているが、どういうことかお伺いいたします。また、検証方法が確立されていないため、本県でもそのような内部調査は行っていないとの答弁は無責任ではないかお伺いいたします。
 平成十四年五月には、日本考古学協会の検証結果を尊重してその後の対応を考えると答弁しておりますが、その後どうなったのかお伺いいたします。
 平成十三年九月議会で、知事は、県に協力要請があれば、どのような協力が可能なのか検討したいと答弁しております。日本考古学協会に対する調査協力については、関連遺跡出土土器の公開、作業場の提供や、県職員も数名学会の一員として積極的に協力していると答弁しておられるが、何か欠けているのではないかお伺いいたします。
 東北旧石器文化研究所が主体で実施した発掘調査報告書の提出期限が平成十五年四月に迫ってきたが、進捗状況はどうかお伺いいたします。
 藤村氏への事情聴取は、戸沢調査委員長から日本考古学協会関係者三名に一任されておりますが、県の責任は重大でありますから、独自に事情聴取すべきであると思いますが、知事の考えをお伺いいたします。
 平成十三年十月、日本考古学協会の戸沢調査委員長ら三名が来県し、県に対し藤村氏からの事情聴取をやらないでほしいと強い要請があったと聞いています。事実であれば重大な問題であります。いかがですかお伺いいたします。
 また、県は独自に岡村道雄氏に対する事情聴取をして、真実を県民に明らかにすべきであります。県は、具体的にいかなる再調査をすべきか判明しないと答えておられますが、いかにも無責任であると思います。御見解をお伺いいたします。
 県は、文化庁を仲介するよう指導があったと、むやみに責任を転嫁しております。このことは重大な問題であります。元県職員、文化庁と県教育委員会と藤村氏とは一つのシナリオで動いているのではないでしょうか。これ以上不名誉なことが起きないためにも実態を解明し、県民に明らかにすべきであります。
 以上申し上げましたとおり、作為はあり得ないとか、検証方法が確立していないという回答を聞いておりますと、県教育委員会の質に問題があるのではないかと疑いたくなるのであります。この点はいかがでしょうか。
 学会の結論を尊重し、その後の対応を検討したいと、的確に対応せずに適当に対応し、お茶を濁して逃げ回っているのであります。県教育委員会には正式な協力要請がないから、宮城県考古学会が中心となり考古学独自で実施していると、あたかも他人事のようにとらえております。宮城県教育委員会はこの程度の能力しかないのでしょうか。
◎ 知事(浅野史郎)
まず一点目の、前期旧石器遺跡の捏造事件の質問にお答えをいたします。
 私からは、まず初めに、県は二十年も続いた捏造事件の真相を今もって解明しないのはなぜかというお尋ねがございましたので、お答えをいたします。
 この事件については、県といたしましても重大なことであると受けとめておりまして、学校教育や社会教育に対する影響も大きいということから、積極的に真相の解明に当たってまいりました。事件の解明に当たっては、日本考古学協会や宮城県考古学会などが主体となって、学術的な立場から上高森遺跡や座散乱木遺跡の検証発掘と石器の検証作業に取り組んできております。県としても、これに対して協力を行ってきたところであります。更に、発掘調査日誌などをもとにした内部調査や関係者からの事情聴取、文書照会による調査などを行ってまいりました。こういったことを総合的に勘案したところ、前期旧石器遺跡の捏造は藤村氏の単独行為によるものと考えております。なお、県では現在、百四十八の捏造関連遺跡の石器について検証作業を行っているところであります。
 次に、日本考古学協会に対する調査協力については積極的に協力していると以前答弁があったが、何か欠けていると思うがどうかというお尋ねがございました。
 今回の事件は、考古学会という学問研究の世界で生じたことでありますが、宮城県に深くかかわる問題でもありましたので、我々としては日本考古学協会に対しできる限りの協力をしてきたものであります。
 次に、日本考古学協会の委員長ら三人が来県をして、県に対し藤村氏からの事情聴取をやらないでほしいという要請があったと聞くが事実かと。事実であれば重大な問題であるがどうかというお尋ねがございましたので、お答えをいたします。この日本考古学協会の戸沢委員長からは、これまで藤村氏本人に五回にわたって面談をしてきたということでございまして、自分が続けて調査をしていきたいという旨の強い要請がありました。これを受けて県としては、一から新たに事情聴取をするよりも戸沢委員長の面談の推移を見守る方がよいと判断したものであります。
 次に、県は独自に元県職員から事情聴取をして真実を明らかにすべきと思うがどうかというお尋ねがございました。
 昨年の八月二十六日に国が設置した、考古学及び関係分野の研究者や岩出山町教育長、宮城県文化財保護課長などを構成メンバーとする公開の史跡座散乱木遺跡に関する調査委員会において、元県職員からの意見聴取を行っております。
 この中で、本人からは、捏造を早い時期に見抜けなかったことについては力不足であったということを認めた内容の発言がなされておりますので、改めて説明を聞く必要はないものと考えております。
 次に、県は具体的にいかなる再調査をすべきか判明しないと答えており、この答え方は無責任だと思うがどうかというお尋ねでございます。
 日本考古学協会からの平成十二年十二月の依頼に対して回答しておりましたが、その回答に対する何らの見解が示されないまま、一年後に再調査の依頼がなされたものでございます。その一方では、当時は日本考古学協会が総合的に検証作業を進めている最中でもございました。したがって、具体的にどのような調査を本県としてすべきか理解することができなかったということでありまして、その旨を回答をしたものでございます。
 なお、この件に関してのその他の質問については、教育長が答弁を行います。
◎ 教育長(千葉眞弘)
 今野隆吉議員の石器捏造問題につきまして順次お答えいたします。
 初めに、座散乱木遺跡や馬場壇A遺跡の発掘に関係したこの元職員が作成した報告書は公文書だと思うがどうか、また、公文書を偽造した場合の公務員としての責任についてということについてでございます。御指摘の発掘調査書につきましては、民間の研究団体による発掘調査がなされた座散乱木遺跡につきましてはその団体の責任によるものですが、馬場壇A遺跡の報告書につきましては県が主体となったものであり、公的な出版物でございます。これが刑法の公文書に当たるとは思いませんが、報告書の作成は当時の学会の評価を踏まえまして取りまとめたものと理解をしております。
 次に、元県職員の掘った石器が捏造石器なのか本物なのか、本人に説明してもらうべきと思うがどうかということについてですが、元県職員はこのことに関し、みずからの著書「日本の歴史I改訂版」−−昨年の十一月に出版したものでございますが、その中で捏造石器であることを認め、既に修正しているところでございます。
 次に、座散乱木遺跡の発掘責任者である元県職員から事情聴取はしたのかということについてですが、これは先ほど知事が答弁いたしましたとおり、昨年の八月二十六日に、国が設置した公開の史跡座散乱木遺跡に関する調査委員会において元県職員からの意見聴取を行っておりますので、改めて事情聴取をする必要はないものと考えております。
 次に、元県職員や東北旧石器文化研究所理事長が座散乱木遺跡や馬場壇A遺跡で捏造はあり得ないと主張してきたが、県はこれをどう受けとめているのかということについてですが、彼らがこのような発言をしたのは捏造発覚直後のことで、まだ事実関係がはっきりしていない当時の状況判断としてはやむを得ないものと考えております。
 次に、座散乱木遺跡の発掘などで、元県職員が前期旧石器の存在を想定し、仮説を発表し、藤村氏が常にそれに沿った石器の発見役になっていたことについて県はどう考えているのかということについてでございます。
 通常、学術的な目的で発掘調査を行う場合は、従来の研究をもとにまず仮説を立て、その仮説を証明するための有効な方法などを検討した上で実施をいたします。民間団体の石器文化懇話会による座散乱木遺跡の発掘調査の場合も、昭和五十一年ごろ、当時東北大学の助手であった元県職員の論文などをもとにした仮説を立て、調査に入る前に勉強会を開いて会員同士で何度も議論を行い、共通認識に立った上で発掘に当たったと聞いております。藤村氏はこうした仮説を逆手に取って捏造を行った可能性が高いと考えております。
 次に、日本考古学協会からの依頼に対し、捏造の疑いはないと回答しているが、県は重大な責任があるのではないかということについてでございます。
 日本考古学協会から求められた調査内容は、藤村氏が関与した三遺跡について主に発掘調査の経過及び石器遺構などの発見状況、更にこれまでの学会における評価等を確認するものでありました。県教育委員会としては、協会からの依頼に沿って、東北歴史博物館が当時の記録等を再調査し、また関係職員からの聞き取り等により事実関係を確認したものであります。その結果、作為はあり得ない状況で出土した石器が数点あったことから捏造の疑いはないと回答したものであり、当時としてはやむを得ない判断と考えております。その時点では、どのような検証方法が最も適切なのかはまだ一般化しておりませんでした。その後、平成十四年五月に、日本考古学協会から藤村氏関与遺跡の石器検証結果が公表され、それによって石器の検証方法が確立されました。それを受けて県教育委員会といたしましても、藤村氏が関与したすべての遺跡の未検証石器を対象に検証作業を行うこととしたものでございます。
 次に、平成十三年十二月の日本考古学協会からの調査依頼については、再調査すべき事項が判明しないと答弁したが、どういう意味なのかということについてですが、これも先ほど知事がお答えいたしましたとおり、依頼された調査が第一回目に回答した調査とどのように異なるのかを理解しかねたために、その旨を回答したものでございます。
 次に、国から日本考古学協会とは直接連絡をとらないように指導があったことについてでございますが、捏造問題は複数の自治体にまたがる広域的問題であり、関連する自治体が個別に対応すると混乱が生ずる可能性があるということから、国はそのような混乱を避けるために窓口の一本化を図ったものと理解をしております。
 次に、馬場壇A遺跡の再調査の責任があると思うがどうかということについてであります。
 馬場壇A遺跡の検証調査につきましては、日本考古学協会が組織する前・中期旧石器問題調査特別委員会が総力を挙げて行い、県もそれに協力してきたところであります。その結果、本遺跡の出土資料は学術資料としては扱えないとの結論に達したところであります。このようなことから、改めて再発掘調査を行う必要はないものと考えております。
 次に、事件の発覚直後の内部調査で、藤村氏による捏造の疑いなしとして日本考古学協会に報告したことは事実に反するのではないか、また、石器検証方法が確立されていないため、本県でもそのような内部調査を行っていないとは無責任ではないかということについてですが、平成十二年十一月から十二月にかけての内部調査は、県教育委員会が主体となって発掘調査を実施した前・中期旧石器時代遺跡である馬場壇A、中峯C、高森遺跡の三遺跡について、藤村氏がどの程度これらの遺跡の発掘調査にかかわり合いがあったかを把握することをねらいとして実施したものであります。具体的には作業日誌と調査を担当した職員からの聞き取り調査等を行いました。その結果、いずれの遺跡でも藤村氏による作為のあり得ない状況で発見された石器が数点あることが判明したことから、遺跡の捏造まで疑うことができなかったものであります。そのことは、昭和十三年一月に日本考古学協会に報告したところであります。
 また、本県でもそのような内部調査は行っていないとの答弁は無責任だということについてですが、先ほども申し上げましたように、昨年五月に、日本考古学協会から藤村氏関与遺跡の石器検証結果が公表されたことによって初めて石器の検証方法が確立されたものであり、当時はまだ方法が確立していないために調査できなかったので、そのようにお答えしたものでございます。
 次に、石器の検証結果の中間報告を受けて、その後にどのような対応を行ったのかということについてでありますが、県教育委員会としては、関係する県内市町村の旧石器発掘捏造問題関連遺跡の取り扱い連絡会議を開催いたしました。その取り扱いの基本方針をその際説明をいたしました。更に、既存の上高森遺跡に関する問題検討委員会の中に石器検討部会を設け、県内百四十八の捏造関連遺跡について石器検証作業を進めているところでございます。年度内に遺跡の取り扱いの最終決定をする方針であります。
 次に、東北旧石器文化研究所が主体で実施した発掘調査報告書の進捗状況についてであります。東北旧石器文化研究所が主体で実施した県内の遺跡は、上高森遺跡と中島遺跡の二つであります。上高森遺跡の調査報告書は昨年五月に刊行されており、中島山遺跡については、今年三月中には報告書が刊行できると報告を受けております。
 最後に、教育委員会の質や能力が問題ではないかという質問がありましたが、職員は最善を尽くしまして真っ正面から取り組んでおりますので、ひとつよろしく御理解を賜るようお願い申し上げたいと思います。
 以上でございます。
◆ 今野隆吉
 今、教育長の答弁で、最後、力強く、質の問題なんですが、藤村氏のメモをごらんになったんですか、教育長、今のような答弁していますが。その一点だけでいいです。メモを見て、今の答弁したのかどうか。
◎ 教育長(千葉眞弘)
 今野隆吉議員の再質問にお答え申し上げます。
 藤村氏のメモを全部見たということではございませんが、前の議会でもお話し申し上げましたとおり、戸沢委員長が事情聴取をした、そういう内容については見ております。
 以上です。
◆ 今野隆吉
 今のでは−−見てないんでしょう。要するに、藤村氏のメモというのは、黒く塗りつぶされているんですよ。何も今すべての答弁を、教育長、正しい答弁であったら、開示したらいいんじゃないですか。それを日本考古学協会に要請したらいかがですか。私が質問しているのは、文化庁や県や藤村氏が一体となっているんじゃないかという疑いで質問しているわけですよ。そうでないという答弁であるならば、藤村氏のメモを開示すべきですよ。日本考古学協会から、その辺やらないで、そして、国の方から調査をするなとか、あるいは考古学協会から藤村氏に接触するなとか、もう全く妨害されているのと違うんですか、これは。もうここまで来ているんですから、もう藤村氏にもお会いできるんでしょう、もう。それ、県独自にやる気はないんですか。
◎ 教育長(千葉眞弘)
 今野議員の再々質問にお答えを申し上げます。
 先ほど私が申し上げましたのは、今お話のとおり、黒塗りのしてある部分ですから、黒塗りの中の部分については、私は承知はしておりません。ただ、それは戸沢委員長との信頼関係の中で私たちがいただいたものですから、それについては再度努力はしたいと思いますけれども、我々が強制的にこれを聴取をして、それを出すかどうかということについては少し勉強させていただきたいというふうに思っておりますが、藤村氏本人についても、六月議会にも今野議員の方から再三にわたって接触をするようにというふうなことでお話がございました。そういうこともあって、それから前の理事長とか、それから知人とか家族とか、そういう、それから更に住所を調べるためにも、この前もお話し申し上げましたが、医療保険等の方から追跡をするとか、そういうことでいろいろ努力はしてございますが、なかなか接触できる状況にはないということで、それを、主治医からも、そういうふうなことだというふうなことを考古学会でも言われておりますので、更に努力はしたいと思いますけれども、そういう状況で、我々は今のところはなかなか難しいという状況でございます。
 以上です。

平成15年6月定例会 07月03日

◆六十二番(今野隆吉君)
 組織的捏造石器事件についてであります。
 藤村氏が関係した百四十八カ所の遺跡が捏造のため全滅いたしましたので、二月議会での知事及び教育長の答弁に対し、改めて疑問点をお伺いいたします。
 知事の答弁でありましたが、捏造事件の解明に当たっては、日本考古学協会や宮城県考古学協会などが主体となって、学術的な立場から上高森遺跡や座散乱木遺跡の検証発掘と石器の検証作業に取り組み、県としてもこれに対して協力してきたと答弁しておりますが、捏造に関与した人間が検証していたのでは真相は解決しないのであります。第三者検証をすべきではないかお伺いいたします。
 更に、発掘調査日誌などをもとにした内部調査や関係者からの事情聴取、文書照会による調査などを行い、総合的に勘案し、前期旧石器遺跡の捏造は藤村氏の単独行為によるものと考えておりますと答弁しましたが、今でも変わりはないのか、また、その後、藤村メモを見たのかお伺いいたします。
 なお、県では、現在百四十八の捏造関連遺跡の石器について検証作業を行っているところであり、日本考古学協会の戸沢調査委員長からは、これまで藤村本人に五回にわたって面談してきたので、自分が続けて調査をしていきたいのでとの強い要請があったので、面談の推移を見守るのがよいと判断したためと答弁しております。第三者機関を設置して再検証をすべきではないでしょうか。また、百四十八遺跡から出た捏造の石器はどのくらいの数があったのかお伺いいたします。
 十四年八月、国が設置した座散乱木遺跡に関する調査委員会において、元県職員は捏造を見抜けなかったことについては力不足であったということを認めたので、改めて説明を聞く必要はないと答弁していますが、見抜けなかったと謝って済む問題ではなく、国と県が組織ぐるみであるので、第三者機関で再検証すべきであると思いますが、いかがですか。
 日本考古学協会から平成十二年十二月の依頼に回答していたが、何らの見解が示されないまま一年後に再調査を依頼されたと答弁しております。第一回目は平成十二年十二月で、藤村氏が自白した上高森、総進不動坂の遺跡の発掘調査について関与の程度、捏造の有無について調査依頼であり、それに対し捏造の事実はないと回答しております。検証は、いつ、どのような方法で行ったのか。
 また、第二回目は一年後の十三年十二月に、上高森、総進不動坂にとどまらず、新たな事態に至ったので、東北歴史資料館、県教育委員会が発掘調査した遺跡について捏造の可能性の有無、真偽についての調査依頼に対して、具体的にどのような調査が必要なのか不明で対応に苦慮しているとか、埋蔵文化財保護行政と深くかかわるので文化庁と協議をしていただきたいと回答しているが、なぜ国に転嫁して責任を逃れ、どのような調査が必要なのかが不明だなど、文化庁からの圧力がひしひしと感じられます。この点、いかがですか、お伺いいたします。
 県が調査主体の馬場壇遺跡は内部調査を実施したとありますけれども、県職員の中に関係者がいる以上、外部の第三者による検証を実施すべきであると思います。いかがですか。
 日本考古学協会が総合的に検証作業を進めていた最中なので、具体的にどのような調査をすべきか理解することができなかったなどと、知事の答弁は無責任で、余りにも他人事ではないか、お伺いいたします。
 また、教育長は、座散乱木遺跡は民間の研究団体による発掘調査であり、その団体の責任になると答弁しておりますけれども、第三次調査は県予算で実施しております。県はその責任を追及すべきと思いますが、いかがですか。
 馬場壇A遺跡は県が主体であり、報告書は公的出版物であるが、刑法の公文書ではない、学会の評価を踏まえて報告書を取りまとめたものと理解していると答弁しておりますけれども、何ら評価されるものではなく、捏造遺跡問題の重要性をすりかえているだけと思いますが、いかがですか。
 元県職員や鎌田理事長は、座散乱木遺跡や馬場壇A遺跡で捏造はあり得ないと主張してきましたけれども、捏造発覚直後でまだ事実関係がはっきりしていない当時の状況判断としてはやむを得ないと答弁しておりますが、なぜ石器の石材分析や科学的検証をしないのか、お伺いいたします。
 昭和五十一年ごろ、元県職員の論文で仮説を立て、会員同士で議論し、共通認識で発掘に当たり、藤村氏はこうした仮説を逆手にとって捏造を行ったと答弁しておりますが、専門性の高い論文であり、だれかの説明がなければ素人の藤村氏には理解できないのではありませんか。いかがでしょうか、お伺いいたします。
 県教育委員会は、作為はあり得ない状態で出土した石器が数点あったことから捏造の疑いはないと結論づけ、当時、適切な検証方法がないため一般化していなかったが、平成十四年五月に、日本考古学協会が藤村氏の関与した遺跡の石器検証結果が公表され、検証方法が確立されたと答弁しておりますが、公表されなくても、ガジリや石材分析、脂肪酸分析などで検証できたのではないでしょうか。なぜ検証しなかったのかお伺いいたします。
 県教育委員会が主体で実施した馬場壇A遺跡、中峯C、高森遺跡について、藤村氏がどの程度これらの遺跡の発掘調査にかかわったのかを把握するため、平成十二年十一月、内部調査を実施したが、作為のあり得ない状態で発見された石器が数点あったので、遺跡の捏造まで疑うことができなかったと答弁しておりますが、すべてが捏造とわかった今日、どういう方法で当時石器を検証したのかお伺いいたします。
 県教育委員会は、旧石器発掘捏造問題関連遺跡の取扱連絡会議で、関係する県内市町村教育委員会に対し、どのような取り扱いの基本方針を説明されましたかお伺いいたします。仙台市教育委員会を初め市町村教育委員会では、県の説明に対して、余りにも無責任で隠そうとしているので、組織的捏造石器事件だと批判されているのであります。
 戸沢委員長は、藤村氏本人がはっきりさせようと書いた藤村メモを黒く塗りつぶした点、人権問題であり、早急に黒塗り部分を開示するよう、再度お願いすべきであります。強制的に聴取して、それを出すかは少し勉強させていただきたいという回答でしたが、いかがなものですかお伺いいたします。
 捏造に使用した一万年前の土器は、貴重な芹沢長介コレクションとして東北大学で保管していた土器であり、盗むか、関係者が持ち出す以外、入手困難であります。捏造石器はどこから持ち込まれたのか、捏造石器の出場所を確認して初めてこの事件は解決したことになるのであります。真実は、電子顕微鏡による脂肪酸分析や胎土分析、石材分析で判明するのに、なぜ取り組もうとしないのかお伺いいたします。
 藤村氏との面談交渉は何回行ったのか。主治医立ち会いのもとでやればよろしいのではないかと思いますが、いかがですか。
 馬場壇遺跡発掘調査を指導する立場の県文化財保護課の職員が報告書作成によって捏造に加担したと思うが、その責任はどうか。また、藤村氏の手の脂と見られる脂肪酸の付着はどうか。更に、第三者の検証をすべきと思いますが、いかがですか。
 藤村氏は、七曲遺跡の崖壁から出土した石器は宮城の石器に似ていると言っておりますが、第三者検証による石材分析を行うべきと思いますが、いかがですか。
◎知事(浅野史郎君)
 次に、大綱二点目、石器捏造についての御質問に順次お答えをいたします。
 まず、捏造事件の解明に当たっては、第三者による検証をすべきだという質問でございます。議員御指摘の上高森、座散乱木の両遺跡については民間団体が発掘し、その後、学会において高い評価が認められた遺跡であります。このように学会において高い評価を認めてきた遺跡の捏造検証については、基本的には学会において検証がなされることが専門性や客観性から妥当な対応であると考えます。県といたしましては、このような考え方に立ち、第三者的立場に立つ者も含む日本考古学協会や宮城県考古学会が主体となり、県も協力して検証作業を実施したことは適切であったと考えております。
 なお、上高森、座散乱木遺跡を含む県内百四十八の藤村氏関与遺跡に係る石器については、県の検証の結果、大部分が学術的な資料として扱うことは不適当となっておりますので、改めて第三者による検証調査を行う考えはございません。
 次に、前期旧石器遺跡の捏造は、藤村氏の単独行為によると考えていると答弁したが、今でも変わりはないのかという質問についてであります。
 東北旧石器文化研究所理事長や理事からの事情聴取、国の「史跡座散乱木遺跡に関する調査委員会」での発掘関係者からの意見聴取及び日本考古学協会の報告、こういったものから見て、今でも藤村氏の単独行為によるものと考えております。
 また、その後、藤村メモを見たかとの御質問でありますが、見ました。メモの黒塗りされている部分について、戸沢元委員長に記載内容を問い合わせているところでありますが、当人のプライバシーにかかわる問題であるということを理由に断られております。
 次に、百四十八の捏造関連遺跡の石器について、第三者機関を設置して再検証すべきではないかとの御質問であります。
 これらの遺跡の石器については、昨年五月、日本考古学協会により石器検証の方法が確立されたことを受け、その方法にのっとり、既に検証作業を完了しているところであります。検証に当たっては、日本考古学協会及び宮城県考古学会の協力を得て、客観性の確保に努めております。
 また、百四十八遺跡から出た石器の数は幾らあったのかとの質問でありますが、石器の総数はおよそ二千八百点、このうち県が検証対象としたのは、他機関による検証済みの石器を除いて約千四百点であります。
 次に、座散乱木遺跡を第三者機関で再検証すべきであるとの御質問であります。
 座散乱木遺跡に関する調査研究委員会は、学識経験者や国の文化審議会委員などで構成され、高度な専門性を備えた第三者の委員会であります。このような委員会が検証した座散乱木遺跡について更なる再検証を行う必要はないものと考えております。
 なお、元県職員は、頭から藤村氏の行為を信じてしまい、身近にいた発掘現場で捏造を見抜けなかったということを反省しております。これは、当時としてはやむを得なかったことと考えております。
 次に、第一回目の検証は、いつ、どのような方法で行ったのかという御質問であります。
 捏造発覚直後の平成十二年十一月中旬から、中峯C遺跡、馬場壇A遺跡、高森遺跡について、発掘当時作成した記録をもとに、藤村氏の調査に対する関与の程度を明らかにするための調査を行い、その内容を平成十三年一月十二日に協会あて回答したものであります。
 また、平成十三年十二月の二回目の照会で、その対応に苦慮したと回答したことについては、依頼の調査対象遺跡は前回と全く同じであり、依頼内容についても、どのような調査が必要なのか、その趣旨を見出し得なかったため、そのように回答したものであります。
 更に、その照会に当たり、文化庁からの圧力が感じられるとのことでありますが、日本考古学協会との連絡に当たって、文化庁を介して行うこととしたことについては、捏造問題が複数の自治体に関係する広域的な問題を含むため、無用の混乱を避ける目的で国が一元化を図ったものでありまして、県はその指導に従ったということであります。
 次に、馬場壇A遺跡について、外部の第三者による検証を実施すべきではないかとの質問であります。
 馬場壇A遺跡の検証については、本来なら県みずから率先してやるべきところでありますが、日本考古学協会と宮城県考古学会から、ぜひ検証させてほしいとの申し入れがあったために、平成十四年九月から共同で石器検証を実施したところであります。既に、このように客観的な検証を実施したところでありますので、更に外部の第三者による検証を実施する必要はないものと考えております。
 次に、平成十三年十二月の日本考古学協会からの二回目の照会に際し、具体的にどのような調査をすべきか理解できなかったなどの答弁は無責任で他人事だと思うがどうかとの質問にお答えをいたします。
 これは先ほども述べましたように、日本考古学協会からの第一回目と第二回目の依頼の対象遺跡並びに照会内容が全く同じだったということでありまして、そのことから、第一回目で既に回答しており、また当時、更なる検証作業を県教育委員会も協力して日本考古学協会が実施していた最中であったということから、照会内容の真意をはかりかねたということでございます。このため、このことをさきの議会で率直にお話し申し上げたものでございまして、決して他人事と考えて無責任な答弁をしたものではございません。
 私からは、以上でございまして、石器捏造問題については、教育長からこの後答弁がございます。
◎教育長(白石晃君)
 今野隆吉議員の質問に順次お答え申し上げたいと思います。
 まず、座散乱木遺跡の第三次調査を県予算で実施しているので、県はその責任を追及すべきと思うがどうかという御質問でございます。この発掘調査は、石器文化懇話会が実施したものでございまして、県費で調査費を支出したものではございません。
 次に、馬場壇A遺跡の報告書は公的出版物で、学会の評価を踏まえて取りまとめたとの答弁は問題の重要性をすりかえているとの質問についてでございます。
 この報告書につきましては、学会の評価を踏まえたものであるとはいえ、結果的には事実と異なる歴史認識を広めまして、各方面に混乱を招いたことについての責任は痛感してございます。更に、馬場壇A遺跡と同様、県教育委員会が主体となって発掘調査を実施いたしました中峯C遺跡、高森遺跡等の報告書の取り扱いについては、十分留意するよう周知を図ったところでございます。
 次に、座散乱木遺跡や馬場壇A遺跡でなぜ石器の石材分析や科学的検証をしないのかということの御質問でございます。
 石器の科学的検証といたしましては、いろいろ方法論があるわけでございますけれども、石材分析、それから脂肪酸分析などがございます。このうち石材分析につきましては、電子顕微鏡で組成を調べる方法があります。これは石材の生産地を推定して、出土地、これは言葉をかえて言いますと発見場所ということになると思いますけれども、出土地との関係を解明する研究には有効であります。しかし、その石材が生産地から、いつ、だれによって出土地に運ばれたかまでは明らかにできませんので、捏造の有無の解明には限界があるものと考えてございます。脂肪酸分析につきましては、平成十三年五月の日本考古学協会における研究発表で、脂肪酸分析の方法について重大な疑義があるということにされてございます。また、土器の胎土分析につきましても、石材分析と同様の理由から、検証方法として有効な成果をもたらすものではないというふうに考えておるところであります。
 なお、日本考古学協会等による石器検証調査によりまして、これら疑問のある石器について捏造であることが現在判明しておりますことから、石材分析などの方法による調査は必要ないというふうに考えておるところでございます。
 次に、専門性の高い論文であり、だれかの説明がなければ素人の藤村氏には理解できなかったのではないかという御質問でございます。
 さまざまな職業を持つ人々で組織された石器文化懇話会、この談話会は昭和五十年に設立されておりまして、藤村氏も設立当時から参画してございます。この談話会は毎月一回から二回、遺跡踏査や石器の勉強会を開いて議論していたと聞いておりますので、藤村氏もそのような機会を通じて、旧石器に対しての専門的な知識を有するに至ったものではないかというふうに考えております。
 次に、ガジリや石材分析、脂肪酸分析などで捏造の有無を検証できるのに、なぜしなかったのかという御質問についてでございます。
 平成十二年の十二月の二十五日に、日本考古学協会から委託を受けた捏造発覚直後には、当然、県教育委員会といたしましても、石器の出土状況を中心に当時の関係者からの聞き取り調査や図面、発掘調査日誌などの内部調査を実施したところでございます。しかし、石器の検証につきましては、現在のような方法がまだ確立されるまでには至っておりませんでしたので、石器自体の検証は行わなかったものでございます。県教育委員会といたしましては、平成十四年の五月に、日本考古学協会により石器検証方法が公表されたのを受けまして、県内の藤村氏が関与したすべての未検証ーー検証していない石器を対象にガジリの有無や鉄分の付着状況などにつきまして綿密な検証調査を行ったというところでございます。
 次に、馬場壇A遺跡、中峯C遺跡、高森遺跡について、いつ、どういう方法で石器を検証したのかということでの御質問でございます。
 内部調査は、捏造発覚直後の平成十二年の十一月から十二月にかけて行ってございます。発掘調査時に作成した調査日誌、当時の発掘調査に参加した職員の聞き取りを行った結果、藤村氏の作為があり得ない状況での石器の出土があったことから、遺跡の捏造まで疑うことができなかったというものでございます。
 なお、先ほど申し上げましたとおり、この時点では現在のような検証方法がまだ確立されるまでには至っておりませんでしたので、石器の検証は実施してございません。
 次に、県は旧石器発掘捏造問題関連遺跡の取り扱い連絡会議で、関係する県内市町村に対し、どのような取り扱い基本方針を説明したのかということでの御質問でございます。
 この会議におきましては、藤村氏が遺跡発見や現地踏査、発掘調査などに関与した県内のすべての遺跡を対象とするということ、それから、ほかの機関が検証済みのものを除くすべての石器について、平成十四年度内を目途に石器検証を実施すること、こういったことなどを骨子とした基本方針を説明したところでございます。
 次に、戸沢元委員長に藤村メモの黒塗り部分を早急に開示するよう再度要請すべきだと思うがどうかということの御質問でございます。
 この点につきましては、県教育委員会といたしましても、事実確認の観点から必要があるというふうに考えてございまして、戸沢元委員長にこれまで何度か要請しておるところでございます。しかし、元委員長からは、藤村氏の症状が推察されかねないなど、プライバシーにかかわる問題であることから断られているという状況でございます。
 また、強制的に聴取して、それを出すかは少し勉強させていただくとの答弁はどういうことなのかということでの質問でございます。
 これは主治医の了解があれば、藤村氏本人の意思にかかわらず面会し、黒塗りの部分の内容及び意味を聴取した上で、その部分を開示するべきかどうか、それを検討させていただきたいという意味でございます。
 次に、捏造に使用した土器は、盗むか関係者が持ち出す以外入手困難ではないのかということについてでございますけれども、県教育委員会といたしましては、東北大学から土器が盗まれたり持ち出されたという情報は聞いてございません。
 また、真実は脂肪酸分析、胎土分析、石材分析で判明するのに、なぜ取り組まないのかということでございますけれども、先ほど申し上げましたことと重複すると思いますけれども、生産地を明らかにするのに有効な石材分析や胎土分析、また、使用対象を研究する脂肪酸分析は、ともに捏造を解明するには有効な成果をもたらすものではないというふうに考えておるところでございます。
 次に、藤村氏との面接交渉は何回行ったのかという御質問であります。
 これまでに三度、関係者に面談の仲介を申し入れております。その結果、先般、これは六月の下旬になりますけれども、六月下旬になりまして、やっと関係者を通じて主治医に打診することができましたが、治療上の配慮、それから医師法上の守秘義務などの理由によりまして、面談は拒否されてございます。主治医立ち会いでも不可能ということでございます。
 次に、馬場壇遺跡発掘調査で、県文化財保護課の職員が報告書作成によって捏造に加担したと思うが、その責任はどうかという質問についてでございます。
 馬場壇A遺跡の第二次から第五次までの調査は、東北歴史資料館が主体となって実施したものでございます。調査を担当した職員が発掘現場で捏造を見抜くことができず、結果的に事実とは異なる報告書を作成してしまったものではありますけれども、これをもって捏造に加担したものとすることは難しいというふうに考えております。
 また、藤村氏の手の脂と見られる脂肪酸の付着はどうかという御質問についてであります。馬場壇A遺跡における石器に残された脂肪酸分析でナウマンゾウの脂肪酸が検出されたというものであります。しかしながら、平成十三年五月の日本考古学協会における研究発表で、石器に残された脂肪酸は前期旧石器時代のナウマンゾウではなく、新しい人間の脂肪酸である可能性が指摘され、脂肪酸分析方法自体についても重大な疑義が出されておりますので、今後の学会の動向を注意深く見守ってまいりたいというふうに考えてございます。
 最後でございますけれども、栃木県七曲遺跡のがけ面から出土した石器を第三者検証により石材分析をすべきと思うがどうかという御質問についてであります。
 基本的には、あくまでも調査主体であるーーこの場合は那須町教育委員会でございますけれども、那須町教育委員会が責任をもって石材分析を行うかどうか、それを判断すべきものというふうに考えておるところでございます。
 以上でございます。
◆六十二番(今野隆吉君)
 それから、考古学の関係ですけれども、藤村氏のメモ、これはプライバシーだからというのは、それはうそでありまして、これは相手の名前だけきり書いていない部分のことを私言っているんですよ。全部、黒塗りの部分を開示しなさいと言っているのでないので、その辺を、やっぱりちゃんとやる気がないんじゃないですかね。この辺をよく、やっぱり最後にははっきりとこの事件を決着させるためには、そこまで積極的に調査すべきではないでしょうか。
 それから、知事の答弁の中にもあったんですけれども、日本考古学協会から平成十二年、一回目の調査依頼、それから二回目は十三年の十二月の調査依頼、ともに同じものだという答弁がありました。これはやっぱり知事、原文を見てください。これは知事の答弁要旨をどなたかが書いているんじゃないですか。捏造に関係者が書いているのと違うのかな。それをちゃんと精査していただかないと、こういう知事の答弁になってくるわけですよ。ですから、ちゃんとした、県庁内部にそれなら関係のない第三者機関でこれを調査すべきです。当時、現に現場に、発掘調査に参加していた県庁の職員が今現在いるわけですから、彼らに再検証の方法とか、あるいはこういうような本会議での一般質問に対する知事の答弁を製作させたのでは、それこそ捏造回答になってしまうわけでありまして、この辺ちゃんとしっかりと、今、全国でこの問題が一件落着したものですから、かなりの考古学者がこれに対して注目しておりまして、また彼らもこの問題には疑義をどんどんどんどん今現在出してきております。ですから、宮城県が出資、県費を使った馬場壇遺跡なんかは、特に県が発掘調査した遺跡ですから、これだけでもはっきりと、やはり第三者機関を設けてでも再検証すべきと思いますが、お願いいたします。
◎知事(浅野史郎君)
 石器捏造問題について、私、答弁が捏造ではないかというふうに言われましたが、これは改めてまた、教育長からもう少し再度答弁をしていただきます。
◎教育長(白石晃君)
 今野隆吉議員の再質問にお答え申し上げたいと思います。
 協会からの第一回目の照会と、それから第二回目の照会で、知事の方から依頼の調査対象遺跡は前回と全く同じであるということで答弁させていただいたわけでございますけれども、これにつきましては、私は現物を見てございます。それで、第一回目につきましては、この遺跡の対象は、具体的に申し上げますと、馬場壇A遺跡、それから大原B遺跡、それから中峯C遺跡、それから高森遺跡ということになってございます。そして、その一年後でございますけれども、これにつきましては、これが藤村氏のいわば告白があったことが契機になりまして、第二回目の照会ということになったというふうには理解してございますけれども、この際の照会の仕方、これは若干変わっておりますけれども、これは捏造告白があったものとして馬場壇A遺跡、それから捏造告白はないが発掘調査に関与したものということで中峯C遺跡、馬場壇A遺跡、それから大原B遺跡、高森遺跡ということで対象になっているということでありますので、これを字面から見れば対象が同じだというふうに判断したものでございます。
 以上です。
◆六十二番(今野隆吉君)
 それから、藤村氏に面談ができないというのは、それ、やっていないんでしょう。交渉をだれもやっていないんじゃないですかね。これはもう去年、おととしのことですから、戸沢委員長さんが五回も面談しているわけで、それでもって病気のために会えないというのは、交渉をしていないんですよ、それ。交渉して、ちゃんとして、本人から聞いていただければはっきりとわかるわけでして、こんないつまでも隠そう、隠そう、積極的に取り組んでやろうという姿勢が見えないんですね。そこに問題があるんですよ。県の現職、県の中に今現在、県の中にです、県職員の中に問題があります。だから、ちゃんとできないんです。ですから、県庁内部でもいいですから、関係のない別の部署で第三者機関を設けて、この問題を早く解決してください。そうすれば、日本考古学協会も、日本の考古学も、全体がこれでもって反省して、新たな形で考古学は進むわけでありまして、このままうやむやの中でおったら、日本の考古学はもう将来も、また夢も希望も何もなくなります。ぜひ、これは責任があるんですから、宮城県は、宮城県から発信したわけですから、捏造は。ですから、特段のそういう第三者機関による調査をお願いいたしますが、御所見のほどをお伺いいたします。
◎知事(浅野史郎君)
 捏造問題については、また教育長からお答えします。
◎教育長(白石晃君)
 今野隆吉議員の再々質問にお答え申し上げたいと思います。
 藤村氏との面接交渉、これにつきましては、先ほど答弁したとおりでございますけれども、いずれ我々としても面接は必要だというふうな認識が当然ございまして、三度申し入れをしたというところでございます。具体的に申し上げれば、昨年の夏、それから、ことしになってから二回ほどやってございます。それで、先ほど答弁したとおり、ようやっと主治医に打診することができたという状況であります。それで、主治医を通して藤村氏との面談を図るということになりますけれども、主治医の方からは、やはり治療上の配慮、それから医師法上の守秘義務というところの理由によりまして、主治医の方から面談が拒否されたという状況になってございます。したがいまして、主治医立ち会いでも不可能ということでありますので、我々としては、まだそのルートをもう少し開拓するということかなというふうに考えておりますけれども、いずれ現状としては、そういう現状になっておるということでございます。
 それから、捏造の関係で、教育委員会の中にも内部の人間がいるというようなお話で、第三者の機関が必要ではないだろうかというようなお話でありますけれども、我々の認識としましては、ことしの三月で、先ほどお話ししたとおり、百四十八の藤村氏関与の遺跡に係る石器については、これは検証したということで考えてございます。結果的には、大部分が学術的な資料ということで扱うことは不適当ということになりまして、結果的には十九しか残らなかったということでございますけれども、いずれ県教育委員会としましては、いろいろなほかの機関の検証もございますけれども、ほかの機関の検証も含めて検証をしたということで考えておりますので、改めて第三者による検証調査を行うという考え方はございません。

平成15年9月定例会 10月02日

◆六十二番(今野隆吉君)
 次に、旧石器捏造問題と告発について。
 次に、旧石器捏造問題については、元宮崎公立大学教授で、東アジアの古代文化を考える九州の会会長奥野正男氏が、インターネットで宮城県県議会の議事録から私の質問と知事及び教育長の答弁を見て、真相を解明しないまま時効にすべきではないとみずから告発人になったのであります。奥野氏は、名前も地位も何も要らぬ。定年退職した今、失うものがないとのことで、考古学者の信頼回復のためにみずから立ち上がったのであります。若い考古学者は、学会に対して反論すると干されて仕事ができなくなるため、奥野氏が告発人になったのであります。刑事訴訟法第二百三十九条二項では、「官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料されるときは、告発をしなければならない」とありますが、なぜ告発をしないのか、お伺いいたします。
 次に、県が発掘調査した四遺跡について伺います。
 一、昭和五十五年、宮城県教育委員会は、中峯A、B、Cの三遺跡を、企業局から執行委任を受け六百二万円で緊急調査をし、三十万年前の遺跡と発表しました。二、昭和五十九年、東北歴史資料館は、馬場壇A遺跡を国庫補助金四百万円と県支出金一千六百万円の合計二千万円を費やして学術調査をし、二十万年前の遺跡であると発表しました。
 三、平成元年、東北歴史資料館は、大原B遺跡を、国庫補助金四百万円と県支出金四百万円の合計八百万円を費やして学術調査をしているのであります。四、平成三年、宮城県教育委員会は、高森遺跡を国庫補助金八百万円と県支出金八百万円の合計千六百万円で学術調査をし、第二次調査では日本最古かと発表、第三次調査では五十万年前の遺跡と発表したのであります。
 知事は、これら捏造の事実が明らかになっている遺跡に対して、県費を支出したことへの説明責任を十分に果たしていない理由は何なのか、お伺いいたします。
 また、県費を費やした結果、好ましい結果が得られませんでした。その結果責任はどう感じているのか、お伺いいたします。
 県は、捏造問題を学術研究上の問題としてごまかしているが、事実は埋蔵文化財行政上の発掘現場という公の場で長年にわたって仕組まれた作為なのであります。いかがですか、お伺いいたします。
 更に、捏造石器で繰り返された県職員の事実上の抜き取り、発掘過程の写真の皆無、虚偽の報告書作成など作為への関与に違法性はないのか、お伺いいたします。
 担当した文化財保護課や東北歴史資料館は専門家であり、その責任は重大であります。職員処分の甘さに批判があります。それぞれの処分と、その理由をお伺いいたします。
 四月二十二日、県教育委員会が発表した内容は、旧石器の遺跡として取り扱えないことになった遺跡の中には、当教育委員会が主体となって発掘調査した中峯C遺跡、馬場壇A、高森遺跡などが含まれております。みずから実施した発掘調査捏造を見抜かず、誤った情報によって刊行したとあるが、発掘調査報告書に発掘経過を示す写真の添付がされているのかいないのか、お伺いいたします。
 突然の訪問にもかかわらず、私は藤村氏が入院している病院長と面会することができました。病院長は、いるとかいないとかは医師法違反になるので話せないと。また、医師法違反になるので何人にも言えないと話していました。
 県は、藤村氏に会って事実を聞こうとしないのはなぜなのか。
◎知事(浅野史郎君)
 石器捏造と告発問題については、教育長から御答弁申し上げます。
◎教育長(白石晃君)
 石器捏造と告発問題に関連して御質問がございました。順次お答え申し上げたいと思います。
 まず、県はなぜ告発をしないのかという質問がございました。
 東北旧石器文化研究所の前副理事長の旧石器捏造に関しての告発につきましては、県といたしましても、偽計業務妨害罪であるとか、あるいは詐欺罪について検討してございます。しかしながら、偽計業務妨害罪や財物の搾取など詐欺罪として告訴・告発するに際しての事実関係について確証が得られなかったことによりまして、告訴・告発には至らなかったというものでございます。
 次に、県が発掘調査した遺跡について、県費を支出した説明責任を十分果たしていない理由は何かということでございます。
 県が発掘調査を行った前副理事長関与遺跡のうち、中峯C遺跡は、県企業局からの執行委任による土木工事に伴う発掘調査、馬場壇A遺跡、大原B遺跡、高森遺跡の三遺跡につきましては、東北歴史資料館が行う調査研究事業の発掘調査として県費を支出したものでございます。これにつきましては結果的には旧石器時代としての実態はなかったものでありますが、そうした事実を知り得なかった当時におきましては、それらの支出は適正であったというふうに考えてございます。
 なお、捏造発覚後の検証調査によりまして、これらの遺跡から出土した石器も捏造された可能性はあることが判明した後におきましては、学校教育や生涯学習活動に配慮いたしまして、調査で明らかになった事実関係や適正を欠く歴史記述などについて十分留意するよう市町村教育委員会や県内の学校等に通知し、周知徹底を図ってまいったところでございます。
 次に、県は捏造問題を学術研究所の問題としているが、事実は埋蔵文化財行政上の発掘現場という公の場で長年にわたって仕組まれた作為であるとの御指摘にお答え申し上げたいと思います。
 埋蔵文化財保護行政につきましては本来的に学会の見解を尊重することで成り立つものというふうに考えてございまして、県といたしましては、捏造問題は学問研究の世界で生じたことでございまして、考古学界の内部で問題の解明、解決の方策が図られることが望ましいと考えて、学界の動向を見守る姿勢をとってきたものであります。捏造関連遺跡の発掘調査につきましては、学術調査も含めて、まさに埋蔵文化財保護行政にかかわるものでありますが、県といたしましては、捏造は藤村氏の単独による行為と認識しておりまして、御指摘のような、埋蔵文化財行政上のといいますか、県職員による発掘現場での長年にわたり仕組まれた作為があったとは考えてございません。
 次に、捏造遺跡で繰り返された県職員による事実上の抜き取り、発掘過程の写真の皆無、虚偽の報告書作成などの関与に違法性はないのかということでありますが、これは我々としては違法性がないものとして認識しておりますけれども、その理由として若干挙げてみたいと思いますが、一つには、藤村氏が埋め込んだ捏造石器を、藤村氏の指示に従い真正な石器として取り上げてしまったものであること。二つには、発掘調査において、必ずしもすべての発掘経過を写真で記録するわけではないということ。それから三番目としましては、報告書は当時の考古学界の評価を踏まえて取りまとめたものでございまして、結果的には誤った内容のものではありますが、当時の状況としてはやむを得ないというものだったことなどなどから、県職員の関与には違法性のある事実はないものというふうに認識してございます。
 次に、職員の処分内容と、その理由についてでございます。
 今回の処分は、ことしの五月の十六日に、県が調査主体となった遺跡の発掘、整理、分析、調査報告書の執筆編集に直接携わった職員八名に対しまして、口頭による厳重注意を行いました。また、これらの職員を管理監督する立場にあった一名に対し、文書による厳重注意を行ったものでございます。処分の理由でございますけれども、結果的に誤った情報に基づき各方面に混乱を招いたことから、今後再びこのようなことがないよう関係職員に強く注意を促したものでございます。
 次に、発掘調査報告書に発掘経過を示す写真の添付はなかったのではないかという御質問でございます。
 県教育委員会が発掘調査を実施した前副理事長関与の遺跡につきましては、中峯C遺跡、馬場壇A遺跡、大原B遺跡、高森遺跡の四遺跡でございまして、それぞれ報告書を刊行しており、いずれの報告書にも遺跡の発掘状況を示す写真は掲載してございます。しかしながら発掘経過を詳細に示す写真につきましては、捏造事件が起きるまでは全国的に見ても、報告書に議員御指摘のような写真を掲載した事例はほとんどないのではないかというふうに考えてございます。
 次に、県が藤村氏に会って真実を聞こうとしないのはなぜかという御質問でございます。
 県教育委員会といたしましても、事実確認の観点から、本人に対する面談は必要と考えてございます。これまでに三度、関係者に面談の仲介を申し入れてございます。その結果、主治医からは、治療上の配慮及び医師法上の守秘義務などの理由によりまして、面談は拒否されているところでございますけれども、今後とも面談の実現に向け努力していきたいというふうに考えてございます。
◆六十二番(今野隆吉君)
 あとは、捏造石器については、写真もない。発掘調査したら、そこから出てくればその石器にその土質が付着しているのに、それですらチェックしない。これは、一般に土地開発する場合、そのときに緊急調査をやるわけですけれども、このときの義務の中には、写真あるいはその経過等々がはっきりするものを記録として残すようになっているんじゃないかと思うんですが、学術調査の場合はその必要はないんでしょうか。
◎教育長(白石晃君)
 今野隆吉議員の再質問にお答え申し上げます。
 発掘調査報告書に発掘計画書の写真の添付の関係でありますけれども、これは先ほど御答弁申し上げたとおり、報告書の関係ではいずれの報告書にも遺跡の発掘状況を示す写真は掲載しております。しかしながら、詳細に示す写真につきましては、それは掲載はしてございませんという答弁をしましたんですが、この写真の掲載については学術調査上どういう規定があるんだと、決まりがあるのかというようなお話でございますけれども、これは特別、決まりはないというふうに理解しております。発掘調査者が必要に応じて報告書に添付するということというふうに理解してございます。

平成15年10月文教警察委員会 10月07日

◆(柏佑整委員)
 10月3日の新聞各紙に、旧石器発掘捏造行為に対しまして、偽計業務妨害ということで、仙台地方検察庁が1日付で告発状を受理したということが報道されておりました。受理したことに対して、教育長はどのような見解をお持ちかお伺いします。
◎(白石教育長)
 本会議でもいろいろ議論になったところでありますけれども、我々としても、刑事訴訟法からいけば、公務員は告訴しなければならないという規定がありますので、その規定を受けてどうするかという議論はいたしました。考えられる内容としては、詐欺罪と偽計業務妨害罪の二つが考えられたわけですけれども、それぞれに検討させていただきました。
 県として告発するわけですから、ある程度きちっとした確証がないと難しいだろうという判断のもとにいろいろ成立要件を検討させていただいたわけですけれども、詐欺罪にしても要件を立証をするのは難しい。それから偽計業務妨害罪についても、業務の内容について、これが県の業務ということでの解釈が非常に難しいとかいろいろな事情がありまして、結局は告訴までには至らなかったという経緯があります。
 今回は、民間の方が偽計業務妨害罪として告発したということでありますので、それについては我々としては今回の捏造問題についてのおさめ方の一つだろうと思っております。したがいまして、受理されたわけでございますので、これから起訴とかあるいは裁判とかいろいろな過程を踏んでいくわけですから、ある程度その中で旧石器捏造問題についていろいろな点が明らかになるのだろうと思っておりますので、その点では注目していきたいと思っています。
◆(柏佑整委員)
 新聞によれば、偽計業務妨害罪の容疑を仙台地方検察庁としてはしっかりと視野に入れて取り調べを進めていくというふうに載っているわけです。偽計業務妨害というのは、虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて人の業務を妨害する行為となっています。既にこのこと自体が、教科書の回収などにも発展するわけです。あるいは築館小学校を見ていても、そのことによっていろいろな迷惑がかかっている。そういった事実もたくさん出てきております。しかも県費と国費合わせて6,000何百万円を、昭和59年度から予算を出しているわけです。それだけ県も迷惑をこうむられたということは事実なわけです。それからさっき刑事訴訟法第239条のことを教育長はおっしゃっていましたが、確かに、官吏または公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは告発をしなければならないとなっており、それに条文を合わせれば、詐欺罪は該当しないというお話だったのですけれども、偽計業務妨害罪は当てはまるような気がするわけです。そういった点はどうなのですか。
◎(白石教育長)
 今回、民間の方が告訴したものは県に対してということではなくて、これまでも東北旧石器文化研究会の業務に対していろいろな間違ったことをやった働きかけをしたということでの部分ということがあります。先ほどの話に戻りますけれども、罪状として偽計業務妨害罪というところに行けば、これは東北旧石器文化研究会の業務実態、その辺についての把握が非常に難しいということがありまして、告訴に至るまでにはいかなかった。それで、刑事訴訟法の告訴の話についても、いろいろ解釈がありまして、告訴するかどうかについては、特に公共団体がやるような場合は、いろいろな状況を判断した上でやりなさいというところがあります。こういったこともありまして今回至らなかったということであります。
 これからもし裁判にかかるとすれば、いろいろな事実が出てくるでしょうから、出てきた事実によっては、県教育委員会としての対応も必要に応じて出てくるのではと思っております。それがどういうものかというのは今は全くわかりませんけれども、裁判の過程で出てくるものを注目しながら、県教育委員会として対応していかざるを得ないだろうと考えております。
◆(柏佑整委員)
 推移を見守りながら対応していくことになるということでよろしいかと思いますが、発掘調査に当たって国費と県費を合わせて6,400万円を出しているわけですけれども、それに対して捏造というでたらめをされたわけですから、この6,400万円の2分の1の3,200万円を県は出しています。その損害賠償ということは考えられないのですか。
◎(白石教育長)
 損害賠償についても、庁内などで大分議論はいたしました。これについても例えば民法上の話であるとか、そういった法律的な話としてやってきたわけですけれども、結局は不法行為ということで損害賠償をいただくのは難しいだろうという判断で結論を出していまして、それについては今のところは考えてございません。
 いずれ裁判の過程でどういう形で出てくるのかわかりませんけれども、それが損害賠償につながるような理屈が出てくるような形であれば、そのときに対応することになると考えております。
◆(柏佑整委員)
 そうすると、あくまでもこのたび受理された偽計業務妨害罪について、裁判あるいは起訴がどのような方向になっていくか、それを見詰めながら対応していくということでよろしいのですか。
◎(白石教育長)
 結論から言えばそうなりますけれども、その裁判の過程で例えば県教育委員会とのかかわり方がどうだったのかとか、その辺は本当に明らかになるとは思っていますが、あくまでも公費を出したことについては事実ですから、これについて裁判の過程でどういうことで解釈されるかまだ全くわかりませんので、その点を見ながらということになろうかと考えております。

次:宮城県議会会議録に見る捏造問題(2004)
このページへの御意見は早傘(HFC03726@nifty.com)までお寄せください。