縮刷版99年9月下旬号


【9月30日】 昨日開かれた「電撃ゲーム3大賞」のパーティーにステルスみたく潜り込んで、場内にズボンと立ってた中里融司さんや出渕裕さんや広井王子さんなんかを遠巻きにして見て帰りがけにもらった三雲岳斗さんの買ってなかった「コールド・ゲヘナ」(メディアワークス、490円)を読む。特殊な先天的能力を持った騎士にモーターヘッドにマイトにドラゴン、ってそれぞれに言い方は違うんだけど「ファイブスター物語」を読んだ人だとどーしても思い浮かべてしまうシチュエーションがあって影響を受けていよーと偶然の一致だろーと登場した年代が後だった以上はある程度の比較を覚悟しなくちゃいけないけれど、それをおいても謎めいた設定に圧倒的な戦闘シーンにドラゴンのパワーを描く筆致の軽やかさは、これがデビュー作とは思えない出来て2月の刊行時に買ってなかったことをちょっと悔やむ。確かもー2巻も出ていたよーで1巻で世界の成り立ちまでをもドバンとバラしてしまってどんな展開になっているのかに興味津々、なんで明日にでも買って読み直してみよー。幸運な出会いに謝々。

 川岡大次郎くんは何でも90年代の高柳良一クンと今急に思いついて名付けた「タイムリープ」で耳の巨大な佐藤藍子さんを相手にクソ真面目な少年を演じた人らしーとの連絡を頂いたり「グラウウェンの鳥篭」の会見に背広姿で出ていた玉舎サンが実はカッターシャツ(死語)の下にコスパ謹製エルガイムTシャツ(どんなだよ?)を着ていたとの連絡を頂いたりして昼のまったりとした時間を過ごしていたら会社のテレビに東海村のウランをおにぎりか何かに加工する工場で事故が発生したとのニュース速報が。いったい何が起こったかとテレビをながめていても、2人が被曝したとかってな断片的な報道しかなくまあいつものちょっとした事故だろーと思って適当に仕事をしていたら、区切りの時間に放映されるニュースでだんだんと酷い状態になっていることが解って来てテレビにしばし釘付けとなる。

 文系なんでよくは知らないけれど時事通信とかのニュースなんかを見たりNHKのニュースを見たりしていたら、何でもウランをどーにかする場所で臨界状態になって青い光が見えて爆発したとかで、それって通常ぎっしりと防御された原子炉の中で起こる奴じゃんどーなってんだとブルりながら更にニュースを見ていると、被曝した2人は吐き気に下痢が続いててこりゃ相当にヤバい状況と判明し、さらに工場内からは中性子が今でも出ていて臨界状態が続いている可能性が高いとの指摘があって、まんま放っておくと茨城県の隣りの千葉県が果たして大丈夫なんだろーかってな恐怖がジワンジワンと沸いて来る、ってその頃は茨城県は全域がペケになってる時なんだろーけど。鹿島アントラーズはナビスコカップ大丈夫か?

 さすがに大変と思ったか下らない内閣改造なんかを吹っ飛ばして明日は対策に一所懸命務めるってなことを官房長官が言っていて、最近読んだ「関東大震災と日米外交」(波多野勝+飯森明子、草思社、2200円)って本に書いてあった、阪神淡路島大震災が発生した日に離党届けを出す愚挙を犯した故・山花貞夫元社会党委員長に倣うなんてことはとりあえず避けられ日本も適当には機能してるってことが解る。とは言えかくも重大な事態にも関わらず未だに「IAEA」って原子力関係の世界組織に報告をしていないってな話が出たり、重大な事態と断じるまでに午前10時台の事故発生から相当な時間を要したりと、日本への不審を煽るだけのファクターはすでに幾つも重なっているから、あるいは内閣改造を見送る以上の重大事態を内閣も政府も実は隠しているかもしれないって勘ぐってしまう。例えば化け猫が侵入したとか、って「ヤングキングアワーズ」の最新号読んだばっかりなんでそー思っただけなのかな。

 10キロ以内は外出禁止ってのはどれくらい凄い話なのかやっぱり文系なんで判然としないけれど、少なくとも工場周辺での被曝状況は相当なもので、500メートル以内にはきっと絶対的に立ち入りが禁止されるんだろーなー、放射能が除去されて放射線が感知されなくなるまでは、って話を聞いてだったらすぐさま東シナ海へと向かって戦艦大和を掘り起こして「宇宙戦艦ヤマト」に改造してイスカンダルまで「コスモクリーナーD」を撮りに行かせるんだ、って大声で叫ぶのはエンターテインメントを担当している記者なら当たり前のことだと思ったけど、そー大声で騒いでいたらシロい目で見られてだからこの会社は人がどんどんと辞めていくんだってなヤツ当たりにも近い憤りを覚える。

 明日付で約2名がまた辞めてこれで今年に入って辞めた人間はえーっと何人かな? デスククラスの中堅がまとめてドバドバ辞めていくってーのに会社は脳天気にも紙面を刷新して現行12字詰めを10字詰めに活字を大きくして情報量を減らし、あまつさえ組版が面倒になるからと新製品は発表から翌翌日でないと掲載されず酷いと3日後になりかねない事態を平然と率先垂範する首脳陣の神経は、大赤字を出してもーすぐ債務超過の可能性すら指摘される中でもその責任を経営陣に止まり続け陣頭指揮を取り続けることで果たそうとする人の太さにつながるものがあって、その欲張り具合の放つ眩しさに目がくらむ。情報量が減り新製品情報が遅れる「旧聞」をさてどれくらいの人が指示してくれるのか、明日以降の数字が辿るカーブの右下がりにならないことを願うけど、でも、なあ、うーむ。


【9月29日】 荒木経惟が撮った写真に町田康が小説を付けた超絶世紀末的コラボレーション「俺、南進して。」(新潮社、1900円)を読む、小説は完璧に町田体、だから慣れないシロウトが読むと詰まり、次の文章へのつながりを見失って投げ出すかも、と思ったけれども意外や読んでいると、俺、この文体、案外と意味がすんなり入ってくる、思考の切り替えと場面転換の激しさは、酩酊感をもたらし現実なのか架空なのかと悩み、なんだしょせんは小説の出来事なんだから、どうだっていいじゃねえか。うーんうまく真似できないのはやっぱり町田さんの頭の中で町田さんの論法によって紡ぎ出された町田さんならではの文体だからなんだろーな。大阪を撮った荒木の写真は相変わらずの荒木さんで最高、とりわけ駅の電光表示を撮って横倒しにした写真が見せる異景ぶりは、これも風景が荒木さんの中で荒木さんの流儀によって描き出されたビジョンならではのものなんだろー。活字の詰まった濃密な小説にたっぷりの写真でこの値段はお買い得。

 自動的な存在を見に行く。希望待望山ほどあった「ブギーポップは笑わない」(上遠野浩平、メディアワークス、550円)のついに映像化が正式発表、なんと実写とアニメ化の両方が同時並行的に進められていたらしく、発表会には両方のスタッフキャストが揃ってそれぞれの特徴とかを話してくれた。聞くとひなのとIZAMの離婚会見もあったなかをテレビカメラは4台ばかりでスチルも結構な数が出る大賑わいの会見になって、シリーズ7冊で120万部のベストセラーとなりながらも決して一般にはメジャーじゃない、ヤングアダルトのジャンルに属する小説ながらも根強く幅広い人気を持っていることが現場で思いっきり実感できた。まさか半分はサクラってこたぁーねーよなメディアワークス?

 会見ではまずもって原作の上遠野浩平さんが挨拶、みかけフツーの兄ちゃん(渋谷系ではない)なのに口をひらくとまんま「あとがき」の雰囲気にあふれてて、「原作は元ネタであって映画やアニメに何か期待があるとしたら監督が原作をいかに料理するか、ぶちこわすか、ふみにじってくれるかにかかってる」と淀みなく喋って「以上」と締めくくるあたりに乾いた中身で富みに知られる「ブギーポップ」シリーズの作者らしさが伺える。そんな声に答えたんだろーかシリーズ構成に脚本を担当した村井さだゆきさんが「踏みにじらせて頂きました」とのっけから挨拶、「実写とアニメは枠の違いもあって監督の個性が出ている作品になりました」と、1月からのテレビシリーズと来春公開とかゆー映画との相関関係について説明してくれた。聞くと「原作とは別もの。違うストーリーになっていて、テーマをもう1度再現する構成になっている」らしーけど、それでも「両方で1つのブギーポップ・ワールドを形成している」らしーから、原作読んで映画とアニメを見比べて、ついでに「電撃アニメーションマガジン」連載の緒方剛志さん描く漫画も読んでトータルで頭のなかにあの世界を構築してみては如何でしょー。

 アニメ版は何故かギャグが得意なはずの渡辺高志さんが監督を務めるそーで、「笑いとは人間の心理の内面にあるダークサイドと裏腹なんで、『ブギーポップ』ではそんなダークサイドをアニメというメディアのなかでとことん突き詰めていく」ってな抱負を表明。須賀重行さんって「天地無用」「魔法使いTai」とかに参加していた人がキャラクターデザインを担当していてマッドハウスの制作だから、クオリティはそれなりのものが期待できそー。ちなみに声は「さっき決まった」清水香里さん、そうテレビで「電撃文庫」のCM版「ブギーポップ」の声をあててた彼女ですね、会見終了後にたまたま一緒のエレベーターで下に降りたら背ちっちゃかたけどなかなかにグラマラスな女の子だったんで目のやり場に困ってしまって、好きなものが本当に牛のタタキなのかを聞くのを忘れちゃいました。岩倉玲音を超える当たり役になるんだろーなー。

 さてさてそろそろ読んでてイラちって来ただろーから教えよう、実写版の「ブギーポップは笑わない Boogiepop and Others」の主演はちょっと前にあれこれ思案した時にイヤかもって挙げたチャイドルの中にちゃんと含まれていた吉野紗香さんが晴れの「宮下藤花/ブギーポップ」役をゲット。昨日に続いての登場だったけどこっちの顔なんて覚えているわきゃないから当然無視されながら抱負なんぞを聞く。それは「本を読んだ時から大好きで、ブギーポップに恋をしてしまって、素敵な人を演じられるのが嬉しくって、クランクアップしてもうなれないのが寂しくって、本当に好きなんだって思いました」ってな具合の他にどんな役を演じても昨日の「グラウェンの鳥篭」の会見でも言わなかったような入れ込み様で、異論もいろいろあるだろーけどこれだけ好きって言ってもらえるんだったら演じてもらってもイイかなって思えて来る。まあ実際にどんな演技になっているかは映画を見ないと解らないんだけど。

 脇では「がんばっていきまっしょい」でヒメをやってた清水真実さんは可哀想な末間和子役で、ブギーポップに並んで重要な役になる霧間凪はすっげー美人で背が高いボーイッシュな感じの黒須麻耶さん、紙木城直子役は「ラブ&ポップ」の三輪明日美さん、イインチョな新刻敬役は「南青山少女歌劇団」出身らしー広橋佳以さんでマティコアな人類の敵は「新宿少年探偵団」にも出ていた多分ホリプロな酒井彩名さん。面白かったのが酒井さんで「難しかったけど、そんな役なんだから頑張ったらいいじゃないいってて母親に言われて頑張りました」と微笑ましいエピソードを紹介した後で、「マンティコアっの人食いの時にどうすればって監督に聞いたらスパゲティと思って食べれば良いって言われたからスパゲティと思って一所懸命食べました」とシレッとして話して、後で共演の寺脇康文さんから「どんな映画だって知らない人が聞いたら思うかね」って突っ込まれてた。

 その寺脇さんが演じるのはエコーズ。カレーのCMでワインがどーとかって岸谷五郎さんとかけ合いやってて、「私たちが好きだったこと」にも一緒に出ていた名バイプレーヤーだから知ってるって人も多いだろーけど、あの特徴的な声が好きなんでスクリーンにどう響き、怜悧で自動的なブギーポップとどう掛け合ってくれるのか。宮下藤花のボーイフレンドの竹田啓司役は川岡大次郎さんって人らしかったけど会見に来てなかったからどんな人かは判然とせず。誰なんだろ? 偶然にも昨日の会見で吉野さんと同じ壇上に上がってた螢雪次朗さんも田所って教師の役で出演とか。「満月のくちづけ」から10年経って油ノリノリ、らしーけど実は良く知らない金田龍監督のさていったいどんな映像がかくも個性的だったりキャピキャピだったりするキャストを使ってあの世界を再現してくれているのか、来春の公開が今からとっても待ち遠しい。吉野さんも言ってるよーにすでにクランクアップしてるんで、同じメディアワークスだからって某「ガ○○レス」みたく出来てないなんてことはないから安心しよー。

 会見をのぞいていた堺三保さんの巨体を横目に見ながらいったん退散して1時間ほど時間を潰してから再参集は「電撃ゲーム3大賞」の発表会。ところが1時間の間が悪かったのか会場はスタート5分前になっても人がまばらで、これは集まった審査員やら受賞者にマズいと思ったか、数分前になって続々と埋まりはじめた人の名札を横目で見ると実に推定8割(は大袈裟かな、でも半分近くはいたよーな)近くがメディアワークスの名札をつけていて、最前列に陣取った僕の横も後ろもメディアワークスの人らしく、かくもメジャーな受賞者を送り出した賞にしては関心が低いなーとちょっと哀しくなる。出渕裕さん広井王子さん「交通事情」だからって授賞式の遅れてはイケマセン目立つから、とりわけ広井さんは背ぇ大きいんだし。

 しっかし観客はともかく応募に関しては立派にメジャーな電撃3賞、なかでも小説部門には実に1326作品もの応募があったそーで、平均的に水準の高いヤングアダルト系の賞にあってもこれだけの数が集まれば最高の作品の水準たるやプロとて上回るものだろーことは想像に難くなく、実際に今回の晴れて大賞に選ばれた「これだけの人に祝福してもらったのは結婚式以来」とゆー挨拶もおかしかった円山園子さんの「勝ち戦の君」などは、審査委員長として壇上に上がって心臓バクバクに上がりまくってた深沢美潮さんも講評で言ってたよーに「審査の時に自分たちより上手いよねって声が上がった」ほどの完成度とか。読んでないから何とも言えず個人的な評価は来年とかゆー刊行を待つしかないんだけど、そーまで誉めるんだったら多分間違いはないんだろー。2次選考やった英米文学翻訳家ってな人はどー思いました? 誰だか知らないけど。


【9月28日】 読んでいたならお返事下さいスティーブン・スピルバーグ様。インディ・ジョーンズのモデルって誰ですか? いやねえ最近のことなんだけど本屋に行って「アマゾンの封印 探検家フォーセット大佐 “インディ・ジョーンズ”真実の物語」(エルメス・レアル、渡辺和見訳、自由国民社、1905円)って本を買ったんだけど、今度は別の本屋で「インディ・ジョーンズのモデル」って帯の文句が目について、同じフォーセット大佐のこっちは手記か何かなって思ってよく見たら全然違うジョージ・ハント・ウィリアムソン博士って人の本だった。

 「ライオンの隠れ家 異星人だった歴史上の偉人たち」(坂本貢一訳、求龍堂、1800円)ってちょっぴりトンデモ入ってそーなタイトルで、帯なんかはもっと凄くて「これで異星人、UFO、神話、聖書、古代史のすべての謎が明らかになる」とまで書いてある。あるいは様々な人物の断片から創造したのが「インディ・ジョーンズ」ってことになるかもしれないけれど、同じ時期に出た本にまるっきり違う人物を指して「モデル」って言われてしまうとやっぱり気分はよろしくない、って訳でちょっとしたネットアイドルなみのアクセス数を誇る当サイト(の割にはグラビア出ませんかって話はこない)の読者には、きっとスピルバーグの兄の同級生のまたいとことの孫の隣りに住んでたおばさんがアメリカ帰りのおばさんで変な言葉で言うんだよ、Oh! マルアイ花かぁーつを(謎)な人がいると信じて問い掛けてみた次第。どっちが本家でどっちが元祖?

 先週号は「ドリームキャスト」を4万円も出して買った莫迦な記者を揶揄ったばかりの「週刊プレボーイ」に今週はさらにポン酢なコメントが。曰く「新しいレースクイーンの正体が気になる。前作の現行PS『リッジレーサータイプ4』の寺井有紀ちゃんとは別人のようだけど…。」ってをいをい「R4」にテライユキなんて出て立っけ? まあ高千穂遥さんにしてみればおそらくは「R4」のレースクーンでも雑誌の表紙を飾ってる3DCGキャラクターも同じ「グロテスク」の言葉で片づけちゃうんだろーけど、少なくとも金のかかり方動きの良さでは一応マスプロな会社のキャラなんで上を行ってる「R4」のレースクイーンを捕まえて、テライユキと言っちゃうとはマサヤン(誰?)怒っちゃうよプンプンちゅーか、って。あと「PS2」用リッジの深水藍って個人的には目がちょっとイヤ。確かに「有紀ちゃんより上玉」だけど「麗子」ちゃんとの比較で上玉って言ってるんなら文章書いてる河合さん家の桃子さん、環八のマサ(だから誰だって?)が夜中にベンツで駆け付けまっせ。。

 さんざんっぱら待たせた挙げ句に「イーセカイ」をオープンさせたアスキーECがさらなる顧客の獲得を狙ったかそれとも国内では低空飛行がまだまだ続く「ドリームキャスト」の浮上を狙ったか、あの秋元康さんの企画でスタートさせる世界でも初に近いインターネット1分劇場、違ったインターネットドラマの「グラウエンの鳥篭」の完成披露発表会に六本木まで出向く。かつて六本木で創刊を祝った某雑誌が社長の辛抱不足もあって休刊からリニューアルへと追い込まれたのも記憶に新しい、アスキーにとって決してハッピーじゃない土地での会見を英断を見るか愚挙と見るかは評価の別れるところだけど、連日1分づつしか明らかにならないドラマをココだけと言うことで30分ほどまとめて見た限りにおいて、なかなかに先行きも期待できる正直言ってオモシロいコンテンツに仕上がっていた。

 山川直人監督によるすべてを含めると6時間にも及ぶとゆードラマは冒頭、会場にも姿を見せていた我らが死神博士、天本英世さん演じる怪弁護士が来客に向かって謎めいた契約を結ばせるところからスタートする。そして変わって女子高では、吉野紗香さん演じる女子高生が米国に単身赴任した父親が契約しておいたマンションへと引っ越し独り暮らしを始める場面が映し出され、そこに住む奇怪な住人達の邂逅を経てやがて血で血を洗う一大惨劇が繰り広げられる、ことになるみたいなんだけど何せ6時間に及びきっと365日目にしか明らかにならない殺人事件を描いたドラマの導入部。事件こそ1件起こってマンションの謎も明らかになるけれど、それだけでは気持ちが収まらないくらいにワクワクドキドキな期待が強く胸を打つ。

 出演者も天本さんは言うに及ばず刑事役の螢雪次朗さん住人役の桜金造さん本間しげるさん伊佐治山ひろ子さん片桐はいりさん杉田かおるさん寺田農さんマスター役の神戸浩さんと個性派ぞろいで、去年の今頃は直角に近いくらいに左下がりだった会社がわずかに1年後の今、こーまで豪華なゲストでこーまで高品質の作品を送り出せるまでに回復したかと思うとオジさん涙が出てくるよ。いやそれは全然ないけれど、リストラに邁進しながらもここと決めたら資金を注ぎ込み優れたコンテンツを手に入れるために金も人も惜しまないスタンスは、いかにも業突張りってな雰囲気があるCSKであってもどっかの新聞社よりはよほどソフトの重さ大切さを解ってらっしゃると指をくわえて羨ましさにヨダレを垂らす。

 午後に東京証券取引所でアスキーがCSKといっしょに開いた記者会見でも、CSKは150億円もの増資に応じてアスキーが持ってた借金を肩代わりしてアスキーを完全に傘下に収めちゃったくらいだし、あとは「グラウエンの鳥篭」が売れてセガも立ち直ればCSKの野望も一段と完成に向かって近づくってことになるんだなー。おっとリクルートがまだ残ってた。発表会ではセーター姿にスカート圧底シューズとすっかり女の子してた吉野紗香さんなんかの写真を何枚か撮り、明日は電撃の発表会でどんな自動的な姿を見せてくれるんだろーかと思いつつ退散、玉舎じょーむガンダムのTシャツ着てなかったじゃん。

 地下鉄で乗り継ぎ今度は今さら時代錯誤も甚だしいと思ったアニメ企画その1「ごぞんじ!月光仮面くん」の発表会をのぞく。今さらってのは知名度はあってもギャグにしかならないその「正義の見方」ぶりをどーアニメ化するんだろーって気持ちがしたからだけど、会場についてパンフレットをもらい第1話を見て納得、ギャグにしちゃってたんですねー、あの「月光仮面」を完璧に。なにしろ脚本・シリーズ構成からして「はれときどきぶた」の浦沢義雄さんで、爺いになった月光仮面が地球に向かった「サタンの爪」「ゴースト」「ドクロ仮面」の孫たちと戦いたくっても戦えず、代わりに使ってたスクーター実は宇宙人の「すくこ」さんを送り込んで手近にいた小学5年生を月光仮面に仕立て上げるって展開は、昔ながらの勧善懲悪とはいかず「サタンの爪」が営む焼き鳥の屋台から勝手に焼き鳥を食べてしまったガングロだったりヤマンバだったりする女子高生を相手に、少年が変身した月光仮面が戦いを挑むってストーリーに仕上がっている。なんだ勧善懲悪じゃん。

 温いけど見ていて飽きない展開は流石にベテランのクリエーターたちが老舗の東京ムービーで作った作品、でもって主人公の声には宮村優子さんを配して小じっかりとまとめてて、ただでさえ「ゴーゴーファイブ」あたりから見っぱなしの日曜朝に新しく10時から10時半までお楽しみが加わる気配。けど会見では普段は大袈裟に騒いでるみやむーがしずかに訥々と喋っていたのがちょっと印象的、臭い立ちそーな商品化説明会に集まった玩具やら文具やらのおじさんたちを前に飽きてたか怒ってたのかもしれないなー。顔は綺麗でしたちょっとタヌキツネ入ってたけど。宮村さんと同じ「ネオランガ」に出てる仙台エリさんが日下三蔵さんを相手に箱根でやってたところを大森望さんが撮影したアニメ業界の挨拶をしたら返事してもらえたかな? もらえないよな。


【9月27日】 出演と主演とは違うってことなんだねと謎めいた言葉を吐きつつ(意味は明後日わかる、かも)「虎ノ門パストラル」で開かれた「’99カラオケ・フェスタ」に雑誌「タイム」が選んだ「20世紀の最も影響のあるアジアの20人」の1人になった毛沢東を見に行く、じゃないダライ・ラマ13世でもな昭和天皇であるはずもなく、映画の天皇黒澤明はすでに亡いから除外して盛田昭夫もすでに亡いわけじゃないけど近いから外した最後の日本人、そーです今や世界の「KARAOKE」の生みの親としてつとに知られるクレセント創設者の井上大佑氏が主催者の全国カラオケ事業者協会から表彰を受けるってんで顔を見に行く。でもやっぱり毛沢東が見たかったなー「けざわあずま」じゃない「もーたくとー」が。

 さてさて「タイム」誌のお墨付きで今や時の人になった井上氏だけど、会場でもらった「カラオケ歴史年表」冒頭の対談によると山下さんってジュークボックスにオケ入りテープを付けて売ってた別の人が井上さんより先にいて、業界の人たちの間では先駆者としてはそっちの人の方を「生みの親」とする方がより正解に近い雰囲気が漂ってる。ただし対談でも井上さんの功績は、今のカラオケ業界でも主流となっているレンタルシステムを最初に採用してスナックなりに「カラオケ」が一気に普及するきっかけを作ったらしいと指摘していて、ビジネス面も含めた「カラオケ生みの親」としての称号を贈るに吝かではないみたい。事実会場でも井上さんを協会の相談役に迎えたくらいだし、そーゆー「世界に通用する人材」を取り込んで広くアピールする材料にすることは、結果としての業界の認知度イメージ向上につながる訳だから、今後もどんどんとやっていって頂きたい。カラオケ番長も宣伝番長とかって肩書きで迎えたら如何でしょーか。

 表紙で「AERA」を買う。女子学生が「あっ、この人若手の文学者ってことで話題になった人だよね、えーと何って言ったっけ?」「たしかー、平野啓一郎じゃなかった? 直木賞とかってとったバーテンさん」「そうそうカッコいーんだよねー」って喋っていたかどーかは目撃した訳じゃないからまったくもって不明、ってゆーか東浩紀さんが間違われやすくてかつ間違われば場合に誰が1番イヤかなーって考えて作った愚にもつかない冗談なんで、決して信じないで下さいな。まあ普通一般のマスコミオヤジにとって東大院出た新進気鋭の若手論客も京大出た次回作はどーなってるかな作家も実は区別がつかなかったりするんだろーけど。関係ないけど表紙の「哲学研究者」って肩書きは「哲学者」とはどー違うの?

 「AERA」にはあと「たれぱんだ」(小学館、1300円)の絵本でいちやくベストセラー作家(?)になってしまった末政ひかるさんがその姿を見せてくれていて、背格好に髪型なんかから絵本に登場する長髪の人物のまんまモデルだったことに気付く。そーか末政さん家には「たれぱんだ」がいるのか、ってそんな訳はないけれど、背中に巨大「たれぱんだ」を背負ってカメラに向かって微笑む顔の嬉しそうな様は、シールで出して羽ばたかずそれでも諦めないで再チャレンジして300億円市場(「エヴァ」よい大きいじゃん!)にしてしまった末政さんの「たれぱんだ」への思い入れが溢れてる。けど書いてる速水由紀子さんは「たれぱんだ」に愛がないのか「平均時速は30センチ」なんて書いてるなー。しゃきしゃきした人だからやっぱり「たれぱんだ」にはイラついちゃうのかなー、同居人は「まったり」なのに。

 「虚船 大江戸攻防珍奇談」(朝日ソノラマ、530円)で一躍注目を集めたものの続編が名古屋じゃなくって残念だった松浦秀昭さんがシリーズ物への埋没を避けて投げてきた勝負球、それもズバンと来る豪速球の新作「獣ハンター“エミ”」(朝日ソノラマ、530円)を一気に読む。ここんところ「SFマガジン」なんかでも活躍の目立つ小菅久美さんがイラストを担当した物語は、アフリカを舞台に密猟を取り締まる捜査官が出逢った美人の女性環境写真家が実は悪の密猟者を退治てやろう桃太郎、じゃない「ビースト・ハンター」だったって(タイトルがそーなんだからネタバレじゃないよね)展開から、彼女の背負った運命やらが明かとなってお約束のよーに捜査官との関わりが絡みつつ、最後は大バトルのうちに「実は」といったエンディングへと至りいちおーは終わりながらも次への期待を煽ってやまない。

 舞台が江戸時代だったことで封印していた作者のおそらくは銃火器への並々ならぬ思い入れがぞんぶんに叩き込まれていて、頻出する銃器の固有名詞が解る人にはとっても楽しく解らなくってもそれなりに楽しめる。自然保護なんて割かしハードな根っこの設定ながら上で踊るキャラクターたちはユーモアがあって読者を飽きさせることなく、エンディングまで読者を引っ張っていってくれる。遺伝子操作も含めてすっげー技術を持つ密猟組織がその技術を例えば素晴らしい象牙を生み出す象なり誰もが欲しがるライオントラカバサイといった野生動物のクローニングなりに使わないの? ってなハテナまーくも浮かんだけれどそれは天然物の方が尊ばれるのは真珠もダイヤもいっしょの事。だからきっとこれからも、世界を舞台に密猟組織とビーストハンターとお調子者の捜査官との追っかけあっこがきっと絶対楽しめるだろーそーだよな? インターミッションのチビチビエミちゃんかーいーです。


【9月26日】 「ダーティーペアFLASH3 天使の悪戯」(高千穂遥、早川書房、540円)を読み終える。ゴンタなんて悲惨な名前を付けられたケロちゃんは「CCさくら」のケロちゃんみたく関西弁も喋らなければたこ焼きもケーキも食べずそれでいてパワーはビルを軽々と吹き飛ばすテラトン級(って単位あるの?)。そんなゴンタをペットに入れてユリとケイの2人が挑んだ事件は紆余曲折の果てに結局いつもどーりの悲惨ってな言葉が毛先に埃が触った程度の軽い印象しか与えないくらい、ど酷い展開となって1巻の幕を閉じる。吹き飛ばしたくらいならいざしらず、招き入れた敵の数がまた108人とは「どろろ」じゃないけどこれから結構なバトルが繰り広げられるって布石かも。1巻に1体の妖魔ならこれから文庫本での刊行となった「ダーティーペアFLASH」シリーズは「ペリー・ローダン」「グイン・サーガ」に続く早川文庫の”看板シリーズ”になるのかも。って書けばだし出せばなんだけど。その前に売れなきゃってのもあるか。で売れてんの? 今のこのシリーズってば。

 9月も終わりになって部屋の異様な暑さ参ったと思いつつ机の上にあった体温計をくわえたら、何と体温が37度に達してて吃驚。とたんに頭が痛くノドがカスれて目眩がして来るのは人間が客観的な数字とかに左右されやすい主体性の生き物だってことを端的に証明していて情けない。まあ平熱が6度8分くらいと高いから37度ごときでフラフラになって起きられないなんてことは無いけれど、今日も今日とて秋葉原から銀座日比谷と散歩にフラフラしていた訳だから、これじゃ体にいー訳ない。けど熱はあっても昨今の暑さは、いくら長ーい目でみれば大した異常じゃないと言われても気分としては超が付く異常起床としか思えない。何も起きなければ良いが、冬に西瓜が食べられるとか(いー事じゃん)。

 「ビーニー・ベイビーズ」への物欲がようやく治まったと思ったら最近は「ノートパソコン」に物欲がムクムクと向いている。秋葉原に行く度に値段スペック稼働時間デザインなんかを見比べつつ、買うたやめた音頭を唄って結局踏み切れずカタログだけが溜まっていく優柔不断さはいつもどーり。それでも候補としちゃーデザインは○でもキーボードがペラペラっぽい「VAIO」はハナっから除外して、目に良いブラック液晶が気に入ったシャープの例の薄っぺらい奴をありゃこりゃ見比べている段階までには達してる。これって正解? モバイルな人ぉ。

 例のゴムパンツを履かせられる奴で、値段は20万前後ながら古い奴ならペンティアム2の266メガヘルツで198000円辺りが主流、ちょっとだけ新しいセレロンでも22万円くらいとそれなりのスペックが得られるタイプが今も並んで売られているから選ぶぬ不自由はない。2時間もたない内蔵バッテリーが気になるものの、外付のバッテリーなら6時間は保つとかってカタログにはあるから外でのオシゴトでもまあ問題はない。けどそこでやっぱり「8時間は使いたい」「XGAの方が新しい」ってないらぬお節介を別の自分が心にささやきかけてなかなかまとまらず、そーこーしているうちにパナソニックとか東芝とかサンヨーとかへの気分も盛り上がって来るから始末に終えない。やっぱり自分って買い物(それも高額商品は)向いてません。

 お約束にラジオ会館のボークスと海洋堂をチェック。知らないうちにジーベック・トイズのエヴァシリーズが増えていて零号機の色違いポーズ違いが山と並んでいて、限定なんだから品切れになるから買え買え買え買えと強制されているよーな気になって身が縮こまる。まあ自分だって「ビーニー・ベイビーズ」のレインボーの緑バージョンに7色バージョンを集めたりする訳だから、それが揃っていることが嬉しいって気持ちは決して理解できない訳じゃないし、フィルムの場面を再現しているからって、山積みの綾波レイから包帯血滲みバージョンを探す楽しさは感じてる。とはいえクリアバージョンとか黒1色バージョンとかってのになると、誰が買ってどーしてるんだろーかってのがちょっと不明。色を塗って飾るんだったら解るけどまんま取っておいてプレミアムが付くのを楽しむってのは、たとえ売らなくっても趣味としてあんまり楽しそーに思えない。どーすんのかなあ。

 海洋堂のショーウインドーには例の新人ガレージキット作家を取りあげてレーベルとしてプロデュースしてく「ワンダーショウケース」の2作品が並べられてそれなりに押している雰囲気。とはいえあれほど記者発表を盛大に実施したにも関わらず、でもって25日発売の「モデルグラフィックス」によれば正式に出席したプレスにはTシャツも写真もライターまでも入った豪華版のキットが配られたにも関わらず、メジャーなメディアで「ワンダーショウケース」なる試みが紹介されたってのを見た記憶がない。

 ネットで検索したって出てくるのは自分の書いたこのページとか出展してたディーラーさんのページがちょこちょこ。あとは客として入って豪華なプレスキットなんかもらわず勝手に記事にした自分の会社のメディアくらいってのは、世間の関心がそれだけガレージキットには向いてないと見るべきなのか、メディア対策が行き届いていないと見るべきなのか。いわゆる大手のメディアが社会風俗に間抜けってのはこの際周知の事実と受け止めて、そこを擽る技がやっぱりもっともっと必要なんだろーなー、でも「アート」と結託するのはなしね。

 だって「モデルグラフィックス」のあさのまさひこさん、ワンフェスで村上隆さんのフィギュアが17個しか売れなかったにも関わらず、「PROJECT KO2は世界のアートシーンでの着地点を探すべく、WFという名のカタパルトから本格的に打ち出された−ただそれだけのことだ」なんて言っているんだもん。いわゆるガレージキットシーンでの村上隆は失敗に終わったけれど、もともとアート作品なんだからそれで良いってなスタンスを取っていて、それって自分がリニューアルとかに関わった作品だったにも関わらず、フィギュアとしてワンフェスの場で人気を得られなかった事を、これって認めようとしてないってことにならないかい。

 アートの側としては別にWFで売れなかろうとアート作品として海外で人気となるんだろーから構わないんだけど、ことオタクの立場に立った場合、たとえアート作品であってもワンフェスの場に立って他のフィギュアと同一線上で競争した結果、売れなかって事実は厳然と認めなくっちゃいけない。んでもってフィギュア界を代表としてフィギュア界での成功を成し遂げるために協力しただろーあさのさんが、「アート作品を客側が勘違いして(もしくは意図的に)”オタクアイティム”と見立てて購入していった」なんて言っちゃうのはやっぱり気分にそぐわない。それってアートって物が必然的に保つ権威なり胡散臭さを、ネガティブな形でオタクな人たちに植え付けかねない言葉だもん。アート好きとしてもフィギュア好きとしてもちょっと認められない。

 結果としてアートってジャンルが持つ権威っぷりとか胡散臭さを、ネガティブな意味で嗅ぎ取る人たちを増やしただけに終わってしまいそーな「PROJECT KO2」の轍を踏まないためにも(ってもアート界ではまだまだこれからトばすんだろーけど)、権威をエサにアート性とかってなオヤジなメディアが食いつきそーなエサをまぶさず、「ワンダーショウケース」はフィギュアとして売出しフィギュアとしての成功を狙うべく、ちゃんとサポートしていって欲しいもんです。しかし同日発売の「モデルグラフィックス」には小さいながらもちゃんと載っていたのに「電撃ホビーマガジン」では見なかったり(見つけられないだけかも)する「ワンダーショウケース」、生まれたしょっぱなから結構厳しい運命を背負っているなー。


【9月25日】 DVD化なった「がんばっていきまっしょい」(ポニーキャニオン)を見ながら涙する、田中麗奈さまのブルマーに。ってのは9割9分事実だけどやっぱり映画としての良さが劇場で見た時と変わらずガンガンと伝わって来て、淡々とした描写の中でちょっぴりギャグめいた展開も含みつつ、女子高生たちの女子高生であったが故に得られた時間の重さ、そして大切さをひしひしと感じさせてくれて、無為な時間ばかりを過ごして来た我が身と重ねてキュンと(いい歳して)胸を痛める。あの笑顔のほとんど見せないキリリとした眉毛と強い眼差しとブスったれた口元で通す田中麗奈が、当時はまだ素人だったからそういう演技だったのかと思いきや、得点のメイキング映像では普段着もあか抜けてれば笑顔もちゃんと今と変わらない明るさがあって、カメラ前での集中力はなるほど評判を呼ぶだけの女優だったことに今さらながら気付く。真野きりなも相変わらず良いなあ。コックスで頑張ってたヒメ役の清水真実さん、読者の方に教えてもらってけど「ブギーポップは笑わない」って本当ですかぁ? 制作発表の案内とか届かないから実はまだよく知らないんですけどぉ。

 何を思ったかピーターの写真集「裸一貫。」(沢渡朔撮影、新潮社、3500円)を買ってしまう。直筆サインと落款の入った珍しさってのもあったけどこれも9割9分はピーターのヌードってものへの興味からです。で、表紙の股間だけ見えない大股開きが女性にしか見えないのと同様に、中の水着姿でバックから撮った写真もヌードの背中から撮った写真も腰のくびれの少なさはなるほどあっても女性と言われれば信じてしまえる滑らかさなめまかしさがあって、心を相当頑張らなくても使おうと思えば使えないこともない。正面から撮って当然股間はクロスさせて毛だけを見せてる写真も胸の平ぺったさはあっても見て見苦しさとか気持ち悪さは感じない。両性具有ってゆーか「中性」って存在があればこーゆーのを指すんだろーか、結構感動、ってもあくまでも見る側の性向に依る部分が大きいんでダメな人は徹底的にダメかも。

 それでも「プラネットハザード」で一躍ドたわけSFの旗手として日本で脚光を浴びたジェイムズ・アラン・ガードナーの新刊「ファイナルジェンダー 神々の翼に乗って」(早川書房、関口幸男訳、上下各640円)に出てくる「中性」とゆー設定のステックらしき人物を描いた寺田克也さんの表紙のイラストを見れば、はるかにピーターの方がマシって思えるだろーね。こちらは男性と女性の特徴を備えている、いわゆる両性具有者らしーけど、特大バストのボディの上についているのは髭面のハルク・ホーガン(は大袈裟か)だったりして、耽美とかヤングアダルトとかSFも含めて馴染みがあって、”天使のように美しい”とかってなイメージを持っていた両性具有者への幻想を木っ端微塵に吹き飛ばしてくれる。これは寺田さんの責任とゆーよりは当方の勝手な思いこみに起因する問題で、SF文庫として売る中身に相応する絵として決して間違いではない。ないとは思うけどやっぱりもうちょいウツクシく描いて欲しかったなあ、ホーガンは止めてせめてリック・フレアーぐらいに(変わらん!)。

 予定では丸沼芸術の森に村上隆さんの講演を聞きにいくはずだったのが起きたらすでに講演10分前だったんであきらめ恵比寿にある「東京都写真美術館」で開かれる「新世代フィルムメーカーズ〜The Animation」ってなイベントに出かけることにする。オープン5周年で沸き立つガーデンを抜けて到着したのは整理券の配布1時間前。「人狼」の沖浦啓之監督に「青の6号」の前田真宏監督に「おジャ魔女どれみ」「魔法使いTai」の佐藤順一監督に「機動戦士ガンダム/第08MS小隊」「おいら宇宙の炭鉱夫」の飯田馬之助監督、そして「パーフェクトブルー」「千年女優」の今敏監督と錚々たるメンバーが一同に会するアボリッツアが夕張が東京ファンタが広島でも絶対に不可能なイベントだけに、長蛇の列でもしかすると見られないかもと心配して行ったらロビーにそれらしき(解るよね、それっぽさって)人影はまったく無い。

 チケットを買い外へ出てジュースを飲んで戻っておよそ45分前になりポツリ、ポツリと整理券目当てらしー男共がロビーに散見されるよーになったんで、慌てて行列を作って2番目(2列だからフロントローですわ)に並んで待ってたけど、結局整理券を配り始めた午後1時になっても並んでいたのはせいぜいが40人と少なく、これが世界に名を轟かせる日本のアニメ監督たちのイベントかと驚き、いったいどーゆー宣伝をしたんだと怒りに胸燃やす。なるほど声優さんたちが集まるイベントだったら放っておいてもファンが口コミなりで情報を回して会場は即座に満員になるだろーけど、アニメの監督さんだって例えば「ロフトプラスワン」でやったワタナベシンイチ監督のトークショーは2回とも満員の大盛況だったりしたから、告知する媒体さえファンに届けば決して人が集まらない訳じゃない。とはいえ「アニメージュ」には載ってた訳だし、やっぱり監督さんへの興味ってそれほど抱かないものなのかなあ。勿体ないもったいない。

 イベントはコーディネーターを務めるはずだった、「マトリックス」特集号の売れ行きが反映されずアニメ中心への転回を指示されたらしー徳間書店は「GaZo」編集長の渡辺隆史さんが取手駅での人身事故に巻き込まれてなかなか到着せずスタートが遅れる気配。前説として登場したバンダイビジュアルの人があーだこーだと喋ってたんだけど、こともあろーに「声優さんの出ないイベントで期待していた人には退屈なイベントになるかもしれません」とかぬかしやがって、そんなこたー100も承知で来ている人が大半なんで大きなお世話だってことと、今日はなるほど監督さんの顔を見に来ているけれど日が変われば声優さんの顔だって見に行くかもしれない、監督も声優も含めてアニメだ大好きなんだってな人が来ているかも知れないにも関わらず、「声優ファンってのは声優が出るならどこにだって駆け付ける奴」的ニュアンスの物言いをするたあー、アンタそれでもアニメの人かってなイラ立ちが頭をよぎって、愉快さとは逆の気分が延髄をピクリと走る。

 それでもどーにかかけつけた渡辺編集長を迎えて監督さんたちも壇上へ登場してスタートしたパネルディスカッションは、飯田さんの「人すくねー」ってな第一声はさておいて、とりあえずバンダイビジュアルの人が1つ質問をしてそれに5人が順に答えていくかったるいけどまあ妥当な形で進行。まずは幼少期の体験ってな当たり障りのなさすぎる話題から入って、前田さんが「小遣いくれない家だったんで漫画とか読めずテレビばっかり見てた」とアニメ番組(あと「ハッスルパンチ」とかも)に耽溺した幼少期を語ると、佐藤さんも「鉄人28号が好きだったらしくえ家中シールだらけだった。親はあんな動かないのが楽しいの、アトムを見ろとかって言ってたのに」とかってな思い出を語る。

 今さんは漫画家として手塚治虫から大友克洋へと流れる影響を語りつつ、ことアニメでは「今再放送を見るとチープどころじゃないんだけど、もっと動いていたように感じたのは自分で中を割ってたんだろう」とアニメに熱中して見えない物まで見ていた子供時代を吐露。沖浦さんは「ロボット大好き」と趣味を語りながらも「友達がデビルマンのキックを描いてくれって言って来てパンチを描いたんですよ」と言って、「人狼」で有名人のキャラクターを使う可能性を示唆された時に自分のじゃなきゃやらないと言ったよーな、自分が好きな物を表現することへのこだわりを、幼少のみぎりより持ち合わせていたことを強く伺わせる。で、集まったメンバーでは前田さん(飯田さん曰く「マッピー」)と並んで明るかった飯田さんは中学生のころから演出家とか作画チームとかへの関心を持つ「ヤな中学生」だったことを披露する。

 そんなこんなでひととおりの発言が終わって、さて軽やかな大トークバトルへと突入するかと思ったら、バンダイビジュアルな人が「アニメを卒業する時」とかって現役のアニメ監督とおそらくは現役のアニメファンを前にしたイベントにしてはよーわからん問いかけをしたのが禍したのか、重苦しい空気の中で5人が訥々と喋るおよそディスカッションとは遠い雰囲気へと進んでしまい、いつか誰か席でも立って怒りだすんじゃないかってな逆の意味での緊張感が、帽子にサングラスにヒゲとゆー変装で最前列に座っていた当方に伝わって来て、なかなかに神経を痛める時間を過ごす。

 例えば映画監督の作家性みたいな辺りで「新世代」な監督の作品の特色を語ろーとする問いかけには、今さんから「作家性ったってお子さま向けの作品にだって関わり方次第で作家性なんて出せるものだし自分がどういうスタンスで関わったかによるもんでしょう? 作家を何か特別なものとして取りあげるのは違うよ」ってな指摘もあってちょっぴり白熱。あと佐藤さんが「人狼」のなかなか劇場にかからない現実も含めた、アニメが置かれた状況への不満からなのか、興行側の売れそうだから上映するんだってなスタンスへの懸念を示し、面白いんだから見てくれと言い、面白そうだと世間に思われるようムードを高める努力にかけている点を指摘したのが印象的だった。とりわけ視聴者層を強く意識しつつ良い意味での作家性を込めた作品作りに定評のある佐藤監督だけに、上っ面の要素たとえばキャラ設定が誰とか声優が誰とかいった部分がやっぱり前面に出てしまう風潮に、ありゃこりゃ積もる思いもあるのかな。

 興行側の自信の無さはともかく「人狼」に関しては当の沖浦監督「作らなきゃいけないから作った作品で、当たらないとは全然思っていないし」と顔立ちこそベトナム系ってゆーか自作に登場しても不思議じゃないくらい非アニメっぽい雰囲気ながら、言うことはしっかり言ってなるほどそれなら見ても良いかなってな気分にさせてくれる。翻って頑張りましょうと言ってるバンダイビジュアルの担当者に興行側の算盤をはじきとばすだけの説得力を支える自信がないのかとも思えて来るけど、さて実際はどーなんだろー。それでも来春の公開はほぼ決まったそーなんで、バンダイビジュアルには山とある「マボロシのアニメ」(あれの「3」はどーなった?)とならず晴れて陽の光が当たる場所へと出られる日を、今から楽しみにして待とー。

 ディスカッションでは例えばアニメでは老舗のD社への好き嫌いとか前田さんが企画書見せられて大丈夫かと訝った作品が「セーラームーン」だったとゆーエピソードとか沖浦さんが最近のアニメ誌にはいつページが変わったのか解らないくらいに同じような作品が並んでると言ってたと今さんが言って隣りの沖浦さんが首振ってウソですと今さんが訂正した場面とか飯田さんがフォトショップの履歴の機能がクリエーターのイメージ力を阻害してるんじゃないかと指摘した場面とか同じ飯田さんがインターネットの日記への気持ち悪さを吐露した場面とか(すいません)警句金言が多々あって、これで案外この日1番喋ってたんじゃないかと思えるバンダイビジュアルの人が自分の価値観をくどくどと発言なんかせず(誰もあんたの話なんか聞きたかねーよ監督さんたちに喋らせろよ)、もう少しテキパキと司会役に徹してくれていたら、もっともっと深く或いはドロドロとしたアニメ界の話も聞けたかもしれず、来場した人の少なさも込みでもったいない感を強く覚える。声優さんなんか入れなくっても良いから司会をちゃんとして「ロフトプラスワン」あたりで再演してもらいたいですね。


【9月24日】 きっと読んでないから(あんなにワルクチ書いてりゃ当たり前だよ築地魚市場新聞とかって)反響は期待していないけれど例えば朝日新聞が近く大幅に紙面を刷新するからといってその概要を告知して、残る刷新までの日数でより広く世間に刷新をアピールするために日頃付き合いのある政治家財界人文化人らに「そんな紙面になるんですかー、とっても期待してまーす」ってなコメントをもらい華々しく1面に掲載し続けるだけの根性があるだろーか。言ってしまえば宣伝にコメントを使う訳だからそれこそ使われた方は宣伝料くらい寄越せってな話に多分なるんだろーけど、それをやってもやっぱり新聞の顔とも言える1面で堂々とそんな自己宣伝にそれも他人様の権威を借りて展開するなんて、古今東西の新聞の歴史でおそらく初めてに近い画期的なことなんて、天下の朝日は絶対に死んでも例え潰れたってやらないだろーなー。だからどーしたって訳じゃないけどね。はあ。

 「ファンタジーの森」シリーズの最新刊「翠天回帰」(大野香織子文、船戸明里絵、プランニングハウス、上下各840円)を買って読む、って何か昨日からこればっか。いーんですネタの無い時は本の話に限ります。で「翠天回帰」はいわゆる人間とどうやら超常能力を持っているらしい高地人と人間よりは動物に姿が似ている亜人と悪魔みたいな圻族とがごっちゃになった未来なのか過去なのか知らない場所を舞台に、出生に謎の多い市長の息子が遠くから逃げて来た高地人の女の子と出会い自らを成長させていくストーリーが展開される。最初は有り体の「星界の紋章」にも似た異種族でのラブストーリーかと思ったら、世界の成り立ちが明らかになり少女の正体少年の謎が立ち現れるに従って、設定の壮大さが浮かび上がってなかなかに感嘆させられる。海外の大人が読むファンタジーにも遜色のない世界観の構築がちゃんと出来てます。

 それでいて世界の単なる説明におわらず、ライトノベルズに近い装丁で手に取った読者も納得させられるように突っ張ってはいるけれど幼い部分も残した少年が母親の面影から抜け出て大人へと脱皮するストーリーに絡めて、ちんちくりんだけど美人な少女との運命的な出会いと別れと邂逅と別離を再開ってなどんでんまたどんでんのラブストーリーも描かれていて楽しめる。イラストのマッチングもなかなか。活躍度合いからすれば世界の運命をも左右する主人公とも見えた少女が実は世界の成り立ちから離れていたとしても十分に機能する程度の存在だったりする当たりに入れ込んだ読者としては肩すかしを喰らった感じがしたけれど、それでも真実の主人公である少年にとってのまさしく「星」であった訳で、その意味での存在感はやはり十分に備えていると納得しよう、でもこの兄ちゃんの「星」ってのはやっぱり、なあ。高地人の少女の喋りがラフィールみたいにつっけんどんでなかなか良いっす。

 「ダーティーペアFLASH3 天使の悪戯」(高千穂遥、早川書房、540円)を買ってまだ読んでない。ををちょっとだけ文章を変えられたぞって自慢にはなりませんが。けどあとがきはとりあえずよんで高千穂のおっさん相変わらず世間に怒っていてなかかなに楽しませてくれる。今回の怒りはSFがどうとかってんじゃなく単純に「3Dのキャラクターは低レベル」ってことで、例に挙げているのは多分「R4」の永瀬麗子だと思うけど「見ているこちらの顔がひきつってしまいました。不細工で、動きはかかし並み、手足のデッサンの醜さはいうまでもなく、首とあごなどどうつながっているかわかりません」とは辛辣だけど1面確かに当たってて、それでも当方のセンスが「こんなもんだろ」と許容してしまうのに対して、高千穂さんは納得どころか「グロテスク」とまで言い切ってしまう。

 面白いのは高千穂さんが「人間のからだはデッサンが狂っている」とまで言い切っていることで、それをそのまま写しても不快な形にゆがんでしまう。でも実写の場合は長年の馴れからなのか感覚的な補正が入って「いいじゃん」と納得してしまうのに対し、人間のデッサンをまんまトレースした3Dのキャラはデフォルメがされてないためいびつが誇張されて見えるらしー。で、高千穂さん曰く「3Dの天才を」ってことらしーけどさても具体的な「天才による3D」が思い浮かばないため果たしてどーゆーのだったら高千穂さんも納得させて2Dキャラのように世界を席巻できるのか解らない。村上隆さんの展覧会も始まるけれど遠いしだったら東京都写真美術館に集うCG使ったアニメの監督さんたちに聞いてみたい気もするなー、今敏さんとか。

 安価にフルCGアニメを濫造する時代に備えたある種の実験として個人的には評価している「VISITOR」のフィギュアニメーションでもないんだろーし、或いは2Dキャラを立体化しても見られるよーにしたガレージキットのデジタル化こそが次代の3Dキャラクターデザインの基本なのかとも考えてしまう。某ハワイなソフトの会社はそーした状況を見越してフィギュアのクリエーターをガッポガッポと集めているとかで、その意味ではリアルさ故に狂ったデッサンの集合体と高千穂さんの言うキャラクターとは一線を画した、3Dで見ても見られるキャラクターの登場する振るCGアニメーションになっているのかもしれない。ただし完成させられたら、って前提がつくけどね。


【9月23日】 「ニライカナイ 遥かなる根の国」(岡田芽武、講談社、714円)を読む。「ドラゴンJr」も「アフタヌーン」も定期で読んでないから良く知らなかった漫画に作者だけど、すげーリアルな書き込みの背景と対比するかのごとく可愛くカッコ良いキャラクターが繰り広げる、どうやら神との戦いを描いたらしーストーリー。萩原真さんの「夜叉鴉」とか木城ゆことさんの「銃夢」とかってな絵柄挌闘人物描写を思い浮かべるってのは例えがちょっと古過ぎるかな。風忍ぶって言ったらなお古いか。

 コマの外枠を全部黒く塗ってあっったり過剰な書き込み過激なアクションそして怒涛の情報量が1読での理解を困難にさせているけれど、読みふたたび最初へと戻って2度3度と読み込むうちにキャラも世界観も解って来てさてこれからどういう物語へと進んでいくのかに興味が及ぶ。乱空ちゃんのパンツまる見せアクションとかって最高、って言ってて歳が恥ずかしい。人形焼きとかチキン弁当とか赤福(漫画では朱福)とかってな地域の名産品も解って一石二鳥の伝奇アクションに、乞い願うぞ期待の満たされんことを。

 「カザフスタン旅行団」(駒井悠、講談社、629円)を読む。ときどき「週刊モーニング」で見かけたトレジャーハンターの学生だか監察医の集団だかがごっちゃに出てくる不思議な4コマ漫画の集大成。「ドクター秩父山」にほんわか通じるシュールっぽさを持ちながらも(僕の勝手な思いこみで異論はあって当然)綺麗な絵柄で一般にも受ける内容に仕上がって……たら流浪なんてしなかっただろーから読んでやっぱりフツーな感性では濃すぎるギャグなのかも。

 いっしょに入ってる「はるか かなた」は双子でそっくりにな姉弟の出てくる双子的には許せないけど漫画だし面白いんで許す。これは吉野朔実さんの「ジュリエットの卵」も同じね。けど帯に堂々と書かれた「駒井悠絶賛!!」の字は一体何? っても馬の延髄な僕なんかが解説してて4刷が有名人の帯でも1刷な例もあるし、むしろ完璧な自画自賛の方がだったら読んでやろーじゃねーかってな読者の奮起を促すのかも。とりあえず読んでおけ、由紀ちゃん可愛いし、パンツはトランクスだけど。

 「宇宙家族カールビンソン SC完全版」(あさりよしとお、講談社、524円)の第3巻と第4巻を読む。ここいらへん当たりになると「少年キャプテン」はもとより旧版でも買わなくなってたんで知らないか覚えてないか忘れている話がいっぱいあって、おとーさんの正体やらリスのターくんの出自やらライカの秘密やらがあれこれ解ってなかなか勉強になる。試験には出ないけど。出ないかな。と、ここまで講談社の漫画を買ってばかりでカバーの折り返し部分を見たら謎めいた数字が刷ってあって当たれば特製テレホンカードが貰えるんだとか。数の出る漫画の単行本に通し番号なんてすごい面倒臭い仕事だけど印刷所ってそれで耐えられるシステムを持っているんだろーか。図書印刷に聞いてみよ。

 けど6ケタしかないのが謎でよもや全部で100万冊を超えないほどにコミックスの売上が落ちているとも思えないから、宝くじのユニット式に重複する番号のものが幾つかあるのかな、それともちゃんと7ケタ8ケタに増えるのかな。関係ないけど「カールビンソン」巻末のアフタヌーン単行本の紹介で高河ゆんさんの「妖精事件」のアオリが「世界を週末に導く妖精を倒すべく、少女は戦士となった」ってなってるんですけど世界を週末に導いてくれるんなら僕、喜んで妖精に見方するなあ、毎日「ウイークエンダー」見られるから(終わったよ)。

 「サンタクロース撲滅団」(勝浦雄、朝日新聞社、1600円)を読む。朝日新人文学賞の受賞作で湾岸埋立地にある倉庫に集まったバイトくんたちがキレて最後は爆破へと突っ走るいわば若気の至り過ぎを綴った物語。大人になり切れないのかなりたくないのか、世界の果てへと自らを至らしめられない若者たちの切実なる思いになるほど共感は出来るけど、一方でクライマックスに出てくる映画監督の「利用して突破する」ってな現実的でありまた激しい困難さを伴う行動に移ることへの道程も付けてくれたりしていて、読後に開かれた道をさて、進むか進まざるかと改めて考えさせてくれる。

 ハマショーユーミンタツロー尾崎豊YMO美空ひばりにジミヘンマドンナオフコースチューリップと居並ぶ挿入歌ってゆーか音楽的なディテールが作者の歳を容易に想像させるのは多分自分の音楽体験と重なっている部分があるからで、それなのに湾岸埋立地とか8ミリビデオとかコンビニエンスストアとかコンピューターソフトとかクワガタブームとか、現代もしくはここ数年でのして来た風俗が頻出していて「コレって何時の話なの」ってな具合に時代感覚をグラグラと揺さぶられる。ガキどもにはきっと音楽が解らず知ってるおっさんはディテールに悩むだろーね。

 今でもタツローYMOユーミン尾崎豊オフコースチューリップあたりを最高っ! て言える音楽的に進歩のないおっさん(自分もだ)が、懐メロ魂に固まりつつも大人になって直面した規則に、慣習に、柵にがんじがらめのこの世間を、今の若者達に固くしてぶちコワしてしまいたいってな思いで読んで溜飲を下げる本なのかもしれない。死の床にある文学少女のよこで山下達郎の「蒼氓」を合唱するエピソードを読み泣けるメンタリティーの持ち主なら読んで泣け。オレは泣いたぜ。何だったら唄ってやるぜ。貴女の枕元で伴奏なしで。


【9月22日】 けど「週刊プレイボーイ」10月5日号の「NEWS CHOP」に記事として登場する「日本で発売された当初は約4万円」もした「ドリームキャスト」って僕知らないんですけどそんな時期があったんですかぁ、ねえイリさん。発売時点の値段が29800円だったドリキャスをもしも本当にそんな値段で買わされたんだとしたら、品薄の時にきっとボられたんですねそうかなるほどなるほど。「4万円で、しかもソフトの少ない時代にドリキャスを買ったチョップ記者はバカだったのか?」。はいそうですバカだったのです。

 とはいえ自分も「プレイステーション2」関連では自分家の紙面とは別に、珍しくあちゃらこちゃらの雑誌に記事とかコメントとかを出してたりするんで、それが活字になって発売されて濃い人真っ当な人の目に触れた時、やっぱり「こいつバカ言ってるぜ」ってなコメントが山と出てヘナヘナになるんだろーなー。匿名の陰で適当にお茶を濁せるブンヤってホント素晴らし過ぎる稼業だなー。もっとももとより人が少ない会社なんで署名であってもなくても実は誰が書いてるかバレバレだったんだけどね。

 訳の解らない人事やら機構改革やらの話を聞いてからいたたまれない気持ちになって逃げるよーに取材に出る。個人としては仕事にとりたてて当分の変化はないけれど、システムとしてだんだんと閉塞感が増し平目的風潮が濃さを増しているよーな気が強くして息苦しさに目眩を覚える。窒息しないでよく皆さん生きてられるもんだと首をひねるけど、あるいはすでにして人種が異なって二酸化炭素が窒素でも呼吸できるよーな人たちなかりになっているのかもしれない。逆に自分が窒素二酸化炭素しか呼吸できない異端児って可能性もあるけれど。

 取材先ではコマーシャルの連盟が決める今年1番のCMの発表があって聞くとグランプリはテレビが岩下志麻さんが象印仮面ならぬ象印夫人となって炊飯ジャーの説明を聞いていく例のアレ。真っ当過ぎる感はあるけどそのメッセージ性とちょっとした面白味、綿密に練り込まれた設定に審査員たちの評価が高かったらしー。1発のインパクトでも全盛のアイドルの知名度でもないって意味では確かに流行りとは一線を画してるかも。でもテレビではほとんど見なかったなあ、象印賞が好きだった「クイズヒントでピント」も最近見てないし(見られねえ)。

 ラジオ部門の郵政大臣賞は関西で放送された「リクルートフロムエー」のラジオCMで、宇多田ヒカルばりのリズムで一般の女子高生だかが「フロムエー」の宣伝の歌を唄う内容は、その歌詞のあからさまぶりもさることながら歌の調子のはずれっぷりが素人のイジりにつながる面白さで、放送中は誰もがきっと笑いをこらえて聞き入ったことだろー。リズムはとれず声は前に向かわず高音は伸びるどころか上声になってもほとんど出てない体たらく。カラオケに通ってバキバキな女子高生が山といるこのご時世にさてもどーしてこんな歌しか唄えないのかと、遺伝子教育躾その他な先天後天を含めた理由をつらつらと考えてみたくなる。

 キャラクターでは岩下さんに加えて「ほんだし」で木々樹林さんと競演した田中麗奈様さま様がほかの出演作品も含めて受賞して順調な感じ。ここのところ海外の賞で惨敗続きの日本CMが今年の傾向ではきっと復活出来るってな、審査委員長を務めたマッキャンエリクソンの坂田耕社長のコメントもあったけど、日本的な間とセンスが存分なこれらの作品でホントーに外国人に受けるのかってな疑問は浮かぶ。けどどーして海外で賞なんぞ取らなきゃいけないのかってのも黒船礼賛にも通じる謎。日本で受けて日本人が商品を買ってくれればいーじゃん、CMのそれが目的なんだしって思うけど、ヒラメスト(平目的)な世間はやっぱり上しか見ないんだろーなー、権力者であったりクライアントであったりする方角を。消費者の方だけは向いてないけどね。

 当然のことを当然と言えない風潮が蔓延するのはプライドだったり見栄だったり事無かれ主義だったりヒラメストだったり人々がするからで、そーしたやるせなさを吹き飛ばすかのよーに「インポケット」で快調に世の中の矛盾だったり見ないふりをしていることへと切り込み続ける明石散人さんの事務所に築地がすぐだったんで顔を出して久々のご挨拶。新刊の高野山伝燈大阿闍梨・池口恵観さんとの対談「日本『宗教』鑑定」(徳間書店、1800円)の話なんぞを訊きつつ大阿闍梨のシンボルマークらしー「あ」の梵字と桜島を模したマークが描かれたシールを大小合わせて何枚か頂く。かの長島監督も清原選手も信心しているらしー人なんであるいはカルトかと思っていたけど何事にも辛辣な”築地の先生”が対談をオッケーした人なんで、まずは間違いはないんだろー。買って読もう。

 東チモールを巡る旧宗主国がでばって南洋の資源を根こそぎかっぱらおうとしている植民地主義的な陰謀の真実とか、治安維持法でもって人を根こそぎ縛ってしまおうとする陰謀へと至る盗聴法やらオウムパージやらの危険性とかを話しつつ「来年はきっとここでこうして話すことだって出来なくなるかも」ってなともすればトンデモだけど鳥玄坊先生が言うと妙に真実味を帯びる雑談をちょろちょろ。例のWOWOWの番組絡みで近くに来ていたらしー京極夏彦さんが、乗ってたいタクシーの渋滞に車の前後2輪という珍しいパンクにトドメは歩行者安全義務違反による摘発ってな数々のトラブルに1日のわずかな時間に直面したってな奇妙な話を聞くにつれ、「世の中には不思議な事などまだまだある」のですってなおのこと思えて来る。近著じゃないけどやっぱり政治も経済もそろって僧侶を重用し宗教家を国事に関わらせた昔みたく”不思議大好き”になって杓子定規な考え方からの脱却を目指すべきなのかも。

 明石さんの「ジェームズディーンの向こうに日本が視える」(講談社文庫)の解説を書かれていた篠田正浩監督が久々に撮った「梟の城」の試写会後のパーティーに、ヒラメストな世間を満足させるべく潜り込んではコメントを取ろーと思ったけれど何故か不思議にも出資している任天堂関連の人の姿は見えず。どーしてなのか聞きたいので関係者の人は教えて下さいと私信を出しつつ仕方がないから適当にフラフラとして知り合いの顔探し。人垣の向こうに映画とは無関係だけど一応は業界人らしく角川歴彦社長がいたんで「どうも」と言ってリクルートの話を聞こうとしたら逃げられた、ってゆーかすいっと横を向いて誰かと話をし始めたんで振り返るとそこにはわずかに50センチの距離であの、葉月里緒菜様さま様がスラリとした手足腰顔胴体の姿で立っておられて眩しさに目がでんぐり帰る。顔ちーせー。

 解説つながりで篠田監督に挨拶しよーと思ったけれど根っからの人見知りする性格が禍してか近寄れず話しかけられず断念。まあ向こうは著名な監督だしこっちは素人のさらに下座にかろうじて指をかけただけの人間なんで馴れ馴れしくされたら迷惑なことのこの上ないだろーから遠くで衛星みたくグルグルと回って顔を見るに止める。俳優関係は中井貴一さんあたりもいたけど「DCカード」を見せる訳にも行かずやっぱり近寄らず。上を向いて歩こうな人たちも存外知り合いが豊富って訳でもなさそーで、それでもハッタリかまして「彼? 友達」的発言を日々繰り返して知らない人の前でハクをつけてる振る舞を、小心者の自分も時として見習わなくっちゃって、死んでも絶対に思うものか、なあ篠田(知らないしらない)。


【9月21日】 エンディングまで潰してクライマックスのバトルを見せるまるで最終回のノリな「宇宙海賊ミトの大冒険2人の女王様」は、思われない哀しみに悩みつついい子になれないプライドが破壊へと向かう典型的なイジめっ子のパターンへと陥った陽怒が必殺技を発動する寸前で本日これまで。残りが2話もあってこの盛り上がりがさて吉と出るか尻すぼみの凶と出るかは不明だけど、エンディングを潰す思いきりの良さを尺が足りない埋め合わせより勝つと見て、アニメ雑誌の予告を読むについけ更なる恐怖と絶望の果てに空かされる最後の力が与えてくれるであろう驚きに勝手な期待を抱いて、新番組をほとんど追いかけていない現在唯一の観賞作品として、月曜深夜を楽しもう。先週なぜかほとんど初めて見てそのシリアスさに驚いた「天使になるもん」も最り2話だけは見たいけど。

 思い立ってポール・ジョンソンの「ユダヤ人の歴史 上下」(徳間書店、各2300円)を買って見る。別に「ベン・ハー」を見たからでもなければ「アンネの日記」を読んだからでもなくホントに純粋な思いつき。とはいえ電撃なアニメ雑誌でやってる本読みの仕事で毎月適当な数を読まなくっちゃいけない中で単純な本ばかりではつまらないんでこーゆー本を混ぜておくのも面白いかもってな独善が働いたこともちょっとはある。まあシオニズムやらイスラエルの建国を「ガンダム」あたりと結びつけてしたり顔で語っちゃうことだって出来るからね。今ん所先月の「アニメ出身クリエーター」今月の「評論」来月予定の「月旅行」のよーな横軸で斬るテーマが見つからないのが難点で、残るは去年の「屍鬼」「塗仏の宴」で使われた「上下で分厚い本を秋の夜長に読み込もう」的テーマあたりが打倒でその点「ユダヤ人の歴史」ならバッチリなんだけど、分厚いってことはそれだけ読む方にも負担は大きく今頭ん中は活字があふれて叩くとこぼれそうになってます。あと清涼院流水さんの「カーニバル」シリーズを読まなきゃ。後はゲラなんて素人の本読みには送ってなんてもらえないから中身は全然知らないけれど噂では「三つ目が通る」らしい「カムナビ」とかも出たら速攻で。月末今から死にそうです。

 死にそうな時にはやっぱりドリンク剤が頼りになるけどなんぼなんでも「たれぱんだ ドリンク剤」ってのはホントにちゃんと効くんでしょーかとついつい聞きたくなったよバンダイさん。「たれなりにつかれてます」って言われたって沈思黙考その実ホントは何も考えてやいない「たれぱんだ」の顔を見ても全然疲れているよーには見えず、そんなリラックスした姿が描かれたドリンク剤を飲んで果たして人間シャキッとするんだろーか、むしろのたくってぺたらってしまうんじゃないかってな心配をしながらキャップをひねってグビグビ飲んだらををこれは。タウリン1000ミリグラム入りのごくごく普通のドリンク剤でおまけにちょっぴり効いたみたいで手足が軽く感じられ、これなら限界だった速度が時速2・75メートルだったのが時速3メートルくらいまで上げられるんじゃないかってな気がして来た。あんまり変わらん? でもアップ率ならすごいでしょ。200円でローソンだけでの販売なんで見つけたら飲んでいっしょにたれましょう。

 「ジャングルTV」にコジャレ大帝がイチオシな優香がレギュラーの新山千春といっしょに出ていてけれども巨乳が服装の関係で解らず比べるに困難な情勢。けど専門家の意見もいれてとりあえずは優香の勝ちとしておこー。で吉井怜とはどっちが上? 秋葉原でDVD屋なんぞを散策して「エヴァ」の劇場版を今も余ってるボックスを買って1度も見てない我が身を振り返ってこうたやめた音頭をひとしきり踊った後、ちょっと前に出ていた「がんばっていきまっしょい」(ポニーキャニオン)を当然のことながら”田中麗奈さま様さまのブルマー目当て”に買う。”真野きりなのブルマー”でも悪くはないけど役柄がほら、あれだったしちょっと萌えなかたんでやっぱり悦ねえイチオシにしときます。見てはないけどジャケットの表情とかを見るとあの作品が田中麗奈を擁しておそらくは2度と見られないタイプの田中麗奈を定着させてくれた奇跡のような作品だったことを痛感する。あんな髪型眉毛格好2度としてくれる訳あんめえよ。

 ボックス入り「ベターマン」の第1巻(まだ売ってるよね地方とかには)が中古で1万円になってたり「奈々子解体新書」のプロモーション用に販売したTシャツ入りDVD(何故か持ってる。本編は持ってない癖に)が1万5000円になってたりしてDVDの世界はホント奥が深いけど、一方で昔は軽く10万円を越えてた「ナディア」が6万円台に落ちてたりして浮かれたよーなアニメバブルの一端を示していたLDバブルもここに来てメッキがはげ落ちて来たよーな感じがする。個人的には良いことだけど実際DVDの手軽さ小ささを実感すると今さらあの巨大な置き所に困って出し入れも面倒臭いLDボックスってそれほど食指が動かないんだよなー。LDプレーヤーがぶっ壊れていることもあるし。期待はこれで「プレイステーション2」が発売されて一気にコンソール数が増えた時に高須武男バンダイ社長がバンダイビジュアルの尻を叩いてボックス物をぜーんぶDVDに落として一発勝負に出ないかって点。「東京ゲームショウ」の後のパーティーで吹き込んではおいたけれどさてノってくれるでしょーか。「御先祖様万々歳」とか出してくれー。

 大阪府あたりに住んでいる37歳の女性でイニシャルが「Y・R」って方がおられたらご連絡を、どうやら貴女は私の「運命の人」らしーですから。ちなみに職業はスポーツ選手で僕との関係はズバリ暗殺者だそーでいつもライフルで狙っているそーなんで、気になったら近所のビルの屋上とかを見上げて探してみますんで気付いたら手でも振って下さいただし撃った後だと返事できないからダメね。ってまさか冗談だとは思うけど、本編の性格診断の方は「自分の常識や判断に縛られる傾向があります。そのため、思い切った行動が取れず、せっかくのチャンスを逃がしています。常に自分と他人を比較しているために、本来の自分を見失っています」「自分の殻に閉じこもっているために、他人からはなかなか近づきがたい存在になっています。本当の意味での友人はできにくいかもしれません。八方美人で、世渡り上手なところがあります。そのため、反感を買われることが多いでしょう。また、自分の力で何かを成し遂げたことがないので、本当の意味での自信や努力といったものが 足りないようです」って指摘が丸当たりなんで、案外運命の人ってのもホントなのかもしれんなあ。明日ビルの上見てみよっと。


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